突然始まるポケモン娘と○○○する物語





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突ポ娘 special
SP03

#3



ちびっ子たちと共同生活を初めて2日目、現実時間はどれ位経過したのかも分からない。
ただ、長く滞在することだけは覚悟しないとな。

ガチャリ。

朝、静かな城に音が響いた。
最上階の部屋の扉が開かれるとマギアナが静かに入室する。

マギアナ
 「ご主人様、朝です……どうか起きてください」


 「ん〜? ちょっと待って」

マギアナの声は澄んでいて、俺の耳にもよく通る。
俺は眠たい目を擦り起き上がろうとはするが、やけに身体が重い。

ジラーチ
 「んん、マギアナ……邪魔しないで」

シェイミ
 「少し眠いでしゅ」

マギアナ
 「? ご主人様?」

……少しだけ思い出してきた。
昨日の夜、部屋にいたのはジラーチとシェイミだった。
シェイミもまた一緒に寝たいとベッドに川の字で眠ったのだ。
それが気が付いたら二人とも寝相が悪く、俺の上に重なっている。
その中でも特に面倒くさいのは。

フーパ
 「う〜、今何時?」

マギアナ
 「6時です」

ジラーチ
 「何処のおじいちゃんよ……早すぎる」

マギアナ
 「日が昇ったら起きると教えられましたが違うのですか?」


 「現代人的にはな……」

俺の上を制圧するジラーチシェイミ、そしてフーパ。
フーパは深夜リングを通って俺の上にダイビングしてきたのだ。
そのまま寝る場所を探してフーパは俺の股間付近に寝場所を選んだ。
流石に全員が寝るにはベッドが圧倒的に小さい。


 「朝ご飯食べたい人は起き上がりなさーい」

フーパ
 「よーし! 今日もファイトー!」

ジラーチ
 「いっぱーつ?」

飯という言葉に即反応したのはフーパだった。
とりあえず一番食い意地の張ったフーパは早速ベッドから飛び立つと身体をぶんぶん振り回して準備運動を行う。
ジラーチも一応食べたいのか、ゆっくり起き上がった。


 「よいしょ、おはよう皆」

マギアナ
 「おはようございますご主人様、昨晩はお楽しみだったようですね」

ジラーチ
 「は、はぁ!? なんでこんな変態と楽しまないといけないのよ!?」

何故か過剰反応したのはジラーチだった。
俺も突っ込もうかと思ったが、ジラーチの剣幕の前に黙ってしまう。

フーパ
 「まぁいきなり4Pは勇気いるしな!」

マギアナ
 「4Pとは?」

ジラーチ
 「知らなくていい! まったく……大体こんな大きな物、挿るわけないじゃない……」

そう言ってジラーチは顔を真っ赤にしながら俺の股間に注目した。
……それはできればちみっ子たちには見せたくなかったのだが。

フーパ
 「へぇそれが朝勃ち?」


 「子供がそういう言葉使っちゃいけません! ていうか……シェイミよく眠るなぁ」

騒ぎも全く我関せず、スゥスゥ可愛らしい寝息を立ててシェイミはベッドに埋もれていた。

ジラーチ
 「はぁ……フーパ、シェイミを庭園に」

フーパ
 「ま、しょうがない」

フーパはシェイミの真下にリングを出現させるとシェイミをボッシュートしてしまう。

フーパ
 「ふ、魔王城に寝ぼすけな奴はいらん」


 「○スラー総統かよ」

とりあえず庭園の方でドサッという音がした。
何気にシェイミって大人しいけどフーパ以上にフリーダムだよな。

ジラーチ
 「さて、朝ご飯が出来るまで作戦司令室にいるわ」

フーパ
 「アタシも出かけてくるー!」

朝が始まると皆忙しいな。
フーパはリングを通って何処かに消えると、ジラーチも部屋を出て行く。

俺は部屋でゆっくりと背伸びした。

マギアナ
 「ご主人様、よろしければお着替えお手伝い致しましょうか?」


 「着替えって、そもそも替えの服なんてないんだが」

マギアナ
 「心配いりません、そうかと思いこちらで容易致しました」

マギアナはそう言うと部屋の奥にいつの間にか置かれていたクローゼットを開き、衣類をベッドに並べ始める。


 「ちょっと待って……ラインナップおかしくない?」

マギアナが喜々として並べたのはどれも時代錯誤したものだった。
どう見ても中世ヨーロッパの王様が着てそうな派手な服、燕尾服はまだマシな方で、どれも現代的なそれとは異なる。


 (フーパに頼んで家にある奴送って貰おう)

