突然始まるポケモン娘と○○○する物語





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第三部 突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語
エピローグ 帰ってきた日常に

突ポ娘シリーズ 第1作 茂と茜編



突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語

エピローグ 帰ってきた日常に


世界を賭けた戦いが終わった。
あれから少なくとも俺の周りで、そんな面倒なことは起きていない。
そして新年も迎え、俺たちの平穏は続いている。

フーパ
 「グーグー……」

ジラーチ
 「んん……」


 「……カオス」

正月の三箇日も終わって、俺は仕事前の朝、昨日もどんちゃん騒ぎした事を思い出す。
リビングではフーパが大の字でグースカ眠り、ジラーチはソファーで毛布を掛けられている。

保美香
 「おはようございます、だんな様」

マギアナ
 「茂様、飲み物は如何致しましょうか?」


 「おはよう、それじゃコーヒー」

さも当然というようにマギアナもエプロンを着けてキッチンに立っている。
後はシェイミとマナフィがいるが、リビングには見当たらないな。


 「パルキアは昨日旅立ったんだっけ……」

年末年始は兎に角忙しかった。
年内2回の警察へのお世話も重なり、謹慎処分を受けるし、家に居る奴も増えるから大変だ。

保美香
 「どうぞ、コーヒーですわ」


 「おう、いつもありがとうな」

俺はテーブルに座ると、コーヒーカップを手に取る。
クソ寒いこの時期は暖かいコーヒーが嬉しいな。

美柑
 「ただいま帰りましたー、あれ? 主殿もう起きたんですか?」

時間は6時、ウチの朝としては異例に早いか。
美柑はいつものように早朝ランニングを終えたようで、冷蔵庫に向かった。


 「休みが続いて暇なんでな」

それでも明日から仕事に出る手筈だ。
今のうちに日頃の調子を取り戻さないとな。

フーパ
 「んん……ふぁ! もう朝〜?」


 「よう、おはようフーパ」

フーパ
 「おはよう……お腹空いた」

フーパは寝ぼけ眼を擦ると立ち上がる。
リングから何かを取り出すと、それは湯気立つ肉まんだった。

美柑
 「便利な能力……」

フーパ
 「ふひひ♪ こういう能力だからね♪」

フーパは肉まんを直ぐに食べ終えると、近くで寝ていたジラーチにターゲットを合わせる。

フーパ
 「起きろジラーチ! スターライトボディープレス!」

そう言うと月面飛び三回転捻りを加えて、ジラーチにトペを敢行した。

ジラーチ
 「ぎゅ!?」

当然ジラーチは目を見開く。
ジラーチはフーパの顔を睨みつけると。

ジラーチ
 「表に出ろ……! ぶっ殺す……!」

相変わらず可愛い顔に反して物騒な言葉を使うやさぐれジラーチだが、本質は優しくて気遣い上手な事を知っている。

フーパ
 「フハハ! あたしより長寝するから悪いのだ!」

俺はそんなフーパとジラーチのじゃれ合いを微笑ましく見る。
こうしていると本当に子供その者で、触れ合い方も仲の良い親友のそれだ。
なんて言うか学生の修学旅行を思い出すな。

