突然始まるポケモン娘と○○○する物語





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第三部 突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語
第12話 セローラちゃんと呪いの人形


突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語

第12話 セローラちゃんと呪いの人形


セローラ
 「あ〜か〜ね〜ちゃ〜ん!」

私セローラ、今日もお暇を貰って、茜ちゃんの住む部屋を訪れたの。
だけど、いつもなら誰かは家に居るのに、今日は誰もいないみたい。

セローラ
 「うーん、皆お出かけかなー?」

私は普段壁抜けするから、一々玄関の鍵は確認しない。
そのままリビングまで進むけど、静かで誰の気配もない。

セローラ
 「なーんだ、つまらないのー……と、言うとでも思ったか!」

私はビシッとジョジョ立ちのように構える。
私の視線の先にはこの家の家長、つまりご主人様、常葉茂の部屋だ。

セローラ
 「フヒヒ、誰もいないと言うことは、セローラちゃんやりたい放題! まずはご主人様の部屋を物色だー!」

私はそう言うと、喜々としてご主人様の部屋に突入する。
ご主人様の部屋は予想外に整理されている。
何故か、ご主人様の臭い男の臭い以外に、茜ちゃん含む複数の臭いを感じるが、エロい感じはしない。

セローラ
 「まずはゴミ箱から〜♪」

私は早速、ゴミ箱を漁る、しかしなんという事でしょう!
そこには何もない! 綺麗に清潔さが保たれているじゃありませんか!

セローラ
 「私としては、精液が干からびてカビッカビのティッシュとか期待してたのになぁ〜」

全く、がっかりである!
健全な男なら、オナニーの一つや二つしていると踏んだが、していないという事は……。
ハッ!? まさかご主人様は既に茜ちゃんたちをオナペットにしてしまった!?

セローラ
 (ぬぬぬ……ご主人様って何Pまでなら、してくれるだろう……私も混ぜて欲しい)

等と、考えては見るが、その決定的な証拠は見つからない。
そもそも魅力的な6人と一緒に住んでいて、欲情しない方がおかしいと思うんだけど、コンドームもHな本もない。
割とご主人様って謎だよね、一体どういうタイプが性的にストライクなのかな?

セローラ
 「後はパソコンとクローゼットがあるだけだけど」

パソコンは中々怪しいが、パスワード要求されたらどうしようもないよね。
クローゼットの方はご主人様の私服が入っているが、お洒落さんでないのが分かる地味さだ。
とりあえずトランクスを一枚拝借して、頭から被ってみるが……うん、なにも沸かないね。
私はトランクスを放り出すと、溜息をついた。
やはり、使用済みでなければ興奮も出来ないわ。

セローラ
 「ベッドの下には埃すらなし……はっきり言ってこの清潔さは異常でしょ」

メイドとしてはあるまじき発言だが、無菌室に似た異質さがこの部屋にはある。
多分だけど、あの保美香っていうメイドの仕業よね。
ベッドメイキングも完璧で、ハウスキーパーとしての貫禄を感じるが、やり過ぎじゃないかな?

セローラ
 「もう少し……そう、シーツに出来た染み、そういうのでも興奮できるでしょうに」

ここまで綺麗だと、逆に汚したくなるが、後が怖いので元に戻しておこう。
このセローラ、リスクはなるべく犯さない。
1番より2番がセローラちゃんの信条よ!



***



再び、リビングに戻ると今度は茜ちゃんの部屋を探した。
幸い茜ちゃんの部屋にはネームプレートがあり、直ぐに侵入出来た。

セローラ
 「相部屋だから、流石にご主人様の部屋より狭いなぁ」

茜ちゃんは伊吹っていうポケモン娘と相部屋のようだ。
確か一番身長が高くて、いつもニコニコしているポケモン娘だったわね。
、やはり清潔になっていたが、手が回っていないのか、ベッドのシーツは僅かに乱れている。

セローラ
 「ヒャッハーッ! 抜け毛発見ー!」

私は早速茜ちゃんの抜け毛を発見すると、ベッドにダイブする。
ベッドからは茜ちゃんの体臭が僅かに感じ取れた。

セローラ
 「ンフフ〜♪ これは尻尾の毛ね、そろそろ寒くなってきて換毛する頃だもんねぇ〜♪」

まぁ、イーブイ種に換毛期があるのか知らないけど。
茜ちゃんの尻尾の毛は上等だ、毛の先端は白く、まるで高級な筆に使われそうな綺麗な毛である。
とりあえず、宝物として頂いておこう。

