第24話 グリナとアセリナ
突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語
第24話 グリナとアセリナ
PKM連合の創始者の一人であり、そのリーダーだったグリナは死んだ。
ディアルガは彼女を英雄の器だと言っていたが、そんな者に代わりはいるのか?
だが、どんな形であろうと戦争は起きる。
一体裏で何が起きているのか、その真実は俺には分からん。
或いはディアルガがグリナを過大評価しただけの人的ミスかも知れない。
いずれにせよ、俺は絶対にそのクソッタレな世界を変えると覚悟したのだ。
何周かかるか分からない、だがそれでも、何周してでも俺は茜があんな暗い顔をせずに住む世界にしてやる。
夏川
「常葉! 一大事!」
茂
「どうしたんだ夏川? そんなに慌てて」
いつも通り平日の昼休み、いつものように休憩室の端の方に移動していた俺に夏川は慌ててやってくると、まくし立てるように言った。
夏川
「前から燻っていた中国でのストライキ、遂に火がついた!」
茂
「ッ!?」
夏川はスマホの画面を俺に見せると、画面には遠景ながら火の海と化した光景が映っていた。
夏川
「中国当局が該当地区へ入るのを禁止してたみたいだから、詳細は分からないけど……人に出来る物じゃないよね」
それは、ストライキだと言うが、実際はそんな生やさしい物じゃない。
記憶が確かなら、重慶コンビナート地区だった筈だが、この火は三日三晩燃え続けたって言ってたな。
夏川
「あーもう! 最悪だ、このままじゃ日本だっていつこうなるか」
茂
「日本でも起きる? その可能性はあるってのか?」
夏川
「可能性の話だけどね、常葉今日本にいるPKMの数は把握している?」
茂
「1000かそこら……だっけか? 細かい数字までは分からんが」
夏川
「俺も推定だけど、5000だ」
5000、経った1週間でその数は5倍か。
世界終末時までに1万という数もあながち間違っていないな。
そして夏川はその数を問題だという。
夏川
「国内のPKM収容所は精々1000人を収容できれば上出来って話だし、まず国家もその収拾に相当組織機能を使わされているみたいだ……それって、それだけPKM関係の事案がおざなりになっているって事」
茂
「PKMが暴動を起こす?」
夏川
「あ、あくまで可能性の話! ただ、管理しきれないPKMが溢れ出して、組織的な動きを見せる可能性は捨てきれない」
茂
「PKM連合……!」
それは正しくPKM連合の発端ではないか。
PKM連合の思想はグリナの語る人を排除してのPKMだけの独立国家を作ること。
それ自体に陶酔しているPKMも確かにいただろうが、大部分は怨恨だと思う。
茂
(上戸さんはPKM連合の浄化作戦で家族を失った。一方でほむらさんも家族をやられて人間を激しく憎んでいた)
あの負のスパイラルは既に生み出されている?
これは本当に止められるのか?
刻一刻と迫る戦争の足音に俺は戦慄するしかない。
そしてその予兆は時に、夏川のような人間にも予感させる。
***
大城
「……うん?」
昼、今日はいつもより少し遠くに出ていた。
何処か美味い飯屋でもないかと探っても、表参道じゃやっぱり期待出来ないか。
そんな風にカフェの手前を通りすぎようとしていた時だった。
脇道運転で人混みのある歩行者道路を我が道顔で走る40代位のオヤジがいた。
そしてその道の先に可愛らしいPKMがいるではないか。
大城
「やべぇ危ない!」
一瞬助ける対象を天秤に賭けたが、俺は結局飛び出した。
ガッシャーン!
俺はオヤジの自転車と正面衝突、庇ったPKMの女の子は驚いた様子で振り返った。
オヤジ
「痛た……どこ見てやがる!?」
大城
「うるせぇ! 女の子が大怪我するところだったんだぞ! つーか、自転車レーンの方を走りやがれ!」
いかにも無職でパチンコだけが生き甲斐そうなオヤジは速攻でDQNな言動をしてくるが、俺は容赦なく上から潰す。
大城
「自転車での衝突事故今じゃ刑法になるんだぜ!? 罪状は過失運転か!?」
オヤジ
「う!?」
いかにも頭の悪そうなオヤジだ。
俺もIT産業で働いているとはいえ頭は良い方じゃないが、キモデブのオヤジよりはマシだろう。
猫耳PKM
「あの、それより怪我……!」
紫色の猫耳に長い尻尾の美少女PKMは心配そうに俺に手を差し出してくれた。
大城
「ぐお!? 肋骨折れたかっ!?」
俺は立ち上がろうとすると腹部に激痛が走る。
冷静に考えて、自転車と正面衝突して無事だったら、仰天ニュースとかに出演出来るよな……そんくらい奇跡だわ。
猫耳PKM
「た、大変! 誰か−! 救急車!」
大城
(ぐおおお……やっぱり割に合わなかったのか?)
