突然始まるポケモン娘と○○○する物語





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第二部 突然始まるポケモン娘と旅をする物語
第1話 始まり

突然始まるポケモン娘と旅をする物語

第1話 始まり



オッス、オラ常葉茂(ときわしげる)。
この作品の主人公だ。
オラの周りには4人の美女がいる。
でもその四人はただの美女じゃないんだ!
なんとその4人はポケモンが擬人化したポケモン娘なのだ!
なんかオラ、ワクワクしてきたぞ!


 「……と冗談はここまでとして」

俺の名前は常葉茂、まぁさっきも説明したがな。
俺はある日、突然この世界に迷い込んだイーブイ娘の茜(あかね)と出会った。
茜は当初はロクに会話も出来ないわ、箸も使えないわと原始人か何かのようだったが、出会って2カ月間、驚くべき程成長して今ではかけがえのない存在となった。

そして出会いはそれだけじゃない。
次に現れたのはなんとあのウルトラビーストことUB01のウツロイド娘だったのだ。
保美香(ほみか)はモデルのような長身巨乳で誰もが憧れるであろう超絶美人だ。
その上で家事を完璧に熟し、料理はもはや鉄人クラス、こんな美女で完璧な女性が俺のメイドさんに志願してくれたんだから驚きだ。
だが、その保美香も無欠ではなかった。
なんと保美香は俺に神経を繋いで電気信号を交換し合う通称『同調』をしたがる変態だったのだ!
他にも水は嫌いだし、当初は食べ物も殆ど拒絶してしまう弱さを持った子だった。
でも彼女もちょっとづつ苦手を克服している。
そんな保美香も俺には大切な存在だ。

そして3人目はギルガルド娘の美柑(みかん)。
美柑はちょっと変わった奴だ。
いきなり俺に下僕にしてくださいって言ったときは度肝を抜いた。
その後も妙に毒舌吐いたり、変なところでネガティブになったり。
でも、いざという時は一番頼りになるし、明るい顔はとても可愛い奴だ。
ただ残念ながら哀しいほどまな板で女性らしさがカケラもない。
どうせならエロい大人の女性が好みな訳で、女性としては論外だ。
勿論嫌いではないが、どうも恋愛感情は持てないな。

そして最後に現れたのはヌメルゴン娘の伊吹。
もう伊吹を例えるならデカい!
何がデカいって、身長は俺より上(185センチ)し、胸は巨乳を越えた超乳(108センチ)!
通称ワールドクラス、しかしそれだけではなく意外なほどしっかり鍛えられた体、丸太のように太い太ももと肉体はスポーツ選手のようだ。
しかしそれに反比例するように性格は至ってのんびり屋。
普段から行動がイマイチ遅く、皆を苦笑させるが彼女は実際とても思慮深い。
皆が困ったときは率先して皆を率いるし、皆が頭を熱くしているときでもいつでも普段通りだ。
なんだかんだで頼れる俺の姉さんみたいな女性だ。
でも、羞恥心がカケラもないのが困るんだよねぇ。

さて、説明が長くなって申し訳ない。
俺たちは今、温泉旅館に泊まっている。
海を存分に楽しんだ後、この後の楽しみは当然温泉な訳だ。

という訳で俺は温泉に浸かっているのだ。


 「あ〜あ、いい湯だな♪」

夏場の温泉というのも悪くない。
温泉は露天で、目の前には海が見える。
更に隣は竹で仕切った女風呂だ。
今頃あいつらも楽しんでいる事だろう。



***



伊吹
 「アッハ〜♪」

至福な顔を浮かべるのは伊吹だ。
伊吹はなによりもお風呂が好き。
そして温泉は彼女の憧れだった。
温泉は広く、四人で入ってもなお余裕、だからこそ伊吹もその大きな身体の羽根を伸ばせるというもの。

保美香
 「むぅ……どうせなら混浴でしたら良かったですのに」

不満顔でそう言ったのは保美香だ。
保美香は足湯に留め、淵でタオルを巻いて愚痴をこぼしている。
相変わらず水嫌いの彼女は、ゆっくり浸かることも出来ず、温泉の楽しみ方としては魅力半減だろう。

