突然始まるポケモン娘と○○○する物語





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第三部 突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語
第33話 それぞれの戦い その2

突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語

第33話 それぞれの戦い その2


伊吹
 「う〜、ここはぁ〜?」

アタシは気が付いたら知らないバトルドームにいた。
バトルドーム内には強い強風が吹く。
まるで暴風警報がでそうなレベルの強風がどこから吹いているのか、真上を見上げるとそこには一人の少女が空中仁王立ちしていた。

伊吹
 「え……あれって〜?」

その姿は雲のようなふわふわの髪、でんでん太鼓のような物を身に纏い、風をその身に纏う。

伊吹
 「トル、ネロス……どうして〜?」

その少女は確かに見覚えのある者だった。

トルネロス
 「おま、えは?」

伊吹
 (なにこれ……? トルネロスの目が虚ろいでいる?)

アタシは強風に耐えながら、トルネロスの持つ不思議な気配に恐れを抱く。
まるで何かに心を縛りつけられようとしているかのような不安定感。

伊吹
 「トルネロス〜! アタシのこと〜! 覚えてる〜!?」

アタシは彼女に会っている。
ある秋の台風の日、雨さえ吹き飛ばし誰かを見つめる少女がいた。
少女はこの世界にあまりにも馴染んでいなかった。
彼女には目的がある、宿敵ボルトロスとの戦いが。

伊吹
 「貴方はあの時ボルトロスと戦ったの〜!?」

トルネロス
 「ボルト……ロ、ス……! あああああああ!!!」

トルネロスの気配が変わる!
不意にランダムに吹き荒れる暴風に身体が持っていかれないように必死に耐えるが、トルネロスは人語とは思えない言葉を発して暴れ狂う。

トルネロス
 「ボルトロスと、けっちゃく、つけるまで……あああああああ!」

伊吹
 「きゃあ〜!?」

もう立っていられない!
アタシは地面に這いつくばって耐えるけど、それも何時まで持つか分からない。
やっぱりボルトロスと決着はついていない?
いや、それよりもボルトロスなんて本当にいるの?
彼女がなんの経緯でここにいるのかは分からない。
だけど、今の彼女を見て、ここが彼女の正しい居場所とは思えない!

伊吹
 「どうしよう〜……上空の彼女に手が届かない〜……」

彼女ともっと近くで話したい。
今の彼女は誰が見てもおかしいと分かる。
多分だけど、何らかの精神改造を受けたと思われる。


 「エアスラッシュ!」

突然、どこからか空気の刃がトルネロスを襲う。

トルネロス
 「くっ!? ああああ!」

トルネロスは多少怯むが、高度は下げない。
ただ風はエアスラッシュを放った少女に向かっていく。


 「お姉ちゃん! 戦うんだ! 彼女を助けたいなら!」

少女は頭から翼を生やし、髪の毛は植物の葉っぱのよう。
アオザイのような服を来たシェイミと呼ばれるPKMがアタシの前に着地する。

伊吹
 「戦う〜……」

シェイミ
 「彼女は今とっても危険だよ、強靱な精神力で耐えているけど、ダーク化したら完全に闇落ちする!」

伊吹
 「……! 分かった〜!」

シェイミ
 「それじゃ、あたしはトルネロスの動きを止める!」

シェイミは頭の翼を広げると再び飛び上がった。

シェイミ
 「あたしが相手だ! エアスラッシュ!」

シェイミはエアスラッシュを放つと、今度はトルネロスの右肩に当たり、高度を落とす。
流石に風神と呼ばれるだけあって風の防膜でダメージを軽減したみたい。

伊吹
 「うわ〜! トルネロス〜!」

アタシはトルネロスに飛びかかると、なんとかトルネロスに抱きつくことに成功する。

トルネロス
 「は、はな、せ……!?」

伊吹
 「うう〜! 絶対に離さない〜!」

トルネロスは引き剥がそうと強風を纏う。
アタシは必死でトルネロスにしがみついた。

伊吹
 「貴方は何をしたいの〜!?」

トルネロス
 「!? ボルト、ロ……!」

伊吹
 「くっ!」

アタシはトルネロスと一緒に地面に倒れ込み、トルネロスにのしかかる。
改めて間近に見るトルネロスの顔はまだ幼い。
それが今も苦痛に顔を歪めるのだ。

トルネロス
 「うあああああ!?」

伊吹
 (駄目! どうすればいいの!? このままじゃトルネロスが死んじゃう!)