街が騒然となる、直ぐにやってきた警察がオヤジを捕まえて連行される中、俺はずっと猫耳PKM(紫音ちゃんというらしい)に見守られながら、病院へ連行されるのだった。
***
真莉愛
(最悪だ……)
今日は間違いなくワースト1位の最悪な日だと決定して構わないだろう。
いや、この1週間が過去最悪なのは間違いない。
PKMの加速度的増加は私たちPKM対策本部には到底処理不可能なレベルに達していた。
何度か、常葉さんからも連絡を貰っていたのに、一度も返事が返せないなんて、激務に追われていたとはいえ、最低よね。
しかし、それよりもだ……遂に国内で起きてはならない事が起きてしまった。
真莉愛
「収容所で暴動だなんて! それもこんな深夜に!」
その一報が送られたのは日付も変わろうかという時間。
結局寝る間もなく、最悪の事態に私は車を走らせる。
そして、山深く進んだ先の収容所に着いた時私は唖然とした。
真莉愛
「もぬけの殻……?」
そう、1000人近くのPKMが一斉にいなくなったのだ。
収容所は荒れに荒れており、暴動を怖れて近寄らなかった管理職員の無事だけは幸運だったけど、そこのいたはずのPKMたちはどこに消えた?
唯一の手がかりはただ一人残ったクルマユだけである。
いなくなったPKMを不安に思いながら……夜は明けていく。
***
そして……人類にとって最悪の日は訪れる。
茂
「大城の奴、怪我で入院とはついてないな」
夏川
「でも、PKMの可愛い子ちゃんを庇ったって言うから、立派だよ」
夏川にとってはそのPKMを庇ったという所がポイントなんだろうな。
大城は結構むっつり系だからこそ、欲が出たのだろうな。
兎に角大城の怪我も心配だし、今日は見舞いに行ってやるか。
ザワザワ、ザワザワ!
紅理朱
「……なんだか騒がしいですね?」
それは昼過ぎ、休憩時間での事だった。
何やら休憩室に置かれた小型テレビに人が集まっている。
ふと、夏川も自分のスマホを見た……そしてそれは。
夏川
「え!? 国会が乗っ取られた!?」
茂
「なに!?」
夏川はニュースアプリを確認したようだ。
そして小さなスマホ画面にテレビ中継を映すと、そこに映っていたのは……!
グリナ
『我々PKMが何故、人間によって虐げられなければいけないのか!? 我々は立たねばならない! PKMによる自治権の獲得! PKMのユートピア! PKMの真の自由を獲得するために! 全人類に対して宣戦を布告する! これは冬の時代を乗り越える独立戦争である!』
茂
「なっ!? グリナ!?」
そこには俺も見惚れするほど美しいグラエナ娘が演説台に立って宣言していた。
だが、それは紛れもない……PKM連合のリーダーグリナではないか!?
茂
(どういうことだディアルガ!? グリナは死んだんじゃないのか!?)
ディアルガ
『分からない! だけどグリナがこうしてここにいるのは事実だよ……蘇った理由は分からないけど』
ディアルガにも分からないか。
だが、演説をしているのは間違いなくグリナだ。
歴史は何も変わっていない。
俺たちは何を見落とした!?
いや、それよりも戦争を止めないと!
ディアルガ
『もう無理だ……今更グリナを止めたとしても、あの宣言をした以上戦争は止まらない!』
茂
「くそ……!」
俺はやり場のない怒りに拳を振るわせた。
その様子は随分心配そうに俺を見る上戸さんたちから分かった。
紅理朱
「……これって何かの冗談でしょ? 建国なんて出来るわけが……」
茂
「出来る出来ないじゃない……戦争が起きるんだよ、無関係なPKMたちまで巻き込んだ種の存続を賭けた戦争が……!」
……2時間後、至る所でグリナに賛同するPKMたちが一斉に蜂起を開始した。
警察では対処しきれないと事態を重く見た首脳部は自衛隊による鎮圧を検討……しかし既に歴史が証明するように。
PKM連合の初動を止めることは不可能だった。
***
真っ白な世界。
茜が全てを滅ぼして、世界が虚無へと変わる1秒前の世界。
そこには俺とディアルガだけがいる。
ディアルガ
「久し振り」
茂
「……一体どこで間違えた?」
俺たちはどこでグリナの事を見誤った?
紅恋さんといい、保護責任者のお爺さんといい、誰も嘘はついていなかった筈だ。
グリナは死んだ、それは紛れもない事実の筈。
じゃあアイツは誰だ?
国会を占拠するに至ったあのグラエナ娘は?
