突然始まるポケモン娘と○○○する物語





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第三部 突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語
第22話 突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語

突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語

第22話 突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語


そこは宇宙だろうか?
暗闇を照らす星々は実際はただの光点に過ぎない。
まるで宇宙に作られたかのような場所に玉座がある。
その脇には神話で語られるほどの力を持つポケモン娘たちが列を作り、神々の王へと頭を垂れていた。


 「失敗した……また失敗した」

私は玉座へ座ると、私の側近で純白のポケモン娘アルセウスが近くに寄ってくる。
私の姿は力無いイーブイの姿から、名も分からない彼女たちが神々の王と呼ぶ者の姿に変わっていた。

アルセウス
 「満足でしたかな? 王よ」


 「……」

私は何も答えない。
正直アルセウスが言いたいことは分かっている。
ポケモンという概念すら超越した存在が、イーブイに扮して、下々と遊ぶのが滑稽に見えるのだろう。
私自身滑稽だとは思う。
だが、私は神々の王であり、茜と言う名を持つ一匹のイーブイだ。

アルセウス
 「世界には終わりと始まりがある……一人に固執するのは如何なものか?」


 「ならばお前に問おう、我が主をお前ならば救えるか?」

アルセウス
 「……貴方に出来ない事を私が出来るとはお答え出来ません」

アルセウスは少々皮肉屋な所がある。
全能神とも呼べる力を持っても、それを生み出した者からすればシナリオ通りの動きをしているに過ぎない。
神々の王と言われる私でも同じだ。

私は思い出す。
その始まり……切欠を。



***



神々の王、その名は私さえも知らない。
数多の世界を見守り、時に破壊し、時に生み出していた頃、ほんの戯れのようにある世界にイーブイとして転生した。
その際私は自身の記憶を封じて、命の限りのある者に転生したのだ。

イーブイ娘
 「ここは……どこ? 私は誰?」

私が私として目を覚ましたとき、そこは街頭に照らされた夜の住宅街だった。
私は自分が誰だか分からず戸惑っていると、暗闇の中から誰かが近づいてきた。

スーツ男性
 「あーもうちっくしょう! あのクソ課長爆発しろ!」

フラフラと千鳥足でこちらに寄ってくるスーツ姿の長身の男性だった。
とりあえず第一印象は目つきが悪い、まるで死んだ魚のような目だった。

男性
 「んあ? 嬢ちゃん、こんな所でどうしたの?」

イーブイ娘
 「あの、私……その」

男性
 「ん〜? コスプレ?」

イーブイ娘
 「はえ? その……あうぅ」

何も答えられない。
当然だ、生きるための知識を何も備えていないのだから。
だけど死んだ魚の目の男性はニコッと笑うと。

男性
 「なーんか訳ありっぽいけど、良かったら家来る?」

イーブイ娘
 「はえ?」

男性は私の手を掴むと、目の前のアパートの階段を登っていく。
私は戸惑いながら、手を引っ張られる。

男性
 「あれ? 鍵どこだっけ……ああ、あった!」

男性は服のポケットから鍵を取り出すと、アパートのドアを開ける。
中は狭く、そして汚い男性の部屋だった。
私は訳の分からないまま、中に案内される。

男性
 「でだ、君は家出かな? 奇妙な格好だけど……つか暑くないの?」

男性は相当酔っているのだろう。
顔を真っ赤にしてドカッと乱暴にリビングに座ると、そう聞いてきた。
私は気が付けば毛皮のコートを着ていた。
まだその時、時間の感覚は知らなかったが、6月には異常な格好だった。