そして、皆も起き始めるとやや早めの朝ご飯は始まった。



***




 「出て行くのか?」

フーパ
 「まぁね、いつまでもお世話になるのも問題だし……それにアタシたちは居るだけで茂君に迷惑かけるしさ」

フーパは味噌汁を吸いながらそう言う。
それを聞いた他のちびっ子達も寂しそうだ。

ジラーチ
 「まっ、定住できないのは幻のポケモンの定め」

ジラーチも鮭を突きながらそう言った。
確かにフーパやジラーチはその存在価値は計り知れない。

マナフィ
 「まぁでもシェイミとマギアナはこっちに残っても大丈夫やで」

シェイミ
 「大丈夫なんでしゅか?」

マギアナ
 「ですが、私もそう何日もお世話になるわけには……」

華凛
 「ふ……遠慮するな」

美柑
 「そうです、いつまでも歓迎しますよ」


 「お前らな……まぁ俺も別に良いんだぜ、勿論フーパ達もな」

俺は家主の意見も聞かん奴らに苦笑するが、実際フーパ達を迷惑とは思っていない。
ただ、本来はゲスト……居なくなるのは宿命か。

永遠
 「……私も少しだけ家を外すわ」

保美香
 「あらあら? それは一体?」

永遠
 「アルセウスを探す……! 真相を突き止めるの」


 「真相……」

黒幕はアルセウスだったのか?
それは結局分からなかった。
もしもアルセウスが真の黒幕だとして、この結果にどんなメリットがあったのだろう。


 「私が思うに恐らく最初のイレギュラーはアルセウスだったんじゃないかな? 彼女はこの世界を望んでいた節がある」

永遠
 「だとしても躍らされた慰謝料は取り立てたいわね」

永遠はそう言うと素早く御飯を口にかき込んだ。

永遠
 「ご馳走様! 早速出るわ!」

永遠はお茶碗をテーブルに置くと、早速出かけていく。


 「忙しい事だ……そう言えば新法案どうなったんだ?」

急速に増加したPKM、対応は火急に迫られていた。
その結果、日本ではPKM法の改正案が提出された。
改正案は十分な習熟が必須だが、PKMに一部の労働権が解放された。
更に入試と国家資格さえ得ていれば、PKMが学校に行けるようになったのだ。

美柑
 「ボクも働いてお金稼ごうかなぁ?」

保美香
 「貴方じゃ資格の方が取れないんじゃないかしら?」

しかし労働につくと当然納税の義務もついてくる。
保険の適用もあるし、何より一般教養の試験を受けて、働けると認められないといけない。
華凛と凪はポケにゃんの面々と近日試験を受ける予定だ。
通れば正式に正社員として働けると言える。

華凛
 「伊吹も試験を受ければまず合格じゃないか?」

伊吹
 「でも〜、アタシに出来る仕事って何かなぁ〜?」

フーパ
 「そりゃ、ソープ嬢……」

ジラーチ
 「風俗ダメ、絶対!」

マナフィ
 「じゃ裏ビデオで……タイトルは素人超乳ヌルヌル嬢伊吹!」


 「家主が命じる、お前ら風俗は絶対に認めん! それ以上口を開くなら今すぐ出て行って貰うぞ」

伊吹
 「じゃ〜、茂君限定にしとくね〜」

マギアナ
 「茂様にはするのですか?」

伊吹はたまに冗談の区別がつかない時がある。
今回もそうだ、本気で羞恥心のない伊吹はやりかねん。

フーパ
 「ま、家主も言っているし……そろそろ旅を再開しますか」

フーパもまたそう言うと箸を落とす。
それを見て、先に食べ終えたジラーチがお茶を飲み干す。

ジラーチ
 「皆、世話になったわね」

マナフィ
 「さってと、次は常夏の海がいいねぇ」

フーパがリングを開くとジラーチとマナフィも立ち上がり通っていった。


 「……何時でも遊びに来ていいからな」

フーパ
 「はは♪ そう言うこと言われると涙が出そうだよ……でも泣かない、シーユーアゲイン♪」

そして、フーパも消えた。

シェイミ
 「あたしは……もう少しだけ」

マギアナ
 「私も行き先を見つけるまでは、居候させていただきます」

シェイミはランドフォルムだととても不安そうだ。
一方でマギアナはもう独り立ちしている気もする。
少なくとも家事をするし、いつ出て行っても問題ないだろうな。


 「徐々に日常に戻っていきますね……」

茜は一番最初に食べ終え、湯気が出る程熱いお茶をゆっくり飲んでいる。


 「寂しいか?」


 「寂しくないと言えば嘘に……でも、ご主人様と一緒だから」

茜はもう哀しい顔はしていない。
ただ日々に安堵している。
王の責務を終えて、一人の少女として改めて歩む。
未だその正体を知るものには敬われもするが、今度こそ茜も幸せに歳を取って墓に入るだろう。


 (この当たり前の生活が如何に貴重か……俺は思い知った)

