夢と星に輝きを ―心の境界―








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1章 星の欠片
5話 宿場町にて
 耳に何かの足音が入ってきて、クレディアはゆっくりと目を開けた。

「ん……?」

 ぼけーっとしながらクレディアは前を見る。しかし寝ぼけているからか、焦点があっていない。
 するとクレディアはふるふると首を横にふり、頭を覚醒させた。そして隣を見ると、規則正しい寝息をたてているフール。あまりに無防備な寝顔にクレディアは笑ってしまった。

 そして自身の手を見る。見慣れた人間の手ではなく、緑色をしたツタージャの手だ。
 それを見てクレディアは苦笑をし、右手に巻いた薄ピンク色のリボンをぎゅっと握った。

(私、本当にポケモンになっちゃったんだ……。夢じゃ、なかったんだなぁ)

 クレディアは頭の片隅で「昨日のことが夢のようだ」と考えた。
 しかし目が覚めてもポケモンの姿ということは、夢ではないということ。本当にポケモンになって、この世界にいるということだ。

 するとクレディアが目を覚ました原因の足音が近づいてきていることが分かった。クレディアは足音が聞こえる方を向く。
 暫くすると足音の正体が見えてきて、クレディアは笑った。

「おはよう、セロさん」

「ん〜っ、おはよう。よく眠れただぬか? フールはよく眠れてるみたいだぬが」

「私はよく眠れたよ。あと初めての野宿っていうのが楽しかった。でもフーちゃんは寒かったみたいで何度か身震いしていたけど……」

 そんな会話をしていると、フールが目を開いた。そしてクレディアをセロを見て、寝ぼけ声で首を傾げた。

「くれでぃあ……? せろ……?」

「おはよう、フーちゃん。もう朝だよ」

「おはようだぬ。様子を見にきただぬ」

 フールは「おはよう……」とまだ眠そうな声で返し、欠伸をしてから目をごしごしと擦る。気を抜いてしまったら寝そうな感じだ。
 そんなフールを見てクレディアは笑い、そして問いかけた。

「フーちゃん、今日はどうするの?」

「ふあ……家、たてるよ。寒いから。風が遮るものがないと、さすがにキツイし」

 もう一度大きな欠伸をしてから、フールはきちんとクレディアの質問に答えた。
 するとセロがそれを聞いて「それなら」と言った。

「宿場町に大工がいるから、頼むといいだぬ。その大工なら家を建ててくれるはずだぬし、幸い宿場町はすぐ近くだぬ」

「え、ホントに?」

「本当だぬ。ちょっと会ってみるだぬか?」

 セロの言葉に、フールはきらきらと目を輝かせた。どうやら眠気は吹っ飛んだらしい。
 クレディアはよく分かってないようだが、ニコニコと笑っていた。

「うん! その大工さんに私たちの家を建ててもらおう! いいよね、クレディア」

「私はよくわかんないけど……フーちゃんがそれでいいなら、私もそれでいいよ」

 それを聞いてセロが来た道を引き返し始めた。クレディアとフールはセロについていく。
 そこで何故か「こっちだぬーん。ぬーん♪ ぬぬーん♪」とセロが意味不明なことをいいながら通るので、クレディアも真似て「ぬーん♪ ぬぬーん♪」と言いながら通っていった。フールだけ気まずそうだったのは誰も知らない。
 すると急にセロが立ち止まった。そこは十字になっている道だった。

「この街道は旅をするポケモン達がたくさん通るんだぬ。んでそのポケモン達が休む場所として宿場町が作られたんだぬ」

 そしてセロは「こっちだぬ」と行って再び歩き始めた。

 少し歩くと、沢山のポケモンが賑わっている場所についた。
 その場所は綺麗に済んだ水が流れ、店がいくつかあり、緑が沢山ある。とても綺麗で、自然豊かなところであった。

