夢と星に輝きを ―心の境界―








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1章 星の欠片
14話 押して駄目でも押せ
「ヴィゴさんっ、これは此処でいいですかー?」

「適当にそこらへん置いとけ」

「わぁぁぁぁ、クレディア駄目だってば! 危ない、危ないっての!」

 蔓で木材を運んでいるクレディアに、フールは慌てて駆け寄っていく。いくら蔓で運んでいるとはいえ、クレディアはふらふらとしていてかなり危ない。
 ヴィゴと弟分2匹は黙々と家を建てている。クレディアとフールはその材料を運んだりするのを手伝っていた。

「いま終わった……って、何だこの状況」

 そして、あの騒動に巻き込まれた御月も手伝っていた。ただ御月は食堂でのバイトがあるので、それが終わってからだが。
 クレディアは蔓で持っていた木材をおき、そして御月に話しかけた。

「みっくん、お疲れさまー! 見てみて、家っぽくなってきたよね!!」

「あー……そうだな、もう反応するのもダリィわ。で、後は何を運ぶんだ?」

「向こうにまだまだあるって」

 フールが指さした方にあるのは大量の木材。思わず御月は顔をひきつらせた。そして「これもっと人手ふやした方がいいんじゃねぇの」と呟いた。
 それに、いち早くフールが反応した。

「セロが手伝ってくれてるだけマシでしょ。1匹でこんだけ木材集めてきてくれたんだから。今も集めてくれてるし」

 そう、フールが言うとおり、セロもこの家作りに協力してくれている。嬉々してセロに知らせると、「手伝う」と言ってくれたのだ。
 今は7匹で家を建てている。人数が少ないので作業も難航しているが、それでも家は確実に完成に向かっていた。

 積まれた木材に近づき、フールはできるだけ軽めの物をクレディアに渡す。そして自身の分と御月の分は適当に取った。そしてまた作業場に向かって歩いていく。

「ていうか……御月って何でバイトしてるわけ? ポケがそんな必要なの?」

「は?」

「あの水色の石のときだってさー」

 そう言いながらフールは少し前のことを思い出す。
 それは、ヴィゴを説得し、家を建てることになったときにした御月との会話。


〈ていうか……御月は結局なんにも得してないよね?〉

〈いや、得はした。水色の石。あのまま広場でヴェストを見かけなきゃ、俺が取った水色の石をお前らに渡してヴィゴに頼みに行ってやろうとか思ってたんだけど……その必要はなくなったからな。
 これは俺が売ってポケにする。得は、してんだよ〉

〈はぁぁぁぁぁぁ!?〉


 そんな会話。水色の石をフールは盗まれてしまったが、御月は盗まれていなかったのだ。
 もともと、あの水色の石は家を建てるという条件で取りにいった物。しかし御月は家を建てる目的もなかった。そもそも、フール達に付いて行ったのはヴィゴとヴェストを成敗するためだった。つまり、別に水色の石はいらなかった。
 会話の通り、本当は御月はフール達に渡して、まさか持ってくると思っていなかったであろうヴィゴに渡してどう行動するかを見たかったのだ。
 しかし、結果的に問題は解決し、御月の手元には水色の石がある状態で終わった。

「あれって売ったら結構なポケになるんでしょ? なのにバイトしてポケ稼ぐって……何? ポケ好きなの?」

 結局のところ御月は石を売った。それでポケは稼いだはずである。しかし御月は家を建てる手伝いはするものの、バイトをおざなりにはしなかった。
 すると御月は「あー……」と言葉を探した。

「ポケ好きじゃねぇよ。ただ……俺、っていうか、もっと別のところに必要なんだよ」

「ふーん。……ま、いいけど」

 あまり話したそうな雰囲気ではなかったので、フールはその話題を打ち切った。すると「ふわぁ!?」という声とともに、クレディアが転んだ。
 それを見て、フールと御月はため息をついた。

「これから、って……大丈夫かなぁ」

「……とりあえず目の前の作業に没頭した方がいいんじゃねぇの」

 いたた、と言って起き上がるクレディアはそんな会話には気付かない。
 ヴィゴの一件で何かとすごいことが証明されたクレディアだが、やはり普段はそんなもの微塵も考えられない。相変わらず天然発言は続いている。