男性
 「とりあえず脱いだ方が良いと思うぞ〜? 熱中症になったら洒落にならんし……」

男性は立ち上がるとフラフラと歩き出す。
私は言われた通りコートを脱ぐと、男性は麦茶の入ったポッドを冷蔵庫から取り出していた。

男性
 「とりあえずお茶でも……て、なんで素っ裸!?」

イーブイ娘
 「脱げと言われたから……」

毛皮のコートの下には何も着ていなかった。
私自身疑問にも思っていなかったが、男性からすると異常のようだった。

男性
 「急いで着て! まるで家出少女を泊める代わりに肉体関係求めているみたいじゃん!?」

イーブイ娘
 「……はい」

私はもう一度毛皮のコートを着直す。
男性は麦茶をコップに注いで差し出してきた。

男性
 「まぁ粗茶ですが」

イーブイ娘
 「……美味しい」

それは初めて味覚を刺激された瞬間だった。
今にして思えばなんてことのない麦茶だが、その時にはとてつもない美味しさに思えた。

男性
 「そういや名前聞いてなかった……俺は常葉茂、君は?」

イーブイ娘
 「分かりません……名前、無いんです。分かっていることは私がイーブイだと言うこと位」


 「イーブイってポケモンかよ、耳や尻尾はそれっぽいけど、擬人化とでも言うのか? 冗談はよせ」

イーブイ娘
 「じょ、冗談では……」


 「大体それだってウィッグじゃねえの? あれ……生えてる?」

男性……茂さんは私の耳を弄くると私はむず痒くて、身体をくねらせた。
徐々に現状を理解し始めたのか、茂さんは唐突に笑い出すと。


 「アッハッハ! そうすると何か? 俺はポケモントレーナーにでもなったのか?」

イーブイ娘
 「ポケモン……?」


 「なら、俺はご主人様に当たるわけか!」

イーブイ娘
 「ご主人様?」


 「うーむ、だとするとただのイーブイだと味気ない……が、名前を考えるのも面倒くさい! もう寝る!」

そう言うと男性……ご主人様は傍のベッドに横たわった。
ご主人様はものの10分ほどで眠ってしまった。
私はどうすればいいか、分からずベッドに潜り込み、一夜を明ける。



……翌日、酔いの覚めたご主人様は大狂乱、飛び跳ねるほど驚いていたが、私を受け入れてくれて茜という名前まで頂いた。
それから私はご主人様と奇妙な同棲生活を続けていくことになる。



***



同棲生活は1カ月も過ごし、私はご主人様とも親しくなっていた。
でもご主人様は毎日酔って帰ってきて、会社の愚痴を溢す。
時には怒鳴るように、その怒りを私にぶつけてくることもあった。
私は無知すぎて、なぜご主人様がこのように辛い目にあっているか分からない。
無知なイーブイ娘である私ではご主人様に何もしてあげられなかった。


 「ご主人様……」


 「なぁ茜……俺ぁどうすりゃ良いんだ? このまま一生社畜か?」


 「私には分かりません……」


 「分かってる! ただ慰めが欲しいんだよ!」

ご主人様完全に酔っていた。
素面では優しいご主人様だけど、今日は特に酔いが酷くて私はベッドに押し倒される。
ご主人様の目は充血していて、獣のようだった。


 「茜……!」

ご主人様は私の身体を求めて来た。
私は初めての行為に戸惑ったが、ご主人様の全てを受け止めた。
私は何も出来ない無能、ご主人様が仕事のストレスを抱えても、何もしてあげられない。
だが、肉体を求められた事は唯一私がご主人様にしてあげられることで、私は嬉しかった。

それからも私たちは何度も行為を繰り返し、ご主人様のオナペットでも構わないと思え、そして充足していた。
だが、それが間違いだった。



***



警察官
 「常葉茂! 少女拉致監禁の容疑で逮捕する!」

それは8月の頃だった。
突然誰かが二人暮らしを始めたご主人様を疑い、警察に通報したのだろう。
私は拉致監禁されたと勘違いされて、ご主人様は留置所に送られた。
そして私を引き取ったのはある研究所だった。

研究員
 「へぇ……未知の生命体が、人間の子を宿しているんだ?」

私は真っ白な研究室に閉じ込められ、研究という名の下に様々な辱めを受けた。
気が付けば日に日に大きくなるお腹、研究者たちはご主人様との間に授かった子供が目当てらしかった。
私は絶望しかなかった。
本当はご主人様は、こいつらに私を手に入れるために陥れられたんじゃないのか?
私は人間が怖くて仕方がなかった。
そして、出産の時、私は絶望のあまり神々の王の力で世界を消し飛ばした。

それが1周目の世界だった。



***



私はご主人様を愛していた。
だけど無知で脆弱な私ではご主人様を幸せには出来ないと確信した。
だから、少しだけ調整して、2週目は始まった。

でも2周目でも駄目だった。
結局私は無能なイーブイで、同じ結末を辿るだけ。

だから3週目では保美香、美柑、伊吹を世界に呼び込んだ。
この3人により世界線は変動し、ご主人様はお酒を止めて、人格も大分安定した。
5人での共同生活の性でご主人様は私の身体を求めなくなってしまったけど、これはこれで幸せだった。
でもその終わりはあっさりと来た。