その時、私は懐に暖かさを覚えた。
それは茂君の暖かさだった。
そこには茂君はいない、ただフーパに渡された琥珀色の石があるだけ。

伊吹
 (茂君? アタシに力を貸してくれるの?)

アタシは一か八かに掛けた。
その溢れんばかりの優しい力を受けて、その場に流星群を呼ぶ。

シェイミ
 「お姉ちゃん!?」

流星群はアタシもろともトルネロスを襲った。
アタシとトルネロスはその大ダメージに呻く。

トルネロス
 「かは……!? う……ここは?」

トルネロスから邪気が飛んだ。
トルネロスは不思議そうに目線を動かす。

伊吹
 「あはは〜、大丈夫〜?」

シェイミ
 「お姉ちゃん、無茶だよ! 自分の流星群を自分で受けるなんて!?」

しかもそれってアタシが庇う形でトルネロスが受ける分も受けたんだよねぇ〜。
お陰でトルネロスの方が元気そう。

トルネロス
 「お前……あの時の!」

伊吹
 「あはは〜♪ 覚えていてくれたんだ〜」

アタシはシェイミに助けられて、その場に腰掛ける。
トルネロスはアタシのダメージを見て、重苦しい顔をしていた。

トルネロス
 「何故お前が傷付く必要がある……その意味を説いたのはお前だろう……?」

伊吹
 「う〜ん、お姉ちゃんだからかな〜?」

アタシはトルネロスちゃんみたいな子がいるなら、必ず助けてあげたい。

伊吹
 「よっと……、それじゃ……アタシは先に行くよ〜」

トルネロス
 「お前……大丈夫なのか?」

伊吹
 「うふふ〜、お姉ちゃんは頑丈なの〜♪」

実際結構厳しいけど、あの時茂君の暖かさを感じた。
アタシはまだあの暖かさを忘れてはいない。
帰らなきゃ、茂君と一緒に……!



***



ギラティナ
 「破れた世界は退屈じゃなかったけど、やっぱり一人って言うのは辛かったね」


 「でも、こうやって外に出てきた」

ギラティナ
 「そう、一体どれだけの時間が経ったのかも正確には分かっていない……だけどアイツが現れたんだ」


 「アイツ……?」

ギラティナは一度溜息をついた。
そして紅茶のカップに口をつける。
それまるで語ることに覚悟がいるかのようだった。

ギラティナ
 「アイツは……」



***




 「ち……早速、罠に引っかかったか」

私は剣を構えて、その後の事態に備える。
しかし真っ先に飛び込んできたのは無骨なバトルドーム。
鉄骨と鉄板で構成された高さも十分ある、まさにPKMが戦うに相応しい。

ブゥゥン!


 「!? 後ろ!」

ガキィン!

私は即座に羽音に反応して剣を後ろに振るう。
すると後ろから私を狙った不届き者は短剣でそれを防いだ。
相手は比較的小柄、それに対して大きな透明の羽、そして飛ぶだけでもかなりの音を出す姿はテッカニンのようだ。

テッカニン
 「……ち」


 「挨拶もなしとは、失礼な奴だな」


 「シャァ!」


 「!? くっ!?」

上から何かが迫る。
最初見えたのは顔、それはサメを思わせる。
両腕に生えたカマのような腕、青い鮫肌。


 「ガブリアスか!?」

私はすかさず、ガブリアスの上からの攻撃を受け流すと距離を取る。
ガブリアスは我が祖国でも少数だが確認されている、南部にガバイトの部族がいたと思うが、ガブリアスにまで成長した者は初めて見る。