ディアルガ
「いくら何でも、墓から蘇る……訳はないし」
茂
「タイムマシンでもありゃ、不可能ではないのかも知れないが」
ディアルガ
「時の神である私に対してその発言は頂けないよ、時を操る技術があるなら、私だって分かる」
そりゃそうか、時に関してディアルガより詳しい奴もいないだろう。
事実彼女の力を借りて俺はタイムリープを繰り返している。
ディアルガもその点に不満を持ったのか、可愛らしく頬を膨らませて怒った。
ディアルガ
「兎に角、グリナが現れたとなるとシンプルで良い。グリナの国会占拠を阻止すれば、周囲に潜んでいたPKMたちも蜂起を取りやめる筈でしょ?」
茂
「確かに、当初の想定通りにやるだけか」
グリナの復活の謎は分からない。
だが、過去と同じ事を行っているならこれはシンプルだ。
当初の予定通り、国会を乗っ取る前に止める!
茂
「……朝7時、俺が起床する時刻に送ってくれ」
ディアルガ
「オーケー、その代わり力ずくにでも止めるんだよ?」
茂
「ああ、絶対止める!」
***
『デーデデン♪ デンデンデンデン♪ テーレッテー♪』
茂
「ん……」
朝7時のアラーム、寝ぼけ眼を擦りながら起きるとベッドの上に茜がいた。
茜
「ご主人様、おはようございます」
茂
「ああ……おはよう」
俺はその既視感を覚える姿に、徐々に記憶を改めていく。
ディアルガは正確に送ってくれたようだな。
茂
「起きるから、ベッドから退いてくれ」
茜
「はい……」
茜は少ししょんぼりしながらベッドから降りた。
そう言えば、茜は甘えたくて来たんだったな。
茂
「茜、毎日ありがとうな」
俺は茜の頭を優しく撫でると、茜は目を細めて喜んだ。
尻尾も気持ちいつもより良く振っており、気分は少し良いようだ。
茂
(さて……確か国会を占拠したのは13時頃)
特に警戒もされていないだろう平日の通常国会とはいえ、警備員を出し抜いて堂々占拠するのは並じゃない。
早速家族の力を借りるしかないとはな。
***
保美香
「は……? お仕事をお休みになる?」
茂
「ああ、勿論ただサボりたいからそうするんじゃないぜ」
朝ご飯の時、俺は今日の予定を全員に話す。
国会を占拠しようとするグリナを止める。
俄には信じられないだろう言葉だが、家族たちは真剣に聞いてくれた。
美柑
「そのために力を貸してくれと言うのなら喜んで貸しますよ!」
伊吹
「そうだね〜、それに少し気になるし〜、アタシも手伝うよ〜」
凪
「私も当然力を尽くそう」
華凛
「ダーリンのためだからな、良い女を見せてやるさ」
全員一致だった。
改めてこの家族を持てた事は人生で一番の幸運だろうな。
とりあえずこれだけの戦力があればグリナを止めれないなんてことはないだろう。
いずれも百戦錬磨、伊達に異世界の戦争を生き抜いちゃいないはずだ。
茂
「朝から、張り込みをする事になるが、皆頼む!」
保美香
「警察に任せる方が無難だとは思うのですが……だんな様の予知は少々不可解ですからね……やむを得ないでしょう」
茜
「……」
やっぱり、保美香には俺がタイムリープして得た情報は不可解に思われるか。
多分口にしてないだけで皆そう思っているだろう。
ディアルガの事を言えば早いが、まず茜以外が信じるか疑問だし、その当の茜がディアルガの存在を認めた時何しでかすか分からない。
ディアルガ本人もなるべく茜には悟られないようにと言われているからな。
まぁ結局茜にも思いっきり怪しまれている節はあるんだが。
保美香
「さて、それでは全員分のお弁当を取り急ぎ用意致しませんと!」
華凛
「そこは向こうで食べればいいんじゃないか……?」
保美香
「シャラップ! 外食など外道!」
美柑
「外道って言い切った……!」
凪
「外食産業には絶対聞かせられないな」
保美香はそう言うもかくや、慌てた様子で台所に立つ。
相変わらずの料理人としての矜持か、時に非効率な事も辞さない辺りが保美香らしいな。
茂
「10秒メシで充分なんだけどな」
保美香
「ガッデム! だんな様があんな機能性食品ごときに毒されたとは!?」
美柑
「それ、言い過ぎ!」
伊吹
「あはは〜、まぁ栄養はともかく機能性食品じゃ味気ないしね〜」
茜
「食は万里に通ずる……」
ディアルガ
『賑やかだね、暗くなるよりは良いけど』
半ばどんちゃん騒ぎ、ディアルガも呆れているようだ。
まぁ一々突っ込まなければ静かな物だが、食に関してはプライドの高い保美香だからなぁ。
俺もそんな家族のたちのどったんばったん騒ぎを微笑ましく見ている。
それと同時に、御影さんへ最後の連絡を行うが……やはり返事はない。
茂
(御影さんの力を借りられれば、一番心強いんだけど……やっぱり仕方がないか)
もし力を借りられるなら11月21日の時のように、愛紗さんたちを国会議事堂周辺に配備して貰えば、最悪の事態は避けられた筈だ。
