第6話 ポケモン娘、三人集まれば喧しい
突然始まるポケモン娘と旅をする物語
第6話 ポケモン娘、三人集まれば喧しい
茂
「……どうしてこうなった?」
それはある一幕であった。
ニア
「お兄ちゃん、そこどいて、そいつ殺せない」
ナツメイト
「新入りの癖に茂様を独り占めとは万死に値しますわ!」
ナギー
「茂さんは、私が責任を持つ!」
それは遡ること12時間前だった。
***
シュウ
「その子、誰ですか?」
茂
「その、家族だ」
ニア
「……」
一連の騒動の後、ニアは俺からべったり離れなかった。
正直俺もニアの扱いをどうしたものかと考えたが、結局この街にいてもニアは幸せになれないと判断し、連れて行くことにした。
勿論シュウには複雑な目で見られるが、断じて俺は変態ではない。
シュウ
「まぁロリコンでもなんでもイイですけどね」
茂
「断じてロリコンではない!」
ニア
「でも巨乳が好き?」
茂
「……否定はしない」
ニアは全身をイリュージョンする以外に、部分的イリュージョンも出来る。
例えば胸を大きくしたり、小さくしたり。
しかも触ってみると脳はその大きさで騙されるのだ。
改めて脳って適当なんだなと思う。
実際ニアといるとギギギアルの火炎放射のインパクトを思い出させて貰えた。アレは冷静に解釈すると、あり得ない場所から火を吹いていると言える。
思ったより極悪な特性と言えよう。
シュウ
「でも狭いから覚悟してくださいよ」
茂
「おう」
俺はニアと一緒に馬車の荷台に乗り込む。
中は1週間分の備蓄で満載のため、確かに居場所がなかった。
シュウ
「は!」
シュウは馬に鞭を入れると、馬車は進み出す。
前半と違い荷物があるから到着は10時間後になるとのことだ。
ニア
「お兄ちゃん、これから向かうのは反帝国組織なの?」
茂
「そうだ。俺たちはそんなに真っ白な人間じゃないのさ」
ニアにはここまで教えていなかったが、反帝国組織に所属している以上平和主義者とは言い難い。
世間的にはテロリストな訳だし、正規軍ではないからな。
ニアを戦いには巻き込みたくなかったが、でも戦う以外にもニアに出来ることはあるはず
だから俺は連れて行くことにした。
もしニアに何か文句があるなら全部俺が受ける覚悟だ。
ニア
「帝国には私も良い感情はない。戦うならためらいはない」
この世界全体で帝国に対してはそれ程良い感情がないのは分かる。
ニアもよりにもよって出会ったのがあんな変態だったんだから印象最悪だわな。
だが、まず成り立ちさえ知らない俺は、そこが分からない。
茂
(いい加減、この世界の歴史ってのも知るべきかも)
***
茂
「痛たた……」
馬車に揺られること10時間。
馬の耐久力も考えての進行だったが、いかんせん荷物満載の馬車は動く場所がない。
お陰で腰にダメージが貯まった結果、降りる時には本気で年齢の壁を感じた。
ナツメイト
「茂様ーっ!」
馬車を降りた途端、ナツメが跳びかかってきた。
正に不意を突いた一撃にそのまま倒れそうになるが、なんとか体格差で踏みとどまった。
ナツメイト
「もう! どうして私に黙って輸送隊に着いていったんですか?」
そりゃ、アンタついてくるとか言いかねないからでしょうが。
まだナツメの本当のところは分からない。
とても戦いに身を投じる子に思えないからだ。
今なんて、全力で甘えてきてるし。
ニア
「……お兄ちゃん、そいつ誰?」
ニアは馬車から出ると、俺にべったりくっついているナツメに険しい顔を見せた。
一方ナツメはというと馬車から出てきた知らない顔を見ると。
ナツメイト
「あら、可愛い子供ですわね」
馬鹿にした風ではない。
ただ見下しているのは事実だ。
その瞬間、ニアとナツメの関係が険悪になった気がした。
ニア
「生意気」
ナツメイト
「あら、口が悪いですよ」
茂
「はいはい、ナツメ離れて。ニアも自己紹介」
俺はナツメを剥がして、両者にまず挨拶させる。
片や没落したとはいえ王族、片やスラム街の最底辺、根本的に相容れないのかもしれない。
ニア