ある謎の組織に襲撃されて、美柑が死に、伊吹も死んで、そして保美香が死んだ。
ご主人様も私を庇って重傷を負い、私は再び世界を消し飛ばした。


……そこから、何周したかはっきりとは覚えていない。
登場人物の数を変えながら何周もしたけど、必ず何かしらの要因によって平穏は崩れてご主人様が酷い目にあう。
その結果、この世界は不完全だとしてご主人様を異世界に連れ込む事にした。
連れ込む世界はランダムの中から選んだが、そこは騒乱の世界。
ご主人様は伝説のポケモントレーナーとなり、神話の乙女と手を紡ぎ世界を救う。

この世界でも様々なパターンを試した。
ナツメが神話の乙女となりご主人様と結婚する世界もあった。
しかしご主人様を、それを不服とする者たちに暗殺された。
ニアが神話の乙女になった世界もあったが、二人は何処かの田舎で二人で農作業をしながら暮らしていたみたいだけど、ご主人様は野盗に襲われて死んでいる。
カリンを神話の乙女として、カノーア帝国に就くこともあったが、カリンでもご主人様を護ることは出来なかった。

果てしない周回の中、やがて凪と華凛を連れて今の世界まで辿り着いた。
だが、ここでもなお世界はご主人様に牙を剥く。
戦争は皆の命を燃やしてなお、ご主人様を苦しめた。
私はまたも失敗した。



***




 (分からない……どうすればご主人様は救えるか?)

私やアルセウスなら全てをご都合主義で固めた世界を生み出すことは可能だ。
でもその結果得たご主人様はもうご主人様ではない。
私が愛したご主人様を最後まで幸せに導くことが、神々の王として茜として得た目的であり、喜びなのだ。
そのためにあらゆる危険を少しづつ回避して、半ば異能生存体としてご主人様を延命してきた。
それでも1年を越えられない。
どこまでご主人様を延命すればデッドラインを越えられる?


 (私を生み出した創造主はなぜ、私にこの感情を与えたの? 私が恋を知り、愛を求めることさえ、それも創造主が与えた運命なの?)

私が世界を創るよう、私を創った世界がある。
その意味までも私は解せない。
ただ、絶対にご主人様を幸せにする……それだけは絶対に諦めない!



***




 「一体どうすれば……」

神々の王の玉座の前で参列する中の一匹は思った。


 (アルセウスも神々の王も気に入らない……なぜ、そうも簡単に切り捨てられるの?)

その者は力の序列で言うなら決して上位ではない。
だが、それでも思うところはある。
そしてだからこそ神々の王の意にも沿わない行為を始めるのだ。
例えアルセウスに筒抜けでも。



***




 「はい! 超ガソでフィニッシュ! 死んだああぁぁァァァァアアア!!!」


 「ウィーンジャギィーパーフェクト!」


 「……て、誰だ!?」

俺は久し振りに思わずネタ台詞を言ってしまうが、珍しく反応が示された!
この時点で家族じゃないのは確定的明らか!
俺は声の方を向くと。


 「クスクス、ここは君が死ぬ1秒前の世界」

目の前に居たのは身長170センチ位、かなりの巨乳だが胸元にダイヤのような宝石を埋め込んだ青髪ロングの美女だった。
俺的にも杏に匹敵する大人美人でグッド!


 「私はディアルガ、君やっぱり面白いね」


 「ディアルガって……いやシシガミもどきも出てきたし、別に変でもないか」

ディアルガ
 「シシガミもどきってゼルネアスの事? 一応君の恩人だしそういう言い方止した方が良いと思うわ」


 「それで時の神様はこの凡人に何の用で?」

俺はそう言いつつも、改めてその場を見渡すと、世界は真っ白だった。
俺の死ぬ1秒前って……それは同時に世界が消える1秒前でもある感じか?