セローラ
 「さーて、ついでに私物チェックの時間ですよ〜♪」

私は上機嫌に、茜ちゃんの私物を探す。
とはいえ、ビックリするほど茜ちゃんの私物は少ない。
クローゼットには幾つかの着替えと、懐かしのメイド服が出てきた。

セローラ
 「茜ちゃんのメイド服、懐かしいなぁ」

私にとって半年ほど前まで、茜ちゃんと一緒にメイドとして働いていた事を思い出す。
茜ちゃんは皇帝陛下に気に入られて、陛下専属のベッドルームメイドを任されていた。
最初の頃は、大丈夫か心配な子だったけど、頑張り屋ですぐに、一人前になっていたっけ。
もうあの頃は帰ってこないけど、あの時の思い出であるメイド服を持っていた事は嬉しい。

セローラ
 「さーて、下着の方は〜、わーお!」

私は下着の方を物色すると、早速だが感嘆の声を上げてしまう。

セローラ
 「うわー、フリルが付いてて可愛い〜♪」

早速出てきたのはシルクの純白さが上品なパンティである。
もしかして、勝負下着かな? それ以外は地味めな物が殆どだ。

セローラ
 「……こうなると気になるのは隣なのよね」

私は思わず、反対側のクローゼットに注目する。
伊吹って言うポケモン娘にはこれといって興味があるわけじゃないが、どういう人なのかファッションチェックは必要よね!

セローラ
 「こ、これはぁ……!?」

早速、隣のクローゼットを開けると、まず真っ先に目に飛び込んできたのは、タンクトップのシャツだ。
……なんて言うか、ファッション自体は地味ね……、多分茜ちゃん以上に頓着がないのかな。
だが、問題は下着の方だ、そっちの方を確認すると衝撃のソレはすぐに見つかった。

セローラ
 「ブラジャーデカ!? こんなの売っているの!?」

それはもうワールドクラスとしか言いようのないサイズのブラジャーだ。
ただ、勝負下着という感じの物はない。
極めつけは下がないのだが、もしかして穿かない人なの?

セローラ
 「……うーむ、性的アプローチ感が皆無、ある意味でご主人様を男として見ていないんじゃ?」

一応小物類は確認できるけど、ボディケア製品ばかりで、化粧はしないようだ。
総じて、物欲の少ない人という感じかしら?

セローラ
 「序でだから、他の部屋も確認しようかな?」

他の人物にははっきり言って興味ないんだけど、暇だ。
元々暇だから、遊びに来たのに、誰もいないんじゃ空き巣を物色する位しかやることがない。
……うん、私がやってることって、泥棒だよね。
自分の行動を客観的に見ると、アウトね。
でもまぁ目的は金目の物じゃないし、物取りよりはマシだと思っておこう。



***



ガタ。

セローラ
 「誰か帰ってきたの?」

茜ちゃんの部屋を出ると、何か音が部屋の奥から聞こえてくる。
音はリビングからだったが、しかしそこには誰もいない。
ベランダからは柔らかい光が、部屋を照らした。

セローラ
 「うーん、猫ちゃんでもベランダにきてたり?」

私は音の正体を探すが、やはり見つからない。
そもそもここは4階、猫ちゃんが簡単に登れる高さじゃないか。

セローラ
 「うーん、一体なんだったんだろう」

ガチャガチャ!

セローラ
 「……あ!」

入り口に気配が集まる。
程なく、鍵が開くとぞろぞろと中に入ってきた。

美柑
 「たまには外食も良いですね」

保美香
 「そうかしら? シェフのレベルが知れる店でしたわ」


 「ジャンクフードもたまに食べると美味しい」

伊吹
 「うんうん〜♪ こういうのも楽しいよね〜♪」

帰ってきたのは四人、私は天井に飛び込み、天井裏に隠れた。
天井裏は流石に掃除もされておらず、埃まみれで配線が無尽蔵に張られている。
正直、長居したくはない。

保美香
 「食費で見ても自炊の方が良いに決まっていますのに……」

美柑
 「そうですけど、今回は多数決でしたからね」

伊吹
 「そう〜、たまには保美香もお出かけ〜♪」

ここでは何度も顔を合わせた事のある、ハリウッド女優のような美貌を持ったメイド女は保美香、何やら外出に不満でもあったのか、目をつり上げて不機嫌さを現している。
それをなだめるように、上機嫌なのは格好こそラフだけど、色々とワールドクラスな規格外のヌメルゴン娘の伊吹、端から見ても美人だけど、なんというか色気とは少し違うわね。
もう一人上機嫌なのは、女の子より男の子って感じのするギルガルド娘の美柑。
皆はリビングに集まると、ソファーに座ったり、自分の部屋に戻ったりした。