美柑
 「主殿がいれば、ちゃんと温泉に入りました?」

温泉に肩まで浸かり、ほんわか楽しんでいるのは美柑だ。
美柑はお化けが大っ嫌いだけど、それ以外には特に嫌いな物もない。
見た目も性格も保美香とは真逆だ。

保美香
 「それはもう! だんな様と一緒なら例え火の中水の中草の中森の中土の中雪の中ですわ!」


  「そしてあの子のスカートの中」

私は頭にタオルを乗せて、保美香の言葉に一言付け加える。
保美香はムムッと、私に鋭い目線を向けるけど、私はゆらりと尻尾を振って応えた。

美柑
 「茜さん、最近いつも保美香さんに一言さしますね」


 「……迷惑?」

私は保美香を見た。
保美香は足湯だけでも熱っぽく肌を上気させて、その長いブロンドの髪(触手)を手で払った。

保美香
 「まぁたまにイラッとしますが、それが貴方らしさなら、わたくしは受け入れますわ」

そう、私……なんだか皆に迷惑かけているのかな。
確かに皆と昔より楽しく話せるようになった。
でもそれは親しさを勘違いした行為だったのかな。

伊吹
 「茜ちゃ〜ん!」


 「っ!」 

突然伊吹が私のおっぱいを鷲づかみにする。
私は驚いて身を退いたが、伊吹は構わずおっぱいを揉み拉く。

美柑
 「ちょ、突然のわいせつ行為!?」

美柑が慌てて止めようとするが、伊吹はそんなのお構いなしだ。
私が喘ぎ声を出すと、美柑は顔を真っ赤にして目を背ける。

伊吹
 「うふふ〜、人生は楽しまなきゃ損だよ〜、難しい顔してないで楽しもう?」

そう言うと伊吹は私の手を優しく掴むと、自分の胸に当てる。
これは要するに私が伊吹の胸を揉めと言うこと?
一応伊吹を見ると、伊吹はコクリと頷いた。
私は意を決して、その大きすぎて手で覆えない乳房を歪める。

伊吹
 「ん……そう、優しく揉まれると〜、感じちゃうと言うか〜、んん!?」


 「ごめん、こういうのどうすれば良いか分からないから」

伊吹の胸は大きくて揉みにくい。
オマケに凄く柔らかくて、強く握ると破裂しちゃいそうで、力加減を弱くしてしまう。
でもそれがかえって伊吹を感じさせているみたいで余計に分からない。

保美香
 「自分が楽しくなるように揉めば良いんですわ、こんな風に!」

美柑
 「て、保美香さんなんでボク!?」

今度は保美香が美柑の胸を揉みだす。
揉める程も無いように思えるが、保美香は乳首を中心に責めていく。


美柑
 「ちょ、やめ……ん! 流石に、怒りますよ! 」

保美香
 「あらあら、可愛い反応ですわね美柑 ♪」

……じゃれ合った二人はどこか楽しそうだ。
これが楽しむって事?



***




 「……あいつら一体何やってんだ?」 

俺は隣から聞こえる謎の声に不審がる。
時折喘ぎ声まで聞こえてくるし、あの四人が何をやっているのか想像する。 
しかし想像は10秒で止めた。


 「駄目だ、エロ妄想しか出てこん。全く一応ここに男湯があること忘れていないか?」

目の前には背の高い竹の柵がびっしりと敷き詰められ、壁を形成している。
しかし、例え女湯が見えなくても音はダダ漏れなのだ。
正直俺はまだまだあいつらの事は知らないだろう。
俺の前のあいつらと、俺のいないところでのあいつら。
特に保美香は普段から畏まった性格だから、本当の自分は俺には見せてくれないだろう。


 「……楽しそうだが、程々にして欲しいね」

俺はのぼせる前に湯から上がる。
あれ以上あそこにいたら、流石に抜かないとやばくなりそうだ。
今日はビールでも飲んで、部屋でゆっくりしよう。



***



保美香
 「はぁ、至福でしたわ♪ ストレス解消♪」

そう言って肌まで艶々にした保美香は満足そうに温泉を出た。
一方的に蹂躙された美柑は恨めしそうに保美香を睨むが、結局反撃は最後までしなかった。
多分自分が破廉恥な事をするわけにはいかないって思っているんだろう。

伊吹
 「お風呂上がりは〜ミックスジュース〜!」

早速浴衣に着替えた伊吹は自販機で飲み物を買うとそれを高々と掲げた。
それは普段は見慣れない透明なガラスの容器に入っている。
私も飲み物が欲しくて自販機の前に立つが、品物が凄く少ない。
何よりそのラインナップは、私の知らない物ばかりだった。


