突然始まるポケモン娘と○○○する物語





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第三部 突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語
第28話 襲撃、空間の神

突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語

第28話 襲撃、空間の神


パルキア
 「……」

パルキア、空間の神。
幼い姿ながら、その力は伝説のポケモンとして相応しい力を持っている。
しかし、彼女も絶対ではない。
自らの力は決して万能ではない事を自覚し、そしてそれが大切な家族に何もしてやれない事を哀しむ。
今も暗い顔で神々の宮殿を歩いている。

神々の宮殿……宇宙の中のような空間にポツンとある、超常の建造物。
神々は普段、ここで自らの出番までを待つ。
故に、ここには娯楽と言える物はない。
神と言っても、絶対主である王に仕えるだけの存在だから、そこには余計な不純物はいらないのだ。

パルキア
 (考えること、感じる事……王の命令を遂行するだけなら無駄な物なのにボク達は持っている)

パルキアの心は今ディアルガで一杯だ。
ディアルガは昔から逆らってばかりだった。
能力は神に相応しいのに我が強く、特にアルセウスとはいつも反目していた。
パルキアにはそんな二人をいつも止める役回りだった。
それでもパルキアはディアルガが好きだ。
そんなディアルガが一人でどこまでも先へ行こうとしている。
彼女は自分が破滅へ向かっていることに気が付いているのか?
このままではディアルガは異端者として粛清される。
パルキアにはどうすることも出来ないのだ。

イベルタル
 「負の念を感じるな」

辛気くさいパルキア見て、呟いたのはイベルタルだった。
パルキアは其方を見ると、イベルタルは両手を組んで溜息をつく。

イベルタル
 「何かあったのか?」

パルキア
 「なんでもない……」

イベルタルは死の神、あらゆる生を吸って万物に死を与える事が役割だ。
それ故か、負の念を感じる事が出来て、そこから悪意を殺すことが出来るらしい。
イベルタルならきっとパルキアの悩みさえ殺すことが出来るかも知れない。
だが、パルキアはそんな気を起こすことはない。

パルキア
 「何でもない、ごめん」

パルキアは足早にその場から立ち去ろうとした。
イベルタルは特に人間みがない。
それは容姿にも現れており、赤と黒の髪とボディラインのでた赤黒のライダースーツから、人間ではない何か感じさせる。
その性格は実に機械的だ。
殺すべき対象を殺したら、さっさとその世界を去る。
さながらヒットマンのような役割で、善悪の価値観は薄い。

アルセウス
 「パルキア、こんな所にいましたか」

パルキア
 「アルセウス様? ボクをお捜しでしたか?」

神々の中でも序列2位のアルセウスは神々の中でも別格だ。
パルキアもイベルタルもその神々しき姿に平伏する。
アルセウスは温和な笑みを浮かべるとパルキアの手を取る、パルキアは驚いた。

アルセウス
 「少し話がある、こちらに来なさい」

パルキア
 「は、はい!」

パルキアは手を引かれると、素直にアルセウスの後ろを着いていく。
一方でイベルタルは顔を下げたまま、その姿を見送る……だが。

イベルタル
 「……」

鋭い眼光、女性としては大人の姿をしたイベルタルはその眼光をアルセウスの背中に向ける。
人間的ではないと言われるイベルタルだが、その真相は本人にしか分からない。



***



パルキア
 「それで話とは?」

パルキアは戸惑いながら、アルセウスの寝室に招かれた。
寝室といっても、天蓋付きのベッドがあるだけのシンプルな部屋。
神々の中でも最も無駄のない完璧な存在であるアルセウスにはベッドさえも必要ない筈だが、その空間は充分緊張するだけの物がある。

アルセウス
 「ディアルガの事だが」

パルキア
 「っ!?」

パルキアは一瞬で顔を青くした。
その瞬間、ディアルガの顔と異端者と言う言葉が脳裏を過ぎる。

アルセウス
 「誠に残念な事だが、イレギュラーは処分する必要がある」

パルキア
 「待ってください! ディアルガは!」

アルセウスは完璧だ、当然ながらディアルガのことも筒抜けなのだろう。
だからこそイレギュラーと言った。
アルセウスは異端者の粛清も行っている。
これは最後通告のような物だ、パルキアは喉を鳴らした。

