突然始まるポケモン娘と○○○する物語





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突ポ娘 special
SP04

#4



対泥獣戦。
私たちはある洞窟の奥で、二足歩行する獣脚類のような巨大なモンスターと対峙していた。

美柑
 「あーもう! 硬いなぁ!」

泥獣最大の特徴はその防御力。
パーティ内では攻撃力の高い美柑と伊吹がやっと通せるレベルの防御力。
ただし、この泥獣もギミック型の様子だ。

泥獣
 「ガァァ!」

泥獣はある程度戦闘をすると、フィールド中央にある泥沼に飛び込んで、体中に泥を塗りたくる。

伊吹
 「保美香! 手はず通りねぇ〜!」

保美香
 「分かっています……わ!」

保美香はアイテム欄から一つ取り出し、それを泥獣に投げつける!

ドォォン!

大きな火花と轟音を響かせる花火玉。
大した攻撃力もないが、なにゆえこれが店売りの品か、我々は気が付いた。

泥獣
 「がぁぁぁぅっ!?」


 「泥獣は主に2形態を取っている」

泥を纏った形態と、それを纏っていない形態。
泥を纏った状態だと熱耐性を得て、乾燥から身を守る形態だが、時間経過で乾燥形態に移行する。
泥獣は乾燥が苦手だから直ぐに泥沼に戻るけど、ここにチャンスがある。

保美香
 「今です! 防御力は低下していますわ!」

伊吹
 「せぇぇのー!」

泥獣
 「がぁぁぁ!?」

泥獣が伊吹の槍の一撃で倒れた。
伊吹のハンターの特性は『獣』に特効、ボスでもたまにいる獣系には美柑以上のダメージが期待できる。

保美香
 「ふぅ……今回は砂鮫より楽に勝てましたわね」


 「なんだかんだで全員のレベルも上がってるから後ほど楽なのは当然」

こういう任意に攻略順を決められるボスは大抵、後ほど弱くなる。
勿論全匹討伐したら、オアシスの街の解放もあるし、そこから難易度が一気に上がる可能性もある。
でも、着実に強くなっている実感は嬉しい。

美柑
 「残すは地底湖の主、水竜ですか」

伊吹
 「かなり寒いらしいから、ホットドリンクが多めにいるね」

最後の環境は砂漠では例外的な寒い環境での戦いになるようだ。
地底湖を探索して、水竜を討伐すればイベントは進行するはず。


 「皆の回復するね」

私はヒーラーの特性を利用して皆の回復を行う。
一通り処置も終えると、私たちは洞窟を出た。

美柑
 「うわ……もう夜?」

保美香
 「疲労の概念が無いお陰で、無理すればどこまでも戦えますが、精神的には辛いですわね」


 「とりあえず拠点に戻る?」

伊吹
 「その方が良いねぇ〜、野宿するのも楽じゃないし〜……」

私は空を見上げた。
砂漠には空を遮るものが何もない。
だからこそ満点の星空が輝いている。



***




 「進捗は?」

ジラーチ
 「なんとか間に合うかな」

作戦司令室、今日もジラーチはこの部屋に閉じこもってステージ3を制作しながら、茜たちの進行状況を管理している。
俺はジラーチの好きなコーンポタージュをテーブルに置くと、ジラーチは無言で飲み始めた。

ジラーチ
 「……美味しい」


 「それじゃ、晩ご飯になったらまた呼ぶから」

ジラーチは少しだけこちらを見るとコクリと頷く。
俺は作戦司令室をでると、フーパの姿を発見した。

フーパ
 「よくもここまで来たものだ。貴様らは私の全てを奪ってしまった
。これは許されざる反逆行為といえよう。この最終鬼畜兵器をもって
貴様等の罪に私自らが処罰を与える。死 ぬ が よ い」


 「もう魔王でもなんでもねぇな、大佐かよ」

フーパ
 「正確には○ュバリッツ・ロンゲーナ大佐だぜ、涙と鼻水の覚悟はよろしいかな?」


 「正に恐悦至極」

フーパの魔王戦の演説はもはや混迷を極めつつある気がするな。
よりにもよってシューティングゲームから引用する辺り、一体フーパはどういうラスボスを演じたいのかな?

