夢と星に輝きを ―心の境界―








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1章 星の欠片
6話 大工
 しばらくクレディアとフールが宿場町を見ていると、食堂の中からセロが出てきた。
 そして「おぉっ」とセロが声をあげたので、クレディアとフールはセロの方に寄って行った。

「ちょうどよかっただぬ。あそこにいるドッコラー達は大工の弟分だぬ。2匹に聞いてみるだぬ」

 するとセロが2匹に近づいていく。クレディアとフールも顔を見合わせてからセロの後を追った。
 そして話している2匹にセロが話しかけた。

「ちょといいかぬ?」

「え、はい。何でしょう?」

「ヌシたちの親方はどこにいるだぬ?」

「え? 親方? 兄貴……のことですか?」

 怪訝そうな顔をして1匹のドッコラーが言う。すると「うぬ」とセロが返事した。
 ドッコラー達は顔を見合わせてから、気まずそうに食堂を指さした。

「兄貴なら食堂にいるけどよ……」

「その兄貴っていうのが、大工さんなんだよね?」

 フールが顔を覗かせてドッコラー達に言う。すると1匹が「あ、あぁ」と頷いた。

「私たち、家を建てたいの。その兄貴っていうポケモンのところまで案内してもらえない?」

 ドッコラー達は再び顔を見合わせてから頷き、フール達の方を見た。

「わかりました」

「ありがとう! えっと……」

「あ、僕はポデル・ズィナミです」

「俺はマハト・ズィナミ」

「私はフール・ミティスだよ。よろしく!」

「えっと……私も言った方がいいのかな。クレディア・フォラムディです」

 丁寧口調のドッコラーがポデル、少し乱暴な言葉遣いをしているドッコラーがマハトらしい。
 セロは自己紹介しあった後、フールとクレディアの方を向いた。

「おぉっ、よかっただぬ。頑張って大工にお願いしてくるだぬ。ワシはここで待ってるだぬ」

「うん、ありがとねセロ!」

「こっちだ。ついてこい」

 マハトとポデルの後を追うように、クレディアとフールは食堂に入っていった。
 食堂は結構オシャレで、何匹かのポケモンが食事をしていた。

「それで、兄貴っていうのは……あ、あのポケモン?」

 フールが指さしたのは、スワンナ。するとマハトが「いや、普通に見て違うだろ」とツッコんだ。

「あそこにいるのはレア・アウィヌっていうこの食堂と宿の主だよ。ママさんだ」

「じゃああっち?」

 今度はクレディアが指をさした。
 そのポケモンはゾロア。まさに仕事の真っ最中といったようで、料理を運んでいる。今度はフールが「大工がなんで料理はこぶの」とツッコんだ。しかしマハトからするとフールも大概な間違いをしている。

「違いますよ。彼はここでバイトしているポケモンです」

「俺たちの兄貴はあそこ……」

 マハトが指さした先にいるのは、ドテッコツ。こちらこそ、まさに大工といわれてもおかしくない。

「あそこにいるのが、ヴィゴ兄貴です」

 へぇ、とクレディアが声をあげる。
 するといきなりドテッコツが「ドテッコーーーツッ!!」と大声をあげた。4匹は思わず体をビクリと反応させた。
 それを見てマハトがクレディアとフールの方を向いた。

「い、いいか……? 兄貴は荒っぽいところがあるからな。気をつけるんだぞ」

「クレディア、余計なこと喋らないでね」

「え? うん、分かった」

 さり気にフールが酷いのだが、クレディアは気付いていないようだった。
 そのまま4匹は進んでいき、ドテッコツに近づいていく。するとまた「ドテッコーーーツッ!」と大声をあげられた。
 そして今度はドテッコツが鋭い目つきでマハト達を見た。思わず2匹は「ひっ」と小さく悲鳴をあげて後ず去ってしまう。

「どうした? オメェら」

「あっ、兄貴……。じ、実はここにいる奴らが……」

 恐る恐るといった感じでマハトがクレディアとフールを指さす。
 ドテッコツは2匹を見ると、「むっ」と声をあげた。

「なんだ? もしかして仕事の話か?」

「う、うん! えっと……私はフール・ミティス。で、こっちが」

「……あ、今は喋っていいんだね。私はクレディア・フォラムディっていいます」

「俺はヴィゴーレ・イデタース。ヴィゴでいい」

 内心クレディアにヒヤリとしたフールだが、どうやらヴィゴは気にしていないようでフールはバレないようにほっと息をついた。
 そして本題に入ろうとヴィゴの方を向いた。

「私たち、家を建てたいんだ。大工さんにお願いすれば家が建てられると思って……それで此処に大工さんがいるって話を聞いてここまで来たんだ」

「………………。」

 無反応なヴィゴに、フールは顔をひきつらせる。やはり先ほどのクレディアのはまずかったか、と。
 そして何とかしようと必死に言葉を紡いだ。

「えっと……その、お礼は勿論するよ? 私たち、住むところがなくて困ってるの。お願い! 私たちの家を建ててもらえないかな……?」

 クレディアがぱんっと両手をあわせてヴィゴに頼む。しかし、ヴィゴは無言のままだ。
 するとポデルがおそるおそる無言なヴィゴに話しかけた。

「ど、どうしますか兄貴」

「………………。」

 ひたすら無言。
 「え、何か地雷でも踏んだ?」とフールは冷や汗をたらす。それはマハトとポデルもだ。ただ1匹、クレディアはニコニコとやり取りを聞いているが。
 沈黙に耐えられなくなってか、マハトが声をかけた。