アルセウス
 「君はディアルガが大切か?」

パルキア
 「当たり前です! 同じ日に生まれた家族なんです!」

パルキアは神々の中でも優しすぎると言われる事がある。
それは自分でも自覚しているし、そしてそれは寧ろ誇りだと思っている。
今はディアルガを護ることで必死だ。
きっと今なら神々の王にさえも噛みつくだろう。
その必死さをアルセウスは薄らと笑う。
アルセウスの性格を一言で言えば、皮肉屋だ。
神々の王との問答でさえも、皮肉を効かせる姿は神々なら見慣れた光景だった。
だから自分の滑稽さも、アルセウスに笑われた事は承知である。

パルキア
 「なんとかならないんですか!? ディアルガは王への背任は致していません! そのまま異端者として断罪するなんて!」

アルセウス
 「彼女の罪は、神堕ちです」

パルキア
 「っ!?」

神堕ち、それは自らが神の位階から脱落する行為。
それは神としては禁忌であり、人間界でも堕天として知られている。
永遠(とわ)、その名を彼女は誰かから貰った。
もう彼女は神堕ちしかけている。

アルセウス
 「王が与えた名の呪縛……その力は強力であり、例え因果律の全てが崩壊しようとその者を拘束する……しかし、一つだけ名の呪縛を解除する方法があります」

パルキア
 「それは? それさえあればディアルガは神堕ちしないんですよね!?」

アルセウスは酷薄な笑いを浮かべる。
パルキアの必死さは利用されようとしているが、その事にパルキアが気付かない。
そう、あまりにも滑稽なパルキアは今正に藁にも縋ろうとしているのだ。

アルセウス
 「名の呪縛を与えた者が死ねば、契約は解消されます」

パルキア
 「! つまり命名者を殺せば?」

アルセウス
 「ディアルガの異端者としての部分は解消されます」

その瞬間、パルキアは一瞬後悔した。
何故なら、明確な殺意を抱いてしまったのだ。
パルキアは優しい子だ、出来ることなら殺したくなんてない。
それでも、家族を護りたい……だからこそパルキアはその掌が血で滲むほど握りこんだ。

パルキア
 「教えてください……ディアルガを縛っているのは誰ですか!?」

アルセウス
 「うふふ……いいでしょう、お教えします」

パルキアは優しい子だ、だけどその優しさが道理を殺す。
家族を護りたいという純粋な思いが、一人の男を殺そうとしているのだ。
そしてアルセウスは優雅にその美しいブロンドの長髪を撫で上げた。
その瞳は、美しいが冷酷でもあり、パルキアを覗き込む。

アルセウス
 「ディアルガを縛った者の名は……」



***




 「ヘックシ!」

夏川
 「常葉、風邪?」

暖房の効いたオフィスは快適だ。
とはいえ外は絶賛真冬の寒波に襲われている。
雪……薄暗い空から降るそれは、今年最初の積雪になりそうだ。
俺はそんな窓から見える風景を眺めながら、鼻をすする。


 「風邪の症状はないと思うけどな……」

夏川
 「じゃあ、誰かが噂している」

噂か、ある意味有名人と化している俺は誰の噂だろうと考える。
家族かもしれないし、御影さんとかかもしれない。
兎に角噂なら、どこから出ても不思議じゃないからな。


 「うーん、ま……大したことはねぇだろ」

俺はそう言うと仕事を再開する。
後数時間で今日の仕事も終わりだ。
来週には大城も退院だし、今の所の忙しさもあと少しだな。

永遠
 『Call her moonchild Dancing in the shallows of a river』


 (永遠……お前一体何歌ってんだ?)