ディアルガ
 「その前に聞きたい、君は命を賭してでも茜様を護れるか?」


 「! 当たり前だろう! 茜だけじゃない! 俺に出来るなら皆護りたいに決まってる!」

俺突然出てくる茜の名前に驚きながらも迷わず答えた。
茜に様付け、やはりただ者じゃないんだなアイツ……。
ディアルガはそれを聞くと安心したように笑い。

ディアルガ
 「既にある程度気付いていると思うがあの方は神々の王にして……世界の創造神である、君はそんな方に心から愛されてしまったんだよ」


 「いきなりぶっ飛んだ話になったな……茜は○ルドラ様だったのか」

ディアルガ
 「いきなり過ぎて理解が及ばないのも仕方ないが、私はあることに憂いている。茜様は君を幸せにしようとする余り、自分の幸せを余りにも軽んじている」


 「茜が自分の幸せを無視して……確かに、そんな気はする」

茜は他の子よりも俺に純粋に尽くしている感があるが、イマイチ自分のために働いている感じはない。
ディアルガの言葉はすんなりと受け入れられた。


 「それで、わざわざ俺の本気なんて聞いてどうするってんだ?」

ディアルガ
 「簡単さ、私は自分の幸せに気が付かない神々の王も、全てを見透かしているにもかかわらず何も行動を起こさないアルセウスが気に入らない! だから私は君と共犯者になる!」


 「共犯者だぁ!? 一体何を?」

ディアルガ
 「私と君で、歴史改変をするのさ! 神々の王は自分の幸せも理解できない愚かな王だ! ただ君に尽くせば良いと思っている! でもそれじゃ永久にゴールには辿り着かない! だから私たちで思い知らせる! 王が君を幸せにするんじゃなくて、君が王を幸せにする!」

ディアルガの言うことは、人間からすれば、ややもや馬鹿らしいようにも思える。
だけど、その見た目に合わない純心な目に邪念は感じなかった。


 (確かダイヤモンドの石言葉は純潔、不屈だったっけ……成る程)

どうしてか感じるディアルガの子供っぽさは、まさに生娘といった所か。
恐らく大人から見たら子供の言い分だ。
それでもそこには邪念のない純潔さが溢れている。


 「全く突然だよな……突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語か……乗った! 今日から俺とお前は共犯者だ!」

ディアルガ
 「ふふ! 良かった、正直君が乗ってくれないと、この計画ご破算だったからなぁ」


 「行き当たりばったりかよ! それで、どうすれば良いんだ?」

正直共犯者になったのはいいが、どうすればいいかなんて皆目分からん。

ディアルガ
 「何、簡単さ。私は君にタイムリープする力を与える。君は過去に戻り、問題が起きる前に解決をする……そして問題を全て解決すれば……ハッピーエンドさ!」


 「タイムリープって世界線変動しないんじゃなかったっけ?」

ディアルガ
 「それは○ュタインズ・ゲートの中のお話しだから!」

うーむ、この神様一番ノリがいいかも。
もう少し保美香たちにも見習って欲しい所。
とはいえそんな簡単に歴史改変出来るなら、チャレンジあるのみ!


 「……しかし、わからんのは、ディアルガにメリットが全くないと思うんだが?」

ディアルガ
 「アタシのメリット? うーん、そうだな。ミッションコンプリートで報酬全受けと言うことで♪」


 「……何か嫌な予感もするが、まあいい!」

ディアルガのうんうんと頷くと、俺に宝石を渡してきた。
俺はそれを受け取ると、それはブルーダイヤモンドのような輝きを持った不思議な宝石だった。


 「これは?」

ディアルガ
 「時の結晶って言ってね、簡単に言えばそれを使えば私のところにやってこられる。やばいと思ったら使うように……まぁ死んでも過去の時間からサルベージ出来るんだけどね」

ぶっちゃけたな。
まぁ流石は時の神様のチートっぷりと思っておこう。
多分この人も放たれた散弾銃の中から銃弾を一つだけつまみ取る位やってのけるだろうからな。

ディアルガ
 「因みに私のCPは53万よ、並大抵のチートキャラと同列に扱わないように」


 「○リーザ様を真似てる時点で二流だけどな!」

ディアルガ
 「五月蝿いよ! そろそろ問題の時間に行くわよ! ターイムショック!」



***




 「そこは○イムボカンだろ!?」

ディアルガにそう突っ込んだ瞬間だった。

黒ずくめ
 『気ガ狂ッタカ!?』

保美香
 「だんな様!?」

突然だった、目の前には全身を真っ黒のコンバットスーツで覆い、ガスマスク風のフェイスメットで被った集団が目の前におり、銃口を俺に向けている。
目の前にはボイスチェンジャーでダミ声で喋る奴がいた。


 「へい! そこのお前そのハンドガンに実弾は入ってないぜ!」

俺はあの日の出来事を思い出す。
コイツ俺を殺すつもりはない。
何せ俺はゲートの操作の鍵だからな!

