輝く星に ―闇黒の野望― - 第3章 シークレット
32話 氷塊の洞窟
「これは……」

 “吹雪の島”にあった穴を抜けた先にあった、『シリウス』の前にあるもの。
 それはデカイ氷の壁。そしてその壁には大きな亀裂が入っており、先へと進むことが可能になっていた。

「氷の洞窟か……。これはさっきより寒くなりそうだな」

「えぇぇぇ……これより寒いの……?」

「これは確かに……ちょっとやそっとじゃ着けなくなってるね」

 探検家の忍冬 暁≠フ捜索の打ち切りは納得できないが、救助隊が来れなかったのも理解できる。
 ふぅ、とスウィートが息を吐くと、当然のように白い息が口から漏れる。今でも十分寒いというのに、この先はもっと寒いということだろう。これはかなりキツいことになりそうだ、スウィートは頭の片隅でそんなことを考えた。

「……長居するより、早く忍冬 暁≠ウんを救助して出よう。長くいたら体を壊しちゃ、くしゅっ」

 スウィートが言葉の途中で小さなくしゃみをする。どうやら相当寒いらしい。
 うぅ、と言いながらスウィートはスカーフに顔を埋めるが、寒さが和らぐ気配はない。
 するとシアオがスウィートの言葉に同意した。

「だよね! 僕も超そう思う!! 早く行って早く帰ろう! 寒い!!」

「これだからヘタレは……」

「いや、ヘタレ関係なくない!? ぶえっくしっ!!」

「汚っ! くしゃみするならせめてスウィートのように淑やかにしなさいよ! アンタがやったら気持ち悪いだけだけど!!」

「何この言われよう!!」

 スウィートからタオルを渡され、シアオが鼻水をかむ。それを見ながらアルはため息をついた。

「とりあえずスウィートの言うとおり、長居禁物だ。早く行くぞ」

「うん」

「……シアオ、少し離れて歩きなさい。またあんなくしゃみされたらたまったもんじゃないわ」

「もう大丈夫だってば! そんな汚物みたいに扱わないで!?」

 そんな言い合いをしつつ、『シリウス』は“クレバスの洞窟”に入っていった。





――――クレバスの洞窟 最深部――――

「……寒い」

「寒い」

「寒いぃぃぃぃぃぃぃ!!」

「うるっさぁぁぁぁぁぁい!!」

「うわっ!?」

 順にスウィート、アル、シアオが「寒い」と声をあげる。シアオはフォルテに火炎放射をされたが、何とか避けた。
 アルはもう注意するのも嫌らしく、何も言わない。スウィートも何もいえない、苦笑いもできない寒さだ。それほど“クレバスの洞窟”は冷えていた。
 しかしシアオは違うらしく、寒さを全く感じていないフォルテと言い合いをする。

「何で火炎放射うつわけ!? 何回もやるなってアルに言われてんじゃん!!」

「そのアルが今は何も言わない! イコールやってオッケー!!」

「いや、寒さで言わないだけだから! オッケーしたわけじゃないからね!?」

 懸命にシアオがツッコミを入れるが、フォルテは聞く耳をもたない。休まず火の粉をしてくるぐらいだ。シアオはそれに対応して体を捻ったりして避けている。
 それを見ながら、スウィートが白い息とともに言葉を吐いた。

「……あそこまで動き回ってたら、寒さも和らぐよね」

「いや、ダンジョン内で仲間同士で争うってのがおかしいだろ」

 1番ごもっともな指摘をアルがする。
 スウィートを先頭にして細い道を歩いていても、シアオとフォルテの言い合いの声は聞こえる。元気そうで何よりだが、バテないかどうかは非常に心配だ。
 しかし言ってもムダだろう。そんなことを思いながらフロアに出ると、スウィートは固まった。

