夢と星に輝きを ―心の境界―








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3章 多彩な邂逅
35話 波乱は更なる波乱へ
「昨日はお騒がせしたけど、復活しましたー! ごめんねっ!」

 クレディアが元気よくそう言うと、メンバーがほっとした表情をした。
 昨日は高い熱を出していたクレディアだが、夕方にもなると脅威の回復を見せた。そして次の日になるとここまでピンピンしている。

「元気になってよかったです!」

「本当にね。でも病み上がりなんでしょう?」

「大丈夫なのか?」

 各々がクレディアに言葉を投げかける。クライもシリュアもレトも昨日は様子見に何度も訪れ、心配していた。本当にエラそうだったのだ。
 しかし、クレディアはこの通り元気で

「うんっ! 今なら1日ずっと歌う自信があるよ!!」

「いや、何の自信!?」

 クレディアの言葉にフールが鋭くツッコむ。
 すると御月が「はぁ」とため息をついた。そしてわいわいと騒いでいるメンバーに話しかける。

「で、今日はどうするんだ?」

「依頼にいくに決まってるでしょ! ただ今日は二手に分かれて、依頼を2つ受けようと思うの」

 フールが意気揚々と話す。
 そして「とりあえず掲示板の前まで行こう」と行って、掲示板の前まで『プロキオン』は移動した。
 掲示板の前までいくと、フールが指をたてて話し始める。

「まず私とクレディアと御月のメンバー。そしてシリュア、クライ、レト。レトの文句は受け付けてませーん」

「ぐっ……」

 フールの事前の釘さしに、レトが唸る。
 レトはシリュアと一緒を嫌がる。文句は言うものの、我侭は言わない。自分もチームの一員だから、という意識が働いているのだろう。
 それを見てからフールは掲示板を見た。

「依頼は何でもオッケーだから、適当に……よし、クライ選んでみよう!」

「ぼ、僕が!?」

 いきなり名指しされたクライが驚きの声をあげる。
 フールは気にせず、「こっちは私が選ぶねー」とクレディアと御月に声をかけ、掲示板に向き合っていた。
 クライがどうしようかと戸惑っていると、レトに「ほらクライ。選んでこいよ」と言われてしまったため、掲示板に近づく。掲示板には沢山の依頼の紙が貼ってある。

「うーん……。じゃ、とりあえずコレにするかな」

「え、えっと…………じゃあ、これで」

 フールとクライがそれぞれ違う紙を手に取った。
 「“荒れ果て谷”で暴れているホイーガを倒す」という依頼をフールが。「“でこぼこ山”で迷子になってしまった」という依頼をクライが。

「あら、悪者退治にいくの?」

「うん。ちょっと力試しにいいかなぁって。……クレディア本気で戦闘に慣れてもらわなきゃ困るしね」

 シリュアの言葉に頷きながら、フールがちらりとクレディアを見る。

「えへへ」

「そこ照れるとこじゃねぇよ」

 何故か照れたように頭をかくクレディアに、御月がツッコんだ。
 それにため息をついてから、フールとクライはロナに依頼の紙を渡した。ロナは紙を読んでから、ニッコリと微笑んだ。
 するとゴゴゴ、と音をたてて依頼ゲートが開く。

「依頼ゲートをオープンしました! 頑張って行って来てくださいね!」

 ロナの元気な声を聞きながら、『プロキオン』は依頼ゲートに向かう。
 そしてフールはレトに話しかけた。

「喧嘩だけはしないでよー」

「するか! ……多分」

「おい、最後は言わないべきだろ」

 色々と不安ではあるが、『プロキオン』は二手にわかれて、依頼にむかった。



――――荒れ果て谷――――

「嫌な出来事といい出来事を思い出す場所ね……」

「言うな」

 しみじみとした風にフールが言うと、すぐさま御月が反応した。
 “荒れ果て谷”で思い出すのは、クライのこと。クライが危機的状況に陥り、助けに行ったら戦闘になり、そして新たな仲間が3匹も増えた場所。あのときは慌てていたため、“荒れ果て谷”という場所をあまり見ていなかった。
 今回は急ぐ理由もないので、ゆっくりと歩く。そのためクレディアは息切れなど起こしていなかった。

「ホイーガの居場所は6階。次に階段あがったらすぐだから、クレディア準備はしっかりね」

「準備体操しとけば大丈夫かな?」

「……クレディアが準備だと思うならもう何でもいいよ」

 これは何を言ってもムダなやつだ。フールは勝手にそう判断した。
 そして後ろを見ると準備体操をしているクレディアがいる。「いちにーさんしー」と声つきで。さらに何故かムダに元気よく。
 それを見ながらフールと御月がため息をついた。