黒ずくめ
 『やむを得まい! 撃て!』


 「ギャース!?」

速攻撃たれた。
俺は咄嗟に時の結晶を使った。
気が付いたら手に握っており、使い方は何となく理解していた。



***




 「オイコラ、ディアルガ! なんでよりにもよって事件途中に俺を降ろした!?」

気が付けば、再び真っ白な空間に俺はいた。
さっきの時間は11月21日、もう踏み込まれた後じゃないか!

ディアルガ
 「えー? でもあの難局を乗り越えたら、一つ目の歴史改変成功なんだけどなー」

と、ブー垂れるディアルガ。
うん、やっぱりコイツ見た目は大人、中身は子供だわ。


 「フーパの真逆じゃねぇか」

ディアルガ
 「あれ? どうしてそれを?」


 「え?」

あれ? 俺今誰かを思い出した気がしたんだけど、やっぱり思い出せない。
誰に似ていると思ったんだろう?

ディアルガ
 「えーと、兎に角要点はただ一つ、あの襲撃事件をその場で阻止出来れば、君に纏わる死の要因の一つが消える訳」


 「物理的になんとかしろって……」

ディアルガ
 「まだミッション1だよ? 所謂1面、チュートリアルだよ」


 「クソゲーレベルに難易度高えな!?」

1面から四面楚歌スタートとか、これだからQTEは気に入らん。


 「兎に角、11月21日の午前中に送ってくれんか? 現場に送られても困るわけで」

ディアルガ
 「しょうが無いな〜、それじゃターイムショック!」



***



ディアルガのかけ声と共に時空が歪み、歴史が巻き戻される。
俺の意識は過去へと飛び、辿り着いた時に見えた光景は。

大城
 「どうした常葉? 急にぼけーっとして、痴呆か?」


 「……大城」

急に目に入ったのは随分懐かしい顔だった。
俺の隣で仕事に勤しむ大城道理の姿だった。
思わず過酷すぎる運命からか、この懐かしき友の姿に目頭が熱くなった。

大城
 「おいおい、マジで大丈夫か? 誕生日なのに体調悪いとか?」


 「……そうと言えばそうかも」

ああ、何せこの仕事終わりにあの襲撃があることを知っているんだからな。


 (ディアルガ……未然に防ぐじゃ駄目なのか?)

俺は気が付いたら握っていた時の結晶に語りかける。

ディアルガ
 『未然に防いだら、何度も襲撃されるよ? 実行したけど失敗したって結果が重要なんだよ』

……どうやらこの時の結晶、通話機能もあるようだな。
俺の脳にディアルガの声が響いた。
俺たちは共犯者、この七難八苦乗り越えるには二人の力を合わせるしかない。


 「済まん……早退するわ!」

大城
 「え!? マジで!?」

俺は上司に事情を説明しに行くと、直ぐに早退の準備をする。
普段くそ真面目を貫く俺だが、ここでもなおくそ真面目働いていたら結局同じ二の舞だ。



***




 「とは言っても……襲撃を未然に防ぐじゃなく、その場で解決……説明したところで皆納得せんよなぁ」

俺は会社を出ると、駅に向かう途中対策を考える。
今日襲撃されるから、皆で返り討ちにしようね♪
なんて言ったら間違いなく正気を疑われるに決まっているわ。
とはいえ、どうすれば完璧な勝利を掴める?
完璧じゃない勝利は二度三度の襲撃を呼ぶから駄目だという。
ミッション1から本当に難易度高ーな。

真莉愛
 「へーい! そこのお兄さん! サボりー?」

これまた随分懐かしい声だった。
御影さんが車から顔を出して手を振っている。


 「御影さん! 生きていたのか!?」

真莉愛
 「ちょ……勝手に人を殺さないで!」

本人は知るまいが、あと1カ月でこの人死ぬからな。
ある意味で合掌だわ。
まぁほむらさんにあの顔は二度とさせたくないから、絶対に救うけど。


 「とりあえず、葬式には出ますから」

真莉愛
 「今日の常葉さん何か変よ? そんなブラックジョーク言う人だった?」

ブラックジョークって思うって事は、御影さんが自身、自分の仕事が危険な事は承知なんだな。
まぁ戦争に際してあくまでもPKMのために戦い殉職した人だ、その覚悟は初めからあったと思うべきか。

