突然始まるポケモン娘と○○○する物語





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第一部 突然始まるポケモン娘と同居する物語
第5話 4人を振り返ろう

突然始まるポケモン娘と同居する物語

第5話 4人を振り返ろう




 「ダダッダ〜ダダ、ダダッダ〜ダダ♪ ○プシマ〜〜〜ン♪」

俺は結構昔のやたら耳残りするCMソングを歌って、浴室に向かう。
服を脱ぎ、いざ風呂場に入ると、それは真っ先に気が付く異変だった。


 「ん? 浴槽の底に溜まっているのは……なんじゃこりゃ? ローション?」

俺は手で掬うと、ドロリと粘性があり、最初ローションだと思った。
だが、ウチにローションなんて置いている訳がない。
徐々に頭の中で原因を追求すると、新入りの彼女が浮かんだ。


 「こらー! 伊吹ーっ!」

俺は浴室を出て、リビングに向かうと、風呂上りでのんびりしていた伊吹を追求する。

伊吹
 「何々〜、茂君怒った顔してどうしたの〜?」


 「お前風呂入るなら先に言えって言っただろう! 浴槽がローション風呂みたいになってるじゃないかーっ!」

こいつの名前は伊吹。
ヌメルゴン娘の伊吹だ。
ウチのポケモン娘の中では一番身長が高く、胸もデカい。
色んな意味でデカい女だが、性格は至ってのんびり屋。
自身の身体から分泌される粘液を使ってどこにでも貼り付ける。
そして湿度を好む体質からか、風呂場が大好きだ。

伊吹
 「いやぁ〜、お風呂ってなんだか普段より粘液でるんだよねぇ〜」

美柑
 「……はっ! はっ! しかし伊吹さんも、主殿に身を預ける身、礼節を持つべきでしょう」

そう言ってリビングの端で剣の素振りを行うのは美柑だ。
ギルガルド娘の美柑。
身長は下から数えた方が早いが、胸の大きさは一番下のぶっちぎりという分かりやすいボーイッシュ娘。
ゴーストタイプだが幽霊は怖いといい、色んな意味でポンコツぷりが目立つが、根は実直で真面目。
たまに言葉に毒があるが、まぁそういう性格なんだろう。

保美香
 「あらら? お風呂炊き直さないといけないかしら?」

困ったようで、実は一番冷静なのは保美香だ。
ウツロイド娘の保美香。
あらゆる面で完璧なメイドを演じ、実際そのスペックは規格外。
身長は170程度、プローポーションもモデル並に整った本当に隙のない女傑だが、変態だ。
過去に夜這いをやらかした経歴があり、実際得体の知れなさはナンバー1だろう。


 「ご主人様、スパデラ手伝って」

一人黙々スーパーファミコンミニに打ち込んでいるのは茜だ。
イーブイ娘の茜。
この中では一番小柄な彼女だが、脱げば凄い侮れない子だ。
色んな意味でその性格は子供のそれであり、そして極度のコミュ障。
今ではすっかりゲーマーとしての腕を磨いているようだ。


 (そして俺がこの4人の家主の常葉茂)

俺自身なんかの特殊能力を持っている訳でもないただの一般人だ。
これは何故だか、俺の元に集まったポケモン娘との日常を過ごす物語だ。



***



 「歩いて波○拳、歩いて波○拳、出た昇○拳」

伊吹
 「むむぅ、お姉さんには難しいよぉ〜」

あれから、改めて風呂に入り直すと、カー○ィをやっていた筈の茜が別のゲームをしていた。
何やら伊吹に技の練習をさせているようだが、苦戦しているようだ。
今や俺など相手にならないほど上達した茜は初心者の伊吹にご教授出来るまでに至ったようだ。


 「ていうか、なんで伊吹がよりにもよってアクションゲームなんだ?」

まず疑問はそこだよな。
いかにもこの家の五人では一番鈍感で適正ないだろう。

伊吹
 「いやぁ〜、面白そうかなぁ〜って」

志願したのは伊吹の方のようだ。
そもそもにおいてスーファミのコントローラーの持ち方からして怪しく、伊吹がドの付く初心者であるのが丸わかりだ。


 「よりにもよって対戦格闘は最悪だろう、スパデラでヘルパーやらせたら良いんじゃないか?」

伊吹
 「アタシああいうスピード速いのはぁ〜」

……殆ど茜に任せれば洞窟探検以外は問題ないだろうに。


 「伊吹は間違いなくライトゲーマーだから、あえて難しそうなのからやらせた」

それだとそもそもライトゲーマー向けなんて、アクションの多いスーファミニじゃどうなんだ?
伊吹の適性が分からないがRPGならいけるか?

伊吹
 「アタシとしても〜、もっと簡単な方が良いなぁ〜」


 「それこそソシャゲ位からか」

例えばPokemon GOなんかならやれるか?
……伊吹にスマホを持たせることに不安しかないが。

保美香
 「だんな様。お風呂上がりにこれは如何でしょうか?」

俺の風呂上りを見越してか、冷蔵庫から何かを取り出した保美香はテーブルにそれを置いた。
見た目はプリンだったが。


 「プリン?」

保美香
 「厳密には少し違いますが概ね合ってます」


 「……?」

試しに食べてみると、食感も味もプリンだった。

保美香
 「違和感はありませんかしら?」


 「うーん。無いな」

それを聞くと保美香はよしっと小さくガッツポーズをとる。
何か実験をしていたようだが、なんの実験だろう。

保美香
 「実はそれ、卵を使ってないプリンですの」


 「……もう普通に作るのに飽きた訳?」

保美香
 「まぁチャレンジですわ」

保美香はそう言うと楽しそうにしていた。
うーむ、食感も見た目も味も殆ど違いが分からなかったが、保美香の料理の腕は本当にプロレベルだな。
……もしかしたら晩ご飯にもこんなの含まれてたり?
とはいえ、特に問題はないわけだし、いいか。


