突然始まるポケモン娘と○○○する物語





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第二部 突然始まるポケモン娘と旅をする物語
第27話 神話の乙女

突然始まるポケモン娘と旅をする物語

第27話 神話の乙女

俺たちは地下牢を脱出すると、城のエントランスに出た。
そこでは大量の黒ずくめが無残に倒れており、そしてある女を皆が取り囲んでいた。
俺は直ぐに茜に命令し、美柑が相手を始末する。
こうして俺は脱出と共に皆と再会を果たした。


 「ナギさんの姿がないな」

ナツメ
 「誰か見ました?」

ニア
 「見てないわ」

保美香
 「存じ上げませんね」

皆首を横に振っている。
俺はナギさんを心配するが、ナギさんに限って大事には至っていないと思う。
それより今はこの後だ。


 「皆俺に力を貸してくれ!」

俺はこの場に集まった全てに俺の想いを託す。


 「カリンを……皇帝カリンを止める! アイツと本気でぶつかって、アイツの本音を聞き出したい!」

俺の無茶な願いに、最初に苦笑したのは保美香だった。

保美香
 「だんな様のご命令ならば、喜んで」

ニア
 「に〜、任せて」

ナツメ
 「私も全力で戦いましょう!」

美柑
 「ボクも戦いますよ、その人の事を知りたいですし!」

伊吹
 「アタシも頑張るよ〜」

全員喜んで受け入れてくれた。
だが、ただ一人何も言わなかったのはセローラだった。

セローラ
 「その……私はただのしがないメイドですし、一応雇用上の主人に刃向かう訳にも」


 「セローラ、ありがとうな。お前には凄い助けられた。本当にありがとう」

俺はセローラまで巻き込むつもりは当然ない。
だからこれまでの僅かな時間だったが、彼女には本気で感謝する。
しかし、俺が本気で頭を下げると、彼女は顔を真っ赤にして。

セローラ
 「や、止めてくださいご主人様! わ、私はメイド長の様子を見てきますので、ここでドロンです!」

セローラはそう言うと慌てた様子で壁抜けして消えていった。


 「セローラって意外と純情だから、アレ絶対フラグ立ったよ?」

保美香
 「フラグって……そもそもご主人様、あのメイドは一体?」

……案の定、俺は質問攻めを受けることになる。
茜ははぁとため息をつく。
よっぽど、ここでの生活も長く、彼女との付き合いも長いのだろう。
俺は余計な事をしたのかと思うが、ここで余計な気持ちは持たないようにする。


 「目標はカリンだ! 行くぞ!」



***



フウカゲツ城の最上階には謁見の間がある。
そこには皇帝カリンがただ一人、玉座に座って待っていた。
しかし、その静寂は直ぐに打ち消される。

バァン! けたたましい音を立てて謁見の間に滑り込んだのは帝国兵だ。
帝国兵は自らの無礼も忘れて、慌てた様子でカリンに近寄る。

帝国兵
 「報告します! キッサ将軍は戦死! 解放軍が直ぐそこまで!」

カリン
 「ふ、遂に来たか」

カリンは玉座から立ち上がるとゆっくりと謁見の間を降りていく。

帝国兵
 「かくなる上は、皇帝陛下に解放軍の掃討を願いたく!」

カリン
 「分かっている」

帝国兵は余程必死なのだろう、カリンの傍まで近寄り出陣を促す。
しかしカリンはその場で足を止める。
帝国兵も見ないまま、彼女はその腰の大業物に手を付けると。

カリン
 「それで、どこまで猿芝居を続けるのだ?」

その瞬間、カリンは大業物を抜いた!
その大太刀は帝国兵の顔面を一瞬でスライスする!
しかし帝国兵は一瞬でその姿を変える。
そこにいたのは危険を察知して態勢を低くして太刀を避けたニアだった。
ニアは不意打ちに失敗すると、バク転して距離を離す。

ニア
 「どうして分かったの?」

カリン
 「伊達に皇帝ではない。殺気を隠しきれていなかったぞ?」

それ以外にも不審な点はあったが、文字通り百戦錬磨のカリンを暗殺することは不可能だと言えよう。

カリン
 「さて、ネズミが一匹のこのこと、その命を散らそうとはな」

美柑
 「一匹では……ない!」

カリンの下、壁抜けした美柑はソードを抜いてカリンを強襲する!

キィン! しかしカリンはそれさえ読んだのか、美柑の不意打ちも大太刀ではじき返した。

カリン
 「いい筋だ、しかし詰めが甘い」

ニア
 「く!?」

ニアが短刀を構え、カリンに襲いかかる。
しかしカリンは!