「兄貴……あ……兄貴……?」

「ドテッコーーーーーツッ!」

「「「ひえ!!」」」

 ドテッコツが赤い角材を床にドンッと置くとともに大きな声をあげたため、フールまでもが悲鳴をあげ、マハトたち同様に後ずさる。
 クレディアだけは平然として、ヴィゴを見ていた。そしてヴィゴは、頷いた。

「わかった。引き受けるぜ」

 その言葉に、フールとクレディアが顔を見合わせ、フールが目を輝かせながら聞いた。

「ほ……ホント!?」

「あぁ、ホントだぜ。俺ァ大工だ。そして大工に二言はねえ」

「あ、ありがとう! やったね、クレディア!! 私たちの家が建てられる!」

「ん、よかった!」

 クレディアとフールがハイタッチする。
 そして「あ、」と何かを思い出したようにフールがヴィゴの方を向いた。

「家を建てるにはポケが必要だよね。私たちまだそんなに持ってないから、今から稼いでくるよ」

「いや、ポケはいらねぇ。その代わりとってきてほしいものがある」

 ヴィゴの言葉にクレディアとフールが首を傾げる。ヴィゴはそのまま続けた。

「この近くに“石の洞窟”っていうところがあるんだけどよ……。その1番奥深くにある石っころをいくつか取って来てほしいんだ」

「石?」

「あぁそうだ。水色をした石だからすぐ分かるはずだ。
 家を作るには材料がいる。水色の石はその材料と交換できるんだ。石の在り処は“石の洞窟”の奥まで行けば分かるはずだ」

 フールが「“石の洞窟”“石の洞窟”……」とうわごとのように呟く。どうやら覚えておくためのようだ。
 すると余計なことを喋るなと言われたクレディアが「はい」と手を挙げた。

「その石って何個必要なの、ですか?」

「そうだな……。小さいやつでも5個あれば十分だな。あと不慣れな敬語はいらねぇ」

「……ごめんなさい」

 いつになっても敬語が使えないクレディアが肩を落とす。どうやら使い慣れないらしい。
 ヴィゴはそんなクレディアを気にせず、そのまま材料についての説明を続けた。

「取って来てくれれば俺はその石をある場所に行って材料に換えてくる。そしたら家を建てることができるぜ」

「わかった! じゃあ“石の洞窟”にいって水色の石を5個とってくるね! いこっ、クレディア!」

「うん! ありがとう、マーくんに、デルくんに、ヴィゴさん!」

 また勝手なあだ名をつけたクレディアとフールが食堂を去る。
 そんな2匹を、ゾロアが見ているのに気付かずに。



 食堂を出ると、セロが真っ先に話しかけてきた。

「おぉっ、どうだっただぬか?」

「大丈夫。快く引き受けてくれた。“石の洞窟”って場所にいって、頼まれた物を取って来れば家を建ててくれるって!!」

「そうだぬか。それはよかっただぬ! “石の洞窟”ならこの先の十字路から行けるだぬ」

「え、そうなの!? 善は急げ! 早くいこっ!」

 フールが片手を上に突き上げて、進む。セロとクレディアもつられるように歩くと、ある者に引き止められた。

「あっ、あの……」

 3匹が引き止めると、ヴィゴのところまで案内をしてくれた弟子達。マハトもポデルも、気まずそうな顔をしている。
 そんな2匹の様子に気付かず、フールは首をかしげた。

「マハトにポデル。どうかしたの?」

「えっと……その…………」

 何か言おうとしているが、言えずにいる。
 クレディアとフールは顔を見合わせた。しかし2匹は何か言おうとしては口を開き、閉じるを繰り返している。

「もしかして、伝え忘れたことでもあったとか?」

「い…………いや、いいんです」

「……すまん。なんでもない………。頑張って、行ってきてくれ」

「うん! ありがと! じゃあもう行くね!」

 ニコリとフールが笑って、そして3匹は宿場町を後にする。
 苦々しい顔をしている、大工の弟分たちを残して。

■筆者メッセージ
メリークリスマス! いや、本編と全く関係はないんだけども言いたかったんです。

クレディアはとにかく天然な子どもっぽい感じで、フールはさり気に毒舌なちょっとヘタレな感じです。
そしてなかなか進まない。早く洞窟に行け←
アクア ( 2013/12/25(水) 23:08 )