永遠
 『○ング・クリムゾン。1stアルバム、○リムゾン・キングの宮殿より○oonchild』


 (永遠って洋楽好きだよな)

永遠
 『音楽なら色んなジャンルが好きだよ、洋楽だと○ートルズとかも好きだし、○ミ・○ンドリクスとかも』


 (馴染みないなぁ)

そりゃ○ートルズ位は知ってるけど、もう○ングクリムゾンとか○タンドでしか知らんわ。
俺はアニソン位しか歌えんしな。
洋楽なんて、ジャケット買いする事もない。
永遠って歌うのも上手いし、歌手になれんじゃないかな?


 (因みに邦楽なら何が好き?)

永遠
 『○ツケンサンバ知ってる!?』


 (知らん……)

○ツケンって○平健?
流石に世代じゃないと分からんわ。

永遠
 『○ARD位分かるよね?』


 (マラソンの曲? だっけ?)

永遠
 『○けないで、だね』


 (多分聞いたことあっても、歌っている人とかは全然分からん)

永遠
 『茂君って……音楽に興味ないんだね』

永遠に呆れられてしまった。
ううむ、興味がないジャンルだと、とことん興味が湧かんからな。
偶々、永遠が良く歌ってるから興味を持っただけだしな。


 (we'are we you rock 'n' rollってか?)

永遠
 『あ、○イーン知ってるんだ!』

……映画やってたしな。
因みに曲は知ってるが、○イーンなんて名を知ったのはつい最近だ。
つまりそれ位知識は偏っている。


 (まぁでも、永遠の歌は嫌いじゃないよ)

永遠
 『えへへ♪ 茂君は嫌そうな顔せず聞いてくれるもんね』

永遠もなんだかんだで聞いてくれるのは嬉しいらしい。
バリエーションも豊かだし、本当に好きなんだろうな。

永遠
 『茂君と一緒にデュエット歌いたいなぁ』


 (俺歌知らんぞ)

デュエットって二人で歌う奴だよな?
昔のバラードとかで良く聞いた気がするけど、全然分からん。
趣味を認めことと、理解することは別なんだよな。

永遠
 『それにしても、今日はよく降るね』

永遠は急に話題を変えると、天気のことを言っているようだ。
今日は平地で雪の降る寒さだと言っていたし、実際真冬並みの寒さだ。
帰りの時間だと気温4度だそうで。

永遠
 『ドラゴンタイプだから寒いのは苦手かな』


 (鋼だから氷は等倍だろうに)

永遠
 『等倍でも寒いのは苦手なの!』

まぁ、人間でも寒いのが好きな奴もいれば、嫌いな奴もいる。
そういう意味ではポケモン娘も個人差だろうな。
俺はもう少しで終わりそうな仕事を進めながら、帰りの天気を憂う。
俺も寒いのは苦手だ。
まして積雪する程なら尚更。


 「真冬か……」

俺はそれだけ呟くと、最後の仕事を進める。



***




 「ゆ〜きやコンコン、あられやコンコン」

永遠
 『降っても降っても降り止まぬ♪』

等と暢気に歌っている場合ではないな。
この時期の仕事終わりは当然真っ暗闇だ。
それに+積雪は止むことなく続き、路面は凍結してアイスバーンと化している。
車が時折、大きくスリップしているのを見て、内心危険だと感じる位だ。


 「あともう少しで駅だな」

俺は夜の街を灯りを元に歩く。
駅までつけば、寒さで凍えることはないだろう。


 「それにしても良く降るなぁ、今年は暖冬だって言ってたのに」

永遠
 『それって3カ月予報でしょ? トータルでは暖冬なんじゃない?』

まぁそうなんだろうな。
とはいえ天気なんてそれこそまだ現代の気象学では予測できない事も多い。
今年も台風は多かったが、特にその進路予想が今年の被害を大きくしているとも言える。
こればっかりは天災だから仕方がないが、地震なんかも予測できないからなぁ。


 「こういう日は熱燗がいいねぇ」

俺は歩きながら、店舗の光に照らされる。
居酒屋を見ると忘年会シーズンだという事が分かる看板や昇りが見えた。
この時期の忘年会は色々鬱陶しくて好きじゃない。
それでも付き合いってのはあるし、それは社会人の洗礼って所か。
ただ、家では厳しいアルコール制限があるから、好きに飲める点は嬉しい。
寒くなると、やっぱりビールより温かい日本酒が欲しくなるよな。


 (そう言えば、永遠って酒は飲めるのか?)