だが、その手が使えない以上これは俺たちだけでやるしかない。
***
茜
「大きい……アレが東京タワー?」
茂
「スカイツリーな、つか流石首都直下、人多すぎだろ」
国会議事堂があるのは東京都千代田区永田町、あの政治家の町で有名な場所。
そして浄化作戦で最も多くの被害が出た場所だと言える。
PKM連合は元々一般人に対しては寛容だったが、政治家に対しては厳しい物があった。
グリナが国会占拠後には、自宅監禁などをして逃げ場がないまま多くの犠牲者を産んだとされる。
その後の顛末は、俺の体験した歴史の通り、PKM連合は東京を占拠、日米両軍による東京湾からの艦砲射撃によって東京地区は放棄したが、その報復は関東1000万人の浄化作戦だ。
斯くして戦争は人類とPKMの血で血を洗う泥沼の構図になる。
茂
(だが、人類側は早期に解決を図る能力はあった……だが実際には見たこともない多くの兵器の実験場と化していた)
特に、最後に出てきた巨大な陸上歩行多脚ロボットは圧巻だった。
○ームズフォートと言われても納得の人類最大の工業の産物だったろう。
改めて人類がこれまで採掘してきた資源の量、人類は後10年は戦えるのだよ、と言わんばかりだ。
まぁ、結局は伝説のポケモンの前では鉄屑同然にされたんだが。
茂
(だが、アレじゃ意味がない……茜は結局世界に絶望して、同じようにリセットするのだろう)
茜は既に神々の王とやらに覚醒しているのは間違いない。
それでも茜でありたいというささやかな想いが、覚醒を躊躇わせているその想いは大切にして欲しい、そして護りたい。
茜が世界を消すとき見せた涙を俺は忘れない。
茜が神々の王に戻る事は、嬉しい事より哀しい事の方がずっと多いということ。
茂
「茜……全てが終わったら、旅行でも行くか! どこが良い?」
茜
「ご主人様?」
俺はそっと遠景のスカイツリーを見ながらそう言うと、茜は不思議そうに俺の顔を見上げた。
俺はそんな茜の頭に手を置くと、優しく撫でる。
茜
「ご主人様とだったらどこでもいい……中野○RFとか」
茂
「具体的な場所来たな! つかゲーセンかよ!」
思わず突っ込みに苦笑してしまう。
茜らしいが、ゲーセンとはな。
格ゲー大好きの茜らしいが、修羅共相手にどこまでやれるのか気にはなるな。
茜は今でも少しくらいなら希望は持っているのか、俺と話していると嬉しそうに尻尾を振っている。
昔は本当に尻尾で喜怒哀楽の表現は激しかった。
今では本当に物静かで暗い少女になってしまったものだ。
その原因が未来への絶望なら、俺が絶対に開いてやる。
ディアルガ
『希望の未来へ、レディーゴー! だね』
茂
(ラブラブ○驚拳は出ないけどな!)
出したら茜エンドで確定してしまうからな!
折角だから俺はハーレムエンド狙うぜ!
茜
「……ッ! ご主人様、アレ」
茜が指差した先、じっと宮中御殿の方を眺める女性を発見した。
それは見間違えるはずのない黒髪のPKM、グリナだ。
茂
「茜、皆に集合の連絡を」
茜
「はい、ご主人様」
茜はスマホで連絡を届ける。
土地勘はなくとも、議事堂周辺を1周すれば問題なく合流出来るだろうからな。
俺はその間に女性に近づいた。
茂
「観光ですか?」
グリナ
「え? あっ……そう、ですね。観光です」
グリナは声をかけられるとは思わなかったのだろう、驚いた様子で言葉も詰まらせた。
勿論こっちは観光じゃないのはリサーチ済みだ。
後1時間で彼女は国会を占拠する。
今は下見といった所だろう。
グリナ
「どうして人間には差別や偏見が存在するのでしょう?」
茂
「は? いや、そりゃ……人間はエゴで出来た物だしな」
俺も意外すぎる質問に言葉を詰まらせる。
急に哲学的な事を聞かれたのか、想定外過ぎるわ。
グリナが見ていたのは御所宮中?
だとしたら、グリナの根底には身分格差みたいなのが潜んでいるのか?
グリナ
「所で、そちらの彼女さんは放っておいていいの?」
不意に、グリナは茜に目をやると目を細めて笑った。
どうやらデート中だと思われたらしい。
茂
「茜、こい!」
茜
「はい、ご主人様……!」
茜はパタパタと走ると俺の横まで来る。
茂
「俺は常葉茂、でこっちは家族の茜」
茜
「茜です……ご主人様にはとても良くしていただいています」
グリナ
「主従関係か……、いい毛並みだ、本当に大切にされているのが分かる」
茜はそう言われると照れて、俺の腕にしがみついた。
グラエナはとても統率力の優れたポケモンだと言われていたな。
現実で言えばオオカミに近い集団性があるのだろう。
彼女には確かに英雄としての器はあるのかも知れない。
最も俺は彼女を英雄にする気はないが。
グリナ
「私は……っ、グリナと言います」
茜
「グリナさん?」
茂
(なんだ? どうして名乗るのに躊躇った?)