  「缶じゃない?」

自販機からは缶ではなく瓶で出てくるのだ。
初めて見るけれど、使い方は同じみたい。
私もお金を入れると、コーヒー牛乳にした。

保美香
 「温泉の後にフルーツジュースにコーヒー牛乳、それじゃ銭湯ですわね」

保美香も浴衣に着替えると、呆れたように私たちを見る。
私は飲み口の紙で出来た蓋を剥がすと、グビッと一気に飲む。
普段とは違う味わいは単純にメーカーが違うからか、それとも旅の風情だろうか。
ただ、この場で飲むコーヒー牛乳は絶品だった。

美柑
 「ボクも牛乳にしましょう」

保美香
 「こういう所で買う飲み物って高いかしら……」

そう渋りながらも結局お金を入れる保美香。
美柑は普通の牛乳、保美香はオレンジジュースを選んだ。


 「ご主人様はもう上がったのかな?」

保美香
 「そのようですわね、多分部屋でビールでも飲んでいるのでしょう、風呂上りは身体に悪いと言うのに……」

私はご主人様の様子を想像する。
うん、昔見たご主人様の姿が容易に連想できた。
保美香はご主人様の事を考えると大きくため息をつく。
相変わらず旅先でもご主人様の健康を第一に考えているけど、一日位良いんじゃないかと私は思う。

伊吹
 「まぁまぁ〜保美香。見方を変えよう〜? 真のいい女というのは〜」

保美香
 「なるほど、酔わせて寝込みを襲うのですわね」

伊吹
 「あるぇ〜? そうじゃなくて〜」 

保美香
 「そうと決まれば、気持ちよく寝て頂きましょう!」 

善は急げか、保美香は伊吹の言葉も待たずに早歩きで行ってしまう。
伊吹はワンテンポ遅い動きで、首を傾げた。


 「伊吹って頭の回転早いけど、行動が遅いよね」

伊吹
 「うぅ〜、皆速すぎるんだよぉ〜」

美柑
 「まぁまぁ、それで真のいい女とは?」

美柑も気になるのか、伊吹を宥めながらその神髄を聞く。
正直ちょっと私も気になる。

伊吹
 「それは〜、アメと鞭を〜上手に使いこなすって〜」


 「アメと鞭? 不思議なアメ?」

伊吹
 「それじゃ茂君がレベルアップするよぉ〜」

私にはよく分からない。
けど、それが分かれば私も良い女なれるのかな?

美柑
 「難しそうですね」 

伊吹
 「うふふ〜、美柑も茜もいつか分かるよ〜」 

伊吹はそう言うけど、そういうものなのかな?
兎に角私は色んな事を知りたい。
私は瓶を捨てる場所に、飲み終えた瓶を置くととりあえず保美香を追いかける。



***



保美香
 「だんな様〜!」

わたくしは急いで部屋に戻った。
それは勿論だんな様の寝込みを襲うため!


 「おう、そんなに急いでどうした」

しかし、だんな様は部屋の外の展望テラスで椅子に腰掛けながらビールを一本空けているだけで寝落ちしていない。
どうやら浴衣に着替えて、夜風を浴びていたようだ。

保美香
 「だんな様、一本だけかしら?」


 「この後夕食があるんだ、そんなに羽目は外さないさ」

そう言うとだんな様は優しく微笑んだ。
なんと、だんな様が自ら自制している!?
ここ最近だんな様は落ち着いて来たというか、穏やかになった。
しかしこれは予想外だ。
元々だんな様はお酒に強い方じゃない。
ビールでも3本も飲めば寝落ちする程度だ。
だからこそ旅の合間位羽目を外すと想定していたのですが。


 「ま、あんまりお前たちに迷惑もかけたくないしな」

そう言ってだんな様はまたビールを口につけた。

保美香
 「だんな様、そちらに参ってもよろしいでしょうか?」

なんだか普段とは違う様子のだんな様にわたくしは何か心を動かされる感じがした。
なんというか、より大人の雰囲気というか、今なら甘えても良いような雰囲気。 


 「こいよ、たまには俺だって保美香を労うさ」

保美香
 「は、はいっ! では、失礼致しますかしら」 

わたくしはなんだか顔が紅くなって仕方がない。
まるで自分が恋する乙女のようで、先ほどまで持っていた邪な考えが一気に失せた。

保美香
 「隣、座らせて頂きますかしら」

わたくしはだんな様の隣の椅子に座ると、だんな様の顔を覗き込んだ。


 「良い風だと思わないか?」

保美香
 「え? 風かしら?」

ふと、海辺から風が吹いて頬を撫でた。
決して強い風ではないが、紅潮した肌には心地よく通る。


 「都会に比べて、海辺ってのは涼しくて良い」

だんな様は今、風情を楽しんでいるようだ。
確かに夜という事もあり、下から海の湿った風が吹くだけでも大分涼しい。
でも、どうしてこんなにドキドキするのかしら?
今日は浴衣で胸元がさらけ出されて、扇情的だから?
何かが違う、でも確かにわたくしはときめいている。

