夢と星に輝きを ―心の境界―








小説トップ
4章 不穏な影
55話 全ては当たって砕けろ
 岩陰から出て、クレディアは戦況を見る。
 3対2。どちらが有利かなど、クレディアが見ても分からない。分かるのはぜんいん自分より強いということだけだ。

(とりあえず不意をついてグラスミキサー、ってフーちゃん言ってたよね)

 全く自分に注意がいっていないことを確認してから、クレディアは両手を前に突き出す。そして真っ直ぐと前を見据えた。

(イメージ、イメージ……。修行の、この前やったときのイメージ……)

 手に力をこめ、目線は敵からはずさない。
 そして御月たちが敵の2匹から離れた瞬間、クレディアは手に力を込めた。

「グラスミキサー!!」

「ぶにゃっ!?」

「ログッ!!」

 完全に不意を突いた形で撃ったに関わらず、2匹はグラスミキサーを避ける。
 しかしフールはクレディアに「当てろ」と言ったわけではない。ただ不意をついて撃てといっただけ。本当の狙いは、別にある。
 フールはにやりと笑った。

「隙みーけっ、でんじは!!」

「しまっ……!」

 ファットとログッドにでんじはを食らわせる――つもりであったが、ログッドには避けられた。1匹に当たっただけまだマシだろう。
 すると次にスタンバイしていた御月とレトも動き、ログッドを狙った。

「スパーク!!」

「っうぐ!!」

 ログッドの後ろから、レトが電気を纏って突進する。
 突進された勢いそのままログッドが転がると、麻痺して動けないファットに激突してともにごろごろと転がった。
 そんな2匹に、御月は攻撃の手を緩めなかった。

「ほらよ、リゲルお手製、」

 ぽいっと、ファット達の方に投げたのは真四角の手持ちサイズの白い箱。
 それが地面にカツン、と落ちるや否や、それは――


「小型爆弾」


 ドォッ、という音とともに爆風が吹き荒れる。
 それを見ながらクレディアは「わぁーおっきい音なったねー」と笑う。フールとレトはあんぐりと口を開け、フールは手を震わしながらひきつった笑みで尋ねた。

「ちょっと御月……あれ何」

「だからリゲルお手製小型爆弾。案だして作ってもらった」

「君らもっと平和的なものを作れよ!」

「物騒だなお前ら!!」

 真顔で言ってのけた御月に、フールとレトの鋭いツッコミが入る。しかしやはり御月は平然としている。
 すると爆風でおこった煙の中から勢いよくログッドが出てきた。

「どくづき!!」

「レト頼んだ!」

「うわっ!? ふざけっ、あぁぁぁぁ電気ショック!!」

 フールがどんっとレトの背中を押し、そのせいでレトはログッドの方へとふらついた。文句を言おうとレトが振り返ろうとしたが、すぐさまログッドの存在を思い出し技を繰り出した。
 紫色の怪しく光るログッドの右手と、レトがぎりぎりで繰り返した電気がぶつかる。
 ログッドは電気を押し切ろうと力を込める。どんどん近寄ってくる右手に、レトは「やべっ」と声を漏らした。

「イメージ……マジカルリーフ!」

「チッ、」

「おわぁッ!? おいクレディア俺いるから! 俺いるの忘れんのやめて!!」

 レトもろともログッドを狙った攻撃がクレディアから放たれる。
 するとでんじはで麻痺をしているファットが、動いた。

「さいみんじゅつ!!」

「え、ふわぁっ!」

 見事にクレディアが技にあたり、ふらりと体が後ろに傾いて倒れた。ファットの口からでた言葉は「さいみんじゅつ」。ただ寝ているだけだろう。
 「あーもう!」とフールは声をあげながら、ファットにでんこうせっかで近づいた。

「雷パンチ!!」

 電気をため、それを右腕に集中させてファットの体を殴る。
 麻痺で満足に動けないファットは、まともにその攻撃を食らってしまう。そのままフールはでんこうせっかで移動し、クレディアの元へ移動する。
 そしてちら、とクレディアを見た。

(完っ全に寝ちゃったなー……。戦闘に参加してこんな早く戦線離脱されるとは)