ガブリアス
 「俺はガブリアスの28」

テッカニン
 「テッカニン44」


 「ピジョットの凪だ」

ガブリアスは大柄で筋肉質な男。
一方でテッカニンは小柄な少年。
テッカニンはゆらりゆらりと空中で身体を揺らすが、トップスピードは私より上だろう。
そしてガブリアスの方はパワーとスピードを兼ねる、唯一の救いは地龍だということか。


 「いざ、推して参る!」

私は剣を両手で構えて空中からテッカニンに斬りかかる。

テッカニン
 「鬱陶しい……!」

私は飛行タイプ虫タイプと戦い慣れている。
戦闘機動で私より速い相手もいくらか見てきた。
ゆえに、戦い慣れた飛行タイプを先に始末する!

ガブリアス
 「テメェ! 俺を無視して44から先にかぁ!?」


 (パワーは特に未知数のガブリアスは慎重に立ち回った方がいい……!)

私とテッカニンは飛び上がる。
身体も得物も小さなテッカニンは、至近距離でこそ、そのトップスピードを活かせる。
飛行ポケモンは飛ぶために攻撃力を犠牲にしている者も多いだけに、テッカニンも短剣の選択はベストだろう。
短剣ならばテッカニンの空中機動を阻害はしない。


 「はぁ!」

テッカニン
 「!」

キィン!


 (速い、しかし当てられない訳ではない)

ガブリアス
 「シャァ!」

そこへ、突如ガブリアスが地面からロケットのように飛び込んできた!
私は咄嗟にそれを回避するが、ガブリアスの特性には改めて驚愕する。

ガブリアス
 「俺が空中戦が出来ねぇとでも思ったか!? 甘ぇんだよ!」

ガブリアスは天井まで辿り着くと、すかさず反転、天井を蹴って素早く再攻撃してくる!


 「なんだと!?」

二度目はガードさせられた。
両手で剣を盾にしたが、そのまま腕が折られるんじゃないかっていう衝撃が腕に走る。
幸い墜落には至らなかったが、私は中空で待機せざるを得なかった。


 (驚いた……この広いバトルフィールドにガブリアスの死角はない……!)

確かにガブリアスは地龍ゆえに飛べない。
だがジェット機のような速度で飛び出せば、容易に天井まで辿り着き、今度は天井を蹴って地まで迫る。
当たれば骨が砕けそうな筋肉の一撃はテッカニンと合わせると、見事に欠点を補っているようだ。


 (どうする? 速いが攻撃力は薄いテッカニンと、飛べはしないが、どこにいても十分攻撃範囲のガブリアス……!)

二人同時に相手をすることはできない。
私の防御力なんてたかが知れている。
テッカニンでも翼を斬る位は出来るだろうし、そうなれば確実に砂鮫の餌食か。


 「苦戦しているようね?」


 「!?」

ガブリアス
 「あんだぁ? どっから入って来やがった嬢ちゃん?」

当然気配なく現れたのは、小さな少女だった。
だが、その容姿は茂さんが言っていた人物と符合する。


 「ジラーチ、か?」

ジラーチ
 「あら、おに……茂に説明されていたみたいね」


 (今なんか言い直した!?)

ジラーチは軽く髪を靡かせると、戦場へと進出する。
茂さんの話通りなら、かなりの力があるだろう、力を貸してくれるなら心強いか。

ジラーチ
 「どっち相手しましょうか?」


 「テッカニンを頼む」

私は一度地面に降り立つと、ガブリアスと直視する。
ガブリアスは厄介な相手だ、だが一人に集中できるなら対処の仕方はある!

