突然始まるポケモン娘と○○○する物語





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第二部 突然始まるポケモン娘と旅をする物語
第21話 進む道

突然始まるポケモン娘と旅をする物語

第21話 進む道

俺たちは北部最初の町へと到着した。
そこは特に特徴のない町で、旅人には特に優しくもなく、だけど排他的でもないイメージだった。


 「それじゃ、ここで解放しますんで」

トウガ
 「すまないな、君たちの旅に幸あれ」

俺たちは最低限の治療を施し、トウガさんに別れを伝えた。
トウガさんは今の皇帝には疑問があると、これ以上俺たちと戦わない事を約束してくれた。

ナツメ
 「トウガさん、もしよろしければホウツフェインに来ませんか?
もし貴方と同じ道を歩めるなら私は……」

トウガ
 「そこまでです。私の道はやはり帝国です。私は北部の民の義憤で戦いました……もし理想が叶うなら、帝国の統一、そして弱き者が見捨てられない恒久的平和が欲しかった……」

それがトウガさんが戦った理想か。
それは帝国の元々の理念。
何所の世界でも戦争はいつだって、理想を持って行われる。
貧しさからの脱却、傲慢な王からの革命、いつだって戦争は最終手段で、そしてだからこそ止まれない。
富の配分には限界があるから、だからこそ奪い合う。
トウガさんの理想はあまりにも儚い。


 「理想は大事だと思います。でもそれを叶えるには何百年もの努力が必要だと思います」

俺の生まれた世界では、今もなお戦争はある。
流石に富を原因とした戦争ではなく、民族紛争が殆どだが、70億の人間全てを幸せにするのは不可能だろう。
それが現実であり、そしてそれでも理想は必要だ。

ナギー
 「我々も本来ならば同じ平和を歩むべきであり、しかしそれにはお互いの歩を同じくする事が必要だ、それを理解することにまずは務めよう」

トウガ
 「もし、皆さんのような方たちが多ければ、この戦争も起きなかったでしょう……そういう意味ではあなた方のこれからの活躍に期待します」

トウガさんはそう言うと、歩を進める。
俺たちはトウガさんの背を、ただ見送った。

伊吹
 「で〜、とりあえず補給だね〜」

本来なら、一番しんみりしているであろう伊吹だが、今日はそれを一番最初に断ち切る側に回ったようだ。
伊吹はなんだかんだで、皆の事をよく考えている。
だから、辛いことを自分で背負ったり、誰かの幸せを常に気遣ったりする優しい子だ。

美柑
 「そうですね、とりあえず食料品はまず揃えましょうか」

ニア
 「休める場所もあるか探そう」

俺たちはまだ最初の拠点にたどり着いただけだ。
だからここで愚図ついている訳にはいかない。
俺たちは次の旅の準備を始める。



***



カリン
 「どうやらトウガは敗れたようだな」

ギーグ
 「皇帝陛下……これは由々しき問題ですぞ。単身の能力でトウガに匹敵するものは七神将でもいません」

カリン
 「ふふふ、さて、ならばどうするギーグよ?」

ギーグ
 「……可能性であればジョーを推薦します」

カリン
 「ジョーか、それだけで大丈夫か?」

ギーグ
 「あの男は傭兵としては実に素晴らしい……ですが協調性がありません。同級を援護につけてもそれが確実な戦果となるか難しいです。ならば雑兵でも並べ、ジョーには将だけを狙える状態を作りましょう」

カリン
 「ふむ、任せよう」

私は玉座の間でギーグと今後について話し合う。
ギーグは本気で茂を危険視している。
実際には彼が帝国を滅ぼす気はないと思うが、結果的に滅ぼす事になるだろう。
それがギーグには本当に恐ろしいのだろう。
私としてはどうでもいいが、まぁ彼らがどれだけ強くなれるかは見物だな。

カリン
 (さぁ強くなれ、そして最強の敵として私の前に現れろ)

私は必ず神話の乙女を殺す。
それが私の宿願であり、呪いだ。

ギーグ
 (もしも、これさえも失敗すればそれは帝国の壊滅……もしそんな事になれば私は……)

カリン
 「ふふ、期待しているよ、ギーグ」

私は玉座から立つと、不安で青ざめたギーグの肩を叩いた。
それだけでショック死するんじゃないかという恐怖の顔をギーグは見せる。
ふふ、俗物はこういう時保身に走るものだ。
しかし、私がいる限り帝国からは逃げられん。
それを私はギーグに教えてやる。