「あ」

「げっ」

「ん? どーした――」

 言い合いをしていたシアオも、流石にスウィートとアルの異変を感じたのか、声をかけようとする。しかし、すぐに理解して止めた。
 フォルテもひょっこり顔を覗かせて、すぐさま頬をひきつらせた。

 そのフロアは、狭い。しかし、その中でポケモンが沢山いる。
 いわゆる――モンスターハウス。

 チルタリス、チルット、デリバード、ポッタイシ、ケッキング、マリルにマリルリ。

「ちょ、ちょっと狭いからキツいかな……!?」

 いつもなら戦うスウィートだが、フロアが狭すぎる。ぎゅうぎゅう詰めでは自分の技が仲間に当たる危険性が高くなる。それに自由に動けないのはスウィート達にとってやり辛い。
 スウィートの言葉を聞き、アルは勢いよく後ろを振り返った。

「シアオ! 縛り玉!!」

「オッケー! こんなときの為に装備してたもんね……!」

 ごそごそ、とシアオが鞄を漁る。フォルテが後ろから「早くしなさい!」と急かしているが、そんなものシアオの耳に入っていない。
 そして数秒、シアオが笑顔で言い放った。


「……忘れた!!」


 沈黙。全員が互いの顔を見合わせ、黙った。
 そして、

「逃げるぞッ!!」

「この役立たずのヘタレがぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 大ダッシュで後ろに振り返って逃げた。フォルテは暴言をはきながら、とりあえず全力疾走。
 しかしダンジョンにいるポケモンが逃がしてくれるはずもなく。後ろから凄い速さで追ってくる。

「ちゃんと入れとけっていっただろうが!」

「このヘタレに頼むのが間違いだったのよ!!」

「ゴメンてば! これに関しては反省してるけどヘタレはやめて!?」

「皆そんなこと言ってる場合じゃないよ!?」

 先頭はシアオ、その次にフォルテ、アルと続き、最後はスウィート。
 いちばん後ろで走っているスウィートは後ろの敵がよく見えており、追ってきているのを把握している。
 しかし意外に道は長く、フロアが見えない。
 スウィートがちらりと後ろを見ると、だんだんと追いついてきている。それを見てからスウィートは鞄からある物を取り出した。
 振り返りながら、3匹は首を傾げる。

「それは……?」

「え、スウィート。何する気?」

 アルとシアオが声をあげる。スウィートは「ちょっと、ね」と言いながらそれ――銀の針20本を握った。
 そして駆け足を少し遅くして、後ろを確認した。

「真空瞬移」

 スウィートの言葉と同時に、手元にあった銀の針が消える。
 それに青ざめながら3匹が後ろを見ると、見事に銀の針が敵ポケモンに雨のように降り注いでいるのが見えた。それに気をとられ、ポケモン達の足が止まる。
 フォルテはそれを見てから、顔の位置を元に戻し、目だけでスウィートを見た。

「……スウィート、あんがい惨いことするわね。まあいいけど」

「えっ、そ、そう、かな」

 少しショックを受けながらスウィートがそう返す。
 しかし先ほどの攻撃のおかげで、敵ポケモンの速度は確実に落ちた。すぐさま追いつかれることはないだろう。
 そのまま走り続けていると、フロアと思われる場所が見えてきた。

「よっし。とりあえず相手が出てきたところを強襲ね!」

「結構フォルテも惨いと思うんだけどなぁ……」

「は?」

「……ナンデモナイデス」

 フォルテの言葉に素直な感想を述べたものの、フォルテに睨まれてすぐにシアオは黙った。フォルテの目は怖いらしい。
 アルは少し考えた様子で、何か思いついたのかスウィートに話しかけた。
 考えを聞いたスウィートは少し驚いた様子だったが、すぐに頷いてシアオとフォルテに話しかけた。

「……………………だから、合図したらお願いね」

「了解っ!!」

「オッケー」

 そしてスウィート達が位置につく。
 フロアのど真ん中にシアオ、フォルテ。先ほどのポケモン達が出てくるであろう道の真正面から離れた場所にスウィート。アルは道から1番離れた場所に待機。そして電気を溜めていた。
 少しすると、足音が聞こえてきた。足音を聞く限り、増えた様子も減った様子もない。