とりあえず俺が着ても違和感なさそうな服が一つもない。
人間社会で過ごした訳ではないマギアナは今もセンスが16世紀のそれのようだ。
用意してくれたのは嬉しいが、俺はそれを全部クローゼットに片づけて貰うと、朝ご飯の用意に向かう。



***




 「おはよう」

朝、宿屋で一泊した私たちは皆一斉に目を覚ましていた。
恐らくゲームの仕様だと思われるが、寝床を出て宿屋の外に出ると何かイベントが進行したのを確認出来た。

美柑
 「なんだか慌ただしいですね」

伊吹
 「なんだか武装したNPCが増えてる〜」

村には昨日まで精々10人程度しかいなかったはず、しかし今は倍にまで増えている様子だ。

保美香
 「失礼、これは一体何が起きたのでしょうか?」

保美香は近くにいた肌の黒い青年に声を掛ける。

青年
 「モンスターがオアシスの街アブラハムを占拠したんだ! 俺たちはハンターギルドに撃退を依頼したんだが、歴戦のハンターでもオアシスの街の前に立ち塞がる竜巻に阻まれ、中に入れない!」

保美香
 「なるほど……大きく動きましたわね」


 「つまり砂漠編……クリア条件はオアシスの解放ってこと?」

美柑
 「なら早速向かいましょうよ!」

伊吹
 「いや〜、どう考えても竜巻に阻まれるでしょ〜」

美柑としてはさっさと攻略したいのだろうけど、あからさまに直ぐにはいかせてくれないのが分かる。
とりあえず情報収集して、攻略を考えないとね。

保美香
 「皆さん手分けして情報を集めましょう」


 「ここまでの流れを考えれば、必ず攻略のヒントはあるはずだからね」

私たちは頷くとそれぞれ動き出した。
ここからはチームで戦うという事は、これまで程シンプルにはいかないだろう。



***



シェイミ
 「……ふっかーつ!!」

朝、突然庭園に落とされたあたしはグラデシアの花を嗅いでスカイフォルムに変化した。
こうなればあたしのテンションは無敵だ。
翼を広げると城の周辺を飛翔する。

シェイミ
 「よーし! 今日も元気!」

あたしは自分の身体の調子を確認すると庭園に降りる。
庭園の花畑は全部偽物だけど、一区画だけ本物が咲いている。
あたしのためにフーパが用意してくれたグラデシアの花。
私は一輪だけグラデシアの花を頂くと、それを持って城の3階に飛び込む。
厨房では、作業の音が聞こえた。



***




 「ふんふんふーん、ベーコンエッグは朝の定番〜♪」

シェイミ
 「おっはよー! お兄!」

突然後ろで扉が乱暴に開かれた。
俺は驚いて後ろを振り向くと、フリーダム娘シェイミがいた。
スカイフォルムになると色々豪快、テンションも高くて声も煩い。
よくもまぁここまでフォルムチェンジで性格が変化するものだ。


 「おはようシェイミ、とりあえず適当にしていろ」

マギアナ
 「そろそろジラーチをお呼び致します」


 「おう、こっちもそろそろ完成だからな」

マギアナはそう言うと頭を下げて、粛々とキッチンを出て行った。
残ったシェイミはその後ろ姿を見ながら呆けていた。

シェイミ
 「どうやったらあんなお姫様みたいになれるのかな〜?」


 「マギアナは少し時代錯誤というか、天然な所があるけどな」

ワガママで俺様主義のフーパ。
ダウナー気質で、自己主張のないジラーチ。
生粋の良い子ちゃんだが、どこかズレた行動が目立つマギアナ。
そして陰と陽、その二面性も我が道を行くフリーダムなシェイミ。

全員個性的過ぎて類似が見当たらないんだよな。

シェイミ
 「お兄! アタシも料理してみたい!」


 「ならば後ろで見ていてやるからベーコンエッグを完成させて見せよ!」

シェイミ
 「押忍! 任せてシショー!」

シェイミはそういうと嬉しそうに俺の前に立ってフライパンに向かい合った。
陽のシェイミはなんていうか美柑を超明るくした感じで、露骨にスポーツ系後輩って感じなんだよな。