グリナは少々不可解な事をした。
それは名乗りを上げるのに、一瞬言葉を飲んで躊躇った事。
あからさますぎて茜でも不自然に思っている。
ディアルガ
『偽名を名乗るか、悩んだんじゃないの?』
茂
(それでも結局本名を名乗ったら意味ないじゃないか)
自分の名前を言えない訳がない。
まして命名者に与えられた名なら、当たり前に使うはず。
本当に不可解だな。
グリナ
「それにしても、本当に東京は人が多いですね」
茜
「東京は1日で1000万人が利用するらしい……」
茂
「桁違いだな、マジで」
俺は周囲をそれとなく見渡すと視界の端に見覚えのある顔を発見する。
茂
(保美香、美柑、凪は確認)
順次この場所に集合している。
俺が力技に出るのは最後の手段。
恐らく不可能だろうが、可能ならば言葉で彼女に国会占拠を止めて貰う。
グリナ
「それにしてもおかしな日だ、永田町にはPKMは0だと聞いていたのに、今日は随分集まっている」
茂
(!? 気付かれているのか?)
それはただ、多いなと感じただけなのか、それともこちらの真意が読み取られたのか分からない発言だった。
まだグリナには謎が多い、少なくともその辺りは掴まないと。
茜
「……教えて、国の中枢に何を思ったの?」
うおい!? 茜さんがいきなり直球で聞き始めましたよ!?
流石にどうかと思ったが、意外にもグリナは。
グリナ
「不快感だな……満足に議論する気のない質疑応答には辟易している」
茂
「まぁ野党のやる気には納得だわ」
意外にも真面目に答えてくれた。
政治的な話ではなく、あくまで一個人の感想といった感じだが、少なくとも良くは思ってないらしい。
グリナ
「君たちは息苦しいと思わないか? この世界では我々はPKMと呼称されて差別されている」
茜
「……でも人間じゃない」
……茜は何を思っただろう。
グリナは明確にPKMを差別だと言った、そこには明確な独立国家建国への想いも感じさせる。
それに対して茜は人間でもないと答えた。
それは自分自身の正体に対して答えたのかも知れないが、茜は言葉を続ける。
茜
「私はPKMで幸せよ、だってご主人様と一緒にいてもいいって証だもの……」
……茜の言葉は真実を知っていると重い。
茜と俺が永遠に二人っきりの世界では、茜は未知の生物として、俺と永遠に引き離されたらしい。
俺の子供も身籠もったらしいが、子供ごと実験動物として扱う人類に彼女は恐怖を覚えて、対人恐怖症になったらしい。
それに対してこの世界は茜をPKMだと認め、公には茜を連れ去ることは出来ない。
少なくともこの点は茜にとって救いなんだな。
最も今度は俺が謎の秘密結社に狙われる立場になってしまったが。
異能生存体だからって明日に繋がる今日くらい、そっとして欲しいのよ。
グリナ
「幸せ……か。本当にそうなのか?」
茂
「何故疑う?」
グリナは明確にPKMを疑問視している。
人間として認められたいのか、彼女はその答えを言う。
グリナ
「PKMは絶対に人間に危害を加えてはならない……それは例え犯罪者が相手でも」
茜
「危険だから?」
グリナ
「人の理屈で言えばそうなるだろうな、だがそれは我々PKMが悪漢に襲われても言えるか?」
茂
「それは……」
グリナ
「他にも、我々は数多い制限を受けている……大切な物も守れない程に……!」
段々グリナの毛が逆立ち始めた。
それは明確な彼女の怒り。
そこに俺は出来事を思い出す。
茂
「グリナは悪漢襲われて死んだ……?」
俺は紅恋さんやお爺さんに聞いた話を思い出す。
グリナは道ばたで悪漢に襲われて死んだという。
グリナはその言葉に動揺した。
まるで全てを奪われたかのような絶望した顔。
グリナ
「グリナ……そうよ、だから私は……!」
グリナはフラフラと国会議事堂の方へと歩み出す。
グリナの死という言葉が、彼女に何かを決意させた!?
茂
「止めろグリナ! PKMの独立国家なんて幻想だ! 無関係のPKMを巻き込むな!」
グリナ
「っ!? 何故貴方がそれを!? しかし! もう止まれない! 私は決意し、覚悟したんだ!」
グリナは走り出す。
PKMが本気になれば、人間に止めることは不可能。
高い外壁も意味を成さないだろう、しかし!
華凛
「はぁ!」
すかさずインターラプトしたのは華凛だ!
華凛の重い蹴りを片腕ガードしたグリナは表情を歪ませた。
とりあえず騒ぎを起こせば、警備員だってやってくる。
演説さえ阻止すれば問題ない!