「家を建てたら、ちゃんとこれからの事を考えなくっちゃなぁ……」

 自分の夢のためにも。
 そう心の中でフールはつけたし、作業に戻るのだった。




 作業の休憩中、食堂で食事をとっている6匹。セロは外している。
 そんな中で、食事を食べていたフールがいきなり席を立った。かなり勢いよく。

「そうだ! いいこと思いついた!!」

「おいフール。静かにしやがれ。つーかいきなり席たつな。行儀わりぃ」

「うっさいお母さんか君は」

 注意されたことが不満なのか、フールが御月を鋭く睨みながら言う。御月はそこから何か言うことはなかった。これ以上は下手に触れない方がいいと思ったのだろう。
 クレディアはゆっくりと首を傾げた。

「フーちゃん、いいことって?」

「よく聞いてくれたよクレディア! クレディアには言ったんだけど……私、仲間を増やしたい、って言ったよね?」

「あ、うんっ。ポケモンパラダイスを作るために、だよね」

「「「「ポケモンパラダイス?」」」」

 話についていけない男4匹が首を傾げた。
 するとフールは待ってましたと言わんばかりの勢いでポケモンパラダイスの説明をしだす。若干だが逃げ腰になっている男どもに気付かず。
 その間、クレディアは呑気に料理を食べていた。

「ん〜っ、美味しい!」

 クレディアが食べているのはリンゴのパイ。よほど美味しいのか、それともクレディアが食べるときいつもそんなんなのか、頬が緩みまくっている。普段から緩いのでかなり情けない顔だ。
 一口一口クレディアは小さく、そしてじっくり味わって食べる。そのため他より遅れていた。今はフールの力説を聞いているため、食べる手は止まっているが。

「で、そんな楽園みたいな場所がポケモンパラダイス! オッケー?」

「は、はぁ……大体は」

 フールの説明が終わったようで、ポデルがぎこちなく頷いた。力説された4匹は少しげんなりした顔だった。
 それにさえ気付いていないのか、それとも無視しているのか、フールは続けた。

「そのためにはやっぱり仲間が必要でしょ。私とクレディアだけじゃ到底できそうにないし……」

「そりゃそうだ。お前らだけでできたらすげぇわ」

「御月ほんと電気あびせるよ? っと、それはおいといて。そこで私は名案を思いついたのです」

 いきなり敬語になったフール。しかしそんなことは誰も気にしていない。
 ただフールが言う名案とやらには食いついたようだ。そして、代表してヴィゴがフールに聞いた。

「で、その名案とやらって?」


「うん、御月を仲間に引き入れようと思って!!」


「ぶっ!!」

「汚ぇっ!!」

 いきなり出てきた自身の名に御月が驚いて、飲んでいた水を吹く。マハトは素早く目の前にあった料理を退けた。見事な反射神経である。
 フールはそれさえも気にしていないといったように続ける。

「この一件で御月がどんな奴は分かったし、知ってるのなら安心でしょう? だから名案だと思って」

「おい、ふざけんな。俺はやらねぇぞ」

「いやいや、君さっき私たちだけじゃできないって言ったよね? なら加わってよ! 私たちを助けると思って!!」

「もう散々助けただろうが! これ以上俺に助けを求めんじゃねぇ!!」

 御月の言い分は確かだった。
 ヴィゴとヴェストの一件も、御月は手助けをした。家を建てるのも自主的に手伝っている。会って間もない赤の他人だというのに、御月は何かと世話を焼いていた。
 そんな御月を見ながら、マハトがぽつりと呟いた。

「御月って、お節介だよな」

「誰がお節介だ!」

「言い方を変えれば……世話焼き、ですよね」

 ポデルが苦笑しながら言った言葉に、意味をよく理解していないクレディア以外の全員が頷いた。
 すると御月は心底嫌そうな顔をし、台拭きで濡れてしまった机を拭きながら反論した。