「……ニアです」
ナツメイト
「ナツメイトですわ、この拠点の長を任されています」
互いの挨拶も終わる頃、馬車の周りには多くの人が集まっていた。
医療班は抗生物質などを診療所に運び、内務班は紙とペンを、最も多い食材は調理人たちが分担して運んでいった。
ナギー
「お帰り茂さん」
茂
「ナギさんも何か頼んでいたり?」
ナギー
「まぁな」
ナギさんは馬車の奥に仕舞われた、剣を二本持ってくる。
一本は自分の腰に差したが、もう一本は俺に渡してきた。
ナギー
「君も護身用に持つと良い」
茂
「でも、俺剣術なんてやったことないぜ?」
ナギー
「だから、私も責任を持つ。君に剣の手ほどきをしようと思うのだが?」
茂
(手ほどきか、仮にも親衛隊の隊長やってた人だから腕は本物なんだろうな)
俺はこれからを考えると自衛用に剣を学ぶのは必要だと思った。
前回の呪いではどうしようもなかったが、あれ程の事はともかくせめて正攻法の相手から身を守れるだけの力は欲しい。
茂
「お願いします」
俺は改めてナギさんに礼をする。
ナギさんは親衛隊の隊長を任せられる人だ、剣の腕も評判が良く、この人に手ほどきを受けるなら願ったり叶ったりだろう。
ナギー
「では、場所を変えよう」
***
ナギー
「まずは何より剣に慣れる事からだからな、剣術の究極は自らを剣とするなんて言うしな」
人気の少ない広場で俺はナギさんとマンツーマンで指導を受ける事となった。
渡された剣は刀身が80cm、重量が1.0kg程の分類で言えばショートソードとロングソードの中間と言える剣だった。
ナギー
「うむ、量産品にしてはまぁまぁの品質だな」
ナギさんは数回剣を振るうと、鏡面加工された剣を太陽に翳した。
刀身にはナギさんの顔が映っている。
ナギー
「粗悪品になると3合も打ち合えば折れる品もあるからな、茂さんも気を付けた方がいい」
茂
「刀剣マニア?」
ナギー
「ま、マニア? まぁ刀剣の蒐集を趣味としてるが……」
マニアと言われるのは心外らしい。
しかしほぼ見ただけで品質を理解していたし、雑学まで含めるとマニアに違いはないだろう。
ナギー
「兎に角、まずは基礎練習からだ。自分に合う形で素振りを始めよう」
茂
「素振り……」
俺は剣を握るがその予想外の重さを感じる。
片手剣だが、慣れない人間にはこれでも重い。
俺は両手で剣を握って剣道の面を打つように剣を振るった。
1回振るう度に剣に身体が持って行かれる。
これはつまり、俺が剣を扱えていないと言うこと。
ナギー
「ふむ? ふむ……」
ナギさんは俺の動きを見て同じ動きをし始めた。
数回剣を振るう事で、ナギさんは何かを納得する。
ナギー
「なる程、これはこれで体幹が鍛えられるな」
茂
「ナギさんもやるんですか?」
ナギー
「私もこの剣では初心者だからな、それに基礎練習はいつまでも終わらないよ」
茂
「本来はどうやって鍛錬するんですか?」
ナギー
「そうだな、ショートソードは本来盾とセットで運用する。だから盾を意識して……は!」
ナギさんが剣を左手に持ち替えると、斜めに振り下ろす。
それは身体ごと前に踏み出して剣の力を最大限に活かす動きだ。
そしてそれはナギさん程の達人だからこその美しさだった。
ナギー
「それじゃ、200回程素振り頑張ろう」
そうして、俺たちはひたすら剣を振った。
………。
茂
「はぁ、はぁ」
200回も振るうと既に俺は立っているのも辛いほど疲労しており、地面に倒れた。
一方でナギさんは汗こそかいているが、息を切らした様子もなく、基礎の差を痛感する。
ナギー
「ふぅ……体重落ちたからな、急いで取り戻さないとスタミナにも響くか」
茂
「リハビリ期間なんですね……」
ナギーさんはタオルで流れる汗を拭くと、苦笑を浮かべる。
ナギー
「いや、情けない……可能な限り早く現場に復帰できる力を取り戻したいものだ」
茂
「でも、暴風使えますから、無理に剣に頼らなくても大丈夫じゃないですか?」
俺はそう言うと、ナギさんは顔を曇らせた。
なにか変な事を言ったかな?