「……よし」

 これならいける。スウィートは足音を近づいているのを確認しながら、てだすけを発動させた。
 それと同時に先ほどのポケモンたちが道から一斉に、飛び出すように出てきた。

「邪魔すんじゃないわよ、ヘタレ! 炎の渦!!」

「だからヘタレじゃないってば! 特大はどうだん!」

 同時に2匹が攻撃を放つ。道から出てきたばかりで、敵ポケモンは全く対応できない。
 炎の渦は途中で小さく分散し、ケッキング以外のポケモンを炎で包む。特大はどうだんはケッキングに直撃し、ケッキングはそのまま倒れた。

「2匹とも、急いで!!」

 スウィートがそれを見てから声をあげる。
 それに反応して、シアオとフォルテはすぐさまスウィートの近くまで移動した。スウィートは2匹の手をとり、姿を消す。これは真空瞬移だ。
 するとポケモンを包んでいた炎が鎮火される。マリルリとマリル、ポッタイシが水タイプの技をだして消したのだろう。その技の威力が強かったためか、チルットやチルタリス、デリバードを包んでいた炎まで消えたのだろう。
 しかし、それは好都合。そして、計算内。


「これで電気を溜めて放つのは初めてだよな――放電!!」


 敵から離れた1番位置にいて、さらに電気を溜めていたアル。その溜めてい電気を一気に放った。
 悪あがきとばかりに残ったポケモン達が技を放つが、溜められて威力があがった電気の勢いは止まらず、そのままポケモン達に直撃した。全て水タイプ、飛行タイプだったので、一撃で倒れてしまった。
 アルが嘆息をつくと、真空瞬移で上にとんでいたスウィートたちが綺麗に着地した。

「お疲れ、アル。こんなに上手くいくとは思わなかったよ」

「……あぁ。あんまりすんなり行き過ぎてビビッたけどな」

 倒れた敵を見ながら、アルが呟く。スウィートは「そうだね」と笑った。
 あぁ、何か平和な空気だ。そんなことを思いながら2匹を見ていたシアオだったが、そうはいかなかった。がしっと肩を掴まれたからだ。

「まあ、アンタが元から縛り玉を持ってきとけばこんな事にはならなかったんだけどね?」

 掴んだ主は、フォルテ。シアオがぎこちなく後ろを振り返ると、とても黒い笑みをうかべている。恐怖以外の何ものでもない。
 シアオは何とか言葉を探し、そして頭にある言葉を振り絞った。

「ア、アハハー。小さいことを気にしてると生きてけないよ、フォルテ!」

「何が小さいことだ、このヘタレェェェェェ!!」

「うわぁぁ!?」

 フォルテが容赦なく火の粉やら火炎放射やらしてくる。シアオは何とか避けるが、全てギリギリだ。
 それにスウィートがオロオロしていると、アルがため息をついた。そして頭を容赦なく殴る。

「あだっ!」

「った! 何すんのよ!?」

「とっとと行くぞ。こんな所で時間を食ってられるか」

 すると渋々といった感じでシアオとフォルテが喧嘩をやめ、歩き出す。スウィートもそれに苦笑して、歩き出していった。

■筆者メッセージ
これを書く数日前に大切なことに気付いたんですよ。
“空の頂”ちょっと遊びすぎたから、次のボス戦は真面目に書こう。そう思ってたんです。忘れてたんですよ、次のボス。……問題発覚しちゃった。どうしよう。
(3/27追記:「忘れた」になってました。「忘れてた」でした。ごめんなさい。親切に教えてくださった方々ありがとうございます)
とにかく次はボス戦です。しかし真面目に今回戦闘書いちゃったからどうしよう←
アクア ( 2014/03/26(水) 22:27 )