カリン
 「ここを支えれば、帝国は勝つよ」

私はそれだけ言うと玉座の間から出て行く。
さて、こういう時は茜をからかって気分を変えるとするか。



***




 「雪……」

私は今日も城の清掃を行っている。
そして窓から見ると外は雪が降っていた。
この国では決して珍しくはないけれど、何故か私は心を奪われるようにそれを見てしまった。

果たして、この雪に何があるのか自分にも分からない。
ただ、もしもご主人様が近くにいるなら凍えないようにして欲しい。
力のない私にはただ、ご主人様の無事を祈ることしか出来ない。

セローラ
 「茜のおっぱい搾っちゃうぞ〜むにゅ! うーんこの柔らかさ、羨ましい」


 「……セローラ、それ以上セクハラするなら」

コンル
 「何をしているセローラ!」

ガイィン!!

私はいつものように不意打ちでセクハラしてくるセローラに注意しようとするが、その瞬間銀のトレイが横からセローラの頭部に直撃。
それはセクハラ現場を発見したコンル、メイド長の投げたトレイだった。

セローラ
 「め、メイド長……今日もまた麗しく〜」

コンル
 「セローラ、暇があればいつも茜にそうやってセクハラばかり……貴方にはメイドとしての自覚が……!」

セローラ
 「セローラ、仕事に戻りまーす!」

コンルの説教を嫌がったセローラは一目散に逃げ出した。
相変わらず怒られるの分かってるのにサボるのはなんでだろう。

コンル
 「全くセローラったら……いつもいつも茜にちょっかいばかり」


 「そういうメイド長もいつも、近くにいますよね」

セローラもだが、何故かメイド長もいつも私の近くにいる気がする。
偶然にしては、いつも銀のトレイを持っているし。
しかしその言葉にメイド長は顔色を変えた。

コンル
 「ぐ、ぐぐ、偶然じゃないかしら!? ほら、偶々セローラを見かけて!」

……凄く焦りだした。
メイド長は耳まで真っ赤にして、やたら早口になる。
はっきり言って怪しいと自分で申告しているようだ。


 「もしかしてストーカー?」

コンル
 「ち、違っ! 偶々見守っていただけよ! 本当に偶々なんだから!」

メイド長はそう言うと逃げるように走って行った。
私はしばし、呆然とするが窓の清掃を再開するのだった。



***




 「とりあえず、これで旅の準備は万端だな」

俺たちはトウガさんと別れた後、手分けして必要な物を集めた。
旅は推定で後6日で、首都カノーアにたどり着く計算だ。
故に必要な物質は6日分以上。
重量も嵩張るため、7日分しか確保していないが、いつ不測の事態があるかも分からないため、この辺りはギリギリだ。

保美香
 「次の目的地は約3日かけて、ケダシに町という事になりますね」

美柑
 「地図から照らし合わせると、北西ですね」

次の町は遠いな、それはもとより覚悟の必要な旅だ。
地図上から見るルートは、途中で山間部の渓谷を抜ける道となる。
平野と異なり、山脈の下を進むだけに道に迷うことはないが、同時に奇襲を受ける可能性が高い。
皆もこの先安全にいけるなんて誰も思っていないが、緊張する場面だ。


 「ナツメ、次は絶対無理するなよ?」

ナツメ
 「はい……心得ています」

ナツメは運良く軽症で済んだが、あの独断はやはり許せない。
もし次同じ事があれば、今度こそ死ぬかも知れないのだ。
それは絶対許さない。
この旅に付いてくる奴は同時に絶対に生きて帰る事を約束してもらう。

ナギー
 「早く出発しましょう……北部は夜が早いからな」


 「ああ、行くぞ!」

俺は皆を先導して歩き出す。
今回も隊列に変更はなく、俺の後ろ隣にナギさん、その後ろにニアとナツメと保美香、一番後ろにソリを引く美柑と伊吹だ。



***



ジョー
 「兵300を連れて伝説のポケモントレーナーに強襲か」

ギーグ
 「そうだ、お前はいつも通り大将の首だけを狙えばいい」

ジョー
 「俺は所詮は傭兵だ、金さえ貰えるならなんでもいい」

ジョーはギーグから作戦の概要の説明を受けた。
それは実にいつもと変わらない命令だ。
七神将といっても、ジョーにその異名の価値はない。
外様の将として迎えられているが、帝国の忠誠心はなく、ただ金だけが彼を信用させる。