 「最初の難関は卵だぞ、上手に割れるか?」

シェイミ
 「大丈夫! やれるさ! 出来るって信じれば、空だって飛べる!」


 「いやお前飛行タイプだし……てうぉい!? 何卵握りつぶしているんだー!?」

シェイミの奴、力み過ぎて卵を粉砕してしまう。
当然手はぐちゃぐちゃでフライパンは滅茶苦茶だ。
俺は慌ててフライパンを火元から離そうとするが。

シェイミ
 「大丈夫! まだいける!」


 「無理だから! 何を根拠にしているのっ!?」

シェイミ
 「諦めたらそこで試合終了だよ!」


 「先生、バスケがしたいです……!」



***



フーパ
 「さーて朝飯〜♪」

朝7時には全員で朝飯となった。
俺も不器用だが、俺以上の不器用がいるとは思わなかった。
当然だが、全員(フーパ除く)がある皿に注目した。

ジラーチ
 「なんでシェイミだけスクランブルエッグなの……?」

シェイミ
 「あははは! 料理って楽しいね! 大成功だよ!」


 「大失敗に決まってるだろうが! お前は嫁のメシマズかーっ!?」

あれから俺とシェイミは大乱闘みたいになってしまい、結局スクランブルエッグで妥協したのだった。
シェイミはそれでも笑って食べているが、俺は誓った、奴は厨房出禁だ。

フーパ
 「ベーコン美味ぇ、黒ペッパーが合う〜」

ベーコンエッグは食パンの上に載せた。
所謂○ピュタでお馴染みの食べ方だ。
都合シェイミだけがもはや白身と黄身の境がない状態だが、まぁ多分殻が混じっているし、他には食べさせられんな。
マギアナとジラーチも行儀良く食べている。


 (茜たちは元気にしているかな)

俺は可もなく不可も無いベーコンエッグパンを食べながら茜たちに思いを馳せた。



***



美柑
 「皆さん、集めた情報を纏めましょう」

伊吹
 「竜巻の原因は〜、砂漠に潜む3匹のモンスターが怪しいみたい〜」

保美香
 「それぞれの出現分布と地図も頂けましたわ」


 「気になるのは竜巻を通過した人間を見たって話」

情報を纏めると、まずオアシスの街を解放するためには竜巻を消さないといけない。
その鍵は恐らく三体のボス。
全て倒せば恐らく竜巻は消え、オアシスの街に突入可能になると思われる。
気になるのは二人一組で行動し、砂漠の色んな場所で目撃されている謎の冒険者か。

保美香
 「まぁ間違いなく二人組の方は後のボスでしょう?」

伊吹
 「ここまで情報を集めれば充分だねぇ〜、とりあえず準備して一つ一つ潰していこう〜?」

美柑
 「潰すなんて、伊吹さんから聞くとは思わなかった……」

保美香
 「ゲームの中では遠慮も呵責も必要ないですからねぇ」


 「地図にマークもついたし、最寄りの場所に行こう?」



***



拠点は砂漠の入口にある。
私たちはそこから真っ直ぐ北上、通称竜骨通りと呼ばれるエリアを目指した。
その間にも私たちは多くのモンスターに襲われる。
特に厄介なのがサンドリザードの麻痺攻撃。
私たちの装備では麻痺を防ぐ事が出来ない。
ゲームの中だから心肺停止したりはしないが、確率で何も出来ないのは危険すぎる。
幸いサンドリザードは確率で麻痺直しをドロップしてくれるため、それでなんとかしているがなるだけ出現したら早めに倒すしかない。

保美香
 「うーん、なんか現状では意味の分からないアイテムが結構ドロップしているわね」

保美香がシーフのお陰でアイテムドロップ率がいい。
でも一匹のモンスターに4種類位ドロップアイテムが設定されているらしく、完全な売却アイテムや消費アイテムは分かるが、それ以外が不明だった。

保美香
 「生肉は獣系モンスターに有効みたいでしたし、なにか意味があるんでしょうけどねぇ」

例えばサンドリザードはたまに爪をドロップする。
この爪、装備できる訳でもなく消費アイテムでもない。
現状では全く用途不明なのだ。

美柑
 「それにしても巨大な骨ですね」

美柑が空を見上げると、そこには骨で出来た屋根がある。
竜骨……と言ってもそれは規格外な大きさで、体長1kmはある。
その大きな肋骨は地上に影を作り、暑さを和らげてくれる。
竜骨通りの名の由来はこの巨大な生物の骨だ。
そして私たちは目の前に目的のモンスターを見捉えた。

砂の大地を泳ぐもの、それは切り裂くような背びれを持つ。
現地では砂鮫と呼ぶそれは私たちに接近すると飛び上がった!