永遠
 『うーん、飲んだことはないから分からない。でも興味はあるかな?』

そう言う永遠の声は好奇心に満ちている。
しかし永遠って二十歳かな?
伝説のポケモンだと、お酒を飲ませていいか悩む。
最も永遠が未だこっちに顕現出来るほど、ゲートは大きくなっていないらしい。
伝説のポケモンって体格に関わらず、かなり大きなゲートの生成がなければ出てこれないみたいだからな。

永遠
 『私は君とこうやって言葉を交わせるだけでも幸せだけどね』

会話だけで幸せ、か。
神とも呼べる伝説のポケモンには、それさえ贅沢な事なのかな。
力を持つと言うことが、その代償だというなら悲しいルールだな。
この世界には良いこと悪いことが綯い交ぜだ。
一緒に食って、喋って、遊ぶ。
永遠にもそれ位許されてもバチは当たらないと思うんだが、簡単にはいかないんだろうな。

永遠
 『茂君と過ごす事が出来るならなんだ―――』


 「っ!? 永遠? どうした永遠!? 応答しろよ!?」

突然、まるで電源を切られたラジオのように永遠の声がブツンと切れた。
俺は時の結晶に呼びかけるが、時の結晶は優しく明滅するだけで、永遠の声を返さない。
何かが永遠にあったのか、俺は永遠の心配に冷や汗を掻く。
しかし俺の間違いにすぐ気付くことになる。

パルキア
 「永遠……と言ったね? つまり君が常葉茂か」


 「な……なんだよこれは?」

俺は唖然とした。
雪がその場に静止して、夜の繁華街は賑わいを失せて、静寂に包まれている。
そして目の前にはボーイッシュな少女が一人だけ立っている。
その姿は幼いがどことなく永遠に似ている。
そして俺のことを、永遠を知っている。
それはつまり、コイツが超常の者だという事を物語っていた。


 (やばい……ピンチなのは永遠じゃねぇ、俺の方だ!)

少女は俺を強く睨みつけると、空間に幾つかの穴を開ける。

パルキア
 「ボクの名はパルキア、先に謝っておくよ、ごめんなさい」

パルキアと名乗る少女はそう言って、空間から幾つもの槍や斧と言った凶器を取り出してくる。
この少女の謝罪理由、それは明確な意志を持っている。
そしてそれが俺にとって最悪なことを物語っていた。

パルキア
 「ディアルガの為だ! 死んで貰う!」

パルキアは手を振り上げると、一気に振り下ろした。
するとまるでロケットで射出されたように、無数の武器が飛び出す!


 「洒落になるかー!?」

俺は必死で逃げる。
パルキアの理不尽な攻撃を避けつつ、ひたすら距離を取るが、ディアルガの為って言うのはどういうことだ?

パルキア
 「無駄だよ、ボクは空間の神、ここはボクの世界だ」


 「うげぇ!? 回り込まれた!?」

パルキアは空間の裂け目を目の前に出現させて、そこから現れる。
改めて、パルキアの異常さを垣間見て、コイツが永遠と同級のチート存在だと理解した。


 「時の結晶が何も反応しねぇのはお前の仕業か」

パルキア
 「普通の空間じゃディアルガが邪魔をするだろうからね、それになるべく余計な被害を出したくないから空間を隔離したんだ」

つまりこの世界じゃ永遠の力は何も機能しない。
それはつまり……。


 (死に戻り不可って事じゃねぇのか!?)

パルキアと言うからにはディアルガの性質は知っているだろう。
俺が死のうがお構いなしに、生きてる時間からサルベージ可能だ。
だが、異なる次元で死んだ場合彼女は俺を発見できるか?
そのくらいはパルキアも計算しているだろう、きっと俺を殺したらどっか遠い世界線にポイって事も考えられる。


 (やばいやばいやばい! 生身で空間の神と戦えとか無理ゲー過ぎる!)

