? 月 ?日 どうか願いを
『……ねぇ、聞こえてる?』
最初、そう話しかけられた。
いや、誰だよアンタ。そう言いたくなったけど、言えなかった。聞いた事がある、声だったから。
『私も貴方ともうちょっと喋りたいけど時間がないから……手短に話すね。
まず、ごめんなさい。貴方には辛い思いをさせてしまった。あぁ、でも貴方は覚えてないのかな』
覚えてねぇよ。覚えてないけど、でも知ってるんだ。知ってるはずなのに、分からない。知ってる人なんだ。大切な人なんだ。俺の、大切な。
だから、そんな辛そうな声で話さないでほしい。なぁ、そんな声で話す人間だったか?
『……やだな。そんなに暗く話してるつもりはなかったんだけど』
くすくすと可笑しそうに笑う。そうだ、いつもこんな感じで、それで俺とこの人と――。
『貴方は、あの世界にいって、たくさんの友達をつくった。……そのお友達が今、悲しんでいる』
さっきとは打って変わって、真剣な声で話しかけてくる。
友達、と言われて真っ先に思い浮かぶのが、ずっと一緒に冒険してきたシィーナと、翡翠と、そしてリフィネ。
アイツらが、悲しんでいる? 冗談だろ。翡翠は分かるとして、リフィネとシィーナとか考えられない。こんな皮肉を言えるほど、俺はまだまだ余裕なのか。
『貴方らしい。でも、悲しんでいるの。貴方がいなくなって、お友達が、悲しんでいる。貴方にとって、かけがえのない友達でしょう?』
……そんなに、大事に思った覚えはないんだがな。あぁ、もう何も言わないでおこう。からわれそうだ。
『よくわかってるね。うん、ツンデレだもの』
……そんなことを言うのはアンタぐらいだ。
懐かしい。そんな感じがする。でも、誰かは分からない。でも、本当に懐かしくて、無性に泣きたくなった。本当に、泣きたくなった。
『……もし、貴方が強く、本当に強く……そのかけがえのない友達と一緒にいたいって、そう望むのなら、また会うことができるよ』
俺が望んだら、また、アイツらに…………会うことが、できる……?
会うことができる……? そんなことが、本当に、可能なのか……? もし、本当だった、ら……。
『迷わないで。今の貴方が望むようにしたらいい。……貴方が生まれた世界は大丈夫だから、それは考えず、今の貴方の気持ちを大事にしてほしい。
あの子は、もう大丈夫だから。だから、気にしないで、自分の気持ちを優先してほしい』
…………………………。
『後悔しないように、貴方がしたいように』
どんどん、声が遠くなっている気がする。
待ってくれ……! 俺は、まだ、まだ話したいんだ。アンタは、夢の中にいた――
『ごめんね、蒼輝くん。さよならだ。……元気でね』
そのまま、優しい光に包まれた。