しかしナギさんは顔を上げると。
ナギー
「私は出来るなら剣で戦いたい。私は騎士を志して剣の道に足を踏み入れた。贅沢な事かもしれないが……技には頼りたくないんだ」
……ナギさんはそう言うと剣を正面に掲げた。
ナギさんの顔は凛々しく美しい、そして気高さがある。
俺はポケモンが技を使うのは当たり前だと思っているが、この世界のポケモン達にとってそれは逆なんだろう。
使えれば有利だが、ナギさんは騎士道精神が強すぎるのかもしれない。
ナギー
「だが、ワガママで君やナツメイト様に迷惑をかければ本末転倒だからな、切り札とは思っておくよ」
ナギさんはそう言うとタオルを投げる。
俺はそれを怠い身体を動かして受け取った。
ナギー
「汗を拭いて」
茂
「……」
本人は根っからの体育会系だからか?
あからさまにジョックだと思うが、こうも無頓着でいられるのだろうか?
ナギー
「ん? どうした?」
茂
「……いや、意外と気にしないんですね」
俺はタオルを見て、そう言うと流石に彼女も顔を紅くした。
タオルからはナギさんの汗の臭いがしている。
これを俺が使うのって……。
ナギー
「わー!」
ナギさんは慌てて新品のタオルを投げつけてくると、それは顔面に直撃した。
その隙にナギさんは使用済みのタオルを奪う。
流石に言われて気付かない程鈍感でもなかったようだ。
まぁワザと使用済みを渡したと言うのなら、かなりの変態さんだと言えるが。
茂
「ふぅ……流石に5年サボれば、衰えるな」
俺はタオルで汗を拭く。
改めて運動部から5年も離れて、デスク仕事がメインになると衰えたと理解したわ。
同じ年齢でもその生き方でここまで変わる物だな。
ナギー
「さて、ここからは剣の講義をしよう」
茂
「……お願いします」
俺は起き上がると、ナギざんに向かい合う。
ナギさんは剣を教鞭のように振るうと説明を始めた。
ナギー
「まず剣技というのは9つで体系化出来る。頭上から振り下ろす『切落』、肩口から切る『袈裟斬り』『逆袈裟』、水平に切る『左薙』『右薙』、袈裟懸けの逆の『左切上』『右切上』そして真下から振り上げる『切上』。最後に元もシンプルな『刺突』」
ナギさんはその一つ一つに演舞のように実演をして説明する。
ナギー
「以上の9つからあらゆる技は派生するといえるな」
茂
「全部同時だと九○竜閃ですね」
ナギー
「ク○リュウセン? 良く分からないが兎に角この基本を抑えておけば、各返し技も出しやすいからな」
思わず支店を板に吊してギリギリ太るカレーセットの空耳を思い出すな。
まぁ言葉で言われる分には何となく納得する。
実際実演となるとまず無理だろうが、学ぶ価値は在るはずだ。
ナギー
「次に技の系統だが、主に『先』、その先を行く『先の先』、そして敢えて後ろをとる『後の先』。これに関しては説明が難しいな」
ナギさんは俺に立つように指示を出すと、兎に角打ってこいという。
まぁ相手は達人だし、余程ヘマしてもなんとかしてくれるだろう、そんなに軽い気持ちで袈裟懸けに斬りかかるが。
ナギー
「は!」
多少軽い気持ちだったとはいえ、俺は思いっきり斬りかかった。
しかし実際にはそれより先にナギさんの刺突が眼前3センチ手前で止まっていた。
俺は思わず飛び退くが、彼女は余裕顔で説明を始めた。
ナギー
「君の先に対して有効なのが先の先。個人の技量で変わるが、通常最も剣の軌跡が短い刺突で行うのが妥当だな」
次は突きだ、そう指示を出してくるナギさんに俺は剣を水平に構えた。
今度は軽い気持ちではなく、真剣にナギさんの動きを見る。
茂
「おりゃー!」
ナギー
「ッ! はぁ!」
俺の突きはナギさんの最も面積の大きい胸の中心を狙う。
しかしナギさんはそれを剣の腹で弾いて、そのまま勢いを殺さず剣を俺に密着する距離で止めた。
ナギー
「これが後の先」
ナギさんは俺の首元でそう言うと、剣を戻して距離を離した。
改めてレベルが違う。