フーパ
 「うーむ、ある程度理不尽だけど、対話もできないラスボスはやだしなぁ」

フーパのイメージするラスボスはやはりポケモンらしく憎しみで戦うボスではありたくないのだろう。


 「つまり、誰かを助けるのに理由はいるかい? て感じなラストを望むと?」

フーパ
 「だからアタシは茂君が嫌いさ……て、そこまでは求めてないけど」

何となくだがフーパが好きそうなのって○F9な気がする。
ラスボスをただ憎しみの対象として戦うのは勧善懲悪で分かりやすいが、フーパが求めるものは最後の大団円。
その円にフーパは入りたいのだ。


 「魔王なんて設定が少し合ってないんじゃないか?」

フーパ
 「今更設定変更出来ないし、魔王って言う方がとりあえず倒しておけって感じで分かりやすいでしょ?」

フーパはそういう点、シナリオライターには向いてないな。
物語が円滑に進むように魔王を設定して、それを自分に当てはめる。
協力ではなく対立を描いて、俺を奪い合う。
ある程度真面目に戦いたい思いもフーパにはあると思われる。

フーパ
 「あーもう、いっそ茂君がシナリオ考える?」


 「それゲストに任せていいことか? 救出対象が実は黒幕って使い古されたネタだけどなぁ」

フーパ
 「あはは、流石に冗談! シナリオは真面目に考えるよ!」

フーパはそう言うとリングを通って消えてしまう。
相変わらず神出鬼没な奴だ。
俺はすっかり暗くなった空を見上げると、厨房に向かった。



***



マギアナ
 「むむ……これは成功なのでしょうか?」

私は厨房で、ご主人様が用意されたレシピ本なるものから親子丼なるものを練習していた。
私はまだ美味しいの基準が分からない。
殆どレシピ通り作ってみた筈だけれど、そこには疑問が生まれる。

マギアナ
 「ご主人様の料理には何かがありました……私の料理にはそれがない……一体何が足りないのでしょう?」


 「ん〜? 良い匂いがする……マギアナか」

後ろからご主人様が厨房に入ってきた。
私はご主人様の方を振り返ると頭を垂れる。

マギアナ
 「申し訳ございませんご主人様、厨房を勝手に使ってしまいました」


 「別に禁止してないし、マギアナが謝る必要はないだろう? どれどれ……親子丼か」

ご主人様は私が少しだけ作った親子丼を興味深そうに見ている。
私は少しだけドキドキする。

マギアナ
 「良かったら試食していただけないでしょうか?」


 「そりゃ喜んで」

早速お箸でご主人様は親子丼を口に持っていく。
ご主人様は暫く口の中で吟味すると。


 「こりゃ美味しいな、マギアナは才能あるんだな」

マギアナ
 「お褒めに預かり光栄です……ですが何かが足りないのです、ご主人様の料理にはあるあの温かくなる感じが……」

私には全く分からない、だけどご主人様は事もなげに答えてしまう。


 「そりゃ愛情だな、愛情は料理の最高のスパイス、食べて貰いたい相手に込めた愛情は何よりも美味しくなるものさ」

マギアナ
 「料理に愛情……ですか」

愛という感情は何となく分かる、でもそれは精神的な物で、料理のスパイスというのが分からない。
どうすれば愛を取り出して、料理に入れられるのか。
例えばご主人様を想って作れば、より一層美味しくなるのか。


 「よし、ならば今日は料理の愛情のいろはを伝授してやろう!」

マギアナ
 「はい、ご教授お願いします」

私は御主人様に料理を教えて貰うことになる。
この機会により料理をマスターして、御主人様に喜んで貰いたい。
きっとこうやって学ぶという事に私の道はあると思う。



***



保美香
 「……出来た!」

私たちは拠点に帰る途中、なんとかある物で晩ご飯が作れないか検討していた。
ゲームの中のお陰で空腹で倒れることはないが、食べるという概念に心が渇望しているのだ。
果たしてこれはゲームの仕様か、それとも仕様の裏を突いたのか分からないが私たちは生肉を焼くことに成功した。


 「大変上手に焼けました〜」

保美香
 「問題は味ですわね……」

肉は美味しそうな匂いを放ち、売却専用アイテムに岩塩という物があり、保美香はそれで味付けして見せた。
木の枝に肉を突き刺して、火を起こすとちゃんと肉が焼けた。
アイテム名はこんがり肉に変化しており、一応仕様っぽいけど、正規の方法かは怪しかった。

美柑
 「食べれる幸せって良いですねぇ」


 「ん……3日振りに食べ物らしいもの食べた」

保美香
 「本当はちゃんとしたキッチンで作りたいですけど、ゲームですからねぇ」

伊吹
 「でも美味しい物を食べると脳が刺激されるからね、ゲームの上でも重要だよ」


 「んぐ、ご主人様元気にしてるかな……」

私の食べ終えた串を見て、ご主人様に思いを馳せた。
ご主人様美味しいご飯を食べてるかな、ご主人様暖かい場所で眠れているかな。
ゲーム内時間は既に5日を経過していた。
現実の時間は分からないけど、兎に角クリアを目指すしかない。