「……この天然さもどうにかしてほしいかな…………」

「……いや、ムリだろうな」

 冷めた目で言うフールと、諦めきったように呟く御月。それに気付かずクレディアは準備体操を続けている。
 それからクレディアが「準備万端!」と言ったので、3匹は階段を上った。
 上がってからフールがキョロキョロと辺りを見渡す。どうやらかなり大きなフロアに出たようだ。
 見ると、フロアには寝ているギギギアル。

「あー、熟睡中の奴がいるな。クレディア、フール、間違っても攻撃するなよ」

「熟睡中? 冬眠とか?」

 こてん、とクレディアが首を傾げる。
 何かまた的外れたことを言っているなと思いながら、フールは説明する。

「近距離まで近づいても起きない奴のことを言うの。普通のポケモンは少しでも近づいたらすぐに起きるでしょ? すぐに起きる理由は1つ。一撃でやられちゃう可能性があるから、そうならないように警戒して浅い眠りについてるから。でも、熟睡中のポケモンは違う」

「攻撃されてもやられることはないし、襲ってきた奴を一撃で倒す自信があるレベルだ。だからああやって深い眠りについてるんだ。
 このダンジョンはレベルがかなり低いが、それでも俺らのレベルにはあってるダンジョンだ。だが熟睡中の奴は俺らやこのダンジョンにいる普通のポケモンと違って、かなり強い。……だから下手に刺激せず、通り過ぎるのが1番なんだよ」

 へぇ、とクレディアが声をあげて熟睡しているギギギアルを見た。起きる気配はない。

「……じゃあお話できないね」

「「ダンジョン内にいるポケモンに話もないけど!?」」

 クレディアの発言にハモリながらフールと御月がツッコむ。大きな声を出したというのに、やはりギギギアルは起きる素振りを全く見せない。
 すると夥しい音が3匹の耳に届いた。

「……何か、聞こえる?」

「聞こえるな」

 ドゴゴゴ、という音はこちらに近づいている。どんどん大きくなる音に、3匹は首を傾げる。
 地面を抉って凄まじいスピードで走っているかのような音。止まることはなく、それは進んでいる。地面を抉る音は、あまりいい音ではなく、むしろ不快な音だ。
 すると御月がバッグの中から何か取り出した。

「うっわ、何それ!?」

「リゲルに頼んで作ってもらった特注針」

 フールがぎょっとした顔をするのに対し、御月はいつも通り。手には何本かの針が握られており、それはぎらぎらと光る。
 苦い顔をするフールとは対照的に、クレディアは目を光らせた。

「わぁっ、カッコいい!!」

「クレディアお願いだからそんな凶器を見て目を光らせないで!?」

「凶器じゃねぇよ。ただの戦闘道具。……俺は道具とか使って闘う方が慣れてんだ」

 それより、と御月が振り返る。

「来るぞ」

 その言葉とともに、フロアの通路から凄い速さで音の原因がフール達がいるフロアに突っ込んできた。それは、唐突に止まる。
 クレディアは首を傾げ、フールは頬をひきつらせた。

「まっさか……あれが大暴れしてるって言うホイーガ!?」

「それ以外ありえねぇだろ」

 それ、ホイーガは1度動きを止めると、今度はフールたちの方に回転しながら突っ込んできた。けたたましい音の原因は、回転しながらの移動で地面を抉っていたからだろう。
 フールは素早く覚えたばかりのでんこうせっかでクレディアを引っつかんで移動する。御月は真正面から針を投げる。

「チッ」

 針は呆気なく弾かれる。それに御月は舌打ちした。
 回っている分、防御率は高くなっている。おそらく回っている間、柔な攻撃では全く通用しないだろう。
 御月はすれすれでホイーガを避けながら、声をあげた。

「フール! 動きを止めろ!!」

「命令されなくても分かってますー! クレディア! いける!?」

「うん! イメージ、イメージ……。……蔓のムチ!!」

 目を伏せてうわごとのように呟いてから、クレディアの首のあたりから蔓が勢いよく出る。その蔓は的確に、ホイーガの体の突き出している部分をとらえた。そのためホイーガの動きは止まる。
 しかし尚も回り続けようとしているため、クレディアは懸命に蔓に力を入れる。下手をすれば、自分が引っ張られて終わりだ。

「んぐぐぐ……!!」

「ナイスクレディア! でんじは!!」

 クレディアが動きを止めている間に、フールが微弱な電気を浴びさせる。それは命中し、ホイーガの動きは鈍った。
 それからすぐに御月が動いた。

「ほらよっ!!」

「うぐぅっ!?」

 針を2,3本ホイーガに向かって投げる。今度は回っていないため、ホイーガに刺さった。
 御月が「フール!」というと同時に、フールが動いた。

「電気ショック!!」

 それは真っ直ぐ、ホイーガに向かっていく。
 ホイーガは動こうと、動きを止めている元凶を素早く見た。

「毒針!」

「え、ふわぁ!!」

 蔓をパッと放し、クレディアがゴロゴロと大げさに転がる。毒針は寸のところであったが避けた。
 しかし蔓が放れたことにより、麻痺をして多少スピードは落ちたがホイーガは転がる。そのため真っ直ぐ向かっていた電気ショックははずれる――かと思われた。