これが剣の達人かと実感した。
ナギー
「しかしズブの素人と考えれば筋は良いぞ。姫さまも最初はここまでではなかった」
姫さん、そう言えばナツメとナギーはどれ位の付き合いなんだろうか。
彼女の剣技は少なくとも俺より遙かに上だ。
茂
「ナツメとはどれ位から剣を?」
ナギー
「姫さまとは私が18の時だから、姫さまが13歳の時から剣を学んでいるな」
とすると5年前からか。
5年目の実力としては分からないが、少なくとも彼女の実力になるのに5年。
俺はナツメの事を考えると、あることをナギさんに聞いた。
茂
「俺がナツメより強くなるって可能ですか?」
それは俺の決意と言えた。
ナツメはいざというときでも暴走する可能性がある。
もし俺の方が強ければ、もっと止められる場面は増えるはずだ。
しかしナギさんは「うーん」と言葉を吟味すると答えた。
ナギー
「相当に鍛錬を詰んで2年……いや1年でも可能か?」
茂
「……やっぱりか」
それは恐らく想像を絶する鍛錬をしてやっと1年で実現出来るといった所だろう。
ナツメとて5年の成果。
改めて基礎の大事さを思い出す。
そう言えば、美柑も無用と分かりながら剣の素振りは1回も怠らなかったし、彼女は身体を鍛え続けた。
ああ、案外身近に基礎の大事さを教えてくれた奴がいたんだな。
俺は天を仰いだ。
天には蒼天が広がる。
俺はもう23、決して若くない。
それでも強くなれるだろうか?
茂
(頑張るしかないよな……)
俺はただ今は拳を握った。
***
茂
「ふ〜、生き返る」
あれから俺はナギさんとの鍛錬を終えると、拠点の水場に来ていた。
この拠点、実は水だけは湧き水により豊富にあり、シャワーを浴びることが出来たりする。
恐らく地下に巨大な地下水が在るのだと思われる。
しかしそんな水場だが一つ問題があるとすれば露天にあるという事か。
そして辛うじて男女の区別はあるが、板一枚で仕切られていて、向こうから声が普通に聞こえてしまう。
ニア
「冷たい!」
ナギー
「こら、暴れるな! ちゃんと髪を洗う!」
隣には一緒に汗を流しにきたナギさんとニアがいるようだ。
ニアは恐らく身なりの汚さもあり、強制的に入れられたのだろう。
偶々相席したナギさんも声から相当手こずっているのが分かる。
ニア
「くすぐったい〜!」
ナギー
「こら、もう! 汚れが手強いな……!」
しかし、声がダダ漏れだな。
幸いあまりエロ要素はなく、純粋に親子か姉妹の会話にしか聞こえないが、聞き入るのは不審者でしかないか。
俺はさっさとシャワーを切り上げて外に出る。
水場の外には更衣室があり、俺は身体を拭いて一張羅に着替えた。
一張羅、それは元いた世界からずっと着ている数少ないあの世界にいたという証だ。
そろそろ洗わないと臭いし、替えの服を手に入れたいが。
俺は着替え終えると外に出て風に当たる。
夜風が気持ちよく渓谷に流れ、空には満月も光る。
明かりはないのに星々の光がライトになるというのは幻想的という他ない。
ニア
「あ、お兄ちゃん!」
やがて、洗い終わったのかニアたちも出てきた。
白いタンクトップ姿で激しく動くと目のやり場に困る。
ナギー
「こら、まだ頭を拭いていないだろう!」
ニア
「うー」
ニアはナギさんに捕まると、恨めしくした。
茂
「うー、じゃないだろう。ホラ整えてやるからこっちに座れ」
ニア
「はーい」
ニアは俺の目の前に座ると、俺はタオルを手に頭をくしゃくしゃと拭いていく。
まだまだ無邪気で、子供っぽく、言うことを聞かない。
辛うじて俺の言うことは聞くが、規律を重んじるナギさんとは少し相性が悪いか。
ニア
「耳くすぐったい!」
どうやら弱点は耳の裏側らしく、その場所を拭くとニアは身体を何度もくねらせた。
やがて拭き終わると、今度は髪を解く。
ニアのボサボサの髪も若いからか充分な水分を持ち、手で解すと簡単に整えられた。
ニア
「〜♪」
やがてニアも気持ちよくて鼻歌を歌っていた。