 とりあえずクレディアはどうしようもないので、放っておくことにしよう。フールはそう結論づけた。
 今どう見たって有利なのはフール達だ。ダメージを少しは受けているといえ、あちらの方がよほどだろう。それに相手は2匹、こちらは(先ほどまでは)4匹。そして敵の1匹はまひ状態。
 これはいける。そう思ってフールはぐっと足に力を入れた。

「御月! レト! 予定変更! 作戦2でいくよ!!」

「……2って唯一クレディアが入ってない作戦のことだよな」
 
「仕方ないだろ。寝てんだから、っと!」

 ログッドの攻撃を御月がぎりぎりで避ける。
 その間にフールは力強く地面を蹴り、クレディアの元からはなれた。そしてしっかりと相手を狙う。

「電気ショック!」

 電気が真っ直ぐ走り、ログッドを狙う。御月はそれを見てすぐさまログッドから離れた。御月が離れたことにより、余裕ができたログッドは、ぎりぎであったが電気を避けた。
 ログッドから距離をとった御月が、ふと息をついて針を出そうとした瞬間だった。

「ひっかく!」

「――、チッ!」

 舌打ちをしながら、御月は身をひねって場所を移動する。全く予期していなかったので、攻撃を避けることはできなかった。それに加えて無理な体勢で動いたために少し体に痛みが響く。完全に隙を突かれた。
 体勢を立て直しながら、御月は攻撃してきた相手を睨んだ。

「ブニャッニャニャ! いつあたいが攻撃できないって言ったにゃ!?」

「……もう動けねぇとばかり思ってたよ。面倒くせぇな……」

 ファットが愉快そうに笑い、御月は厄介だと言わんばかりに顔をしかめた。そしてもう一度 舌打ちをかます。
 麻痺だからといって、全く動けないわけがない。それに時間が経てば麻痺も少しずつだがとれる。
 先にログッドをやろうと考えていた御月だが、すぐさま予定を変更した。

「おいフール! レト!! 順序逆だ!」

「おっけー! 」

「おう!!」

 御月の言葉に返事をし、レトは空中へ、フールはでんこうせっかで動いた。

「電気ショック!」

「ッ、シャドーボール!」

 何とか体を動かし、ファットも技を繰り出してくる。
 フールがファットに気をとられている間に、ログッドがフールにむかって毒針を放つ。が、すぐさまその針は弾かれた。

「残念。お前はこっちだ」

「ログログログ! お前さっきから道具しか使ってないな! そんなんでまともに叩けるロッグ?」

 馬鹿にするように笑うログッドに、御月は不敵に笑って見せた。

「その道具しか使ってない奴にダメージくらわされたりしてんのはどこのどいつだよ」

「……いちいち癇に障る奴だなァ!!」

 ログッドがどくづきを構えて詰め寄ってくる。
 グッと身構えてから、適度な間合いでログッドのどくづきをひょいひょい避ける。御月は呑気に考え事をしながら。

(相手を怒らせるのが一番楽だよな……)

 どくづきをひょいっと避けた直後、ログッドが毒針を撃った。御月は頭を傾けて、針を避ける。
 それと同時だった。

「い゛っ!? きゃっ!!」

「! げっ……」

「ログログ! 狙いはあっちロッグ!」

 避けた毒針はどうやら後ろでファットと戦っていたフールに当たったらしい。
 そこでフールの表情を窺えば、マズイと言わんばかりの顔をしている。そこで嫌な予感を御月は感じた。
 ファットはフールが怯んだうちに、みだれひっかきで連続攻撃する。御月は忌々しげに舌打ちしてから、バッグに手を突っ込んだ。

「テメェはこれでも食らってろ!」

「……!」

 真四角の黒い箱――つまり、リゲルお手製の小型爆弾。御月は粗雑にログッドの方へ投げた。
 ログッドは目の前に放り投げられたために、反射的に弾く。それは地面にカツンと落ちた瞬間――ログッドに防御の態勢を取らせる前に爆発した。
 御月はそれに見向きもせず、針を投げる。ファットの周りを囲むように。