私は茜ちゃんに狙いを定めると、いつでも飛びかかる用意を整える。

セローラ
 (ふふふ、ゴーストタイプの奇襲力を見せるわ!)

私は最も茜ちゃんに飛びかかる最適なタイミングを探っていたその時だった。
私は目の前に何かが倒れていたのに気が付く。

セローラ
 「ぴゃあ!?」

私は思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。
それはやけにリアルな人形だった。
埃まみれで、見窄らしい女の子の人形で、何故それまで気が付かなかったのか。
まるで突然現れたかのような唐突感に襲われた。

保美香
 「む……この声は!?」

セローラ
 「やば、気付かれた!」

私は気付かれては仕方がないと、天井をすり抜けると、リビングに着地する。

セローラ
 「ふはは! セローラちゃん参上!」

私はヒーローのようなポーズを決めると、周囲の空気が止まった気がした。
まるで奇怪な物を見るような目や、ただ何も考えていないかのような顔、様々だが、保美香は憤怒の顔をしていた。

セローラ
 「あれぇ? ノリが悪いな皆ー?」

私がポーズを変えると、何かが宙を舞う。
その度に保美香は怒りのボルテージを上げた。

保美香
 「埃を部屋に撒き散らすなーっ!!!」

それは天井裏の年季の入った埃だった。
それが、私の至る所に張り付いて、部屋の中を待っているのだ。

保美香
 「この雑菌が! 汚物は消毒ですわー!!!」

セローラ
 「セローラちゃん、貰い火だから炎は……うわらば!?」

保美香、怒りの鉄拳は私を蹂躙する物であった……。



***



カポーン。


セローラ
 「いや、死ぬかと思ったが、別にそんなことはなかったぜ!」

私は今お風呂に(強制的に)入っている。
私の服は怒り心頭の保美香に奪い取られた、それこそ芥川龍之介の羅生門のごとく。
極度の潔癖症の保美香は今や、必死の形相で部屋の掃除をしている事だろう。
きっと、服のクリーニングもしていて、新品のようになって帰ってくるに違いない。


 「セローラ、どうして天井裏にいたの?」

ゆっくりお風呂に浸かっていると、茜ちゃんが浴室に顔を覗かせた。

セローラ
 「いや、その〜なんと言いましょうか、モンスター サプライズド ア ゴー的な?」

普段は物体全てを通過するから、身体に埃が付くことはない。
そんな中、今回はゆっくり天井裏に潜んでいたのだから、怪しまれても仕方がない。
とはいえ、遊びに来たらもぬけの殻で、暇なんで物色していました……なんて正直に話したら、間違いなく一生茜ちゃんには軽蔑されるだろう。


 「替えの服、置いておいたから……セローラの服は今保美香がクリーニングしているから、我慢してね?」

セローラ
 「なんだか悪いわね〜、そうだ、折角だから一緒に入らない!?」


 「調子に乗らないで」

一緒にお風呂でイチャイチャしようと誘うが、残念ながら茜ちゃんは乗ってくれず、浴室の扉を閉じて、出ていってしまう。
私ははぁ〜と、ゆっくり息を吐く。

セローラ
 「中々上手くはいきませんなぁ〜」



***



お風呂から上がると、身体をタオルで拭いて替えの服に着替える。
替えの服らしく、地味な無地のセーターだった。
私は普段からメイド服だから、逆に普通の服に少し戸惑うが、とりあえず袖に通す。
洗面台の前で様子を見るが、うん、結構悪くない?

