修行中の妄想
故郷から、チャンピオンロードまで来ておいて、
言うことではないのかもしれない。だけど――
修行が、退屈だ。
「グエェ!」
また1匹、ゴルバットが倒れる。
これで40……何匹目だったか。
もう数えきれない。
しかもこの数字は、ゴルバットという種族単体のものだ。
ほかの生息しているポケモンも含めれば、おそらく三百は行くだろう。
自分達のほかのトレーナーは、倒すのを繰り返してるうちに顔を見なくなった。
おそらく心が折れたのだろう。何だか悪いことをした。
全く。どうしてジムリーダーと四天王は、
実力の隔たりがこれ程大きいのだろうか。
しかも、こちらはこれまでエース一強でやってきたため、段違いの強者を、
負ければ後が無い状態で、相手にしていかなければならない。
結果、疲労困憊で相性が不利な者に返り討ちにされ、
ここに来てチームの全体的な実力の底上げを余儀なくされたのである。
そうして修行を始めて二十日が過ぎ、冒頭の心情に至るという訳だ。
それにしても飽きたな……まるで作業みたいだ。
おんなじ面子ばかりではなく、もっとこう……みるからに「強敵!」というような歯ごたえのある相手と戦いたい。名前を挙げるならば、カイリュー、バンギラス、
ボーマンダ、ガブリアス、サザンドラ……のような。
しかし、無いものねだりをしても仕方がない。
そうだな……例えば対峙する者がゴルバットであっても、
「因縁の敵」だったり、「宿命のライバル」、
或いは「師匠」とか、そういうバックボーンがあれば燃えるような気がする。
他には……何らかのイベントが起こるとか。
「悪の組織のチャンピオンロード襲撃!」「ジムリーダーと再び連戦で戦う!」
「伝説のポケモンが力試しに来る」「隠しルートからぬしが来る」
……あり得ないな。
しかし、そもそも。
夢見たチャンピオンまで、あと少しなんだ。夢まであと一歩。
ここに至るまで、多くのトレーナーが諦めていった姿を見てきた。
中には、自身に絶望をし、悲しい選択をしてしまった者もいると聞く。
それに比べれば、自分は何と幸運なことか。
いや、それだけではない。エースを始め、ポケモン達にも恵まれた。
こうして指示に従い続け、敵と戦うことは、トレーナーよりも大変に違いない。
彼ら彼女らがいなければ、自分は戦いの舞台にも立てないのだ。
退屈などという思いを抱いた自分が急に恥ずかしくなった。
チャンピオンはトレーナーの模範にならないといけない。
夢破れた者達の、想いを背負わねばならない。
信じてついてきてくれるポケモン達に、相応しい人間にならねばならない。
……とりあえず、場所を変えよう。そして、地道にやろう。