保美香
 「だんな様……」


 「……ん?」

私はだんな様の腕に抱きついた。
だんな様の身体は熱い、風呂上りを込みにしても、わたくしは火傷するように熱かった。


 「お前にしては珍しいな、そんな明け透けに胸を当ててきて」 

だんな様はこれ位だと動じない。
寧ろどうすれば、だんな様を動じさせられるかしら。
ふふ、今わたくしったらだんな様に甘えてますわね。

保美香
 「そうしたい気分かしら……だんな様にくっついていると風が最高に気持ち良いんですの」


 「……そうか、そういう気分なら別に構わん。お前には苦労しかかけていないからな」

だんな様は動じず、チビチビとビールを飲む。
このまま酔いに任せれば、もっと先に進めるかしら?

保美香
 「わたくしは、苦労だなんて思ったことはありませんわ」

そう、これは全てわたくしの喜び。
わたくしは一瞬で燃え尽きるような恋よりも、このゆっくりとした愛し方をしたい。
お互いが好きなんて言葉を使わなくても、愛し合える関係になりたい。


 「……保美香?」

私はゆっくりと目を閉じた。
このままではわたくしの心拍音がだんな様に聞かれてしまうが、構わない。
わたくしはそのまま静かに眠りについた。



***



美柑
 「主殿、ご無事ですか!」

程なくして、美柑たちも部屋に戻ってきた。
俺は保美香を起こさないように唇に人差し指を当てた。

美柑
 「あれ……保美香さんの方が眠っている?」


 「図らずも寝込みを襲うつもりが、襲われた?」

何のことか、茜が随分物騒な事を言ったな。
もしかして保美香の奴、また夜這いをするつもりだったのか?
だとしたら寝なくて正解だったな。


 「今は猫みたいに眠っているよ」

俺はそう言うと保美香の頭を撫でてやる。
途中「ん……」と寝言が零れたが、起こしてはいない。
それっきり三人も静かになる。 


 「ご主人様、私も」


 「こら、今は駄目」

伊吹
 「まぁまぁ〜、こっちに一緒に座ろう〜?」

普段自分がして貰っている事を保美香がされるのはずるいと思ったのか、俺の前に座ろうとするが、流石に保美香をゆっくりさせてやりたいし、今は断った。
代わりに向かいにある椅子に伊吹が招き、渋々茜は伊吹の太ももに座る。 

美柑
 「じゃあボクはこっち」 

次いで美柑はその隣に座る。

美柑
 「わぁ……夜景が綺麗」

美柑は風景に目をやると、感嘆の息を零した。
海の向こうには灯台があり、更にその先に街の光が映る。
美柑はこういった風情を楽しむ感性が誰よりも強い。


 「本当だ、綺麗」 

茜も伊吹の身体から乗り出して夜景を眺めた。
たまにはこういう雰囲気も良いもんだな。
普段がドタバタしすぎていていていたのか、俺はこういう穏やかな空気の方が好きらしい。

特に今日のような走り回って、切った張ったの現場に放り込まれるのは二度とご免だ。 


 「明日皆どうしたい?」

俺は明日の予定を皆に聞くと、まず真っ先に答えたのは美柑だった。

美柑
 「海も良いですけど、山なんてあれば行ってみたいですね」


 「私はどこでもいい」

伊吹
 「あたしも皆に任せるかなぁ」


 「山か……ちょっと後で調べてみるか」

聞いても結局美柑しかはっきり答えてくれないのは結構困る。
まぁ元々茜は主体性が少ないし、伊吹もそこまでわがまま言うタイプじゃない。
こういう所ではっきりしているの美柑の良いところだよな。


 「……明日遊んで、そして帰るか」

思えば、濃密過ぎたが本来旅行は1泊2日。
もう半分を過ぎたのかと思うと俺は一抹の寂しさを感じた。



***




 「ふぃぃ……思ったより辛い」

後日、俺たちは近くの山に来ていた。
山と言っても本格的な登山ではなく、あくまでもハイキング向きだ。
昨日美柑の希望に誰も口を挟まなかった事から、近くの山を調べた。
改めて日本国土の9割が山と言うだけあり、簡単に山は見つかった。
山頂も決して高くなく、そして道もなだらかだから、ハイキングしているご老人とかとも出会うし、最適と言えるだろう。