セローラ
 「流石セローラちゃん、何着ても意外と似合う!」

そうこうしていると、茜ちゃんが気になってか、顔を覗かせる。
茜ちゃんは私の姿を一様に見ると。


 「セローラ、ドライヤーの使い方分かる?」

セローラ
 「それ位分かってるよ茜ちゃん!」

私はドライヤーで髪を解かしながら乾かした。



***



保美香
 「あーもう! 忌々しい! 埃め!」

お風呂から上がると、必死に部屋の隅々を掃除する保美香がいた。
あの極度の潔癖症はなにが原因なのか。

伊吹
 「あ、ごめんね〜。顔、大丈夫〜?」

一緒に掃除に参加している伊吹は私を見ると、何故か向こうが謝ってきた。
顔と言うのは、保美香に顔面殴られた件だ。
まさかグーパンでくるとは思わなかった。

セローラ
 「いや〜、アレはビンタの名を借りた掌底でしたね〜。しかも何度やっても辞めないし」

美柑
 「いや、もろグーで殴ってたでしょ!?」

セローラ
 「いや〜、こっちこそ御免なさい!」

一応そもそもの原因は私にあるんだし、私も謝っておく。
保美香は振り返ると、フンと鼻を鳴らす。
とりあえず元々低かった好感度が更に下がったようだ。

セローラ
 「掃除手伝います」

保美香
 「結構ですわ、他所様にお手伝いして頂く訳にはいきませんかしら」

保美香は、多分私を信用していないんだと思う。
まぁ良い印象これっぽっちも見せてないんだから当然だけど、世知辛いなぁ。

美柑
 「それにしてもどうして天井裏に潜んでいたんですか?」

セローラ
 「え? あ、いや〜、茜ちゃんに上から奇襲かけようとしたらねぇ〜」


 「……」

咄嗟に胸を守る茜ちゃん、嫌がる素振りを見せるがそんな物は無駄なんだよ、無駄無駄ぁ。
……まぁ、流石に今は空気読むけどね。

伊吹
 「奇襲って言う割には〜、素っ頓狂な声をあげてたよね〜」

保美香
 「そう言えば、随分情けない叫び声でしたわね」

セローラ
 「う……」

すっかり忘れていたけど、そもそも奇襲の失敗は天井裏の出来事が原因だ。
あの女の子の人形、なんで天井裏なんかにあったんだろう。
そもそもいつから在ったのか、ゴーストタイプでありながら、不気味さに未だに身震いする。

セローラ
 「天井裏に人形が在ったんですよ……」

伊吹
 「人形〜?」

セローラ
 「薄汚れた見窄らしい女の子の人形で、いきなり目の前に現れて……」

保美香
 「オカルト……かしら?」

ガタン!

オカルト、そんな言葉に強く反応したのは美柑だった。
美柑はガタガタ身体を震えさせて、顔を青ざめさせる。

美柑
 「お、オカルトだ、なんて! そ、そそそそんな物、ある訳が……!」

セローラ
 「おや、ゴーストタイプなのに恐ろしいと?」

美柑は同じゴーストタイプ、最もオカルトなポケモン群でありながら、その様子は分かりやすい程怯えている。

美柑
 「こ、怖くなんてないんですから! ただ、理解できないのが嫌いなだけです!」

セローラ
 「あら、それじゃ美柑の背中をカリカリと掻く、その後ろの手は?」

美柑
 「ヒィィ!? 何々!?」

美柑は必死の形相で後ろを振り向くが、何もない。
そもそも作り話だし、背中を掻くと言っているんだから、感触で分かるだろうに。


 「美柑落ち着いて、怖い物なんて何もないから」

私はケタケタ笑うが、美柑はマジで泣く一歩手前だった。
恨めしく私を睨みつけるが、平常心を失った方が悪いのだ。
一方保美香は「ハァ……」と溜息をついた。

保美香
 「さっさと、掃除を終えますわよ! この世から全ての埃を駆逐してやる!」

保美香の号令に、それぞれは埃と対峙していく。
その後、本格的な掃除の末、埃が完全に駆逐されたのは2時間後だった。



***



セローラ
 「いや〜、何から何までお世話になりました」

完全に掃除を終えて、保美香がクリーニングした衣服も返却されると、私は帰ることにした。
とりあえず今回は完全に私が悪いので、大人しく茜のおっぱいを揉むことでお開きとする。


 「……セローラ、怒るよ?」

セローラ
 「いや〜、茜ちゃんも、こんな立派なマシュマロ触感のおっぱいがあるんだから、もっとご主人様に迫らないと〜」


 「〃〃〃〃」

おや〜? 茜ちゃんったら、頬を染めて照れてらっしゃる?
どうやらご主人様との行為を妄想したみたいだね、このむっつりさんめ!