グリナ
「くそ!? どうなっている!? 謀られたのか!?」
華凛
「悪いな、ダーリンにお前の暴走を止めろ言われているんだ」
グリナ
「ち……邪魔をするなぁ!」
グリナの艶のある大きな尻尾が鋼鉄の輝きを持つ!
それは鋭利な刃のように華凛を襲った!
華凛
「ちぃ!?」
華凛は両腕でガードする物の、吹き飛ばされて、国会議事堂の外壁に衝突した。
茂
「なんて威力のアイアンテールだ!」
内の家族でも単体でアレだけの攻撃力持つものは少ない。
ディアルガの言う英雄の器というのは伊達ではないか!
保美香
「全く様になっていませんわ!」
美柑
「後はお任せを!」
しかしグリナを阻む、保美香と美柑。
更に周囲を俺たちが囲む。
グリナはまさかという表情で周囲を覗った。
グリナ
「まさか……全員私の敵だと言うのか?」
茂
「まさかって事は……やっぱ、もうPKM連合は結成されてんだな」
グリナ
「君は何者だ!? どこまで知っている!?」
茂
「アンタが起こす悲劇全部だよ!」
俺は路頭に迷うPKMを知っている。
全てがPKM連合を良しとはしていない。
ほむらさんのように家族を失った哀しみを背負った人も見た。
きっと保護責任者と幸せに暮らす多くのPKMがその仲を引き裂かれたに違いない。
夏川が以前、PKMと過ごす時間を増やすため、脱サラしてパン屋を開いた人物の話をしてくれた事を思い出す。
その人はきっとPKMを愛してた、話ではそのタブンネのPKMは薬指に指輪をしていたそうだし、きっと今も幸せの絶頂だろう。
グリナ
「悲劇……それならば何故グリナは死んだ!? グリナは本当に良い子だった! グラエナに進化したばかりの幼い子だったが、悪漢にただ襲われて殺される人生など許されて良いものか!?」
茂
「……? お前はグリナじゃないのか?」
ずっと疑問に思っていた。
グリナは何故死んだのに蘇ったのか。
どうして彼女は名乗るのを躊躇ったのか。
今、疑問が氷解し始めている。
グリナ
「グリナは私の妹だ! 私の本当の名はアセリナ! 私はグリナの無念を晴らす!」
茂
「アセリナ……? グリナじゃない……?」
ディアルガ
『そういうことか、やってくれるね……騙されたよ』
俺たちが取り囲むグラエナ娘のグリナ、俺たちはそれを疑っていなかった。
だが真実は違う、グリナが死んだというのは正しい。
そしてグラエナ娘は2人いた、グリナとアセリナ!
茂
「グリナ……いや、アセリナ! 何故妹の名を語る!?」
アセリナ
「妹を忘れないためだ! あの子はこの国の無茶苦茶なルールによって殺された! 私はこんな狂った国を認めない!」
華凛
「……要は復讐か」
華凛はゆっくり立ち上がると、憐れそうにアセリナを見る。
復讐という動機は華凛と同じだ。
そう、大切な者を理不尽に奪われたというのは両者同じなんだ。
アセリナ
「お前たち、そこをどけ! 私はただ理不尽な世界を変えたいだけなんだ!」
茂
「同じだよ……俺も同じなんだ。理不尽なこの世界を変えたい……だからアンタを止めるんだ!」
アセリナは自らが起こす悲劇を全く理解していない。
それはある意味で仕方がないのかも知れないが、俺は今から起きる悲劇を止めるしかない。
?
「やれやれ……思わぬ伏兵ですか」
凪
「? どこだ!?」
突然、聞き慣れない声が聞こえる。
周囲には騒ぎを聞きつけた野次馬や、警備員が集まってきた。
その中にこの声の主がいるのか!?
?
「グリナよ、力を貸しましょう」
アセリナ
「ち……七難八苦か!」
突然だった、周囲を取り囲むように、PKMが現れる。
まさかテレポート!? そう訝しむも刹那、PKMたちは殺気を放った!
茜
「まずい! ご主人様!」
PKMたちは突然無差別攻撃を開始する。
電撃を放つ者、火炎を放つ者、その攻撃は誰かを狙うものではない。
それだけに野次馬に集まった民衆は一気にパニックを起こす。
凪
「くそ!? 一体どうすれば!?」
伊吹
「アセリナを止めるの〜……そしてあの暴走したPKMたちを鎮圧するしかない〜!」
華凛
「アセリナは私に任せろ、同じ悲劇を繰り返させる気はない」
伊吹
「皆〜! PKMたちの様子はおかしい〜! きっと術者がいる〜!」
茂
「術者!? 集団催眠か!?」
伊吹の言うとおり、PKMたちは明確な意識があるなら、もう少し正確な動きをするだろうに、その動きは他者に制御されたように不自然だ。
それは正しく集団催眠、そうなるとそれが可能なポケモンは限られるはず!
