10月20日 「束の間に見えた残像」
大雪の中を、今日は歩いた。あまり気分が優れないので、本当に簡潔にあったことを書こう。
雪山を歩いている最中、サーナイトが俺の前に現れた。
リフィネとソレアには見えていないようで、俺は1匹だけ何もない場所に話しかけていたらしい。俺は一応サーナイトと話していたのだが。
サーナイトは「このまま真っ直ぐ行けば“氷雪の霊峰”という山脈の頂上の奥に……そこに、キュウコン伝説にでてきたキュウコン……ロフェナさんがいます」と言った。キュウコンとは、キュウコン伝説にでてくる、あの。
「ロフェナさんはあなた方を待っています。気をつけて……」そう言って、消えてしまった。どうせならサーナイトに聞いておきたかったのだが、教えてくれなかった。
リフィネとソレアは怪訝そうな顔をしていた。それもそうだろう。1人で何故か何もないところに話しかけていたのだから。
そして2匹に“氷雪の霊峰”に言ってキュウコン伝説にでてきたキュウコンのロフェナと話したい、という話をした。リフィネはキュウコンの存在に驚いていて、ソレアは「……貴様に従おう」と言った。とりあえず、目的地は決まった。
これで、逃亡生活ともオサラバできるかもしれない。
しかし此処までは気分が明るかったが、その後の出来事で、一気に気分が優れなくなった。
雪道をずっと歩いていたせいか、リフィネはずっと「寒い」と連呼していた。俺も寒かったが、リフィネは草タイプなので俺より寒いと感じていたのだろう。
とりあえずスカーフやら、辛いものを渡して少しでも暖かくなるようにしていたが、限界だったらしい。
リフィネが、途中で倒れた。
そこである光景がフラッシュバックした。
不意に、浮かんだ光景だった。
おそらく、夢ででてくる女の子だった。その子が倒れていて、口元には赤い何かがあった。
俺はただ、何もできず、それを呆然と見ていることしか――。
その光景が浮かんだ瞬間、一気にパニックになり、過呼吸をおこした。
ソレアが何とか「息をゆっくりして落ち着け」と落ち着かせてくれたので何とかなり、そのまま雪が凌げる場所までリフィネをソレアがおぶって移動した。
今は火をダンジョンで拾った枝に灯し、暖かくしている。リフィネは目を一度 覚ましたが、すぐに寝てしまった。疲れていたのだろうか。
ソレアは「とりあえず今日は此処で休もう」と言い、今は隅で丸まって寝ている。
俺は、あの光景が今も脳裏にこびり付いていて、いい気分じゃない。
とてつもない恐怖を覚えた。今の俺は、初めてかもしれない。こんな恐怖を覚えたのは。
……明日は“氷雪の霊峰”に向かう。もう、あの光景について考えるのはよそうと思う。