真莉愛
 「とりあえず乗ってく?」


 「それじゃ……折角ですし」

俺は折角いきなり歴史改変している事だし、乗せて貰うことにした。
助手席に座ると、後ろには愛紗さんの姿もあった。

愛紗
 「おはようございます」


 「おはよう」

愛紗さんは相変わらず御影さんと行動を共にしているみたいだな。
御影さんは車を運転しながら話し出す。

真莉愛
 「そう言えば、常葉さん誕生日よね、おめでとう!」


 「あーうん、なんでだろう? あんまり嬉しくない」

愛紗
 「あの、何かあったんですか?」

俺の対応に流石に愛紗さんに不信がられたか。
つか、これからお先真っ暗な事が分かってる日なんて、どう転んでも喜べる訳ねぇよ。

真莉愛
 「……ねぇ、私たち常葉さんの味方です。本当に困ったことがあるのなら頼ってくれていいんですからね?」


 「そう、ですね……」

ふと、考えもしなかった事だった。
もしあの事件に御影さんが介入していたらどうなっていた?
例えば、愛紗さん、ダークホールの問答無用性は正真正銘信頼が置ける、命中100%じゃないのがちと不安だが。
他にもほむらさんは素早い動きでインファイトを得意とする。銃では至近距離のほむらさんを捉えられないだろう。
室内戦では杏も無類の力を発揮するし、全く別ベクトルに頼れるんじゃないか?


 「これから言うのは嘘みたいな話ですけど、真実です」

俺はこの人たちの力を借りることにした。
ミッション1、これをクリアするために俺は全力を尽くそう。



***



『11月21日PM15:31 常葉宅』



 (事件開始まで後5時間という所か?)

俺は御影さんに今日起きることを説明すると、真っ直ぐ家へと帰った。
御影さんに信用して貰えたかは半信半疑だが、最悪の場合俺が連れ込まれる秘密基地やシェルターの位置は全部教えた。
結果的に御影さんに疑われる部分も出来てしまったが、そもそもこの難事を俺たちだけでどうにかしようってのは間違っているんだ。


 (こちら茂、作戦は順調だ、over)

俺は時の結晶に語りかける。
すると直ぐに返事が来た。

ディアルガ
 『今すぐ○SXの電源を落とせ! ……とりあえずまだ一面なんだからサクッとクリアしてよ』


 『1面から難易度高いっつーの』

俺は周囲を見渡す。
今日は俺の誕生日という事で、皆朝から大忙しだったが、俺が帰ってきた事に驚愕していた。
俺は彼女たちにも事情は説明したが、彼女たちに敢えて迎撃を指示し、それを納得させるのは苦労した。
特に保美香なんかは、断固踏み込ませないという気概だったからな。


 (……茜、いや、もう神々の王なのか?)

俺は静かに作業を進める茜を見て、考える。
茜がこの世界の創造神だとしても、彼女には叶えられない願いがあるという。
その願いを叶えられるのが俺だと言うならば、俺は茜のために戦う。

美柑
 「主殿……ボクは主殿を絶対信じます、でも本当に迎撃で良いんですか?」

まぁそりゃ、普通なら踏み込まれる前に全て撃破が理想的だけどさ。
やはり全員を納得させるのは難しいよな。

保美香
 「誕生日会は予定通り進めますが……凪と華凛への説明が厄介ですわねぇ」

そう、予定通りならもうすぐポケにゃんのバイトから二人が帰ってくる。
特にその点に敏感なあの二人の説得は難儀しそうだ。



***



そして……夜が更ける。
俺は頻繁にスマホを操作しながら、約束の時を待ち構えた。
誕生日会は30分早く終わらせ、今は皆日々の生活に戻った振りをしながら臨戦態勢を整える。

華凛は自室、凪はお風呂場、それ以外はリビングだが通路の死角には美柑と保美香がいる。


 (御影さん……お願いしますよ)

俺が頻繁にスマホを操っていたのは、御影さんとの連絡のためだ。
メールでは既に御影さんたちは近くにいるはず。


 「皆、入口の近くからは離れていろよ?」

俺の記憶では、ドアが吹き飛ぶと同時に部屋の中が煙に覆われた。
あの時は戸惑うあまり機先を許したが、今度は逆だ。

ドタドタドタ!