茂
「オーベムかスリーパー! この辺りが怪しいか!」
俺は乱戦の中、それらしき者を捜す。
しかし、これは容易ではないな。
エレブー娘
「AAAAAAAAAAAAAG!」
まずい! 目の前に雷パンチの態勢に入ったエレブーがいる!
やられる! 俺は多少ダメージを覚悟したその時。
茜
「はっ!」
すかさず茜がエレブー娘の背中から腕を取り、地面に組みふせる。
エレブー娘は暴れるが、茜は容赦なく腕を背中側に外した!
茂
「茜!」
茜
「ご主人様の敵は全て排除します、ご主人様は自らの目的を果たしてください」
そう言うと茜はエレブー娘の頭踏み抜いて、気絶させる。
なんか、やっぱりやることがえげつなくなったよな。
いや、昔からやるときは結構怖い子だったが、攻撃に躊躇いがない。
なまじ派手な技がない分、やることが妙に痛々しくなるんだろうな。
とはいえ、これで俺は術者を探せる!
しかし問題のアセリナはどうなっている!?
俺は乱戦の最中アセリナを探した。
***
華凛
「アセリナか……名付けは保護責任者か?」
アセリナ
「何が言いたい?」
華凛
「いやなに、貰った名は大切にした方が良いと思ってな」
私はカリンという名を誇りに思っている。
凛とし華があるという意味でつけられたこの名、汚したくはない。
私は一度重たい胸を持ち上げて、揺らすと臨戦態勢を整える。
華凛
「私はかつてアーソル帝国の皇帝として何百万ものポケモンたちを死地へと追いやった……その罪を私は忘れない。そしてお前は私と同じ道を行こうとしている……だから私はお前を止める!」
アセリナ
「く! ああああっ!」
アセリナは迷わず直進してくる。
その態勢は低く、原種のグラエナのようだ。
私は丸腰だ、この状態では必殺の技を繰り出す事は出来ん。
だが……!
華凛
「かまいたち!」
私は普段は使わぬと封印した技を解禁する!
辻斬りは皇帝としての矜持だ、しかし今の私はダーリンのポケモンなんだ!
アセリナ
「がぁ!」
かまいたちがアセリナの皮膚を切り裂く!
しかしアセリナは止まらない! 大きく口を開けると私の左腕に噛みついてきた!
華凛
「ぐぅ!?」
アセリナの噛み砕くか!
同じ悪タイプ同士、効果は今ひとつだが私は左腕のダメージに軋む!
華凛
「舐めるな!」
私は左腕を捨てる覚悟で、アセリナを地面に叩きつける!
アセリナは鮮血を口から垂らしながら地面を転がる。
その血は私の左腕から今も流れているものだ。
凪
「何をしている!?」
華凛
「ふっ、別に遊んじゃいない、左腕がやられただけだ」
アセリナ
「ペッ! 強がりはよせ」
アセリナは立ち上がると口の中に含まれる血を地面に吐いた。
本人もダメージはあるはずだが、流石に私の方が重いか。
華凛
「……私を打ち負かした女は16分割寸前のダメージでも私を打ち負かしたもんだ。ならば私も瀕死なるまで戦ってみせようじゃないか」
凪
「華凛……お前」
華凛
「後ろだ! 馬鹿者!」
凪は咄嗟に後ろを取っていたツチニンを思わせるかぎ爪のポケモン娘に反応する。
私に気を取られて背後を取られるとはまだまだだな。
私は凪を他所にアセリナだけを見た。
アセリナ
「お前はどうやら高潔なようだな」
華凛
「良い女と言ってくれ、良い女は最後には勝つのさ」
アセリナ
「ならばその幻想を砕いてやろう!」
再びアセリナは直進してくる。
だが、猪のようでいて、その戦術は多彩のようだ。
殆どの技が白兵戦向き、それ故にクロスレンジでは相手の方が手数が上か。
アセリナ
「こういう技も使えてな!」
アセリナは目視2メートルの所で瞬時に3体に分身した!
影分身! それが全く同じ動きで私に迫る!
アセリナ
「はぁっ!」
アセリナが拳を握りしめる!
私は一度身体から力を抜いて、相手を見捉える。
同時三体、その中で本物は一人。
攻撃的な影分身の使い方は初めて見た……が、やることは同じだ!
華凛
「辻斬り!」
私は右手に闇の刃を生成し、それを神速の技で横に薙ぐ!