ジラーチ
 「1分でかたづけるわ」

ジラーチはそう言うと宙へと浮かんでいく。
余程の自信過剰か、それともそれだけの力があるのか、その豪胆さは恐れ入るな。

ガブリアス
 「けっ、1対1なら地上で勝てるってか?」


 「君は少し過信しているようだな」

私は剣を両手で持ち、やや腰は後ろに構えて相手の出方を待つ。

ガブリアス
 「なら見せて貰おうじゃねぇか!? 地を這う鳥の様をよぉ!」

ガブリアスが直線で突っ込んでくる。
やはり過信しているな、動きになんの考慮もない。
まさにイノシシ、最もそれは暴走トラックに等しいが。


 「はっ!」

ガブリアス
 「ぐあっ!?」

突き、私はただ相手のこめかみにシンプルな突きを放つ。
ただそれは最高の技を持って放った一撃だ。
ガブリアスは寸でで回避するが、その眉間から血を流した。


 「はっきり言って私は弱いよ、君のように力があるわけじゃない。自慢のマッハ2もこの距離では役には立たん。おまけに耐久力は飛ぶために犠牲にしている」

ガブリアス
 「がぁ!? 何が言いたい!?」


 「私はポケモンとしては弱いよ。だが戦士としては君より上だ……現に既に君の動きは見切った!」

私は3度ガブリアスの馬鹿正直な動きを見た。
3度も拝見できれば馬鹿でも対処法を思いつくさ。
私は再び突きの構えに入る。


 「なんなら目を瞑って相手をしようか?」

私は目を瞑る。
視覚を完全に切るも、相手を考慮すれば充分だ。

ガブリアス
 「がぁ! もうキレたぜ! ぶち殺してやる!」

怒声、そして風を切る音。


 「はぁ!」

私は音の方向に突きを入れる。
その瞬間腕に走る衝撃、私はある確信を持って目を開ける。

ガブリアス
 「く……あ」

腕に来た感触は頭蓋を割った感覚だ。
私は素早く血を拭うと、ガブリアスは遅れてその場に倒れた。


 「最後の最後まで全く同じ動き、如何に種族として優秀であろうと、術も技も備わらないならチンピラと変わらんよ」

もはや聞こえてはいないだろう。
私は改めて上を見上げると、ジラーチはすでに勝利していた。

ジラーチ
 「楽しめたのは5秒くらいかしら、最短記録かしらね」

羽根を裂かれズタボロのテッカニンはぐったりと地面に倒れている。
どういう戦い方をしたのか知らないが、ああはなりたくないものだ。


 「助力感謝する、一人では無傷の勝利は難しかったろう」

ジラーチ
 「助けなくても、貴方の勝ちに違いはなかったんじゃない?」

そんな簡単ではなかったろう。
無論負けたとも考えてはいないが、少なくともテッカニンを意識しながら、ガブリアスを捌くのは容易ではない。
1対1だからこそ、弱点を突けたと言える。


 「それにしてもここはどこだ?」

私は改めてバトルフィールドを眺めるが、少なくともあの洋館には似つかわしくない無骨さだった。

ジラーチ
 「! 敵性1 来るわ!」

ガッシャァァン!

突然、天井が崩壊し、何かが落ちてくる。
それは嫌に大柄なPKM、真っ黒な身体に、腹に描かれたもう一つの顔。
異様な禍々しさをもったPKMだった。

ジラーチ
 「アクジキング?」


 「それは?」

聞いたことのないポケモンだ。
だが、禍禍しきオーラには似合った名かもしれない。

ジラーチ
 「こいつ……精神が汚染されてる!? ダーク化した訳ね」


 「ダーク化とは?」

ジラーチ
 「人間がより強靱な戦闘用ポケモンを生み出すための技術……勿論別の世界のお話しだけどね」

戦闘用ポケモン……それはその言葉通りの威圧感を感じてしまう。
敵はPKMを本気で兵器として見ているのか?

アクジキング
 「!!!」

アクジキングが大きく口を開く!


 「何をする気か分からんが!」

私は剣先に風を集め、それをアクジキングに浴びせる。
しかしアクジキングはビクともしない!