俺は後ろに後ずさるが、パルキアのプレッシャーが一向に弱まる気がしなかった。
このパルキアの世界ってどれ位の広さだ?
いくら何でも地球丸ごとっては考えたくないが、出来ない事も無いだろう。
そうなるとマジで逃げ場無しだ。

パルキア
 「どうして君なんだ……」


 「?」

パルキアが俯くと、その体を震わせる。
そして俺を憎しみの対象のように見ると彼女は。

パルキア
 「ディアルガはなんで君を選んだ!? 選ばなければ何もなかったのに!」

パルキアが手を横に振る。
俺はその瞬間、身体を引きちぎられるかのような感覚に襲われる。
だが、身体には何もない。


 「!? ぐは……!?」

俺は血を吐いていた。
こいつ……外部は傷つけず、内臓にダメージを!?

パルキア
 「分かってるんだ。君が悪いんじゃない……でも、これは不幸な事なんだ」


 「ち……く、しょう」

俺は地面に手をつき、その血で雪を赤く染める。
その幼い顔は、冷酷さより寧ろ哀しみの顔だった。
不幸だと……一体何の事を言っているのか、さっぱり分からねぇ。


 「一つ聞かせろ……お前がスリーパーの言っていた神か?」

パルキア
 「? 何のことを言っているのか分からない。ボクは空間の神だけど」

つーことは、神々の黄昏を引き起こそうっていう黒幕はコイツじゃないか。
ていうか、流石空間の神と言うか、まだ伝説のポケモンは顕現出来ないんじゃなかったのかよ。

パルキア
 「最期は苦しまないようにするよ」


 「いらねぇ……気遣い、だな」

俺はなんとか逃げれないか、身体を動かそうとするが動かねぇ。
足は泥のように重く、身体は寒気で震え始めている。
第一出血量からいって、これはもう無理だろ。


 (現実は非常……てか)

俺はなんだか冷静に笑ってしまう。
パルキアはゆっくりと右手を振り上げる。
恐らくさっきと同じ技で今度は確実にトドメを与えてくるだろう。

だが……俺は薄れゆく視界でそれを見た。
少女がパルキアの後ろから現れる。
パルキアは後ろを振り返った。


 「神がいい気になってんじゃないわよ……!」

その少女は星のような特徴的な黄色い帽子を被った特徴的な少女だ。
目の下にティアドロップの模様があり、白いヒラヒラの服を着た姿は原種にとても似ている。
ただ、顔は原種とは大分違う。
まず柄が悪い、やさぐれたかのようだ。


 「じ、ラーチ……?」

ジラーチ
 「吹っ飛べ! アバズレ!」

ジラーチがパルキアの懐に潜り込むとアッパーを繰り出す。
ただしそこには念動力が宿り、高圧縮された念動力がエメラルド色に輝き、パルキアを容易く上空に吹き飛ばした。

パルキア
 「くっ!? なぜ……!? ジラーチがここにいる!?」

パルキアは完全に想定外の様子で、空中に制止すると、ジラーチはただ高圧的にパルキアを睨みつける。

ジラーチ
 「そんな物私が知るか!」


 「テメェは、ストロンガーか……!」

俺は血反吐を吐きながらそう突っ込むと、ジラーチは俺の元に歩み寄ってくると、俺の体を優しく抱いた。

ジラーチ
 「ごめんなさい……遅くなったわ……て、分かるわけないか」


 「……?」

何故だろう、あのアッパーといい、この子に何か既視感がある。
俺はジラーチを知っている?
しかし、こんなやさぐれたジラーチなんて見たことはない筈だ。
それじゃ、この胸のモヤモヤは一体何なのか?