ジョー
 「任務は了解した、速やかに実行しよう」

ジョーは立ち上がると、出撃の準備に移る。

ギーグ
 (ジョーは戦闘のプロフェッショナル……だが、念には念を打たねばなるまい)

ギーグは出撃のため、退室するジョーを見送りながら一考する。
もはや、帝国に後ろはない。
そのためならば、なんでもしよう。
だが、これさえも失敗するのならば……。



***




 「山と山の間を通ってか……」

俺たちは1つ目の町を出て最初の1日目を越えようとしていた。
野営を済ませて、2時間ごとに見張りを1人交代させて、夜を越えることにする。

ナギー
 「明日辺りには、そこに近づく……警戒するべきだろうな」


 「まぁ、古来奇襲の定石だからな」

となると、鍵はやはりナギさんか。
頭上を取られた時、その主導権を最もとれるのは飛行タイプのナギさんだ。
だがしかし……それは帝国にも飛行タイプの存在はある。
この世界では飛行タイプの力は絶大だ。
飛行機が戦争の歴史を変えたように、飛行タイプは殆どのポケモンが技を使えない世界では、それだけで意味があると言える。


 「……ナギさん、無理だけはしないでくれよ?」

ナギー
 「大丈夫……とは約束しきれないな……、私は君のためなら、無茶だってしてしまうさ」


 (……ナギさんはどうして俺のために力を貸してくれるんだろう)

俺はナギさんたちには、あくまでもそう言う注意を出来るだけだ。
しかし、それをどう判断するかは彼女たち次第となる。
そこにナギさんたちの思いがある。
俺には分からないが、彼女たちの思惑を俺は見守るしかないよな。


 「……ナギさん、戦うことを怖いと思った事はない?」

ナギー
 「あるさ、あの中部地方での戦いは、私にとって初めての実戦だった。あの頃帝国兵戦うのに震えたりもした……!」

ナギさんもやっぱり完全無欠ではない。
初陣の頃はナギさんでも怖れたのだ。
俺はどうだろう?
初めてトウガに槍を向けられた時、俺は恐ろしかった。
だけど、不思議と今思えば、俺は何故か安心していた気がする。
もしかして恐怖心が麻痺しているのか……それとも。


 (それこそが、ポケモントレーナーである証?)

俺は自分の手を見た。
俺自身には伝説のポケモントレーナーとしての加護のような物があるらしい。
俺はそれ自体をこれまでの旅に考察してきた。


 (まずポケモントレーナーと言われる由縁は、ポケモンを指揮し、技を思い出させる役割だろう)

俺の知るゲームのポケモントレーナーたちが、ポケモンバトルを怖れるなど聞いたことがない。
つまりこの世界はある意味でゲームのメタであると、捉えられる。
何故のこの世界には人間が存在しないのか……それこそがこの世界の鍵ではないか。

ナギー
 「……なぁ、茂さん」


 「どうした?」

ナギー
 「湖の事、覚えているか?」

湖の事、それは間違いなく3人で遊びに行った時のことだろう。
俺はあの出来事を思い出すが、どうにもアレはあまり記憶したくない。
何せニアはノイローゼみたいなっていたし、ナギさんは思いっきり暴走してしまった。


 「覚えているけど、なんでまた?」

ナギー
 「……実はな、あの湖でデートすると、その人と結婚できるっていう迷信があるんだ」


 「へぇ、まぁよくあるデートスポットのお約束だよな」

生憎だが、俺はそう言う迷信は信用しない質だ。
第一その手の話は至る所で聞く話だけに、尚更怪しい。
とは言っても、それじゃ伝説のポケモントレーナーはどうなんだって話だが、これにはもう一つはセットの話があるんだよな。


 「神話の乙女……か」

ナギー
 「えっ? 神話の乙女……?」

ナギさんがそれを聞くと目を見開いた。
そう言えば、カリンは神話の乙女を探していた節がある。
カリン曰く俺はすでに神話の乙女と出会っているらしいが、皆目見当もつかん。


 (可能性があるとすれば、ナツメ、ナギさん、ニアだろうか?)

勿論家族の誰かの可能性も否定できないが、それは違う気がする。

ナギー
 (……神話の乙女、何故だろう……なぜこうもその言葉に心が動くのだ……?)