一通り髪を整えると、そこには見違えるほどの別嬪さんがいた。
ナギー
「ほう、やはりちゃんと身だしなみを整えれば中々に美人じゃないか」
ニア
「お兄ちゃんの身体、暖かい……」
そう言うとニアは俺の体にもたれ掛かると、遂に寝息を立て始めた。
髪を解き始めてから次第の元気がなくなったかと思うと、どうやら寝落ちのようだ。
茂
「こら、ニア。こんな所で寝たら風邪引くぞ」
俺はニアの頬をぺしぺしと叩いて起こす。
しかし余程眠たいのか、彼女は安心しきった顔で寝ていた。
ナツメイト
「ニア〜! 貴方やって良いことと悪いことがありますわよ!」
ニア
「にゅ?」
ナギー
「姫さま、いつから!?」
ナツメイト
「ずっと見てましたわ! 茂様が夜空を眺めているときから!」
それ殆ど最初からじゃないか。
ナツメイトの剣幕があまりにも凄いためか、ニアも瞼を擦りながら起きる。
ニア
「何? 羨ましいの?」
ナツメイト
「な!? 子供だと思っていれば、この女狐!」
茂
「おいおい……」
このままじゃ喧嘩になっちまう。
俺は二人を止めようとするが。
ニア
「私はキツネじゃない!」
ニアも過剰に反応する。
さながら竜虎相打つだが、そんな言葉じゃごまかせないな。
茂
「お前らだな、その辺で」
俺は二人の間に入って静止を呼びかける。
しかしヒートしすぎた両者はもう止まらない。
ニア
「お兄ちゃん、そこどいて、そいつ殺せない」
ナツメイト
「新入りの癖に茂様を独り占めとは万死に値しますわ!」
駄目だ、俺じゃ止められない!
最後の頼みの綱、ナギさんを見るが。
ナギー
「大丈夫、茂さんの事は、私が責任を持つ!」
なんか、妙な事言ってるし!
駄目だ、誰も頼りにならん。
茂
「テメェらいい加減にしろー!!」
俺は流石に堪忍袋の緒が切れた。
茂
「三人とも、こっちに来て正座!」
俺は本気で怒声を放ち、自分の目の前に三人を正座させる。
あまりの事態に状況を飲み込めないナツメとニアにまずお灸を据える!
ゴツン!
ナツメイト
「痛い!」
ニア
「にゅ!?」
容赦なく拳骨を放つと二人は頭を抱えた。
茂
「お前ら、多少衝突するのは仕方がない。でも相手を傷つけるな!」
俺の怒声に二人は小さくコクリと頷く。
茂
「ナツメ、ニアは立派な一人の女性でもある。まずお前は相手を対等の相手だと認識しろ」
ナツメイト
「はい……」
ナツメは涙ながらに頷いた。
次に俺はニアを見る。
茂
「ニア、お前もあまりカッカするな、自分に自信をもって挑め」
ニア
「……!」(コクコク)
こちらも涙ながら何度も頷いた。
最後にとばっちりだがナギさんだ。
茂
「ナギさん、二人ともまだ子供です。例え姫さまでも大人である我々が止めるべき、そうでしょう?」
ナギー
「そ、その通りだな。反省する」
今回、俺は初めて三人の組み合わせを見て気付いた。
ナツメは自分勝手な欠点があり、要らない衝突を生みやすい。
ニアは短気で、怒りやすい。
ナギさんは、イマイチ指導力が足りない。
三人の欠点は俺を悩ませ、不和を生んだ。
しかしそうならば、俺だって容赦しない。
本気で怒るときは怒る。
茂
(たく……説教したの初めてだぞ)
改めて茜たちは素直な奴らだった。
特に喧嘩なんてなかったし、俺はアレが普通だと思っていた。
でも実際には好きな奴もいれば、嫌いな奴もいる。
それが普通なんだ。
茂
「ナツメ、ニア。お互い言うことは?」
ニア
「ごめんなさい」
ナツメイト
「こ、こちらこそ自分勝手が過ぎましたわ。申し訳ございません」
俺は二人が謝ると、二人の頭を撫でた。
例え嫌いでも、理解することで友人になることもある。
でも、逆に好きだったのに、嫌いになることもある。
俺だって感情的になることはあるし、迷惑だってかける。
でも、そういうのを克服できるのが人間だろう?
突然始まるポケモン娘と旅をする物語
第6話 ポケモン娘、三人集まれば喧しい 完
第7話に続く。