 セロは立ち止まり、店などを見ながら言った。

「ここが宿場町だぬ」

「へぇ〜。もっとのどかな所かな、って思ってたけど、賑わってるんだね」

 フールが素直な感想を漏らす。クレディアは目を輝かせて宿場町を見ているが。
 するとセロが2匹の方を向いた。

「この宿場町は水が綺麗なことで有名だぬ。訪れたポケモン達はここの水を飲んで旅の疲れを癒すんだぬ。だからみな集まりやすいのかもしれないだぬ」

「ふわぁぁ……すっごいいい所だ! 絵本にでてきそう! ここで休んだら疲れなんてぜーんぶ吹っ飛んじゃいそうだね!」

 クレディアが興奮冷めぬといった様子で言う。様子を見るからに気にいったらしい。キョロキョロと宿場町を見渡している。
 するとセロが「設備も色々あるだぬ」と言って説明しはじめた。

「あの紫と黄の箱は預かりボックスといって、道具やポケを預けたり取り出したりできるんだぬ。そしてその隣にあるのがカクレオン商店。色々な道具が買えるだぬ。
 他にも色々な設備や食堂があるだぬ。ヌシたちも気軽に利用するといいだぬ」

「うん、ありがと。そうさせてもらうよ」

 フールがお礼を言った後、セロが動こうとすると「何すんだよ!!」という声で、賑やかだった場所が静まり返った。
 3匹がそちらの方向を見ると、ダンゴロとコアルヒーがにらみ合っていた。どうやら先ほど声をあげたのはダンゴロのようだ。

「わざとぶつかっただろ!! いてぇじゃねぇか!」

「ちょっとクチバシが触れただけだろ!? いちいち大きな声だすなよ!」

 そして2匹は「ふん!」といって別々の方向を行ってしまった。
 クレディアはその光景に顔を顰める。

(何か刺々しいなぁ……。それに他のポケモンも止める素振りを見せなかったし……ちょっと、いやな感じが、しちゃったな)

 クレディアがそんなことを思っていると、セロも少々 顔を顰めていた。

「最近みんなピリピリしているのか、ポケモン同士のいざこざが増えてるだぬ。
 聞くところによると、皆の神経がとがっているのは各地に不思議のダンジョンが広がっているせいだと言われたりもするだぬが……。本当のところはどうなんだぬぅ」

「とにかくポケモン同士が何故かぎくしゃくしてるんだよね。自分勝手なポケモンが増えてるし……さっきのいざこざだって誰も止めようとしない。
 ポケモン同士が信用できなくなってるんだろうね。皆もっと仲良くしてくれるといいんだけど……」

「ずっと、こんな感じなの?」

「最近、ね。よくこういう場面を見るよ」

 クレディアの質問に、フールが苦笑しながら答える。どことなくフールも表情が暗い。

「何となく世の中が暗いんだぬ。明るい話題でもあればいいんだがぬぅ」

 セロがぽつりと呟く。
 不意にクレディアはフールの夢の話を思い出した。フールの夢は、もしかするとこんな雰囲気を変えようと思ったのかもしれない。そう思えた。

 セロは話題をかえるために、「それはおいといて」と言った。

「本題の大工だぬ。ワシちょっと探してくるから……その間にヌシたちは町中をうろうろしてればいいだぬ」

「え、いいの?」

 セロの申し出にクレディアがきょとん、として問う。セロは笑顔で「うぬ」と頷いた。

「来たばかりだぬし、色々と見ておいた方がいいだぬ」

「ありがと、セロ! じゃあ遠慮なくウロウロさせてもらうね! いこっ、クレディア!」

「うん。ありがとセロさん。いってくるね!」

 2匹はセロに手をふり、宿場町へと走る。クレディアもフールも、新地に踏み込んでウキウキしているのだろう。
 セロはそれを見て「元気がいいぬぅ」と呟いた。

アクア ( 2013/12/22(日) 23:27 )