ニア
 「ナギー、交代」

いつの間にか時間が来たらしく、ニアはテントから現れた。
ナギさんは頭を一度横に振ると、立ち上がった。

ナギー
 「ああ、時間か。見張りたのむぞ」

ニア
 「に〜、大丈夫、お兄ちゃんと一緒だもん」


 「俺も後1時間で交代だけどな」

ニアがテントから出てくると、ナギさんはテントへと戻っていく。
ニアは俺の隣に座ると、火を囲んだ。
見張りは2人、奇数組と偶数組で1時間ずらして交代することで、皆の負担を軽減する。
次は俺と保美香が交代する予定だ。

ニア
 「寒いけど、暖かい」


 「なんだそれ」

俺は火に薪をくべながら、隣のニアに聞く。
ニアは俺にもたれ掛かると、和やかに笑っている。

ニア
 「お兄ちゃんと触れ合うと暖かいの、身体も心も」

北部の夜は特に厳しい。
それ故に防寒着は厚く、触れ合っても体温は感じれないと思うがな。
だが、純粋にニアは俺と二人っきりな事が嬉しいんだろう。


 「ニアはなんで俺に力を貸してくれるんだ?」

ニア
 「家族だもん、助け合うのは当然」


 「家族……か」

俺は、ふと茜の顔を思い出す。
茜は今帝国にいるというが、無事だろうか。
事実上カリンは俺を呼び込むために人質にしていると見ていい。
その待遇までは分からないが、茜を取り戻す事が俺の目的の終着点だ。
恐らく茜を取り戻すのに、カリンとの衝突も避けられないだろう。
可能なら戦わず納めたいが、カリンはそれを望んでいない。
俺はあのカリンを倒さなければ、茜は取り戻せない……か。

ニア
 「お兄ちゃん、難しい顔している……」


 「……これからの事を考えててな、済まない心配かけて」

ニアは気が付くと不安そうに俺の顔を覗き込んでいた。
俺は心配かけまいと、極力笑顔を見せる。
しかし、俺は茜とカリンの事が忘れらない。
特に鮮烈に覚えるカリンの強さ。
果たして皆の力を合わせても、無事勝てるだろうか……?


 (いや、勝つんだ……皆と一緒に!)



***



中部地域では今も各所で戦が続いている。
しかし、この地域での戦争の終了も待たぬまま、解放軍では軍の再編が行われていた。

ベルモット
 「ああもう、忙しいにゃ〜!」

アタシはエーリアスに命令されて、北部侵攻軍に組み込まれた。
もはや戦争は解放軍の勝利で固まりつつ、そのため今更帝国領に攻め入る理由はないと、否定する者も多い中、エーリアスは強行した。

エーリアス
 「出撃の準備はどうですか?」

ベルモット
 「にゃにゃ!? エーリアスにゃ!?」

夜の軍事基地では、今もそこかしこで奔走する兵士で溢れている。
そんな中、最高司令官のエーリアスが現れたことにアタシは萎縮した。

エーリアス
 「まだのようですね、2時間後には出撃できるように準備を」

ベルモット
 「りょ、了解にゃ〜!」

アタシは背筋を伸ばすと敬礼する。
エーリアスは最高司令官なのに、そうやって走り回って確認しているようだ。
エーリアスは直ぐに別の部署に向かっていった。

ベルモット
 「マジビビったにゃ〜……なんでエーリアスがこんな所にくるかにゃ〜?」

アタシは今、備蓄を兎に角輸送隊の馬車に積み込む作業を進めた。
今はエーリアスの指揮下だけど、結構人遣い荒いにゃ〜。
ああ、茂君と一緒にいた時が懐かしいにゃ。

ベルモット
 (今頃茂君たちは家族と会えたかにゃ〜?)

ちょっとだけアタシも付いていけば良かったかにゃと思うけれど、アタシはきっと迷惑かけると諦めた。

兵士
 「ベルモット! それはこっちだ!」

アタシより明らかに年下の兵士がそう言った。
明らかに敬語もなく、舐められているが、こっちでは世知辛いので我慢だにゃ。

ベルモット
 「はいは〜い! ただいまにゃ〜!」



突然始まるポケモン娘と旅をする物語


第21話 進む道 完

第22話に続く。


KaZuKiNa ( 2019/04/09(火) 19:40 )