1話 夢のような出来事
ふわふわとした、不思議な空間にいた。見たことない場所にいる。知らない場所にいる。
でも不思議と危ない感じはしなかった。何だか、安心するような、温もりがあるみたいな、そんなところ。私の直感だから、本当に危なくないかは分からないけれど。
でも、本当に、ここはどこだろう?
見たことのない場所。でも私は外に出た覚えはこれっぽっちもない。
そこではたと気づいた。
見たことのない場所にいるんだから、ここは夢の中なのかもしれない。だったら納得がいく。そっか、だから見たことがないんだ。
すると何処から、何か微かに声が聞こえた。そんな、気がした。
ただ本当に少しだけだったので、気のせいだったのかと首を傾げる他ない。
すると、また声が聞こえた。今度はもう少しはっきりと。
でも何を言っているか分からなかった。けどどこからか声が聞こえてくる。よく聞いてみると、名前を呼ばれてる感じだった。……どうして私の名前を知っているんだろう。
《……さ……。く……れ……さん。貴女は……今、声をきいている貴女は……もしかして……人間、でしょうか?》
はっきりと聞こえる。うん、と声をだそうとするが、声はでていない気がする。夢の中だからだろうか。
《もしそうであればお願いです。私たちの世界を……ポケモンの世界を助けてほしい》
ポケモンの、世界? どういうことだろう。今の世界にも、ポケモンはいるじゃないか。
もしかして、本で見た、他の世界というものなのだろうか。その他の世界の中に、ポケモンの世界というものがあるのだろうか。……ポケモンが暮らす世界が……あるってことだろうか。
《ポケモンのせか……》
すると声が途切れた。そしてピュン、という音が私の耳に届いた。
どうしたんだろう。聞きたい。どうすればいいのか。どうしたら助けられるのか。私なんかの力でできることがあるのか。私はどうすればいいのだろう。
でも声は、続きを言わなかった。
《助けてッ!!》
大きな声が、私の耳に届いた。
そしてその瞬間、映像が私の頭の中に流れた。
ピンク色のポケモンが、必死になって浮いてどこかへ向かってる。そのポケモンはどこか焦っているように見えた。
そして――その後ろには3つの頭を持ったポケモンがいた。そのポケモンはピンク色のポケモンを追いかけている。そして大きな雄叫びをあげた。
次の瞬間、その3つの頭を持ったポケモンは、ピンク色のポケモンに襲い掛かった。
そして私の目の前は真っ暗になった。
……今さっき、私が見たものは何だったのだろうか。夢、の一部?
どうすればいいんだろう。助けてという言葉と、そして映像。どういう意味だったんだろう。やっぱりこれは全て夢で、起きたら嘘のように、また同じ日を過ごすのだろうか。
するとまた私の視界が明るくなった。だが、もやが見える。
何かを映している様で、懸命に目をこらしてみると、見覚えのあるものが見えた。
頭には薄い桃色のリボン。他の人と比べて色白い肌。真っ黒の肩くらいまでのショートヘアに、水色の瞳。
もしかして、あれは自分、なのだろうか。今の自分を映しているんだろうか。
するとその姿はどんどん歪んでく。形が変わっていく。ちょっと待って、どういうこと……!?
私の体に何か起きているのだろうか。私に何が起きているのだろうか。
それはだんだん原型を留めていき、最終的には何かになった。人間じゃない、何かに。
それは緑色の体をした、ポケモンだった。首には近くには何か、黄色のものがあり、尻尾と思われる何かは先っぽが大きく開き、3つに分かれて葉っぱになっているようにも見える。
見たことがある姿は、1つだけ違う部分があった。私と同じ、水色の目をしている。
けれど姿かたちは、ツタージャ、だった。どうして、何で私の姿からツタージャになったんだろう。
すると霧が晴れたように、周りがはっきり見えるようになった。そこは白い何かで覆われ、床は青い色だった。
何だろう、これは。どこなんだろう。夢、なのかな。
「え、あ……。ど、どこだろう……?」
声がでた。よかった、自分の声みたいだ。
手を見ると――緑色の物体が見えた。あれ、私は自分の手を見たはずなのに。
ちょっと前にいってみて、青い床を見る。すると私の姿が映し出された。おかしい。
「あ、れ……? 待って。いくら私の肌が色白いからって、緑色に変色はしないはず、だよ……?」
そうだ。確かに私は自分で見て腹ただしいくらい色白い。それは仕方ないことだけれど。でも、それでも緑色に変色するわけはないのだ。……どういうことだろう。
それに、体全体がまずおかしい。ツタージャになっている。さっき見たツタージャに。
おかしい。私じゃない。けど、この床は私を映している。おかしい。
すると、青いところが1番濃いところが光った。そしてその光のところには、私の大事な薄い桃色のリボンが落ちていた。
そして直感的に思った。あの「助けて」という声があそこから聞こえたって。
でも、ポケモンの世界を助けてって言っていた。もしかしたら、あそこからいけたりするのだろうか。……そんな、夢みたいなことがあったりするのだろうか。
するとリボンが光に吸い込まれるように、ズルズルとどこかにいきそうになっていた。
「ちょ、ちょっと待って! それは私の大切な……!」
慣れないくせに走り、リボンを掴む。そして私が光に近づいた瞬間、その光がもっと強い光を発した後、辺りが暗くなった。しかし私はそれどころじゃなかった。
私は相変わらずリボンを引っ張っていた。
「ほ、本当に返して! これは私にとって大切な物……」
必死になって光に呼びかけている私を無視し、何故か辺りが思いきり光った。それはとても強い光だった。
まずい、目を開けていられない。だけどリボンはしっかり持った。
すると下から何かに吸い込まれるように、私は浮遊感に襲われた。
「へ、きゃぁぁぁぁぁあぁぁ!?」
何だかよく分からないけれど、私は落ちてるみたいだ。