「フール、攻撃して今すぐ離れろ!」

「っ……電気ショック!」

 顔色が悪くなっているところを見ると、やはり毒状態になっているらしい。
 フールが撃った電気ショックは、針につられてファットへと向かっていく。すると針がなかった後ろにファットが動いた。
 そこで御月は声を張り上げた。

「レト!!」

「よっしゃ来た!!」

「にゃ!?」

 ずるっと、ファットの体が傾く。
 顔を青ざめさせて、ファットが足元を見れば、見事に崩れている足場。クレディアが来る前、御月が隙を見てあなをほるで作った、脆い足場だった。
 予定通りひっかかったと言わんばかりに、御月とレトは笑った。

「スパーク!」

 麻痺、そして足場が崩れて体勢が整っていないファットにむかって、レトが勢いよく空中から電気をまとわせ突進する。

「ニャーーーーーッ!!」

 ファットの絶叫する声とともに、ドスンという音が響いた。衝撃で脆かった地面に穴が開く。
 御月が様子を窺っていると、レトがひょいっと穴から出てきた。そして2匹にむかってニカッと笑いながらピースサインを見せた。

(やっぱり充電を十分したあとのスパークで仕留められないわけがねぇよな。前もってたててた作戦がここまで上手くいくとは。あとは……)

 ちら、と爆発によって煙が未だ巻き上がっている場所を見たと同時、

「ぅぐっ!?」
 
「!? ぐっ!!」

 レトが吹っ飛んできて、咄嗟に反応できなかった御月がレトにぶつかり、共に地面をごろごろと転ぶ。
 フールが見れば、そこにはログッドの姿。手は怪しく紫色に光っている。
 おそらくレトの隙をついてどくづきをかましたのだろう。

「やってくれるロッグ!」

「……見事に青筋浮かんじゃってるよ。っつ……」

 立ち上がる際にした眩暈に、フールが頭を押さえる。
 毒状態であるため、動くのはよくない。早くモモンの実を食べるのが最善策であるが、敵はそれを許さないだろう。だとしたら御月とレトに手っ取り早くやってもらうのが一番だが、生憎さっきぶっ飛ばされた。

 とりあえず私は離脱しよう。
 そう考えてながらフールが頭から手を離すと、ログッドがこちらに向かっているのが見えた。

「だましうち!」

「あーもう、私は万全じゃないんだって、ば!」

 辛うじてフールがでんこうせっかで避けていく。
 避けていく中で、フールは冷や汗をかいた。距離をどんどん詰められているうえ、視界はぐらぐらと揺れてくる。頭が警報を鳴らしているのはフールが一番よくわかっている。
 しかしログッドの狙いがフールから変わる様子もなく、フールは何とか動き回って避ける。

「っ、」

 ふらりとフールの体が傾く。強い眩暈が、襲った。
 ログッドのどくづきが迫っているのが、眩暈の所為で暗くなるフールの目にうつった。

(まずっ……!!)



「エコーボイス!!」



 凛とした声が、場に響く。
 それとともに、

「い゛っ……!? 何、だ、これ……!」

 ログッドが耳をふさいだ。
 今ログッドの耳にはキィィン、という耳鳴りのような不快な音が響いていた。それはどんどん大きくなっていくばかりで。
 すぐさまログッドは音の原因を探すため、辺りを見る。視界の端に、フィーネが映った。

 音が届いていないフールは、その隙を見逃さなかった。

「でんじは!!」

「ログッ!?」

 音に気を取られていたログッドが避けられるわけがなく、でんじはは命中する。
 そしてフールがログッドから少し距離をとった瞬間、

「スパーク!!」

 レトが電気を纏って、ログッドへ一直線に飛んできた。
 ログッドは動こうとするが、痺れと、不快な音とのダブル攻撃でうまく動けない。

「や、やめ――」

 悲痛なログッドの声もむなしく、レトは勢いよくログッドに激突していったのだった。

■筆者メッセージ
やっと書き終わりました……。
本当は最後クレディアに決めてもらうつもりが凄い早さで戦線離脱させてしまった。あの子の戦闘能力の低さはどうにかしなければ。
フールと御月とレトが活躍しまくりました。でもレトよ、君の活躍はもうないかもしれない←
アクア ( 2014/08/11(月) 19:41 )