そしてそれを享受することの難しさも。
だからこそ守らなければならない。
俺もこの家の主として皆を護る、より一層決意を固めた。



***




 「このまま雲隠れかしら?」

ギラティナ
 「ヒガナ?」

私は暗闇の脇道でヒガナと遭遇する。
まさか遭遇するとは思わず、私は純粋に驚いた。
ヒガナは遭遇したからと言っていきなり抱擁したりとかはしないが。

ヒガナ
 「組織の後始末を任された時はこうなると予想していたけど、宛はあるの?」

ギラティナ
 「ある訳ない……まぁなんとかするよ」

ホームレスに混じって生活することも出来るし、生きるだけならそんなに難しくはない。
だが、ヒガナはサングラスを外すとニッコリと笑い。

ヒガナ
 「私とバディを組まない? 私も貴方とならいい仕事が出来そうなのよね」

ヒガナは一匹狼だ、だからこそ、その言葉に私は驚いた。
一応ルザミーネという女と親交があるらしいが、仕事次第では敵にもなるし、本人もなるべく接触を控えているようだ。
ただ妹のようだとは言っていたし、案外陰日向で見守っているのかも。

ギラティナ
 「ふふ……日陰者同士組むのも悪くないか」

ヒガナ
 「オーケーティナ! それじゃ最初の仕事に取りかかろうかしら?」

ヒガナはそう言うと一枚のプリントを投げてくる。
それは依頼書の用だが、ヒガナは何せ精確な所属も分からないほどミステリアスなエージェントだ。
私はプリントに目を通すと。

ギラティナ
 「いきなり暗殺? この羽黒……なんて読むの?」

ヒガナ
 「ゲーチス・ハグロ。今はまぁ小物ね……ただ目障りと思っている組織も居るみたい」

ギラティナ
 「訳ありか……私も同じ穴の狢だけど」

羽黒なんとかさん、運がわるいと思って貰うしかないかしら。
しかしヒガナはさっきから肩で笑い、私は意味が分からなかった。

ヒガナ
 「ぞれ、私に対するトラップよ」

ギラティナ
 「え? どういうこと?」

ヒガナ
 「ハグロは餌、本命は私……私もそれなりに恨みを買ってるからね……露払いを頼むわ」

世界最高のスパイとも言われるヒガナは兎に角敵が多い。
しかしそれら罠に一度も掛からず今日まで生き残った嗅覚こそが彼女の最強の武器なんだろうな。
ある意味この依頼を出した人間こそが一番不幸なのかも。

ギラティナ
 「オーケー相棒、それじゃやってみますか」

どの道光の道に戻る資格なんてない。
それならヒガナと闇の道を行くのも悪くないだろう。
この手を血で染めた最初は怖かったけど、今は慣れた。
結局これが似合うんだろう。



***



エムリット
 「私達……どうする?」

アグノム
 「爆弾だった私達が生き残るなんて予想外だし……」

戦いに生き残った私たちは最初こそお母さんと一緒だったけど、お母さんは一人で行っちゃった。
お母さんは本当に私達を愛してくれていた、だから本来の使い道である爆弾としての使用も心を痛めてくれた。
そんなお母さんの最後の願いは光の道に行って貰うことだった。

ユクシー
 「収容所に行くのが最も安全だけど……」

ユクシー姉さんの冷静な判断、しかしエムリットが露骨に嫌がる。

エムリット
 「でも、脂ぎっしゅな中年のロリコン親父に引き取られたら嫌だなぁ〜」

ユクシー
 「普通に拒否すれば良いじゃない」

エムリット
 「アグノムはいいよねぇ。もうフラグ立てたんだから」

アグノム
 「えっ?」

エムリット姉さんが突然茶化してくる。
私は戸惑うと、ユクシー姉さんが溜息を吐いた。

ユクシー
 「常葉茂……あのフラグ折るのは姉さん的にもオススメ出来ないわね」

アグノム
 「わ、私はそんな事は……」

エムリット
 「耳まで真っ赤で、説得力ないよ!」

私は茂さんの顔を思い出すと、恥ずかしくて死にたくなる。
胸に抱きかかえられた温もり、クッキーを美味しいと言ってくれたときの喜び、そして生きてもいいと言ってくれたときの嬉しさ。
でも……きっと迷惑かける。