パルキア
 「く、なぜその男を護る?」

ジラーチ
 「愛ってなんだ?」

パルキア
 「は?」

その時だった、突然パルキアの後ろに金色のリングが出現する。
それはゲートのように機能し、そこから彼女は現れる。

永遠
 「躊躇わないことさっ!」

永遠はパルキアの後ろに現れると、パルキアにドロップキックをしかける。
完全に不意を突かれたパルキアは大きく吹き飛ばされるも、空間を蹴って地面に着地する。
しかしその表情にもう余裕はない。
そりゃそうだろう、隔離した筈なのに目の前にはディアルガである永遠がいるんだからな。

永遠
 「パルキア……私の茂君を傷付けて、覚悟できてるんでしょうねぇ!?」

ジラーチ
 「は? なに勝手に自分の物にしてるわけ? 死ぬの? 馬鹿なの?」

このジラーチ、性格悪いわ、そこは今は噛みつかんでいい。
永遠はパルキアの前に着地すると、怒りを顕わにしてにしてパルキアを睨みつける。
逆にパルキアは一気に戦意を失っていた。
パルキアはディアルガのためにと言っていたが、その本人が現れて困っているんだろう。

パルキア
 「君は何をしているのか分かっているのか!? 今の君は異端者スレスレだ! 常葉茂さえ抹殺出来れば君は異端者ではなくなるんだ!」

ディアルガ
 「誰に言われた?」

パルキア
 「それは……!」

ディアルガ
 「誰だそんな事吹き込んだのはーっ!!?」

ディアルガは大きく咆哮する。
時の咆哮、空間さえ歪めるそれはパルキアに着弾すると次元を崩壊させる一撃となった。

ジラーチ
 「パルキアの結界が割れたわね」

世界は色を取り戻すと、そこは賑やかな繁華街に戻っている。
雪も正常に降り、永遠の咆哮がそれ程の一撃である事を物語る。
改めて伝説のポケモンの威力150の恐ろしさを物語るな。

パルキア
 「く……直撃だったらやばかった」

パルキアは当たる直前に空間転移していたらしく、上空に出現するも、その姿は服がボロボロで胸がモロだしだった。

永遠
 「ディアルガ、このまま戦うの? サウザンドウォーズと化すかもね」

パルキア
 「退こう……本来この時間軸にボクたちはいてはならない」

パルキアは服を直すと、空間に歪みを作り、そこに半身を埋める。

パルキア
 「アルセウスは常葉茂を殺せば、君の罪が削がれると言ったんだ……今の君は本当に首の皮一枚で助かっているって忘れないで」

そう言ってパルキアは消えた。
永遠はそれを見届けると俺に駆け寄ってくる。

永遠
 「ひっく! うぇぇん! ごめんなさい! 私の性でぇ!」

永遠はそれまでの気丈さ等かなぐり捨てて号泣した。
俺は永遠の柔らかい身体に包まれると、永遠の頭を優しく撫でる。


 「……一蓮托生、だろ?」

俺はそれを最期に意識を失った。



***



それは空間隔離する少し前。

マギアナ
 「お久しぶりです、ジラーチさん♪」

ジラーチ
 「フーパの差し金ね?」

私は彼女の力で一足先にこの世界に顕現した。
目の前にはマギアナがおり、彼女がこの世界の出迎えのようだ。

マギアナ
 「突然フーパさんに呼び出されて、驚きましたよ」

そりゃそうだろう、アレから私とフーパは色んな世界を巡った。
その中でマギアナと再会することはなかった。
マギアナは最初にこの世界に到着したようだが、相変わらずニコニコしていて変わりないわね。