保美香
 「やはり宿でしっかり休みたいですね、もう少しで拠点に戻れますし、一泊したら水竜討伐に向かいましょう」

美柑
 「りょーかい! それじゃ、そろそろ出発しますか!」

私たちは立ち上がると再び旅を続ける。
後どれだけ戦えば、あと何体のボスを倒せばいいのか。
兎に角前へ、進むしかない。



***



フーパ
 「うんまぁ〜い♪ 茂君だんだん料理の腕上がっているね!」


 「残念、今日のメインシェフはマギアナだ」

マギアナ
 「はい、愛情を込めて作りました。最も最後まで御主人様に監修して貰いましたが」


 「と言って、マギアナは俺の監修なんていらんくらい、しっかりしていたけどなぁ」

今回の親子丼、俺とマギアナはレシピを見ながら、所々お互いの意見を交えながら作って見せた。
今回は全ての工程をマギアナが済まし、俺は本当に見ていただけだ。
愛情という名のスパイスはまだマギアナには難しいだろう。
だけど、今回の料理で少しでも実感してくれると嬉しいんだが。

シェイミ
 「マギアナは凄いでしゅ……アタシは何しても大失敗……」

ジラーチ
 「得意不得意ってあるもの、マギアナは料理の才能があったって事ね」

とりあえずマギアナの料理には皆高評価のようだ。
俺もマギアナの才能は評価する。
俺のような大雑把な物ではなく、女性らしい繊細さも料理には現れており、保美香とは全く異なるが、凄く家庭的な味といった所か。

マギアナ
 「あのご主人様」


 「ん? なんだ?」

マギアナはなんだかモジモジしている。
その姿はまるでおねだりする時のような仕草だ。

マギアナ
 「明日も……その、晩ご飯を手伝わせて頂けませんか?」


 「そりゃ重畳、寧ろこっちからお願いするぜ」

マギアナ
 「はい♪」

マギアナは俺の了承を得るととても嬉しそうに喜んだ。
その最高の笑顔は不覚にもぐっときてしまう。
くそぅ……日毎にマギアナの奴、可愛さが増している気がするぞ。

ジラーチ
 (やるわねマギアナ……さり気なく二人っきりになれる時間を手に入れたか!)

フーパ
 (無機質だったマギアナが5日であの笑顔か……やっぱり茂君は特別だよ)

シェイミ
 「……」



***



美柑
 「想定より大分寒いですね」

明くる日、最後のダンジョンである地底湖にやってきた。
私たちは薄暗い鍾乳洞を抜けて、洞窟の奥を目指した。

魚竜
 「キュウウ!」

プレシオスのような見た目の小型のドラゴンは洞窟内で頻繁に現れる。
恐らくここのボスの水竜の子供といった所だろう。
陸上では動きが鈍く、また防御力も低いから楽な相手だ。
ただ攻撃に水のブレスを使ってくるため攻撃力は高い。

伊吹
 「ホットドリンクにも限りあるから〜、なるべく早く倒さないと〜」

ホットドリンク、寒さ耐性が低いと凍え状態になり行動が鈍ってしまうため、ホットドリンクは寒さ耐性を一定時間付与してくれる消費アイテムだ。
おおよそストックに問題はないと思うけど、もうすぐボス戦と思われるので準備しておく。


 「水面だ……と言うことは!」

地底湖から水柱が上がった。
そこには体長10メートルを越える水竜が立ち塞がっている。
青紫の鱗が全身を覆う、正にプレシオサウルス……その巨体が私たちに襲いかかってきた。

保美香
 「ボディプレス!? くぅ!?」

水竜はその大きな首を地面に叩きつけると、地底湖に震動が響いた。

水竜
 「キュウウウン!!」


 「やばい! ブレスくる!」

水竜の連続攻撃、おそらく最初に行う連続行動がセットされているのだろう。
水竜はその大きな口から高水圧ブレスで私たち全員をなぎ払った。


 (ただ水のブレスじゃない……高出力ブレスってこと?)

ダメージは耐えられない程じゃない。
でも全体攻撃は厄介だ。

美柑
 「お返しだぁ!」

美柑が水竜の攻撃終わりを狙って斬りかかる!