砂鮫
 「キシャァァァ!」


 「ガブリアスをリアルにして更に禍禍しくした感じ?」

全員が散開すると、砂鮫は大きく砂を巻き起こして再び砂の中に潜り込んだ。

美柑
 「これ、攻撃するだけでも厄介ですよ!」

保美香
 「確かに……砂に潜られては手も足も出ませんし……」

砂鮫は背びれだけを出して、砂の中を泳ぐ。
顔を出した時を狙って攻撃するにしても簡単じゃない。

伊吹
 「なにかアイテムを使うとか〜?」

私はアイテム一覧から吟味するが、有効そうなアイテムが分からない。
そもそもこのゲーム無駄にアイテムが多い!
一応アイテムは分類分けされており、売却専用はちゃんとアイコンで分かるが、一部本当に用途不明もあるし、ややこしい。

伊吹
 (うー、正攻法ではこの人数でも厳しい……とすると鍵はなにか?)

保美香
 「きゃあ!?」

保美香が砂鮫の刀のようなヒレの一撃を受ける。
急がないと全滅もあり得る。

伊吹
 「皆移動! あそこまで!」

伊吹が指差したのは100メートルほど離れた場所だった。
とにかく絶体絶命な以上なんでもやるしかない。
私たちは全力で走り、砂鮫はそれを追う。
私たちはダメージを受けながら、なんとか目的の場所にたどり着くと、砂鮫の攻撃が止んだ!

伊吹
 「岩盤の上なら砂鮫も潜航出来ないよね〜」

美柑
 「そうかこれなら!」

砂鮫
 「キシィィィ!」

砂鮫は潜航を止めて、その大きな身体を光の下に晒す。
二足歩行で立つところは正にガブリアス。
出てくるゲームが違えば、大きく見た目も異なるが基本コンセプトが同じだと、多少似るね。

美柑
 「はぁ!」

ザッシュウ!

伊吹
 「たぁ!」

美柑と伊吹の連携攻撃が砂鮫を苦しめる。
向こうのパワーは強いけど、私は回復アイテムを使って皆をサポートする。



***



ジラーチ
 「砂鮫に対する解法としては正解、結構難しいと思ったけど直ぐに気付いたね」


 「流石伊吹、攻略法はアイテムだけとは限らんとはな」

俺たちは作戦司令室で茜たちの戦いをモニターしていた。
茜と保美香が回復に回り、美柑と伊吹が攻撃して、確実に砂鮫のライフは減っている。


 「因みにお前の想定していた倒し方って?」

ジラーチ
 「店売りの花火玉で、砂鮫をスタンさせてボコスカタイムで速攻撃破」

こっち側からなら仕様が分かるのだが、砂鮫は音弱点、そして花火玉は火音属性の攻撃アイテム。
砂鮫は弱点を突かれると地表でのたうち回り、暫く何も出来なくなる。
都合目が退化して見えないため、耳がとても強化されたから敏感すぎて大きな音が弱点という設定だが、流石に誰も気付かなかったようだな。


 「砂鮫って時点でドス○レオスなんだから音弱点って気付いていればなぁ」

茜たち○ンハンはプレイした事ないから、どうしてもイメージがガブリアスに寄って音弱点のイメージが持てなかったのだろう。
まぁとはいえ無事茜たちは砂鮫の撃破に成功した。

ジラーチ
 「次は泥獣か、水竜……」


 「流石にアイツらも一旦拠点に戻ると思うがな」

ジラーチ
 「そうしてくれるとこっちも想定通りだから良いんだけど」

ジラーチは現在進行形でステージ3を制作している。
どうやらステージ3は海が舞台のようで、多くの島を創って、そこにイベントを設定したり大忙しだ。
ジラーチとしてはなるべく攻略に手間取って欲しい訳で、その間に必死でマスターアップまでこぎ着けないといけない。


 「なんかリクエストあるか? あるなら作って持ってくるぞ」

ジラーチ
 「……じゃあコーンポタージュ」


 「気に入ったのか?」

ジラーチ
 「なんか私のイメージカラーに合うというか……」

確かにジラーチの髪の毛はコーンと同じ色だ。
星のような帽子、目元のティアドロップ型の模様、ジラーチの姿はシンプルなものだ。


 「じゃ楽しみに待ってるべし」

俺は作戦司令室をでると、1階に登る。
この城、妙なことに3階に崩落した部屋があったり、妙な場所があるんだよな。
そんな中全く汚れもなく綺麗なのは庭園だ。
俺は庭園に目を向けるとシェイミを見つけた。
シェイミは嬉しそうに花畑に水を撒いていた。