ジラーチ
 「突然、封印がここまで弱まるなんて不自然だけど、疑問に思うのは後ね……茂お兄ちゃんは?」

マギアナ
 「目の前……なのですが」

マギアナは何でもない繁華街を指して困った顔をする。
私はそこに何があるか納得すると、そちらに歩み出す。

ジラーチ
 「成る程ね、別の空間を作り出してそこに隔離したのね」

マギアナ
 「そのようで手出しできないのです」

マギアナも茂お兄ちゃんには懐いていたからね、心配なのだろう。
しかしそれは私も同じだ。
訳の分からない理由で茂お兄ちゃんを追い詰める者に私は怒りを込める。

ジラーチ
 「私は願い事ポケモン、時空すら歪める力を持つわ……ただし自分のために行使することは出来ない。だから貴方の力を貸して」

私はマギアナを見てそう言う。

マギアナ
 「ジラーチさん、どうかご主人様を助けてください……」

マギアナは手を合わせて祈るように言った。
私は真実の願いを受ける時にのみ力を発揮する。
マギアナの願いに帽子についた短冊が反応する。

ジラーチ
 「その願いを叶えるわ……!」

私はマギアナの願いを受けて、それを叶えるために力を使う。
マギアナの願いはその結界に穴を穿ち、目の前に血を吐いて跪く茂お兄ちゃんと空間の神と呼ばれるポケモンを見せる。

ジラーチ
 (コイツが……お兄ちゃんを!)

私は拳に念動力を集中させる。
そして空間の神の後ろに迫ると。

ジラーチ
 「神がいい気になってんじゃないわよ……!」

パルキアが振り返る、だけど遅い!

ジラーチ
 「吹っ飛べ! アバズレ!」

私は最大パワーの念動力でパルキアの腹部に拳をねじ込む!
パルキアは派手に上空に吹き飛んだ。

パルキア
  「くっ!? なぜ……!? ジラーチがここにいる!?」

パルキアは私を見て驚きを見せた。
それは私が顕現している事か、それとも結界の中にいる事か、まぁどっちでも良いわね。

ジラーチ
 「そんな物私が知るか!」



***



永遠
 「茂君がロストした!?」

それはいつものように茂君と楽しく会話していた時だった。
突然、茂君に渡した時の結晶が観測できなくなる。
この異常、間違いない! パルキアだ!

永遠
 「くそ!? どう言うつもりだパルキア! なんでそっちに顕現している!?」

パルキアの力ならばゲート無しでも顕現は可能かもしれない。
だけど、本来世界線ではこの段階でパルキアの顕現はない。

つまり、無理矢理世界線を歪めてきた!?
だけど、それは異端者スレスレの行為だ!
向こうには神々の王だっているのに、下手をすれば王の逆鱗に触れかねない!


 「パルキアの狙いは常葉茂だよ」

永遠
 「誰!?」

私はこの止まった世界で聞き慣れない声を聞いた。
後ろを振り返ると、そこには漆黒のロープを纏った怪しい幼女がそこにいた。
あからさまに怪しい、と言うか銀の仮面にシルクハットって……狙いすぎでしょ。

永遠
 「フーパ?」

フーパ?
 「ちがう! 私は怪盗少女キュアフ……!」

永遠
 「それはエロゲーだ! ていうかそんなのどうでもいい! 茂君はどうなっているの!?」

どう考えてもフーパな少女は舌打ちすると、その傍に大きな金のリングを展開する。
リングには位相空間が見えており、それは言葉では表現できない名伏しがたき者のようにも思える。

フーパ
 「パルキアは常葉茂を殺せば、君の罪が消されると信じている。そして今死にかけている。後名前欄の?消すんじゃないよ、バレるじゃないか」

パルキアが茂君を殺す!?
私はその驚きを一瞬理解出来なかった。
パルキアはとても優しい子だ、無益な殺生どころか、誰かを傷付ける事も嫌う。
そんな子が茂君を殺す?

永遠
 (あの馬鹿……何早とちりしてんのよ! 私がいつそれを望んだってのよ!)

フーパ
 「私は訳あって、まだ彼方には行けない。君がここを通って助けに行くのだ! ゆけ! 永遠よ、今がその時だ!」

永遠
 「やぁってやるわよ!」

私は全速力でリングに飛び込む。
リングの中には表現できないほどの何かが目まぐるしく移り変わる。
そして、それらが通り過ぎると私はパルキアの背中を見た。

ジラーチ
 「愛ってなんだ?」

パルキア
 「は?」

パルキアが意味不明な顔をする。
私は直ぐにその意味を理解した。

永遠
 「躊躇わない事さ!」

私は思いっきり踏み込むとパルキアの背中にドロップキックを放つ!
パルキアは完全に不意を突かれた形となり、地面に向かって吹っ飛ぶが途中で態勢を整えると、空間そのものを蹴ってその場の地面に着地する。
私はその後を追って地面へと降り立つと、驚くパルキアを睨みつける。