セローラ
 「いい? おっぱいは変形するの、だからおっぱいの使い方一つで、男は勃起するのよ?」

保美香
 「なにが勃起するですか、普通乳の癖に!」

美柑
 「ていうかセクハラですよ! 茜さんのおっぱい揉むの止めなさい!」

セローラ
 「ぬふふ〜、欲望が見えますなぁ。自分もおっぱい欲しいと思ってる?」

私は茜ちゃんのおっぱいを揉みながら、したり顔で美柑を見る。
美柑は顔を真っ赤にして胸の辺りを抑えた。

美柑
 「そ、そんな事あ、ある訳ないでしょう!?」

セローラ
 「貴方もご主人様に吸って貰ったり、揉んで貰えば大きくなるかもしれませんよぉ〜?」

美柑
 「す、吸う!? きゅ〜……」

妄想が過ぎたか、美柑は顔を真っ赤にして倒れた。
結構純情だったわね。
私はそろそろ痛いしっぺ返しをくらいそうなので、茜ちゃんから離れると、皆さん改めて頭を下げる。

セローラ
 「今回のお礼は何れしますわ、それではしばしご機嫌よう」

私はそう言うと、玄関から出た。



***



保美香
 「相変わらず嵐のような子でしたわねぇ」


 「おっぱいギュッてすれば、ご主人様喜ぶかな……?」

伊吹
 「どうだろうねぇ〜、喜ぶとは思うけど〜」

私たちがセローラを見送ると、既に日が沈みかけていた。
もう季節は冬であり、日が落ちるのが速くなった。

保美香
 「さてさて、晩ご飯の用意を急がなければ」

伊吹
 「美柑〜、こんな所で寝たら風邪引くよ〜」

とりあえず平穏が戻ると、それぞれ動き出す。
保美香は台所に向かい、伊吹は美柑を背負って美柑の部屋に向かった。
私はリビングに戻ると、ふと天井を見る。


 「……そう言えば、天井裏にお人形があるってセローラが言ってた」

保美香
 「それがどうしましたか?」


 「なんで天井裏なのかな……?」

保美香
 「……確かに謎ですわねぇ、ですが過去の住民が隠して、忘れて行ったとかじゃありませんの?」

当然、保美香のように考えるのが正常だろう。
でも、隠すにしても、地下収納ならともかく、天井裏?


 「ねぇ……この部屋って確か、曰く付きだったよね?」

保美香
 「あぁ、そう言えば……一度美柑がパニックになりましたわね」

伊吹
 「懐かし〜、私が幽霊扱いされた時だね〜」

美柑をベッドに寝かせると、伊吹もリビングに現れた。
あの時、伊吹はベランダの天井に張り付いていて、美柑が幽霊と間違えたんだっけ。

保美香
 「くだらないですわ、これまで一度も害などなかったかしら」


 「うん、そうだね……」

そう、曰く付きだとしても、私たちに害はない。
なら気にするだけ無駄なんだろう。
でも、どうしてこの部屋で幽霊騒ぎが起きたのか、私たちは詳しく知らない。
一度ご主人様に聞いてみようかな?



***



セローラ
 「ふんふんふ〜ん♪」

絵梨花
 「随分上機嫌ね、セローラちゃん」

セローラ
 「えー、普通ですよー」

私の保護責任者の絵梨花さんは妊婦さんである。
まだお腹が目立つ時期じゃないけど、それでも安心をとり、家事は私が熟している。
この百代家は、夫婦仲は良好だと思うけど、少し旦那様は奥様を気遣ってもいいと思う。
奥様は子供が産まれたら、私にベビーシッターを期待しているみたいで、それ自体は構わないんだけれど、子供のことを考えるともう少し旦那様には家事に参加して欲しい。

私はお食事の用意をしながら、鼻歌を歌っていたら奥様は機嫌が良いと思ったみたい。
生憎だけど、良いことがあった訳じゃない。
ただ、何となく気分を上げているだけだ。

セローラ
 「そう言えば、今日変な経験したんですよねぇ」

絵梨花
 「変な経験?」

セローラ
 「なんというか……視線でしょうか? 常葉さん家でなんですが、誰の物でもない視線を感じたんですよ」

私が真剣な面持ちで話すと、奥様はは若干顔を強ばらせた。
奥様は、こういうオカルト話には耐性がないのかも知れず、会話の選択肢を間違えたかもしれないと反省する。
奥様はしかし、何かを思い出したようで語り出した。

絵梨花
 「そう言えば、何処かの一室で昔殺人事件があったって聞いたことがあるわ……」

セローラ
 「殺人? ……それは惨いですね」

私は殺人という言葉に、眉を顰める。
私たちランプラー属は人の魂を燃料とするポケモンだから、死とは関連しやすい。
だが、奥様の会話からは、そこに生きるための理由としての死の臭いは感じられない。

セローラ
 (一体なにがあったんだろう……?)