美柑
 「主殿ー! もうすぐ到着ですよー!」 

既に大分先行している美柑が叫ぶ。 

保美香
 「あの子、こういう所では元気ですわね」

伊吹
 「まぁ〜、その方が〜、美柑らしいしね〜」

元気すぎる美柑とは対照的に、茜保美香伊吹の三人は体力的には問題なかったが、あくまで俺と同じペースで山を登る。
この間には楽しみ方の違いもあるのだろう。


 「お前たちはこういうの楽しいか?」

保美香
 「わたくしはだんな様と一緒ならなんでも楽しいですわ」


 「歩くの嫌いじゃない」

伊吹
 「アタシは〜、自然の中って落ち着くな〜」

三人ともそれなりに楽しんでいるみたいだな。
俺はというと、そんなに楽しい訳じゃないが、皆と一緒に歩くことが楽しい。

やがて10分程かかって、俺たちは美柑の元にたどり着いた。

美柑
 「見てください! 世界って広いですね!」

美柑が待ってたのは山の中腹の展望台だった。
ご丁寧に座るところもあり、ここからでも眼下を一望できる。


 「おう、結構港の方は栄えている感じだな」

場所の問題か、灯台と港は見えるが、昨日遊んだ砂浜は見えない。
決して風光明媚な場所ではないが、この町を一望するに丁度良いのかもしれない。

美柑
 「ボク今回この旅が出来て凄く良かったです!」

美柑はきっと旅をすることが好きなんだろう。
だからこそ、誰よりも満面の笑みを浮かべて、旅を楽しんでいる。
色んな場所で自分だけが感じられる感性。
もしかしたら、いつか世界一周なんてのもあり得るかもな。

保美香
 「あらあら、この程度の場所で喜べるとは安い娘ですわね」

美柑
 「む! 保美香さんはそりゃ昨日みたいに主殿の腕に抱かれてたら、それで幸せなんでしょうけど!」

保美香
 「ちょ、何故それを!?」

隠してたつもりなのか、それを言われると保美香は激しく狼狽えた。
いつも通り美柑を弄くる保美香だが、今回は珍しく反撃を貰った。
保美香はあれでもしおらしく、でも甘えるのが苦手な女性だ。
気丈にするあまり、二人っきりの時に戸惑ったのだろう。


 「まぁ美柑も別に甘えたって良いんだぞ」

美柑
 「え!? その……ボクは、そう言うの……」

しかし美柑も、同じ事を言われると狼狽える。
本来こういう事に一番弱いのは美柑だからな。


 「お前、本当に耐性ないな」

性格の性か、全く甘えたがらないのは美柑だ。
美柑の場合は純愛すぎる。
純愛を否定はしないが、少しまどろっこしくないか?


 「……やっぱり違う。ご主人様変わった」


 「俺が?」

多分茜は誰よりも俺を理解している。
だからこそ俺の僅かな違いにも気づいたのだろう。


 「以前ご主人様なら、自分から甘える事を許さなかった。でも今は違う。良い傾向」

甘えるのを許さなかった、確かにそうかもしれないな。
昨日の土壇場で、俺が誰で、そしてどうしたいのか分かった。
そしたら急にポケモン娘たちに壁を作っていたことが馬鹿らしくなったんだ。
完全オープンって訳じゃないが、それでも見せかけの優しさで嘘をつくのは止めた。


 「俺は皆が好きになっただけだよ」

多分それで正解のは筈だ。
それを言うと、伊吹は俺の腕に抱きついてくる。
皆も笑顔を浮かべると。

伊吹
 「アタシも〜、好きだよ〜!」


 「私も愛していています」

そう言って茜も反対の腕に抱きついてくる。
両手に華だが、激しく動きづらい。


 「あのな、確かに甘えることは許したが、俺の体は1つだっつーの!」

俺はそう言うと二人を引き剥がす。
流石に甘えられるにしても人数が問題だな。


 「ほら、さっさと頂上行くぞ!」

俺はそう言うと悲喜交々な4人の先頭を歩いた。
正直俺がこいつらの先導して引っ張るなんて無理かもしれない。
きっと直ぐにでも美柑が追いかけて、追い抜くだろう。
個性が強い4人だが、それでも俺は守ると決めたんだ。