ジラーチ
 「アクジキングはかなり高耐久のポケモンよ! 更に精神を弄くられているから痛みでは止まってくれないわ!」

アクジキング
 「!」

口を開け、何かを吸い込むと、それを打ち上げる。
突如、部屋の中には雨が降り出す。


 「なんだ? 黒い雨……くぅ!?」

私は全身に痛みを覚える。
見るとジラーチも同様の症状を見せていた。

ジラーチ
 「ダークレイン……厄介な技を!」

アクジキングが降らせた雨は、大規模ではないが痛みを感じさせる雨だった。
だがアクジキングは逆に活性化している。

ジラーチ
 「ち……私アイツに有効な技がないのよね……必然的に貴方に任せるしかないわけだけど?」


 「やるだけ、やってみる! 暴風!」

私は暴風を身に纏うと、少し地面から浮き上がり相手を見捉える。
アクジキングは高い耐久力とダークレインによる再生で要塞化している。
ならば、それを突破する火力があればいい!

ダークレインは暴風を纏った私には届かない。
私は一瞬でアクジキングの目の前に飛ぶと、全力で兜割りを放つ。
如何にダーク化していようと頭を失えば死ぬはず!

アクジキング
 「!」

しかしアクジキングが動く!
私の一撃を貰いながら、その触手のような腕で私を絡め取る。
しかしそれさえも私の暴風の鎧は相手の腕をズタズタにするが、相手は全く動じない!

アクジキング
 「!」


 「くあぁ!?」

ベアハッグのような形で拘束されると、物理的に暴風の鎧は解除されてしまう。
相手の頭蓋はかち割ったはず、しかし完全には決まらなかった。
痛みを物ともしないゾンビのような立ち回りに私は窮地にたつ。


 (ジラーチは!?)

私はジラーチに助けを呼ぼうか、考えるも当のジラーチはその場で眠っていた。
いや、有効打なくって、ダークレインのダメージキツいからって眠るのはどうなんだ!?

と、突っ込むが初めから宛にした戦術を組んではいない。


 (だが真剣にどうする? 剣も振れない、翼を使う技も封じられている……!)

刻一刻と私はダメージを重ね、相手は傷を回復している。
このままではジリ貧で負けてしまう!


 (どうすればいい!? こんな時茂さんならどう命令する!?)

その時だった、突然胸元が熱く燃えるような痛みを感じる。
しかしそこには茂さんの熱を感じた。
それと同時に、私の薬指のメガストーンが強く反応を示していた。
あの日以来……この世界に来てまだ一度も反応しなかったそれが、今ここで使えと言っているのか?
私は迷わなかった。


 「茂さん! お力をお借りします! メガ進化!」

私は溢れ出る力を放出して、アクジキングの拘束から脱する。
本来ならメガリングとメガストーンの2つがなければ出来ないメガ進化、しかし今も私は茂さんの熱を感じている!


 「伝説のポケモントレーナー、その手を神話の乙女が携えるならば……私は無敵だ!」

私はより強靱な力をコントロールし、暴風は渦を巻いて、アクジキングを拘束する!
アクジキングの巨体が宙に浮かぶと、私は大きく飛び上がる!


 「一刀両断!」

全体重を乗せ、より加速して放つ一撃必殺。
私はアクジキングを袈裟懸けで切り裂く!


 「我が一刀に断てぬ物無し!」

私は剣を振るって、血を払うと、メガ進化が解けた。
それと同時に茂さんと繋がっていた感覚も失せる。


 「ダークレインは止んだか?」

ジラーチ
 「超○磁タツマキから○イキック斬で最後に斬艦刀?」

いつの間にか眠りから覚めたジラーチは一部始終を見ていたらしい。
私は格好を付けすぎたか、顔を紅くした。


 「さ、さぁて! とっとと茂さんを取り返しに行くか!」

私はやや逃げるように先へと進む。



***



ギラティナ
 「アイツは……」


 「……」

ギラティナの手が震えている。
それだけの相手が……いや、間違いなくそうなんだろうな。

ギラティナ
 「いや、止めておこう。兎に角そいつは私を破れた世界から解放してくれた」

ギラティナさえ口にするのが憚れる。
それ自体がある答えを教えているも同然なんだよな。
永遠自体破れた世界には入ることも出来なかったと言っていた事から、恐らくパルキアでも無理。
それ以上となり、更に権限が上の者だと想定すると、大凡当たりでないかと思うが。


 (ギラティナが言えない訳が分からない内は考えるのも危険か?)