 「お風呂上がりにはどちらかというとビールを空けたいんだけどねぇ」

保美香
 「あまり身体を苛めないでいただきたいですわね」

この保美香、よく俺の体調の事を考えてくれているが、逆に言うとアルコール類に対してやたら厳しい。
元々弱い方ではあったものの今では一日一本に制限されて、やるせないおっさんの気分だ。

美柑
 「ゴク……牛乳なくなりました」

保美香
 「もう、美柑は牛乳ばかり消費して!」

冷蔵庫から紙パックの牛乳を取り出した美柑はいつも牛乳を毎日2リットル飲んでしまう。
本人なりに思うところはあるのだろうが、身長も胸もないからせめてもの努力なのだろう。
一方台所の守護神である保美香にはたまったものじゃない。
料理にも牛乳は使う以上、牛乳自体は大量に買い込むが、美柑が住み込んでからその消費が激増したのだ。

保美香
 「全く、食費だけは悩みの種かしら」


 「胃が痛くなること仰る」

当然と言えば当然だが、一般社員の月収じゃ一人でも厳しいのにそれが5人だ。
借金なしではとても支えられない。
だがそれでも保美香は良くやっている。

伊吹
 「ん〜、じゃあアタシも働くよぉ〜」

そう言ったのはゲームを中断した伊吹だった。


 「仕事って……アテがあるのか?」

伊吹
 「うーん。実はね〜、皆と出会う前にスカウトされたんだぁ〜」

え? と皆の注目が伊吹に集まった。

美柑
 「スカウトってまさかアイドルデビューですかっ!?


 「○ンデレラガールズ?」

そりゃ札束の殴り合いになりそうだな。
ていうか茜の奴なんでソレ知ってんだ?

伊吹
 「んーとね。男の人をお風呂で洗ってあげる? みたいな?」


 「ソープ嬢かーい!!!」

思わず全身全霊で突っ込んだ。
そりゃ伊吹なら何十万でもつぎ込んじまいそうだが。


 「伊吹。水商売はアウトな」

伊吹
 「じゃ〜アイドルデビュ〜するしかない〜?」


 「出来れば辞めて、なまじ当選しそうだから逆に怖い」

つーか、身体から粘液が出るローション系アイドルとか、完全に地下アイドルじゃねーか。
結局何やってもエロにしか結びつかなさそうな伊吹が逆に凄いな。

美柑
 「あの、でしたら内職ならば、ボクたちでも出来そうじゃないですか?」


 「内職?」

珍しく真面目に意見を出した美柑に注目が集まる。
内職と言っても様々だが、確かにそれならこの四人でも熟せそうだな。


 「……ハローワーク?」

どこからか茜が取り出したのは求人情報誌だった。
必然的に皆が茜の元に集まる。

美柑
 「これならボクでも出来そうです」

伊吹
 「アタシならこれかなぁ〜」

求人情報誌を開いて、どんな仕事があるのか興味津々に眺める三人。
既に脳内には仕事をしている自分の姿が映っているのだろう。
だけど、少し暴走してないか心配になる。


 「保美香、皆の監督頼むわ」

保美香
 「畏まりました。だんな様」

既にやる気満々の三人に、どこか不安も感じるが保美香だけは信頼しても良いだろう。
保美香の仕事を増やす真似はしたくないが、しかし監督役を任せられるのも保美香しか浮かばない。

保美香
 「でもあの娘たちAVデビューすれば、だんな様が働かなくてもいい気がするかしら?」


 「冗談と受け取るからな」

しれっとたまにブラックな事を言うから保美香は恐ろしい。
そして前提に自分が含まれていないのだから意外と腹黒いな。


 「ご主人様」


 「ん? どうした茜?」


 「私たちも力になる」

それは自信に満ちあふれた顔だった。
茜だけじゃない、美柑も伊吹もだ。
保美香だけじゃなく、皆俺に対して報いたいのだろう。
そこまでの価値が俺にあるのか、そんな考えは保美香の時点で止めたはずだ。
しかしやはり、思う。
何が彼女達をそうさせるのだろう。


 「なぁ皆にとって俺ってなんだ?」

保美香
 「だんな様はわたくしの全てを捧げるべきお方ですわ」

美柑
 「ボクにとって主殿は仕えるべき方です」

伊吹
 「アタシにとっては茂君は傍にいるだけで幸せなんだなぁ〜」

それぞれの中で、それぞれの俺がいる。
保美香の俺、美柑の俺、伊吹の俺。
そして。


 「私にとって、ご主人様は……全て、です」

そして、茜の中の俺。


 (ふ……くくっ)

思わず心の中で笑っちまう。
一体俺が何したって言うんだ。
彼女たちはそこまで俺に尽くしてくれる。
その対価を俺は払えるのか?
俺の中の彼女たちは尊い。
それが罪を想起させる。


 「皆、ありがとうな」

それだけで、彼女たちは笑ってくれた。
笑ってないのは自分だけだ。
勝手に罪を感じて、勝手に罰を受けようとする身勝手な男だ。


 (……もう少し自分に自信がもてるなら、俺も笑えたろうにな)

せめて、この四人は絶対に報いよう。
俺はそれを誓った。



突然始まるポケモン娘と同居する物語

第5話 4人を振り返ろう 完

第6話に続く。


KaZuKiNa ( 2019/01/31(木) 18:52 )