輝く星に ―闇黒の野望― - 第4章 来訪する珍客
48話 最後の間
 倒れていたレジスチルが白い光となる。そして『シリウス』の体に入っていき、壁がガコンッと音をたてて開いた。

《番人ノ許シヲ得タ。力在リシ者タチヨ、最後ノ間ニ進メ》

「…………最後?」

 レジアイス、レジロックとは違う言葉。
 スウィートがその言葉の真意を確かるため繰り返したのだが、返事は返ってこなかった。
 しかし代わりに3つの光がふわりと浮いた。それは光からポケモンになると、地面にドサリと落ちた。そのポケモンに『シリウス』は見覚えがあった。

「チャ、『チャームズ』!?」

「うぅっ……」

 そう、光から現れたのは『チャームズ』だった。ボロボロになっている。

「え、っと……とりあえずシアオとアルはこれを食べていおいて!」

「わっ、と」

「ん、了解」

 スウィートは慌てながらもシアオとアルに粗雑にオレンの実を渡し、『チャームズ』に駆け寄った。フォルテもそれについていく。
 駆け寄ったはいいが、スウィートはどうしようとおろおろし始めた。

「オ、オレンの実を渡した方がいいのかな……? で、でも気絶してるし……」

「揺すりゃあいいんじゃないの? それに私たちの道具をあげる必要なんざないわよ。ほら起きなさい!」

 フォルテが乱暴に『チャームズ』の、一番近くにいたラミナの体を揺する。
 すると眉をひそめたラミナが目を開けた。

「うっ……貴女たち……『シリウス』…………? っ……私、一体……」

 頭に手を添えながら、ラミナがゆっくりと起き上がる。そしてすぐ隣にいる仲間を見て、何かを思い出したようにハッとした。


「そうだわ、ここでレジスチルと戦っていて……チダがピンチになって……! …………。そこから先は覚えていないわ……」

 ラミナの呟きで起きたのか、チダもウァーサもうめき声をあげながら、起き上がった。
 それを見て「大丈夫?」とラミナは確認をとってから、近くにいるスウィートとフォルテににこりと微笑んだ。

「『シリウス』が私たちを助けてくれたのね。危ないところを助けてくれてありがとう」

「いっ、いえ……」

 本当に綺麗なポケモンだなぁ。スウィートはそう思った。
 会話から察したのか、チダが肩をすくめた。

「『シリウス』には借りができちまったね……。もし助けてくれなかったらあたいたちおしまいだったよ」

「そうですね。本当に、なんとお礼を言えばよいか……」

「それより怪我は大丈夫なんですか」

 どうやらオレンの実を食べ終わったらしいアルが近づいてきた。シアオの怪我もほぼ治っている。
 アルの言葉に、チダはにやりと笑って見せた。

「大丈夫だよ! そこまで柔じゃないしね!!」

「心配してくださってありがとうございます」

 本当に大丈夫そうな『チャームズ』に、アルは「そうですか」と言って、これ以上は何も言わなかった。本人たちが大丈夫というのなら大丈夫なのだろう。
 スウィートが戸惑っていると、急にラミナが「そうだ!」と声をあげた。

「そうだ!! この先『シリウス』に協力させて! 私たちの探検はもう失敗したようなものだし……。大丈夫よ、お宝を横取りなんてしないから!!」

「え、えっ……?」

 本当に急なことにスウィートは何もできないし何も言えない。
 シアオは「おぉっ……!」と仲間が増えることを純粋に嬉しんでおり、フォルテは少し不満げに、アルはもうどうでもよさげにため息をついた。
 しかし『チャームズ』は気にしない。
 『シリウス』もかなり重度のマイペースではあるが、この『チャームズ』も負けず劣らずだ。

「さぁ行きましょう! ゴールは近いわよ!!」

(な、何か決定している……!!)