ギラティナ
 「破れた世界を出たらビックリしたなぁ……人間の世界って進んでいるんだもの」


 「単純に考えても江戸時代中期から浦島太郎状態だからな」

300年、俺には漠然とした知識でしかないがそれだけのカルチャーショックなのだろうな。

ギラティナ
 「……ふふ、昔話ももう少しで終わりか」

ギラティナは空を見上げた。
洋館には天窓などないし、見上げても屋根しかないがギラティナには何が見えている?


 (しかし……神々の黄昏、未だその本質は分からないな)

ギラティナ、それにアグノム、エムリットも決して悪ではないと思う。
恐らくまだ見ないユクシーもそうなんだろう、どちらかと言えば永遠と同じような素朴な子が大悪事を行おうとしている、そういう印象か。



***



華凛
 「やれやれ、小物をぶつけられるのは気持ちのいい物ではないな」

私の目の前に3体の小物がいた。
あまりにも合われすぎて名前も覚えてやれん。
要約すると、実力不足だから3人セットで運用されたようだが、そんな理由でこの元皇帝を討ち取れると思ったなら笑止千万。

雑魚1
 「化け物だ……おっぱいの化け物だぁ」

雑魚2
 「く……一発も返せないなんて!」

雑魚3
 「ヘルバウ……な!?」

華凛
 「とりあえず喋るな」

私は刀をちらつかせると、雑魚は一気に失せた。
あまりにも雑魚過ぎて命を取る気も起きず、手早くダーリンと合流する方法を模索するが……。

ガガガガガ……!

突然重たげな音を立てて開く隔壁、そこから更なる増援が見えた。


 「……」

華凛
 「両手に薔薇……ロズレイドか?」

それは遠くから見ても分かりやすい姿だった。
両手が大きな薔薇に覆われており、シンプルなスーツからロズレイド娘だと分かる。
だが、遠くからでは分かりづらいが何か変だ。

ロズレイド
 「!」

ロズレイドがいきなり突っ込んでくる。
私はすかさず居合いの構えに入った。

華凛
 「挨拶もなしか! 辻斬り一の式、瞬剣!」

キィン!

神速の居合い、それが一の式瞬剣。
私が最も得意とする必殺技がロズレイドの腹部を切り裂く。
しかし手応えがおかしい?

ロズレイド
 「!」

ロズレイドが薔薇から茨のムチを飛び出させると私の両腕を縛る。

華凛
 「触手プレイとは、趣味が悪いな……!」

間違いなく斬った、実際腹部から流れる血はそれを証明している。
だがロズレイドは呻き声一つあげず、それに私でも抗えない力で私を締め付けてくる。

華凛
(耐久力もパワーも段違いか!? だがそれよりなんだコイツの生気の無い顔は!?)

私はロズレイドの顔を見て驚く、まるで絶望したまま硬直したかのような顔は不気味なんて物じゃない。


 『ふふふ、どうかねダークロズレイドは?』

華凛
 「どなたかな?」


 『私は謎の研究員F、ダークロズレイドの責任者だよ』

突然どこからともなく聞こえる謎の研究員とやら。
現在の状況的にもこの後の展開が不安だな。

華凛
 (裸に剥かれて薬物で弱ったところを調教か? それとも力を奪った所で複数の男で……○リムゾンの新刊○らのあなで買っておくか)

すらすら出てくる陵辱展開に自分自身苦笑する。
改めて日本のサブカルチャーに毒された物だと理解する。

研究員F
 『君は素体として非常にいい。ダークロズレイドはダーク化の過程で精神崩壊してしまい、トミー手術することでなんとか運用している訳だが……その性でどうしても他の個体より今ひとつだ』