カリン
 「辻斬り、一の式、瞬剣!」

それはシンプルな居合いだった。
しかし速度の次元が違う!
かつてベルモットを一撃で真っ二つにした秘技がニアを襲う!

キィン!

ニア
 「きゃあ!?」

ニアはその高い動体視力で、なんとか剣筋を見切り太刀を短刀で受け止めるも、体重の軽いニアは吹き飛び地面に転がる。
ニア目の前には既にカリンの太刀の切っ先があった。

カリン
 「瞬剣を受け止めた事は、評価に値する……しかし、ここまでだな」

ニア
 「……く!?」

全く次元の違う強さ、これこそが皇帝である証であり、カリンの覚悟の強さであった。
カリンは太刀を振り上げる。
ニアはやられる! となんとか回避を試みるがそれはどうやっても叶いそうにない。

カリン
 「終わりだ」

保美香
 「終わらせません!」

保美香のパワージェムが太刀を振り上げたカリンを襲う!
カリンは鉄の鞘でパワージェムを打ち払うと、その隙にニアは距離をとった。

保美香
 「ニア、大丈夫かしら?」

ニア
 「九死に一生」

美柑
 「話には聞いていたけど……強すぎる!」

それは美柑から見ても異次元の強さだ。
一体どうすればそこまで強くなれるのか、疑問を覚えるがカリンはその余裕を待ってくれる女ではない。

カリン
 「では、次の技を見せよう。辻斬り、二の式、船斬り!」

それは太刀が纏った辻斬りの闇のオーラを解き放つ技。
真っ直ぐ振り下ろされた太刀は闇のオーラが地面を切り裂き、一直線にニアと保美香を襲う!

ニア
 「くそっ!」

ニアと保美香はそれぞれ違う方向に跳んで、それを回避。
更に美柑は後ろからカリンに襲いかかる。

美柑
 「チェストー!」

間違いなく決まる!
その瞬間を美柑は捉えたと思った……しかしカリンはそれを易々と上回る!

カリン
 「勇気は褒めよう! しかし機を誤ったな!」

カリンは鉄の鞘で美柑の腹部を殴打する。
それはただの殴打にあらず、辻斬りの悪の力を帯びた鞘だ。
当然ゴーストタイプの美柑には効果は抜群で、美柑は口から内容物を吐き出し、その場に倒れた。

美柑
 「かは……そんな事が、できるなんて……!」

ナツメ
 「ムーンフォース!」

美柑を援護すべく現れたのはナツメだ。
テレポートで、美柑を庇うように現れると、直ぐに月の力を解き放つ。

カリン
 「ち!?」

カリンは直撃はなんとか避けるが、美柑からは距離を離し、ナツメは美柑を回収すると、テレポートで保美香の後ろに回る。

保美香
 「美柑大丈夫?」

美柑
 「すいません……少し休めばなんとか」

美柑は重傷だ。
シールドフォルムと違い、ブレードフォルムの時は脆い。
この状態でダメージを受ければ、もうこれ以上戦いには参加出来ないだろう。

ナツメイト
 「もう間もなく茂様が来ます!」

カリン
 「ほう? それは良いことを聞いた、ならばその前に貴様らの骸を並べてやろう!」

カリンは再び大太刀を鉄の鞘に納めると、居合いの型を取る。

カリン
 「王女ナツメイト……かの武王ホウエン王の子息、その力見せて貰おうか!?」

ナツメイト
 「ッ!? 我が父を死に追いやった無念、今ここで晴らしましょう!」

ナツメにとってカリンは家族の仇だ。
その顔には少なからず悪意が灯る。
この中で最も彼女に恨みがあるのはナツメなのだ!
カリンは微笑を浮かべると、斬りかかる!

カリン
 「貴様も家族の元に送ってやる!」

ナツメイト
 「っ! 貴方は!?」

キィン!

ナツメはカリンと剣をぶつけると、パワー負けしてしまう。
だが、ナツメは直ぐにカリンの後ろにテレポートした!

カリン
 「良いぞ! だがまだ足りん!」

ナツメイト
 「私は、私は! 憎しみでは戦わないっ!」

ナツメはカリンの後ろから大きく振りかぶってエストックを叩きつける!
それはカリンの鉄の鞘に阻まれるが、ナツメは直ぐにテレポートした!
そして置き土産に置かれていった物にカリンは目を開く!