ユクシー
 「長女の命令、アグノムは常葉茂の元に向かいなさい」

アグノム
 「姉さん達は?」

エムリット
 「セレブ引っかけて裕福な逆玉生活ゲットだぜ!」

ユクシー
 「貴方みたいなロリっ子拾うセレブは末期ね……私は収容所に行くわ」

それぞれ、行くべき道は違うようだ。
あくまでも収容所経由ではなく、自由な出会いを求めるエムリット姉さんと当面の生活を安定させたいユクシー姉さん。

ユクシー
 「……それでも、妹のピンチなら、姉さん絶対駆けつける」

エムリット
 「まぁ私たち最強の絆で結ばれた姉妹だからね!」

アグノム
 「うん……約束、だよ?」

私たちは笑い合った。
それぞれが違う道を行く。
それでも心は一緒だ。

エムリット
 「未来で会おう! イタリアで!」

ユクシー
 「あの子……イタリア語喋れるのかしら?」

アグノム
 (それ以前の問題じゃ……)

今のPKMは海外に渡航できない。
どうやってイタリアに行くんだろう?



***



パルキア
 「やっと見つけました……アルセウス」

アルセウス
 「おや、パルキアですか」

アルセウスを発見したのは古びたお寺だった。
既に使われていなくて久しいのか、至る所が腐って穴が空いている。
アルセウスはそこを丁寧に掃除していたのだ。

アルセウス
 「気になりますか?」

パルキア
 「はい……、なぜ貴方がそのような事を」

アルセウスは破片を集めるとそれをゴミ袋に入れる。
そしてゆっくりと語った。

アルセウス
 「私とこの地の神は共に忘れ去られた神……なんとなく親近感を得ましてね」

そう言うと、そばに置いてあった木製の仏像を優しく撫でる。
よくよく見ると、この周囲はかなり綺麗に掃除されている。
アルセウスが一人で掃除したのだろう。

アルセウス
 「それで、何の用でしょうか?」

パルキア
 「あの……私と永遠の処分は……」

アルセウス
 「ほう、その名を認めましたか……。処分の方は無効です。王の言葉により神は人へと堕ちたのです」

神落ちは神への反逆だ。
だが裁く者が居なければ、意味はない……か。
誰よりも完璧な存在であるアルセウスがそれを認めるのは違和感だが、とりあえずはホッとした。

パルキア
 「アルセウスはどうしてここに……?」

アルセウス
 「ここはね、私がある男性と初めて出会った場所なんです……その男性は既にここを出て行きましたが、もう一度帰ってくるんじゃないかって……」

パルキア
 「……」

私は絶句した。
アルセウスは私達より先にこの世界に降りていた?
それこそ異端者の行為! あのアルセウスがと信じられない。

アルセウス
 「ふふ、信じました? 因みにもう妊娠してるんですよね」

パルキア
 「えええ!?」

アルセウス
 「信じるか、信じないかは貴方次第です♪」

アルセウスはそう言って上品に笑う。
こんな顔も出来たのか、今は少しだけ開放的に思えた。



***




 「なぁ茜……」


 「どうしました、ご主人様?」

俺は二人っきりで道を歩く。
街は程々に正月気分を終えて、平日に戻っている。
散歩しようと言ったのは俺の方だ。


 「お前俺のことは好きか?」


 「はい、愛してます」

茜の愛は一途で本物だ。
そして俺も時々考えた。
この考えはいつか纏めるつもりだった。


 「そのな……俺もお前のことを愛してる」

俺は顔を真っ赤にしていることだろう。
そして茜も顔を紅くした。
ただ少しだけ近く寄り添う。


 「今じゃないけど……結婚してもいいと思った」


 「え?」


 「すまん……直ぐには答えが出せん」

俺はある世界線では茜と結婚もしていたらしい。
正直、俺がここまで頑張れたのも間違いなくそれが茜だからだ。
ただ同時にそれは他の家族の亀裂になるのではないかとも思っている。
だからいつか答えを出すんだ。
例え非難されても、俺は毅然として受け入れる。


 「時が来たら……結婚しよう」


 「……はい、待ってます。いつまでも」



思えば、波瀾万丈の歴史は遂に終わった。
と言ってもドタバタした生活はこれからだって続くだろう。
茜はとても幸せそうな顔で腕に抱きついてくる。
きっと帰ったら大変だけど、俺は家族を護ると決めたんだ、絶対になんとかする。

こうして俺の突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語は終了した。



突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語


エピローグ 帰ってきた日常に 完

第3部 完


KaZuKiNa ( 2019/06/04(火) 15:53 )