 ぐいぐいと『チャームズ』の面々に引っ張られながら、『シリウス』は奥へと進んでいった。


 少し進むと、またしても広いフロアに出た。
 しかしレジアイスたちとは少し違う、かなり広く、石像が何体もおいてある、いかにも遺跡といったような雰囲気の場所だ。
 それにシアオが顔を青ざめさせた。

「ここでバトルとかやらかしたら罰があたりそう……」

「不吉なこと言うと燃やすわよ」

「何で日に日に理不尽になっていくの?」

「お前ら煩い」

 『シリウス』の軽い漫才(本人たちにその気はない)は健在だった。
 スウィートはきょろきょろと辺りを見渡し、何かないか探す。レジスチルが「最後の間」だと言ったのだから、何かあるはずだと。
 しかし石像以外、何か不審な、気になる点はない。

「サワムラーとドータクンの石像が4体ずつ……。真ん中にいる大きいポケモンは何なんだろう……?」

 石像は計9体。
 真ん中に大きい、見たことのないポケモンの石像。その左右には交互に2体ずつサワムラーとドータクンが横に並んでいた。

「かなりリアルに作られているわね……。何か、今にも動き出しそうだわ」

「ちょっと気味悪いね……」

 それぞれ思ったことを口々に言っていく。
 アルはじっと大きな石像を見ており、そして眉をこれでもかというほどしかめた。

「この石像……レジアイスたちに似てるな。顔に点があるところとか……何ていうか、体の造りが」

「確かに……。それじゃ、この石像も番人だった、ってことかな」

「どうでしょう。ラミナの「今にも動き出しそう」というのは、冗談ではすまない可能性があると思いますよ。石像もかなり不自然ですし…………何より、最後の間で何も起きないのがおかしい」

「この石像が一番怪しいって思うのが妥当、か」

 ふとスウィートが調べようと、石像に手を伸ばした時だった。


《大地ニ眠リシ財宝ヲ我ガ者ニセントスル者ヨ》


 無機質な、低い音。どこからか響いた。
 『シリウス』と『チャームズ』は反射的に石像から飛び退き、真ん中に移動する。そして警戒しながら様子を窺った。

 すると先ほどまで見ていた大きな石像に、白いふわりとした光が集まってきた。その光がその石像を包むと、それは、色を持った。体温を持った。意思を、持った。
 それは、ポケモンとなった。

「我ハ最後ノ番人、レジギガス。全テノ力ヲ我ニ示セ」

 言葉を合図のように、レジギガス同様に、サワムラーとドータクンの石像も光に包まれる。そして、それは動き出した。
 その様子を見ながら、スウィートは苦笑した。

「ホントになっちゃったね」

「勘弁してほしい……」

「よっし、頑張るぞー!」

「うざい黙って耳障りよ」

 『チャームズ』も楽しそうに笑った。

「さぁて、はりきっていきましょう!」

「ここは協力ですね」

「アタイたちの腕の見せ所だね!」

 場に似合わない、楽しそうな会話を聞きながら、スウィートはアルをちらりと見た。それにアルがこくりと頷く。

「あぁ。……とりあえずシアオ、フォルテ、お前らは、喧嘩をせずに、あのデッカイのをやれ。『チャームズ』さんは右のサワムラー2匹とドータクン2匹を。俺とスウィートは左」

「わかったわ。終わったら加勢するわね」

「ねえ何で喧嘩をせずに、って強調したの。僕じゃないよ、フォルテが喧嘩をうってくるんだよ!!」

「ふざけんじゃないわよ! アンタの方が先でしょうが!!」

「どっちもどっちだ」

「お願いだから、バトル中に喧嘩しないでね……?」

 スウィートのその言葉は聞こえているのか聞こえていないのか。
 色々と不安を残しながら、バトルは始まった。

■筆者メッセージ
ダンジョンカット。ごめんなさい、番人の洞窟ダンジョン飽きました←
とりあえず……チャームズの戦闘シーンは書きません。書いてたら私のHPがゴリゴリ削られていくんです……。すみません。
ていうか凄く短くなった。
アクア ( 2014/10/24(金) 22:55 )