***



その日、家に帰るのは夕方になっていた。
流石に遊び疲れた事もあり、皆荷物もあってヘトヘトだ。

ガチャリ。

家の鍵を開けるとたった2日なのに、もう別の世界のように感じるのは何故だろう。


 「ただいまーっと」 

誰も迎えてくれなくても、ただいまっていうのは俺の癖だな。

保美香
 「着替えは更衣室、それ以外はリビングにお願いしますわ」 

家に帰るともう保美香はメイドの顔に戻っていた。
旅の中で浮き足立っていたのか、いつもの保美香にはそれなりの安心感があるな。


 「ふぅ、流石に疲れた」

俺はリビングに荷物を置くと周囲を眺めた。
経った2日離れていたリビングは相変わらず綺麗だ。
まぁそれでも、綺麗好きの保美香には清掃されるのだろうが。


 「ご主人様……アレ」

ふと、茜がリビングから俺の部屋を指さした。
俺はそちらを振り向くと。


 「なんだこれ……」

それは穴だった。
空間に歪に開いた穴。
それは正にウルトラホールか?

美柑
 「どうし……うわ!? 空間に穴が!?」

様子を見に来た美柑も惨状に驚いた。
その様子に皆荷物を投げ出して、俺の後ろに集まる。


 「これってもしかして5人目?」 

俺はまさかと思うが、ここから何か現れるんじゃないかと思った。
しかし空間に穿った穴は何も吐き出さない。
ならば、何故穴が……?

保美香
 「まさか……だんな様離れて!」

保美香が叫んだその瞬間だ。
穴が突然大きくなっていく!
違う! 俺が吸い込まれている!? 


 「おいおい! シャレにならん!?」


 「ご主人様! きゃ!?」

茜が俺の腕を掴むが全く力が足りない。

美柑
 「主殿! 茜さん!」

保美香
 「く! ゲートが何故だんな様を狙う!?」 

直ぐさま美柑と保美香も支えに来た。
しかし既に俺は足が穴に持って行かれている状態だ。
3人いても止められない。 

伊吹
 「皆〜! ん〜!」 

思いっ切り一番後ろで踏ん張る伊吹だが、それでも完全には止まらない。
徐々にだが、俺の体が消えていく。


 (くそったれ……俺は呪われているのかよ!)

次々と現れるポケモン娘。
最初は不審に思ったが、気がつけば掛け替えのない大切な存在になり、そして愛してもいいと思った。
その矢先に、このささやかな生活を奪うのか!


 「お前らもう良い! 手を離せ!」

美柑
 「その命令は……! 絶対聞けません!」

保美香
 「そうですだんな様! わたくしたちは!」

くそ、こう言う時に限って誰も言うこと聞かない。
既に俺の体は腰までが吸い込まれている、せれでも必死の顔で4人は俺の体を引っ張った。


 「このままじゃお前らまで持ってかれるぞ!?」

穴はさながらブラックホールだ。
上半身まで蝕まれても、体は痛くないし、感覚は正常。
だからといって怖くない訳じゃない。

もし、穴の先に何もなければ俺はどうなる?
また、ホワイトホールを過程して、俺が無事に穴を抜けられるのか?
そもそもこいつはなんなんだよ!?


 「も、う、駄目……!」

茜の体も限界だ。
それ程吸い込みは強くこのままでは間違いなく茜まで吸い込まれる。

伊吹
 「み、皆〜、ごめん〜」 

保美香
 「い、伊吹、突然何を?」

一番後ろで最も力を発揮している伊吹がついに限界を迎えた。
伊吹の体までも宙に浮くとついに、穴は俺を―――。



***



若い女性
 「はぁ……はぁ……!」

年老いた男性
 「姫さま、ご無事ですか!?」

ここは森の中、ポケモンでさえ滅多に近寄らない、光さえ届かない場所。
そんな場所でさえ、安息の地はないのか。

年老いた男性
 「帝国兵が迫っております……もう少しの辛抱を!」

若い女性
 「このままでは……!」

ふと、異変に気がついた。
光さえ満足に届かない森にも関わらず、茜色の光が零れている。 

年老いた男性
 「如何しまいました、姫さま?」

若い女性
「空から……何かが!?」

それは、救世主の登場なのか。



Re:突然始まるポケモン娘と旅をする物語


第二部 第1話 始まり 完

第2話に続く。


KaZuKiNa ( 2019/02/10(日) 19:10 )