あの部屋で感じた謎の感覚、私は強い興味を惹かれていた。
明日、もう一度調べて見ようかしら。



***




翌日――。

セローラ
 「うーん、今日は良い天気ですねぇ〜」

私は今日も今日とて家事手伝い。
しかしまぁメイドというのは休みがないものです。
とはいえ、適度に息抜きする暇はある、日本の環境はそんなに悪くないから嫌じゃない。
何より日本は気候もいい、文明が進んでいる。
帝国が共和国に変わって、就職先も中部のホウツフェインになって、随分環境は良くなったと思ったけど、ここは更に違う。
季節は11月、冬だと言うけど私からしたら大した寒さじゃない。
こうやって洗濯物を外干ししながら、寧ろ日差しを喜ぶ。

絵梨花
 「セローラちゃん、それ終わったら遊びに行っても良いよ」

セローラ
 「りょーかいでーっす!」

まだ奥様は普通に家事は熟せる。
年齢的にはまだまだ遊びたいんじゃないかなって思うけど、常日頃奥様は家に籠もりっぱなしだ。
時々奥様の真意は分からなくなる。
本当はいつも帰りの遅い旦那様に辟易して、話し相手が欲しいだけじゃないか、なんて邪推するけど、良くは分からない。
ただ、私からすればこの家は良待遇の職場だ。
あくまで奥様たちを雇用上だけの関係と捉えれば、今までで一番いい環境だろう。

……まぁ一言で割りきれないのが、ポケモン娘の宿命なんだけど。



***



朝10時、奥様が出かけたので私も外に出た。
と言っても私がマンションの敷地から出ることは殆どない。
時々奥様と一緒に買い物に行く程度で、私の生活環境はほぼマンションの敷地内で完結していると言える。

さて、とりあえず目的は今日も茜ちゃんのおっぱいを揉むことにある。
なお、可能なら昨日不意の事故によりロストした茜ちゃんの抜け毛も再入手したい。
こういう時、ご主人様の家がお隣とかなら良いのにと思うが、私は律儀に階段を登る。
一応エレベーターもあるんだけど、元々高さより広さのあるマンションだから、階段で充分だろう。
そうして4階を目指していると、3階で突然声を掛けられる。

女性
 「あら? セローラちゃん、今日も元気ね」

セローラ
 「おー、マダムルザミーネですか」

ふと通路を歩く嫌に目立つセレブっぽい女性、ルザミーネが声を掛けてきた。
なんでこんなセレブっぽい人がこんな微妙な土地価格のマンションに住んでいるのか、謎だけどルザミーネは丁度ご主人様の家の真下に住んでいるから、時々顔を合わせるのよね。
そしてルザミーネはというと、私の発言に顔を真っ赤にすると。

ルザミーネ
 「Mrs! 間違ってもmadamじゃないわよ!」

セローラ
 「ワタシニホンゴシカワカリマセーン!」

ルザミーネ
 「RとLの発音の区別も出来ない癖に……っ!」

等とからかってしまうが、基本的には私とルザミーネの仲は悪くない。
お互い無駄口を叩ける程度には親しいし、ルザミーネもそれ程こちらを嫌ってはいないと思う。

セローラ
 (とりあえず善人寄りだけど、魂の色は微妙なのよね)

はっきり外道ではないけど、ご主人様のような魂の色という訳ではない。
ただ、完全には信用出来ない相手だ。

セローラ
 「ルザミーネはお出かけ?」

ルザミーネ
 「ええ、駅前までね。そっちはいつも通り上でしょ?」

セローラ
 「Exactly(その通りでございます)」

恭しく頭を下げる私。
ルザミーネは当然のように突っ込んでくる。

ルザミーネ
 「貴方本当は英語分かるでしょう!?」

セローラ
 「ふふふ、セローラちゃんは、スーパウルトラセクシィヒーロー、サムライガンマンですから!」

ルザミーネ
 「もうやだ……突っ込みどころにキリがない」

さしものルザミーネも、疲れを見せ始めた。
ぶっちゃけエセセレブ感もあるし、何らかの嘘をついているのは確かだし、ルザミーネに対しては此方も底を見せるべきじゃないかも知れない。