永遠
 「パルキア……私の茂君を傷付けて、覚悟できてるんでしょうねぇ!?」

ジラーチ
 「は? なに勝手に自分の物にしてるわけ? 死ぬの? 馬鹿なの?」

ジラーチが私に噛みついてくるが無視する。
今はそれよりこの馬鹿だ。

パルキア
 「君は何をしているのか分かっているのか!? 今の君は異端者スレスレだ! 常葉茂さえ抹殺出来れば君は異端者ではなくなるんだ!」

ディアルガ
 「誰に言われた?」

パルキア
 「それは……!」

ディアルガ
 「誰だそんな事吹き込んだのはーっ!!?」

私は怒りを込めて時の咆哮をぶちかます!
時の咆哮は真っ直ぐパルキアに進み、パルキアに着弾してその場で時の爆縮が起きる。
爆縮はこの空間を不安定化させ、パルキアの結界を崩壊させた。

ジラーチ
 「パルキアの結界が割れたわね」

私はこの異常空間が破壊されて、時空修復されると空を見上げた。
空にはおっぱい丸出しの情けない姿のパルキアが空に浮かんでいる。
やっぱり当たる直前に逃げたか。

パルキア
 「く……直撃だったらやばかった」

永遠
 「ディアルガ、このまま戦うの? サウザンドウォーズと化すかもね」

パルキア
 「退こう……本来この時間軸にボクたちはいてはならない」

パルキアは服を直すと、空間に歪みを開ける。
その穴に半身を突っ込むとパルキアは言った。

パルキア
 「アルセウスは常葉茂を殺せば、君の罪が削がれると言ったんだ……今の君は本当に首の皮一枚で助かっているって忘れないで」

そう言って、パルキアは歪みに消えていった。

永遠
 (やっぱりアルセウス! アイツ茂君を殺そうなんて何考えてるの!?)

私は茂君の方を振り向くと、そちらへ走った。
ジラーチから茂君を奪い返すと、茂君を抱きしめる。

永遠
 「ひっく! うぇぇん! ごめんなさい! 私の性でぇ!」

私は号泣した、私はこの戦いに巻き込んだ性でボロボロになった茂君にどう報いれば良いのか。
だけども茂君は優しく微笑むと私の頭を撫でてくれる。


 「……一蓮托生、だろ?」

そう言って茂君は気絶した。
一連託生、茂君は私のような力もない。
それなのに、その責任を私と同じように背負うのか?

ジラーチ
 「たく……至る所で女を作ってそれを泣かせて……!」

永遠
 「茂君……私、私ぃ」

私は涙が止まらない。
茂君はどうしてこんな目に遭ってまでそんな事が言えるの?

ジラーチ
 「泣いてんじゃないわよ、茂お兄ちゃん助けるのが先」

永遠
 「……うん」

私は茂君の肉体時間をもどす。
すると茂君の肉体はそのままビデオのフィルムを巻き戻すように吐いた血が茂君の中に戻っていき、潰されたであろう内臓も戻っているだろう。


 「すぅ……すぅ」

茂君はそのまま安らかに寝息を立てている。
私はその姿に安心した。

ジラーチ
 「さて……それじゃ私はもう行くわ」

永遠
 「待って……貴方たちは何か知っているの? 神々の王への造反をしている神がいる可能性がある」

ジラーチ
 「……さぁね」

ジラーチはそう答えると、何処かへとテレポートしてしまう。
ジラーチとフーパ、本来なら存在してはいけない存在。
やはり何かが狂っている。
茜様も何かに気付いているんだろうか?

永遠
 「……寒い、茂君も急いでお家に連れて行かなきゃ」

兎に角今は茂君だ。
私は茂君を抱きかかえると、時を鈍化させるように茂君の家へと跳んだ。



突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語


第28話 襲撃、空間の神 完

第29話に続く。


KaZuKiNa ( 2019/05/25(土) 16:16 )