「好んで世話なんて焼いてねぇっつうの。今回はたまたまだ。家建てんの手伝ってんのだって、物事の最後を見てぇから手伝ってるだけだし」

「それを世話焼きって言うんじゃ……」

「とにかく! 俺はこれ以上お前らに必要以上に関わるつもりはないと断言する!!」

 バンッ、と机を勢いよく御月が叩いた。クレディアがビビってびくりと体を揺らすと、御月は「わ、わりぃ」と謝った。
 そして今度はフールが不満そうな顔をする。

「物事の最後を見届けたいんだったらポケモンパラダイスができるまで見届けてよ」

「知るか。俺には関係ないね」

「チッ、なかなかにしぶといね君……」


「別にいいじゃないか」


 いきなり入ってきた大人の女性の声に、御月以外が目を丸くする。
 ただ御月は誰だか分かっていた。顔を顰めて、そちらに、この食堂の主のスワンナに抗議の声をあげた。

「レアさん……。俺ほんとコイツらと関係ないって」

「どうせこの食堂も暇なんだ。手伝ってやったらどうだい」

 「あー、もう」といった顔で御月が頭を抱える。どうやって反論すればいいか分からないようだ。
 会話を聞いて、フールはふと思い出した。そういえば御月はこの食堂でポケを稼ぐためにバイトをしていたな、と。
 するとスワンナのレアがクレディアとフールにむかって話しかけた。

「私はこの食堂と宿の主、レア・アウィヌ。種族はスワンナだよ」

「あっ、フール・ミティスです!」

「クレディア・フォラムディ、です」

 礼儀正しく、2匹が自己紹介をする。レアはにこりと笑うと、御月の方に再び視線をむけた。

「家だって今建ててるとこなんだろう? 一緒に住ませてもらえばいいじゃないか。宿代が浮くよ」

「嫌だし! ていうかバイトが減るわ! そしたらバイト代が減る! つーかやらねぇ!!」

「バイトしなくても、冒険してればポケぐらい拾える。バイトは暇なときにやりゃいいさ」

「冒険っつっても、コイツらの取り分もあるんだからそこまで無ぇだろ!」

 御月が口調を強くして反論する。かなり嫌がってるらしい。
 フールは御月を横目で見た後レアに話しかけた。

「御月は、宿借りてここに住んでるんですか?」

「あぁ。急に来たから家なんて建ててないし、家も遠いほうにあるらしいから。宿代はバイト代から差っ引いてんのさ」

「へー。じゃあポケが必要な御月くん! あの家に住んだらタダ! だから私たちの仲間になろう!!」

「嫌だっつってんだろうが! お前まともに話きいてんのか!?」

 御月がしつこく勧誘してくるフールに怒鳴る。
 すると、ゆっくりと食べていたクレディアが口を開いた。

「みっくんがいれば冒険も楽しくなるし、百人力だよね」

「おい、んな言葉で俺はのらねぇぞ」

「バイトを大切にしてるんだったら、バイトがなくてみっくんが暇なときに来てくれるだけですっごい有難いと思うよ?」

「俺は必要以上にお前らと関わりたくねぇの! お前も話きいてんのか!?」

「うん、聞いてるよ? みっくんがバイトをどれだけ大切にしてるかの話でしょ?」

「いやちげぇよ!!」

「あれ?」

 クレディアとの会話が一通り終わってから御月は「はぁぁぁ……」と大きいため息をつく。マイペースなクレディアとの会話には、結構な気力が使われる。
 しかしフールとレアは止まらない。

「じゃあポケの取り分は、ダンジョンで拾った奴の物でいいじゃん! そしたら御月が稼ぎたい放題だね!」

「何で俺が仲間になること前提で話が進んでんだよ!?」

「まあいいじゃないか御月。バイトは暇なときにこればいいから。クレディアとフールの面倒みてやんな」

「レアさん!!」

「まだ来てばっかりで慣れてないんだ。知ってる奴が近くにいた方が安心できるだろう?」

「いや、だから……」

「口だし無用。クレディア、フール、御月のこと頼んだよ。口は悪いけど面倒見もいいし優しい子だ。困ったことがあったら遠慮なく頼ればいい」 

 クレディアとフールが顔を明るくさせる中、逆に御月は表情を暗くし、そして頭を抱えた。ヴィゴたちが哀れんだ目で見ているが、気付いていない。

「はい! ありがとうございます!!」

「ありがとう、レアさん! よろしくね、みっくん!!」

「俺の権利はどこいった……」

 こうして晴れて(無理やりではあるが)御月が仲間になった。

■筆者メッセージ
誰かフールを応援してあげて。
あと1話で1章がやっと終わります。長かったなぁ……。
アクア ( 2014/02/05(水) 20:22 )