今の姿はスカイフォルムのシェイミ、何事も失敗を恐れないアッパー系少女だが、今は優しい微笑みで花々を愛でている。

フーパ
 「よぉ茂君! そんなに花を愛でる少女が好き?」


 「フーパか」

フーパは何処から音もなくリングを出現させると俺の首元に抱きついた。
フーパの奴、頻繁に出かけるが何処に行っているんだろうな。

フーパ
 「シェイミの奴、相変わらずレプリカだってのに花に水やりか」


 「それだけ花が好きなんだろう? 草タイプだし当然じゃないか?」

フーパ
 「本当にそれだけだと思う?」

フーパはいじらしく俺の耳元でそう呟いた。
フーパの時折見せる妙なエロさにドキリとしながらも、俺はフーパの言葉の意味を考える。

フーパ
 「いいこと教えてあげる。シェイミはフォルムチェンジしても性格が変化することはない、だとすると彼女はどうなってるのかな?」


 「まさか二重人格……?」

フーパは俺から離れると、リングを呼び出しそこに飛び込んだ。

フーパ
 「まぁどうしても気になるなら真摯に付き合ってみれば? 感謝ポケモンの意味を知りたくない?」

フーパは顔だけをリングの外に出し、それを言うとリングの中へと消えていった。
シェイミ、分類は感謝ポケモン。
シェイミは誰に感謝し、そして誰がシェイミに感謝するのだろう。
なぜ、シェイミに与えられたのは『感謝』なのか。


 「コーンポタージュ、急いで持っていかねぇと」



***



マギアナ
 「FAプランですか?」

私は突然現れたフーパに一枚の計画書を見せられた。
そこに書かれていたのは計画の概要と一枚の絵。

フーパ
 「マギアナは厳密に言うならソウルハートが本体だろう? そしてソウルハートがマギアナのボディをボディだと認識しているから動くわけだ」

……言葉の意味が半分分からないけど、フーパの出した意味は何となくだが理解できた。
FAプラン……正確にはフルアーマープラン。
イラストには私の全身を覆う装甲、両手で持ってもなお大きいライフル、更に重量増加による機動力低下を補うための各種ブースターの増設にプロペラントの新設。
通常のポケモン娘では重量にも、そこからでる機動性の負荷にもまず耐えられない。
でも私のソウルハートがフルアーマーを身体の一部と認識すれば、私はこの無茶苦茶な計画をクリア出来ると言う。

フーパ
 「更にこのページを見て欲しいんだよなぁ!」

更に計画書を開くと、そこには更なる発展プランFAAA計画書とある。
full Armor advanced action計画……ブースターを中心により大型化、更に機動性の増加プラン。
そのイメージイラストもはや人型のシルエットではない。
体長は4メートルを越え、全ブースターの点火時には時速2.000kmに到達すると企画書にはある。

フーパ
 「格好いいだろ!?」

マギアナ
 「分かりません……と言うか過剰過ぎませんか?」

はっきり言えば、見た目は好ましくない。
変形すれば完全な球、これはお父様が私に施してくれた完全なる美。
この計画では変形は不可能で、造形は左右非対称だし、無骨で美しさの欠片もない。

フーパ
 「○ームズフォートも破壊できそうなのに〜」

マギアナ
 「まず私は芸術であり、兵器ではありません」

私はポケモン娘になっても自身の身体には誇りがある。
お父様は愛情を込めて金属を削り、滑らかな光沢を生み出し、500年経っても動き続けるギアは寸分の狂いもなく美しい。
経年劣化でさえも、私から色は失われたがそれも時の色であり、私は微笑ましい。

フーパ
 「茂君も男の子だし、絶対喜ぶと思うんだよなぁ」

マギアナ
 「ご主人様が!?」

少しだけ心が揺らいだ気がした。
ご主人様が喜んでくれるなら……しかしこれはお父様の造形を否定し……。
私は悶々と考えてしまう。

フーパ
 「というかマギアナって制作者とご主人様ならどっちが好きなの?」

マギアナ
 「……ご主人様です」

御免なさいお父様、ご主人様は特別で、心が好きだと言っているんです。
今は叶わぬ恋かも知れない、でも恋が私を輝かせるかも知れないから。

マギアナ
 「す、少しだけなら」

フーパ
 「マジで!? オッケー! じゃちょっと受注してくる!」

そう言うとフーパは直ぐにでもリングに飛び込んでしまった。

マギアナ
 「受注って……誰になんでしょうか?」

本当にフーパは不思議な子です。
きっと友達も多いのでしょうけど、不思議な友達ばっかりです。
大体計画書のイラストも誰が書いたのか……出来ればもっと可愛い方が良いのだけれど。
このままでは右手にパイルバンカー、左手にガトリング、頭部にヒートホーン、両肩にクレイモアが付いてしまいそう。
ああ、そして私のあだ名は鉄屑に……少しだけ憧れます。



#4に続く。


KaZuKiNa ( 2019/05/04(土) 09:13 )