ルザミーネ
 「ああ、そう言えば常葉さん、今日は皆出かけたみたいよ」

セローラ
 「え? 留守なんですか?」

ルザミーネはコクリと頷く。
うーむ、時々あの家は全員で出かける時があるけれど、結果的に2日連続とは。

セローラ
 「そう言えば、このマンションで起きた殺人事件について、何か知っていますか?」

朝から私は何を聞いているんだと思うが、ルザミーネは真剣な面持ちで言葉を推敲する。

ルザミーネ
 「405号室……今常葉さんが在住している部屋ね、確か5年前位に、部屋の中で女子高生の死体が発見されたんだっけ……」

ルザミーネも、流石に記憶が完全でないのか上の空で説明を始める。
ルザミーネは奥様より情報を持っているようで、その情報はある程度具体的だった。
私は顎に手を当てて考える。
もしも、殺された人の魂がまだ残留しているとすれば、それは何を意味するのだろう。

ルザミーネ
 「御免なさい、私も今年になってこのマンションに来たし、そこまで詳しい事は」

セローラ
 「いえいえ、随分具体的な情報で有り難かったです。寧ろなんでそんなに知ってんだって位ですよ」

実は某国のスパイだったりするんじゃないだろうか。
ルザミーネは時々、ただのセレブとは思えない鋭さを放つときがある。
色々張りぼてセレブ感あるし、狙ってその雰囲気を作っているなら本当に何者だろう。

ルザミーネ
 「それじゃ、お店の予約時間に遅れちゃうから、私はこれで」

セローラ
 「はい、精々女を磨いて無駄な努力をしやがれです」

ルザミーネ
 「be quiet!(黙りなさい!)貴方だって何時までもピチピチの肌だと思わない事よ!」

セローラ
 「ふはは! セローラちゃんは永遠の16歳なのだ!」

私はそう言うと4階を目指し、ルザミーネと別れる。



***



セローラ
 「あ〜か〜ね〜ちゃ〜ん!」

私はいつものように、インターフォンも押さず、扉をすり抜けて侵入する。
中はルザミーネの情報の通り、無人だった。
日曜は皆で出かけている事が多いみたいだけど、2日連続っていうのは珍しい。

とりあえずリビングまで進むと、私は気配を探る。
人の気配は無し、続いて魂の気配を探る。

セローラ
 「……やはり魂の気配はしない」

私たちランプラーの視界は大きく二つに別れる。
まず通常、普通の人間と同じ三次元の視界。
そしてもう一つ、魂を見る視界。
魂を見る視界では、世界はレイヤーで組まれた昔のコンピュータグラフィックスみたいな視界、そこに炎のように燃える魂を見る。
調子にもよるけど、魂の視界は遮蔽物がないから数キロ先までは見える。
とはいえ、今回はそんな遠くを見る必要はない。

セローラ
 「視線は魂と関係はない?」

ルザミーネの話によると、ここで殺人事件が起きたのは5年ほど前。
死体が見つかったのはこのリビングで、死んでいたのはこの部屋に住んでいた女子高生。
当初家族で住んでいたらしく、事件はそんな家族がたまたま外出していた時に起きた。
当時事件は、他殺か自殺か疑われたようだが、結果的には他殺という形になったようだが、その犯人は不明。

所謂事故物件になってから、数年間不思議な視線を感じる人が多発し、その度にここに噂は広がった。

セローラ
 「視線は相変わらず、か」

視線を感じる条件は不明、何時でも感じるわけではなく、今は感じない。

セローラ
 「……魂がないのなら、視線とは何処から来るのか」

とはいえ、魂は何も答える事がない。
そもそも死後5年も魂がその場にあるはずもない。
器がない限り、魂は維持が出来る訳ない。
とするならば……。

セローラ
 「上……」

私は天井を見上げる。
部屋は天井まで綺麗にされた清潔な空間。
しかしその裏には、埃まみれの天井裏がある。
人形……そんな事があるのかと疑うが、天井裏には微弱な魂の影が見える。