 「くるっ!」

ドアの外で大きな足音が幾つも聞こえる。
俺は後ろを見た、正確にはベランダの向こうのビルをだ。

スナイパーが最低でも3人は配置されていたはず、あっちは御影さんたちに任せた!

ドォォォン!

ドアが吹き飛ぶ!

茜は不安そうに俺の手を握った。
ドアが内側に吹き飛ぶと同時に、煙がリビングにまで流れ込み、視界が覆われる……が!


 「ベランダ解放!」

伊吹
 「ラジャ〜!」

爆発と同時にベランダの窓を開くと部屋の中に冷気がリビングに流れ込むが、視界が奪われるのは防いだ!


 「皆ガンガン行こうぜ!」

ドカドカとドアの爆破と同時に特殊部隊風の男たちが4人まずリビングにまでなだれ込む!
が! リビングの通路に待ち構える保美香と美柑がそれを許しはしない!

美柑
 「チェストーー!!!!」

保美香
 「負けて死ね!」

煙の流れる範囲外の死角で待ち構えた二人がまず二人を昏倒させる。

謎の男
 「!!?」

突然の奇襲に残った二人は慌てて戻ろうとするが……後ろから華凛と凪が逃げ道を塞ぐ。

華凛
 「ダーリンを狙うとは……万死に値する!」


 「さっさとお縄につくのだな、悪党!」

四面楚歌、アサルトライフルを構えた二人は諦めたのか、両手を上げた。


 「やった? 本当に……?」

茜はこの鮮やかな逆転を未だに信じられないようだ。
神々の王としての記憶を一部取り戻している茜は、どうやっても世界線の補正のように俺が死ぬ運命を何度も見て懐疑的にネガティブになっている。
だが、そんなものはくそ食らえだ! 俺はこのくそったれの運命を変えるためディアルガと手を組んだんだ!


 「まだだ! 最後の一人がまだ出てきていない!」

華凛
 「外に出るぞ!」


 「分かってる!」

華凛が大太刀を握って外に出る。
保美香は素早く二人を拘束して、俺たちは外に出た。


 「くそ!? 失敗に気付いたか!?」

部屋の外に出ると、不自然なほど静かだった。
まるで街全体が眠りについたかのような状態、ゆえにこれ程の爆発騒ぎでも誰も避難もしていない。

華凛
 「車だ! 黒い車!」

それは突然マンションの駐車場から急速発進する黒い自動車だった。
恐らく最後の一人があそこにいる!


 「私が全速で追えば!」


 「……いや、助っ人に頼ろう」



***




 (任務失敗? 読まれた?)

全身を特殊部隊風のスーツで覆った女性はハンドルを握り、アクセルを吹かせた。
完璧な作戦だったはず、上の持っている力は未来予知すら可能とするはずだ。
にもかかわらずこうやって敗走している。
一体どこで間違えた?
いや、しかまだ大丈夫だ。
前衛の4人はリクルートしただけの兵士、用済みになれば始末されるだけ。
私が捕まらなければ、まだこの作戦は死んではいない。


 「眠り玉一つ無駄にしたか……」

組織からこの作戦のために用意された異世界からやってきたアイテムを渡されていた。
効力に若干疑問はあるが30分前後、街一つを眠りにつける事が出来るアイテムがある。
こうやって逃げても、怪しむものはいないはずだ。
都市部に逃れれば、もう誰も私を追えない!

直後だった……!

ガシャーン!!!