カリン
 「スピードスター!?」

ナツメは土壇場で第四の技スピードスターを発現させ、それをテレポート寸前に放った。
それと同時に反対側にはナツメが出現!
ナツメは単身でカリンに挟撃を仕掛ける!

ナツメイト
 「頂きます!」

ナツメイトはエストックを水平に構え、突きを放つ!
確実にとれるタイミング! だがカリンは一瞬大太刀を鉄の鞘に納めると……!

ガッキィィン!!!

それは一瞬の妙技だ、全方位に放たれた斬撃と闇の波動。
ナツメは吹き飛ばされ、スピードスターは全て打ち落とされる。

ナツメイト
 「……く!?」

カリン
 「肝を冷やしたぞ……さて、時間切れか」

カリンは入口を見た。
そこには彼がいたのだ。


 「本当に呆れるほど強いんだな」

そこに茜と伊吹を連れて現れたのは茂だった。
カリンは茂と茜を見ると、少し哀しそうな顔をするが、直ぐに冷酷な目で茂を見捉える。



***



カリン
 「遂に現れたな、伝説のポケモントレーナー」


 「最後に聞くぞ、どうしても戦わないといけないのか?」

俺は皇帝として冷酷に振る舞うカリンの目を見る。
カリンの目は、やはり人殺しの目ではない。
どこにでもいる普通の女の子の目だ。
やはり本心を皇帝という仮面で隠してやがる。
これを本気で剥ぐのは苦労しそうだ。

カリン
 「愚問だ……それよりも神話の乙女は見定めたのか?」


 「正直それは何とも」

俺は未だに神話の乙女とやらの正体は掴めていない。
そもそも実在するのかも怪しく、どうすればいいのかも分からない。
だが、俺の後ろから彼女は遅れてやってきた。

ナギー
 「私がそのつもりだ……一応な」

最後にここにたどり着いたのはナギさんだった。
ナギさんは何か神妙な面持ちで俺を見ると、何も言わずカリンに向かい合う。

ナギー
 「私自身、神話をアテにする気は無いが、お前は神話の乙女に用があるのだろう?」

カリン
 「ふ……はは! 神話をアテにする気は無いか! まぁいい……ここは狭い、ついてこい!」

カリンは太刀を鞘に納めると俺たちに背を向けた。
彼女は俺たちが後ろから襲わないと確信でも持っているのか、特に無防備な姿を晒して玉座の奥に向かう。

俺たちは全員無言のまま頷くと、カリンの後についていった。



***



時刻は既に夜を迎えていた。
俺たちはカリンについて行くと、そこは屋上だった。
空には巨大に映る満月があり、肌寒いがすっきりとした空が星々を彩る。
ここには外での野戦の音も遠く、ただ俺たちだけがここに立っている。

カリン
 「ここなら貴様の力も十全と発揮できよう?」

ナギー
 「鳥ポケモン相手にとは痛み入る」

カリンはあくまでも全力のナギさんと戦いたいようだ。
空が開いているという事は、それだけ鳥ポケモンは有利。
だが、そんなハンデをナギさんが受け入れるとは思えない。

ナギー
 「空からの一方的な攻撃は騎士道に反する。あくまでも貴様の目線で戦おう!」

ナギさんはロングソードを構える。
一方でカリンは太刀の柄を握って、居合いの構えだ。
俺たちは邪魔にならない位置で、この戦いを固唾を飲んで見守る。

カリン
 「因みに夢は見たか?」


 (夢?)

突然カリンは何を言い出すのだろう。
しかしナギさんはゆっくり目を閉じると。

ナギー
 「見たよ……丁度昨日、最後の夢を見た……ウェディングドレスを着た私は、想いの彼と満月の夜キスをする……」

それを聞いたカリンは静かに笑い出す。

カリン
 「ふふふ、やはり神話の乙女に選ばれたようだな。ならば容赦せん! 貴様を殺し神話を終わらせる!」

カリンの殺気が大きく増した。
やはりカリンは神話の乙女に強い憎悪を抱いている。
しかし何故だ?
カリンとナギさんには全く接点はない。
事実ナギさん自身には殺気など全く持っておらず、あくまでも神話を憎悪する。
俺にはそれが分からない。
何故彼女は神話をあれ程憎むのか?

ナギー
 「暴風……白兵戦モード!」

カリン
 「辻斬り、一の式、瞬剣!」

今、二人の剣が交錯する!
ナギさんは暴風を身体に纏い、身体能力をアップさせ、カリンは正に神速とでも言うべき居合いでナギさんに斬りかかる。

しかしナギさんはその居合いの太刀を上から叩いて弾く!
だが、瞬剣はまだ終わらない!
背中を見せるほど身体を捻らせたカリンはナギさんの側頭部に鉄の鞘で強襲する!
ナギさんはそれを回避……しきれない!
僅かに鞘が掠って、ナギさんの頭部から血が流れる。

ナギー
 (く!? まだ追いきれないか!?)