セローラ
 「……これは?」

私は天井裏に手を伸ばす。
人形を手に掴むと、私はそれを引っ張り出す。
私は自分が触れている物を、自分と同様のルールで透過させることが出来る。
引っ張り出した人形は、汚い人形だ。

セローラ
 「……この人形、それ自体は変哲な物ではないみたいね」

私は人形を色んな角度から見回して見るが、やはり曰く付きのそれという事もない?
だが、人形からは魂の影のような物を感じる。
それははっきり魂だと確信が持てる物ではない。

セローラ
 「一言で言えば、普通の人形じゃない」

だけど、これ視線の原因だとすれば、これに何か意味がある。
でも、この部屋で起きた死亡事件とどんな因果関係が?

セローラ
 「むぅー、これは?」

私は残念ながら幽霊と会話するとか、そんなスピリチュアルな能力は持っていない。
所詮魂を喰らうだけのポケモン。
だけど、この人形からなにか哀しさのような物を感じる。

セローラ
 「……何か、この感じ」

そう、人形から感じたのは哀しみ、それはこの場に封じられた地縛霊?
私は人形を持って、更に上に跳ぶ。
屋上には誰もおらず、私は屋上に着地すると、人形をその場に置いた。

人形は、あくまでもその場にいるだけ。
なぜそんな場所にあったのかは不明だけれど、この人形はただ物寂しそうにしていただけだ。

セローラ
 「おそらくだけど、死亡事件があった時、本来は霧散するべき魂の一部が、人形に宿ったのね」

付喪神なんて呼ばれ方もするけれど、本来魂が物に宿ることはない。
それでも、人を象った象形物なら或いは、宿ることもあるのかも知れないわね。

人形はただ、物悲しそうに此方を見ている。

セローラ
 「御免なさい、私には供養とか、そういう事は出来ないの」

私はその人形が未だ現世にあることが、問題だと思った。
こんな小さな物でも、いつかは邪霊になってしまうかもしれない。
だから……。

ボオゥ!

私の力で人形が発火する。
この瞬間、私は一つの技を思い出したらしい。
『鬼火』、人形は足元から燃えて、やがてその身を灰にする。
そして人形から漏れ出た魂を私は天へと送った。

セローラ
 「……さようなら」



***



人形が無くなってから、あの部屋で視線は感じなくなった。
恐らく視線とは人形に宿った地縛霊の視線だったのだろう。
だが、微弱なそれは魂と呼べるか怪しい物だった。
結局、それ自体は5年前の事件との因果関係は認められなかった。

私はただ、魂を喰らうだけのポケモン娘、間違っても成仏させるような存在じゃない。
あの小さな魂が何処へ向かうのか、私は知らない。
私には供養する事は出来ないし、それはもう遅すぎること。

セローラ
 「あ〜か〜ね〜ちゃ〜ん!」


 「相変わらず鬱陶しい」

私は今日も今日とて、茜ちゃんの後ろからおっぱいを精一杯揉む。
相変わらず茜ちゃんは嫌がっても、振りほどきはしない。


 「おいおい、セローラ、いい加減にしろよ?」

その光景を見たご主人様は呆れながら、私を引き剥がす。
私はそんなご主人様に抱きつくと、そっと囁く。

セローラ
 「ンフフ〜、ご主人様もあのマシュマロおっぱいを揉んでみれば、病みつきになっちゃいますよ〜?」


 「……あのな、間違ってもそういう事を本人の前で言うのは……」

ご主人様は早速照れてしまう。
うーん、ご主人様はきっと茜ちゃんが好きだと思うんだけど、大事にしすぎなんだと思うわ。
まぁ私も愛して貰えるなら、喜んで操を捧げますけど。


 「ご主人様なら……おっぱい痛いくらい揉んだり、吸ってもいい」


 「あ、茜!」

セローラ
 「おやおや〜、茜ちゃん大胆発言! これは据え膳出されたら皿までですよ!」


 「しないから!」

……やっぱり、哀しい事より、楽しい事の方が100倍良いよね。
私に負けじと、茜ちゃんもご主人様に抱きつく。
両手に華なのに、手を出さないご主人様はヘタレの極みだけど、好きになっちゃったんだから仕方がないよね。



突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語


第12話 セローラちゃんと呪いの人形 完

第13話に続く。


KaZuKiNa ( 2019/05/09(木) 13:41 )