「うえぇ!?」

「……さすが」

「うがぁぁぁぁぁッ!!」

 電気ショックはぐねりと曲がり、ホイーガを追いかけるようにして当たった。
 それに電気ショックを撃った張本人は目を丸くする。しかし御月は全く驚いていないようで、関心したような声をあげた。

「何あれ……何あれ!? 曲がりましたけど!?」

「リゲル特性の避雷針針。いや、案を出したのは俺で作ったのはリゲルだが、まさかこんなに上手くいくとは……」

「何作ってんの君ら!?」

「あ」

 思わずフールは声を荒げてツッコんだ。しかし御月はどこ吹く風だ。そのときクレディアが一声あげたことに、2匹は気付かなかった。

「どうせ俺が投げんのは相手に刺さんだから、避雷針にしたらフールの命中率もぐんっと上がるなと思って。さすが天才だな。精密にできてる」

「私の命中率云々よりクレディアの方をどうにかしてくんないかなぁ!?」

 フールがいい終わった瞬間、フールと御月の間を何かが通過した。
 それは麻痺で苦しんでいたホイーガに当たり、ホイーガは呆気なく倒れた。プスプスという音と少し焦げた体。
 フールと御月がそれが撃たれた方向を見ると、思わず悲鳴をあげそうになった。

「ギ、ギギギアル……!! ななななんで起きてるの!?」

 顔を真っ青にしながらフールが声をあげる。
 そう、そこにいたのは先ほどまで寝ていたギギギアル。間違いなく、ホイーガを倒したのはあのギギギアルで間違いない。何故なら敵ポケモンがそれ以外いないからだ。
 するとクレディアがのほほんとした雰囲気で、言った。

「さっきの私が避けた毒針あたっちゃったみたい。謝った方がいいかな?」

 そんな場合ではない。
 フールと御月の頭の中では警報音が鳴り響く。2匹は冷や汗を流してから、

「逃げるよ!!」
「逃げんぞ!!」

 フールがクレディアの片手を握って引っ張り、御月と同時に駆け出す。クレディアは「わわっ」と声をあげながらされるがままだ。
 しかしギギギアルが逃がしてくれるわけもなく、チャージビームを何発も撃ってくる。
 御月は舌打ちをしてから、走るのを止めた。

「自分で自分のでも喰らっとけよ!」

 勢いよくギギギアルに避雷針針を投げる。
 しかしその針はギアソーサーによって呆気なく破壊された。針なのだから、強度がないのも仕方の無いことだろう。
 それに御月はもう1度舌打ちしてから、通路に入った。

「階段さえ見つけられれば逃げれる! とにかく走れ!!」

「クレディア頑張って!」

「う、うん……!」

 御月を先頭に、フール、クレディアと順に通路を走る。後ろにはギギギアルが追ってきている。
 懸命にクレディアは足を動かすが、走っているために酸素が上手く回らない。おかげで汗はドッと吹き出す上、頭は朦朧としてくる。

「フロアッ……チッ、ここに階段はねぇ! あっちの通路にいくぞ!」

 御月がすぐさま指示し、先ほどよりは少し狭いフロアから出ようとする。
 するとクレディアの足がもつれた。

「はぁっ……! きゃっ!」

 クレディアの声に、走り出していた2匹が止まる。
 しかしクレディアの傍には、すでにギギギアルがいた。どうやら追いついてしまったらしい。
 ギギギアルは至近距離でチャージビームを撃とうとしていた。クレディアは転んでしまって態勢を崩し、成す術もなくそれをみることしか出来ない。

「クレディア! チッ――」

「まずっ……!」

 すぐさまフールと御月が攻撃しようとするが、チャージビーム発射は、すぐ。
 目の前で光る電気と、威圧感を放つギギギアルに、クレディアが思わず目を瞑った。次くる痛みを覚悟して。

 しかし、次の瞬間予期していなかったことがおきた。

「ガッ……!」

 痛みはこず、耳に入ったのは呻き声。そしてドサリと何かが倒れた音がした。
 クレディアがそれに恐る恐る目を開くと、痛々しい切り傷をつけて倒れているギギギアル。そして、


「………………。」


 目の前には先ほどのギギギアルより威圧感を放つ、右目に凄まじい傷痕をつけたキリキザンが立っていた。

■筆者メッセージ
アンタどれだけオリキャラ出してオリストに突っ込んでいく気だ。……元々こうなる予定だったから仕方ないと開き直ってみる。
ごめんなさい、もう落ち着きます。もう暫くオリキャラは出てこない、はず。
因みに熟睡中の説明は勝手に私が想像しました。都合のいいように解釈してみました。
アクア ( 2014/04/14(月) 22:37 )