さしものナギさんもカリンの巧みな技に翻弄され、早速傷を負ってしまう。
しかしナギさんも負けていない!
更に追い打ちを狙うカリンに、ナギさんはバックステップと同時に剣先から風の斬撃を放つ。

ナギー
 「エアスラッシュ!」

カリン
 「く!?」

さすがにカリンも回避はしきれず、鞘で打ち払うが、風はカリンの頬を斬る。
カリンの頬から一筋の血がこぼれ落ちた。

カリン
 「どうして中々……初めて会ったときはあれ程怯えていたのに」

それは俺たちとの初めての出会いの時だろう。
ベルモットがやられた時、ナギさんは動くことも出来なかった。
でも今は違う、ナギさんは互角に戦えている。

保美香
 「何かおかしいかしら……」


 「保美香もそう思ったか」

ナツメ
 「なんの話しですか?」


 「ナギさんが強すぎるんだ……ここ最近急に強くなっていたが、ここまで強かったか?」

俺たちはナギさんの歩みを見てきたつもりだ。
しかしその強さはジョーとの戦いの後から、飛躍的に強くなっており、今や別人と言えるほどの強さを見せている。


 「まるでナインエボルブーストした時みたい」

茜の言は言い得て妙だ。
つまり暴風白兵戦モードを勘定に入れてもオーバースペック。
それについていくカリンも大概だが、神話の乙女ってのはブーストがかかるのかね?

ナギー
 「今度はこちらから!」

次はナギさんの攻撃だ。
暴風を纏ったナギさんも相当速く、神風を思わせる。
それを丁寧に弾き返すカリンも鉄鞘で反撃に移るが、今度はナギさんが脇差しのエアームドの短剣を抜いて相殺した。
その後二人の戦いは全くの互角の様子を見せる。

ナギー
 「エアスラッシュ!」

カリン
 「辻斬り、二の式、船斬り!」

お互いの飛ぶ斬撃がぶつかり、衝撃で地面の石レンガがパラパラと宙を舞った。
この戦いに、俺たちは全くついて行けない。
一体この二人はどうすれば、こんな化け物みたいな戦いが出来るのか……。

カリン
 「ふふ……流石に強いな」

ナギー
 「はぁ、はぁ。そう言う貴方もな」

ナギさんは既に肩で息をしているが、しかしカリンはまだ余裕があるように思えるのは気のせいか?
しかし、俺の予感は悪い形で当たってしまう。

カリン
 「では、そろそろ終わりにしてやる……辻斬り、終の式、百花繚乱
!」

それはパッと見では一の式と同じ居合いだった。
そしてその神速も変わらず、ナギさんに斬りかかる。
しかし、それはとても恐ろしい技だった。

ナギー
 (なんだこの技は!? 剣が9つに分身して!?)

ガキィン!

まるで耳を劈くような音がした。
かまいたちが俺たちの鼓膜に襲いかかったんだ。
だが、甲高い音がしたという事は防ぐ事に成功した?
しかしカリンは、ニヤリと笑っている。

ナギー
 「ぐ……は」

ブシュウ!

ナギさんは全身から血を吹き出して、その場に仰向けに倒れた。
俺はその鮮烈な光景に血の気を退いて顔を青くした。


 「ナギさぁぁん!!?」

カリン
 「ふふ、百花繚乱は8つの斬と1つの突によって、一瞬で相手に血の花を咲き乱れさせる秘奥義……心臓を襲う突だけは弾いたのは見事だ」

ナギー
 「くは……!」



***



ナギー
 (くそ……情けない、私は何をやっているんだ?)

カリンの技、百花繚乱は本来なら全身をバラバラに解体する威力の技。
なんとか暴風の膜でダメージを抑えたが、即死しなかっただけで、瀕死に違いは無い。
私は自分の弱さに嘆いた。
姫さまやニアの悲鳴もどこか遠くに聞こえ、意識が朦朧とする。
ああ、ここで私は死ぬのかな?
何だか痛みも引き、安らかな気持ちを覚えてしまう。
このまま楽に死んでしまうのか?