水竜
 「キュウウウン!?」

保美香
 「いたた……防御力は然程でもないようですね」

私は防御力の低い保美香に回復アイテムを使う。
ボス戦ともなるとほぼ私が攻撃に参加する機会はない。
とはいえ今回はストレートにストロングなタイプらしく、回復が間に合うか心配になる。

伊吹
 「うーん、やっぱり竜タイプには特効ないかぁ」

伊吹は自分の攻撃ダメージを確認していた、ハンターの特性は対応内なら美柑を越える攻撃力をたたき出すけど、そうでないなら攻撃力は少し低い。

保美香
 「ま、防御力が仕事していないならわたくしでもいけますわね!」

保美香も攻撃に加わる。
三人の絶え間ない攻撃に水竜は苦しむ。

美柑
 「この程度なら、ゴリ押しでいけそうですね!」

保美香
 「確かに防御系ギミックはないようですし、攻撃は激しいですが一番分かりやすい敵ですね」

本来なら最初に挑むことも出来るボス、これで高水圧ブレスのダメージを考えると、防御ギミックがあったらうんざりしただろう。
なんだかんだで砂鮫も泥獣も全体攻撃はなかったし、防御ギミックを見つければ普通に倒せる範囲だった。
一方でこの敵はストロングスタイル、物理でゴリ押しが最適解なのだろう。

水竜
 「キュー!」

突然、水竜が鎌首持ち上げて、これまでとは違う鳴き声を上げた。
私たちは必然と警戒するが、その鳴き声の意味はすぐに知った。

魚竜
 「「「キュウン!」」」

保美香
 「ちょ!? 雑魚呼び!?」

なんとボスが道中で雑魚として出現した小型魚竜を呼び寄せる。
それは予想外で、想像以上にストロングな戦いたいを要求しているらしい。



***



ジラーチ
 「一応増援は最終戦時限定行動」


 「選択系で戦う順番で強くなるのか」

明くる日、いよいよステージ3のマスターアップにかかっているジラーチと一緒に俺たちは茜の様子を窺っていた。
茜たちは雑魚の処理に手間取っているみたいだな。


 「つまり、水竜を一番目に設定していたら増援はなかった訳か」

ジラーチ
 「加えて最初なら、出現時の高水圧ブレスも撃ってこない」

それは逆に言えば、砂鮫も泥獣もパワーアップしていたかもしれないって事か。
因みに泥獣は乾燥時間が短くなっていく仕様、砂鮫も高難易度だと取り巻きの雑魚が増える仕様だったようだ。


 「まぁでも……茜たちの敵じゃなさそうだな」

ジラーチ
 「理不尽には設定していない。ちょっと辛いけど、ギミックは無いしレベルを上げて物理で殴れば勝てるよ」

そういや、シンプルっていうか、このゲーム派手な必殺技とかないよな。
なんというか、砂鮫はドス○レオス、泥獣は○ルボロス、んで水竜が○ノトトスだから、まるで○H2〜○H3位の地味さか。

ジラーチ
 「派手さはステージ3から解禁、厳密にはステージ2のクリア後だけど」

このゲーム進めるごとに、仕様が解禁していくようだな。
ステージ1はシンプルにパーティ戦闘を廃止したタイマンスタイル。
ステージ2は一気にパーティプレイに変わり、敵も必然的に多数で攻めてくる。


 「そしてステージ3は更なる拡張ってことか」

ちょっとずつゲームシステムも複雑に、そして楽しめる快感を広げるか。


 「コーンポタージュ、おかわりいる?」

ジラーチ
 「もらうわ」

俺はいつも通りジラーチのためにコーンポタージュを注ぐ。
保温ポッドを持ち込んだため、作戦司令室でもコーンポタージュを入れられるようになって少し便利になった。

ジラーチ
 「水竜撃破……これで竜巻フラグ解除ね」


 「お……倒したか」

モニターには苦労しながらも水竜を倒した4人が映っていた。
既に茜と保美香がピンチだが、まぁ勝利すれば問題ないだろう。


 「これ全滅したらどうなるんだ」

フーパ
 「そして、彼らは星となった」

ジラーチ
 「いや、普通に拠点に戻されるだけだから」

突然後ろにフーパが出現する。
イベントシーケンスが進行した事で気になっているのかも知れない。
とりあえず美食戦隊薔薇野郎はご遠慮願おう。

フーパ
 「さぁていよいよセカンドゲストの登場って訳か!」

フーパは手を叩いてその時を待つ。
既にゲストはオアシスの街に待機しているようだ。
第2ステージのボスとして……。



#5に続く。


KaZuKiNa ( 2019/05/04(土) 09:14 )