華凛
 「また当て馬か……、それにしてもヒロイン悪落ち調教とはマニアックだな」

研究員F
 『なに? まぁいい……そこでだ、君にその気があるのなら、組織の一員として迎えても――』

華凛
 「断る」

ロズレイドの絶望のまま固まった顔。
さぞ恐ろしかったのだろうな。
少なくとも私が憎んだ世界でも、ここまでの非道はなかった。
それをさも当たり前に行う組織に、私が組する義はない。

研究員F
 『やむを得ん! やれダークロズレイド!』

ロズレイド
 「!」

ロズレイドは私を縛ったまま大きく振り上げて、振り下ろす。
私は鞭の先端で強く地面に打ち付けられた。

華凛
 「お前も憐れな奴だな……私も大概不幸だが、お前ほどじゃなさそうだ」

ロズレイド
 「……」

ロズレイドは無関心、ただもう一度同じ動きをして私を叩きつける。

華凛
 「脳まで改造されて……それは生物か? それとも機械か?」

ロズレイド
 「……」

私はふつふつと沸く怒り、その意味を知る。
この怒りは、世界への怒りであり、自分への怒りでもある。
このような組織が許されるのなら、私は今まで何をしていたのか。
大罪人である私が、今も不幸になるPKMたちに何が出来る?
その怒りが、次第に形を変えると、胸の中に熱さを感じた。
それは胸の谷間に納めた琥珀色の石だ、フーパが絶対に無くさない場所に入れとけと言っていたから谷間に挟んだが、それが今とても熱く燃えているようだ。
だけどそれはダーリンの暖かさだった。
ダーリンはこんな私を許してくれた、受け入れてくれた。
あの優しさがどれだけ私を助けてくれただろう。

華凛
 「ダーリン……はぁぁぁ!」

私は自然とその体に流れ込む力を受け入れた。
全身を巡る力、それは神話の乙女のブーストに近かった。
私はロズレイドの茨のムチを力技で引きちぎると、刀を大きく振り上げる。

研究員F
 『な、なんだこれは!? CP3万……いや!?』

華凛
 「神話の乙女を舐めるなぁー!」

私はロズレイドを真っ二つに切り裂く。
私はロズレイドを救ってやる事は出来ない。
だからせめて、ここでその一生を終えさせてやることが、せめて物の手向けだ。

華凛
 「おい……! 聞こえているか!? 貴様らのふざけた研究、この私への宣戦布告ととる!」

研究員F
 『ひ、ひぃ!?』

私は走る。
迸るような力は直ぐに失せたが、まだ身体のダメージは浅い。
ダーリンも大事だが、その前にこのふざけた研究だけはぶっ潰す!



***



ギラティナ
 「アイツは私を外に出すとき、指令を出したのさ……それが最終戦争」


 「しかし実際は神々の黄昏の実行だよな?」

ギラティナはコクリと頷くと立ち上がった。

ギラティナ
 「もうすぐ君たちの家族が来るから、場所を移動しようか」


 「アイツらが……」

と言うことは皆無事ということか。
俺はほっとする反面、ギラティナと家族が戦うことに躊躇いも覚える。
神々の黄昏ってなんだ?
どうして世界滅ぼすことと、神々を顕現させることが一致する!?
ギラティナの後ろに誰かがいる、そいつが首謀者でギラティナはそれに従っているのか?


 (分からん……)

アグノム
 「あの……」

突然、アグノムちゃんが不安そうな顔で寄ってくる。

アグノム
 「疑うのは仕方ありません。でも……意思力だけは強くお持ちください」


 「意思力……」

そうだ、結果はどうあれ俺たちの目的はこの世界を最後まで茜の安心出来る世界にすること!
思い知らせりゃいいんだ、もう茜は絶望しないって!
俺の見せられる意思力、それは家族を信じることだ。



突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語


第33話 それぞれの戦い その2 完

第34話に続く。


KaZuKiNa ( 2019/06/02(日) 22:38 )