2体の分身は消滅し、腹部を切り裂かれたアセリナが目の前で崩れ落ちる。
華凛
「愛刀であれば、真っ二つだったな……運が良いぞ」
流石に手刀に纏わせた辻斬りでは攻撃力はここまで落ちる。
この技は鋼さえも切り裂く大業物に支えられた必殺技だからな。
アセリナ
「がは……分身ごと纏めてか……!」
今度は正真正銘自分の血を吐いたな。
アセリナはよろよろ立ち上がるが、グロッキー寸前だ。
だがその闘志は一向に衰える様子がない。
こいつの復讐心を折るには意識を奪うほかないか。
華凛
「こい、次で終わりだ」
私は手で挑発すると、アセリナは牙を見せつけるように口を開いた。
アセリナ
「噛み砕く!」
アセリナが飛びかかってくる。
今度はその狙いは首元か、だが既に戦いは私が征した。
華凛
「はっ!」
私は垂直に所謂ケンカキックでアセリナの口に蹴りをねじ込んだ。
華凛
「いくら何でも私の足よりお前のリーチがある訳はないよな?」
アセリナ
「が……は!?」
アセリナの勢いが止まった。
アセリナは前歯を折り、血を吐いて地面に崩れる。
アセリナ
「何故、だ……! この狂った世界、それをただ理不尽に享受するしかないのか?」
華凛
「この世は不条理、理不尽が道理を殺す……それは正しい」
アセリナ
「ならば何故変えようと思わない……?」
私は不便だが使えない左手に代わって右手だけで胸を持ち上げアジャストする。
デカ乳は肩が凝って仕方がない。
華凛
「全ての人間が貴様のように不幸だと思うな、この世に平等などありはしない。ただ幸せになるため努力するしかないんだよ」
私は勝ち誇るようにアセリナを見下し、そして現実を説いた。
例え世や運命を呪えども、不条理には敵わない……それは人生から学んだ。
だけども幸せの努力をすることは誰にでも平等に出来る。
華凛
「私はハッピーだぞ、ダーリンがいつも一緒にいてくれるんだからな!」
アセリナ
「幸せの努力か……しかしグリナは帰ってこない、忘れろと言うのか」
華凛
「分からんのか? この戯けが! 忘れるのではない……その痛みも己の物でしかない……ただ背負って歩き続けろ」
私自身、自らの罪を背負い、今も歩みを止めてはいない。
それでも私に断罪を求めるなら、裁かれよう。
?
「アセリナ……目を掛けたにも関わらず無様な」
アセリナ
「……く」
再びどこからか声がする。
声から察するに黒幕といった所だろうな。
***
茂
「答えろ! 貴様がアセリナを誑かしたのか!?」
俺はどこからともなく聞こえる声に叫んだ。
乱戦の中を探してもそれらしき姿は見えない。
もしかしたらこの場にはいなくて声だけを届けているのかもしれない。
少なくともPKMをテレポートさせた所、エスパータイプなのは確かだろう。
それならばテレパシーや声だけを飛ばすことは不可能じゃないんだろう。
ナツメのテレパシーとは異なるが、少なくとも似たようなものだと思う。
?
「誑かした? 違いますよ……彼女に力を貸したに過ぎない……」
茂
「貸しただと? 何のために!?」
?
「新世界創世のために!」
ゴゴゴゴゴ!
突然地面が揺れ出した。
いや、違う……!
空間が震動している!
?
「アセリナ、実力的には貴方は惜しい存在ですが、替えは用意出来ます。建国を前に宣戦布告と行きましょう!」
それは唐突に発生した。
東京の高層ビルが次々に崩れ落ちていき、街は阿鼻叫喚の地獄と化していく。
茂
「止めろ! この街には罪のない大勢の人間やPKMがいるんだぞ!?」
?
「約束されし神々の黄昏の前に置いては、この程度の生贄では足りません。さぁ人類よ! PKM連合が浄化して差し上げましょう!」
それは正に勝ち誇った声だった。
謎の存在の高笑いと共に、次々とPKMが現れ、人間を襲う。
ディアルガ
『一旦こっちに戻れ茂君! 君の負けだ!』
茂
「……くそ!」
俺はアセリナを捜した。
それは直ぐ近くで華凛に肩で支えられている。
茂
「アセリナ! 教えてくれ! 奴は一体何者だ!?」
アセリナ
「奴の正体は分からない……いつも大き芭蕉扇で顔を隠して、決して光の下には現れない……」
茂
「芭蕉扇……諸葛孔明とかが持ってるアレか!」
ポケモンで言えばヤレユータンがいつも持っている扇。
数少ないがヒントだ。
茂
「アセリナ……俺は絶対に世界を救う! その中にはお前やグリナも入ってる!」
アセリナ
「グリナも? そんな今更……出来るわけがない」
茂
「俺はタイムリーパーだ! 俺を信じてくれ!」
アセリナは信じられないという顔だったが、俺も必死だ。
だが、少しずつアセリナの表情は俺を真っ直ぐ見るものに変わっていく。
アセリナ
「11月23日だ……グリナの命日、夜の10時頃……もし本当に救えるなら……!」
茂
「あったり前だ! 俺は世界を救うんだからな!」
俺は時の結晶を握りしめた。
そこから俺の意識は真っ白に漂白される……!
突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語
第24話 グリナとアセリナ 完
第25話に続く。