 「!!?」

車のボンネットに何かが落ちてきた!
それはかなりの重量で車のボンネットを押し潰した!
私は最初それは岩だと思った。
ポケモンの技に岩落としという技があり、それだと思ったのだ。
しかし、その岩は普通じゃなかった。


 「逃がさないよ……」

それは御影石だ、ミカルゲのPKMが後生大事に抱えている岩、それごと落下してきたのだ。


 「……く」

完全に想定外だ、眠り玉は対象の状態次第で正常に効果を発揮しない。
この明確に敵だと分かる目線をしたミカルゲに勝てる術が思い当たらない。



***



御影さんが警察を引き連れて、俺の家に集まってきたのは15分後の事だった。
俺自身も事情聴取のために、取り調べを受けて、解放されたのは深夜を越えていた。

真莉愛
 「お疲れ様、常葉さん」

警察から解放された後、御影さんは警察署の前で和やかに待っていた。
11月とはいえ既に気温は10度を割っている。
御影さんの口からも湯気が零れており、近づくと缶を投げてきた。

真莉愛
 「このくだらない世界に」


 「○oss、それもブラックですか」

熱々のブラックコーヒーは焼けるような熱さで俺の体温を暖めてくれる。
プルタブを開けて、俺はコーヒーを喉に流し込んだ。


 「ふぅ……」

俺は息を吐いた。
実際ミッション1はクリアしたとはいえ、問題は山積みだ。

真莉愛
 「貴方の言うとおり襲撃が起きた……結果論では組織の一つを摘発出来そうだけど……やっぱり疑問よね」


 「タイムリープしてきたって言ったら信じます?」

真莉愛
 「貴方なら何があっても不思議じゃないけど……」

御影さんは苦笑いしていた。
俺自身結構な組織に狙われている事は知っている。
そして色んな組織が出し抜こうとしている事も。
その監視員の一人がルザミーネさんだという事も知っている。


 「……今日どこに泊まれば良いんですかね?」

もれなく俺の家は警察に踏み込まれた結果、全員追い出された。
今日は隈無く調べ尽くされる事だろう。
というか……ドアって修理できんのか?

真莉愛
 「今日の所はここのホテルを使ってください、大丈夫、最後まで責任を持ちますので」

御影さんが出してくれたのは紹介状だった。
どうやら、ホテルを手配してくれたらしく茜たちもそっちにいるようだ。


 (ミッション1クリア……後は戦争の方か……)

正直ここからは空白の1カ月間だ。
本来の俺はあの組織に幽閉されて、何かの実験をさせられていた。
今回はその魔の手から逃れたものの、実際のところ組織の事は殆どよく分からない。
何せ組織の人間の素顔を誰一人知らないんだ。
それに、情報では第三次世界大戦の概要は知っているが、実際何がトリガーなのかが分からない。


 (ディアルガ……このまま続ければ本当に全てを救えるのか?)

俺は時の結晶に呼びかける。

ディアルガ
 『少なくとも、デッドラインは越えられる……取り除くべき障害は後2つ』

2つか……そのどちらもが第三次世界大戦に関わるものだとしたら、最終目標は第3次世界大戦そのものを起こさせない事が必要という事になるのか。

真莉愛
 「出来ることなら早めに住所を変更して、マスコミがくる事も想定されるし」


 「あの……仕事は?」

真莉愛
 「休んでください!」

うーむ、やっぱりそうなるか。
まぁ住所変更は仕方ないよな。
仕事も当分お休みか。

真莉愛
 「ホテルまでは車で案内致します」


 「お願いします」

俺は御影さんについて行き、今日の宿へと向かう。


 (思えば、文明の光自体随分久し振りだよなぁ)

俺は夜景を見渡し、その貴重さを噛み締める。
何もしなければたった1カ月でこれが全て奪われるのか。
あの荒廃した殺伐な終末の世界がやってくるのか。
80億の人間全てが、果たしてあと1ヶ月で世界が終わるなんて理解している奴はいるんだろうか?
俺は正義のヒーローじゃない、それでも……最善を得るために戦うしかない。



***



ディアルガ
 「……ふぅ」

私はこの終末世界で茂君の動向を見守った。
正直、茂君に全てを託した事が本当に正解か分からない。
だけど、神々の王が次の世界に分岐させる前にこの世界を救わないといけない。

真っ白なこの空間、神々の王が世界を消し去る1秒前……未だここの光景が変わらないという事は、茂君はまだ世界を救っていないということ。
終末時計は止まらない、でもその針を戻すことは出来るはずだ。

ディアルガ
 「でも気になる事があったわ、あの世界の記憶は完全封印されたんじゃないの?」

フーパは気付いていたか疑問だけど、全てアルセウスの掌の上だった。
きっと無意識の反逆だったんだろうけど、もしかしたら彼女はキーになるかもしれないわね……。



突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語


第22話 突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語 完

第23話に続く。


KaZuKiNa ( 2019/05/21(火) 16:56 )