夢と星に輝きを ―心の境界―








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3章 多彩な邂逅
38話 蜃気楼の先に
 朝。いつもと変わらない朝かと思いきや、違う点が現れた。

「クレディアさん、フールさん、御月! おはようございます!!」

 クライの元気な声。
 それを聞いてクレディア達が外に出ると、いつも一緒に家の前で待ってくれているレトとシリュアの姿がなかった。

「あれ? クライ、レトとシリュアは?」

「え、えっと……今、丘の上から蜃気楼が見えるんです! それで2匹は先に行ってて……フールさん達も是非行きませんか!」

「蜃気楼!? みたい!!」

 クライの言葉にクレディアがいち早く反応し、目を輝かせた。わくわくと、その感情を顕著に示している。
 フールはというと、視線を泳がせながらうわごとのように呟いた。

「蜃気楼って……遠くの物が空に浮き上がって見えるっていう?」

「はい。宿場町からたまに見えるそうなんですが、今回は今までの中でも特に綺麗に見えてるって!」

「へぇ。今までも十分見えてたのにな……。珍しい」

 宿場町に馴染みが深い御月が少し驚いた表情を見せる。
 蜃気楼を御月は見たことがあるらしいが、それでも十分な程に見えてたようだ。しかしそれより綺麗だと言われれば、見たくもなる。
 その特に綺麗に見えている蜃気楼に、フールも関心を寄せた。

「よっし、早く行こうっ! 私も見たいし!」

「しんきろうー!!」

 そう言って2匹が駆けていく。
 御月はそれを見て呆れた顔をしてから、クライに「行くぞ」と声をかけ、2匹の後を追った。





 丘に向かうと、既に何匹かのポケモンが丘の向こうを見ていた。
 足音で気付いたのか、レトがフール達の方を見て「お、来たな」と声をあげる。それから4匹はレトとシリュアの方に近づいた。
 それを確認してから、レトはポケモン達が見ている方向を指差した。

「あそこだ。結構くっきり見えるぜ」

 そちらを見て、クレディアは息を呑んだ。

 大きな青空にうつる、遠くの雄大な景色。
 特に目をひくのが、白っぽい大きな何かだった。それはレトの言ったとおり、くっきり空に映っている。

「わぁっ……大きな何かが映って見える……!」

 クライが少し声を震わせ、感激といわんばかりの声をあげる。
 それほど、蜃気楼で見える景色は凄かったのだ。その白い大きな何かは、白い煙を出している。それさえも見えるほど、くっきり見えるのだ。
 何度か丘の上から蜃気楼を見たことがある御月でさえ、「うわ……」と声をあげた。
 するとフールが小首を傾げる。

「真っ白な山々に見えるけど……何だろう、あれ……」

「北の大氷河よ」

 返事がもらえると思っていなかったフールは、思わず言葉を返したシリュアを見た。 シリュアは丘の向こうをじっと見ており、フールと目をあわすことはなかった。その代わり、説明を続ける。

「ここより北の海辺に巨大な氷河が広がってるの。私も海沿いの山の上から眺めたことがあるけど……その雄大な光景にはホント圧倒されたわ」

「すっ、凄いです! 僕も見てみたい!」

「私も! 大氷河ってどんなとこだろ!? 考えただけでもわくわくしちゃう!」

 クライとフールが興味を示し、目を輝かせる。
 2匹の子を見て、シリュアは思わず微笑んだ。その瞳があまりに無邪気で子どもっぽかったからだ。
 その後ろで、クレディアが「うーん」と声をあげる。

「大氷河、かぁ……。私も行ってみたいなぁ。カキ氷が沢山できるね」

「作らねぇよ」

 すぐさま御月によって天然発言はツッコまれたが。
 するとシリュアが「そうね……」と、興味津々な2匹に話を続けた。

「あそこには氷の宝石があるとか、幻の大結晶があるとか色々と言われているけれど……でもホントのところはまだ何もわかってないわ」

「ど、どうしてですか?」

 クライが首を傾げる。それは他も同じだった。
 少し考えたような素振りを見せてから、シリュアはクライの問いに答えた。

「大氷河にまだ誰も行ったことがないからよ。……たぶん、誰も……ね……」

 掻き消えそうな声に、クレディアが首を傾げる。
 しかしシリュアはすぐさま声の調子を戻し、説明を続けた。

「巨大なクレバスが行く手を遮っているの。しかも不思議な土地の力がクレバスを不規則に変えるから、地図も作れない。空を飛んで行こうにも凍てつく風邪が邪魔をして近づけないらしいわ」

「そっかぁ……。そんな場所なら今の私たちの力じゃ尚更ムリそうね……」

 落胆の色を示すフール。興味津々だったため、落胆も相当のものだろう。
 しかし、すぐにフールは明るい声を出した。

「でも! 今は無理だけど、いつか行こうね! 大氷河!!」

「おーーッ!」

「……行けたらな」

「は、はいっ!」

「へへっ、そうだな!」

 クレディアは片手を空にあげ、御月は面倒くさそうに、クライは目を輝かせて、レトは明るく。それぞれ個々に反応を示した。
 それにフールはにっこりと微笑んだ。

「私たちも修行して実力をつけなくちゃ! 今日も頑張ろ! 『プロキオン』――」

 フールがそう言った瞬間、御月がゲッという顔をした。
 しかし他の5匹は全く気にしていなかった。

「「「「「レッツシャイン!」」」」」

 他のポケモンの目も気にせずやってのけた他のメンバーに、御月はため息をついた。
 すると5匹が自分を見ていることに気付き、面倒くさそうに返した。

「……やらねぇよ。つーか何でこんな人目が多い場所で……」

「こういうのはノリが大切なんでしょー。ったく御月はノリが悪いんだから」

「海苔……?」

「クレディア多分意味が違う」

 そう言って、フールと御月がため息をついた。クライは困った顔で、レトとシリュアはおかしそうに笑っていた。

■筆者メッセージ
……さて、入っちゃいましたよテスト期間。いや、先週の金曜から入ってたんですけど。
明日からPCに触れないかと思うと涙が出ますよ……出ないけども←
というわけで、来週の金曜日までは更新できせんのでご理解お願いします。
アクア ( 2014/05/05(月) 22:19 )