しかし……私はそこでもう一度夢を見た。

それは多くの墓前の前だった。
私は空を見上げていた。
そこには大きな穴が開いている。
まるで世界を飲み込むアビスの穴だ。
私は恐ろしかったが、不意に温もりを感じた。

「大丈夫?」

それは私の手をぎゅっと握ってくれた茂さんだった。



………。




 「ナギさぁぁん!!!?」

ナギー
 「くは……!」

私は茂さんの声に現実へと呼び戻される。
痛い……だが、まだ死んでない。

ナギー
 (そうだ、死んで堪るか! 私は茂さんを悲しませるつもりはない!)

その時だ、私の薬指に力を感じた。
私の左手の薬指には七色の輝きを放つ不思議な指輪が嵌められている。
それはかつて神話の乙女が使ったとされる物。


 「死ぬなナギさん! 勝ってくれ!」

ナギー
 「あ、ああ……その、つもりだ!」

茂さんの言葉は起爆剤だった。
そう、絶対に死ねない!
勝って全てを終わらせる!
そのための力……全て出し切る!



***



突然ナギーの身体に七色のオーラが包み込んだ。
オーラは一瞬で弾けたが、そこにいたのはそれまでとは姿の異なるナギーだった。


 「メガ進化……!?」

そこに立っていたのは更に翼を巨大化させ、羽毛の色も青く変色していた。
そしてそこから感じる圧倒的オーラが私を戦慄させた。

カリン
 「これが、神話の乙女か……!」

それこそ正しく神話の通りだった。
茂さんはナギーに近寄るとその手を握る。


 「ナギさん、身体は大丈夫か?」

ナギー
 「ああ、少し興奮気味だが、問題ない……それよりありがとう」


 「ありがとうって?」

ナギー
 「貴方は私に全てをくれた、だから貴方に全てでお返しする」

それは短いキスだった。
ナギーと茂さんは両手を繋ぎ、静かに目を閉じてキスを交わす。
私は唇を噛むと、それが辛かった。
しかし屈服するわけにはいかない。
この行為を見せられて、尚更神話の乙女を認める訳には行かない。
この真の神話の乙女を倒さなければ、永遠に私の悲劇は繰り返される!

ナギー
 「済まない茂さん、危険だから下がって」


 「……わかった」

茂さんが安全な場所まで移動すると、私は大きく深呼吸をする。

カリン
 「死に損ないがぁ!」

ナギー
 「っ! はぁ!」

キィン!

私とナギーは再びぶつかり合う。
今度はパワーでも互角、
いや僅かに相手が上回るのか!?

ナギー
 「いける! 皇帝と競り合える!」

私はナギーを振り払い、距離を取ると覚悟を決めた。
私は大きく息を吸い込むと。

カリン
 「やはり貴様を確実に殺すにはこれを持って他に無いようだな……辻斬り、終の式、百花繚乱!」

私は飛び出した。
しかし、それ以上の速さでナギーは飛び込んでくる!
もう私は止まれない!

カリン
 (全身全霊だ!)

私は鞘から刃を抜く!
8つの斬撃と1つの刺突、それらはほぼ同時と言える速度で放つ!
だがナギーは!

キィン! キィン! キィン! キィン! キィン! キィン! キィン! キィン!

奴はこの神速の乱れ切りを全て相殺してみせた。
そして最後の突きは!

ニア
 「さっきと音が違う!」

伊吹
 「速すぎて全く見えないよう〜」

最後は静寂だった。
奴は最後の突きに対してカウンターで自身の鞘で私を突いてきた。

ナギー
 「これが私の茂さんに対する『恩返し』だー!」

カリン
 「かはっ!?」

私はついには膝を突いてしまう。
手心を加えられた。
その気になれば殺せたにも関わらずだ!

ナギー
 「終の秘剣も破ったぞ! もう終わりだ」

カリン
 「終わりなどあるものか……貴様を殺すまでは……くっ!?」

私は立ち上がろうとするも、最後にくらった恩返しに膝を突いてしまう。


 「もう止めろカリン! なんでそんなに頑張れるんだよ! 少し俺を信じて教えてくれ!」

カリン
 「信じる? 信じたさ……でも、裏切られた!」


 「裏切った? どういうことだよ」

カリン
 「ふふ、私は裏切られた……何度も夢に見て、そして茂さんに憧れた」


 「っ!? まさか……お前も?」

ああ、茂さんに気付かれちゃったかな。

カリン
 「そうよ! 私もウェディングドレスを着て、神話の乙女になる夢を見た! 私も神話の乙女なのよ!」



突然始まるポケモン娘と旅をする物語


第27話 神話の乙女 完

第28話に続く。


KaZuKiNa ( 2019/04/10(水) 15:19 )