輝く星に ―闇黒の野望―







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第3章 シークレット
31話 探検家のはなし
「今日はどうしよっか……」

 “空の頂”を登り終わってから数日後。『シリウス』はいつものような日々、つまり探検隊としての毎日を過ごしていた。
 トレジャータウンを歩きながらスウィートがそう呟くと、案が出てくる。

「お尋ね者でいきましょう! ストレス発散に!」

「困ってるポケモンを助ける方が優先だと思う! お尋ね者は嫌だ!」

「私情はさみまくりだなお前ら」

 フォルテ、シアオの言葉にアルが冷静にツッコむ。スウィートは自身の仲間の言葉に困ったように笑うことしか出来ない。
 そして交差点までつくと、あるポケモンが『シリウス』を見て「あ」とと声をあげた。

「『シリウス』じゃないか。今日も探検かい?」

「あっ、“空の頂”登るときにいたバリヤード!」

 シアオがそのポケモン――バリヤードを指さしながらそう言う。「失礼だ」とアルによって反対方向に折り曲げられ、シアオは痛みに悶絶する羽目になった。
 それにバリヤードが苦笑しながら「ヒヤ・レンリッドだよ」と自己紹介をした。

「この前の祝賀会は大変だったね」

「ある意味で俺の黒歴史だ……」

 それを思い出しているのか、アルが死んだような目をする。「アル……?」とスウィートが目の前で手をふるが、反応はない。
 そんな2匹を無視して、シアオがヒヤに話しかけた。

「ねえ、何か面白いこととか変わったこととか知らない? 今日も今日とてやることが決まらないんだけどさー」

「面白いこと、変わったこと、ねえ……」

 シアオの言葉にヒヤが顎に手をあてて考える。そして何か思い出したように、顎から手をはずした。

「君たち、有名な探検家の忍冬(にんどう) (あかつき)≠知ってるかい?」

「あたしは知らないけど。……探検家?」

「うん。種族はハッサムでね。忍冬 暁≠ヘ世界に名をはせた有名な探険家で、探検家なら誰もが憧れる存在だったんだ」

 へぇ、とシアオが興味をもったようで声をあげる。アルも復活したようで、ヒヤの言葉に耳をかしていた。スウィートもフォルテもだ。
 ヒヤは明るく話していたのだが、「しかし」と少し暗い表情を見せた。

「南西の果てにあり“吹雪の島”を探検中に行方不明になってしまってね。彼を助けるためにたくさんの救助隊が現地にむかったんだけど、凍てつく寒さと吹雪に阻まれて、救助は打ち切られてしまったんだ」

「う、打ち切り……!?」

 スウィートが戸惑いながら声をあげる。ヒヤの言葉からすると、まだその忍冬 暁≠ヘ助かっていないという事だ。スウィートにとっては信じられないことであった。
 ヒヤはそんなスウィートを気にせずに続けた。

「まあ……もう随分と昔の話なんだけどね。でも忍冬 暁≠ヘ物凄いお宝を発見したって噂だよ」

「ふぅん……。物凄いお宝、ねえ」

 フォルテはあまり興味がなさそうで、ただ復唱するだけ。
 するとヒヤは暗い話題を何とか明るくしようと、笑顔で『シリウス』に語りかけた。

「僕は思うんだけど……『シリウス』は世界を救うぐらい凄いチームじゃないか。あれから“吹雪の島”に挑んだ探険家は誰もいないけれど、ひょっとして君たちなら行けちゃうんじゃないかな、ってね」

 そして少し茶目っ気に「それは君たちの自由だね」とヒヤは言った。
 すると普段は知らないポケモンに近づくことのないスウィートがずいっとヒヤの方に寄った。

「その、“吹雪の島”ってこの地図のどこですか……?」

「……行く気なんだ。えっとね……確か、この辺、だったかな」

 ヒヤが地図を指さす。地図でも名の通り、“吹雪の島”は氷の島として書かれている。

「“吹雪の島”で、探検家忍冬 暁≠ェ発見したお宝が見つかるといいね」

 そういって、ヒヤはトレジャータウンの方へ歩いていってしまった。
 スウィートは地図で“吹雪の島”を見ながら、「ここが……」と呟く。そんな様子のリーダーを見て、シアオが少し頬をひきつらせながら聞いた。

「スウィート……。まさか……いくの……?」

「え? うん。フォルテには悪いけれど……でも、シアオの言うとおり、困っているポケモンを助けるのが大切かなって!」

 そう思うから行こう! と意気込んでいるスウィートをみて、シアオは顔を青くした。フォルテはそれを見ながらニヤニヤとして「そうよねー。大切よねぇ」とわざとらしくシアオに話しかける。
 アルはぽん、とシアオの肩に手をおいて

「自分の発言には責任もてよ」

 とだけ言った。
 シアオは「あー……うん」と歯切れ悪く、頷いた。

「吹雪、かぁ……。絶対に寒いよ……ぜったい寒い……」

 どうやらシアオは寒いのが嫌だから、という理由で乗り気ではないようだ。“空の頂”で雪合戦をしてはしゃいでいた奴がいう事ではない。
 シアオの呟きを聞いて、スウィートは「そうだ」と言った。

「暖かい格好だったらいいよね」





――――吹雪の島――――

 最近ちょこちょこ海岸に遊びに来るラウルに頼んで、『シリウス』は“吹雪の島”についた。
 そして大きな氷や雪で固まって、洞窟のようになっている場所を見つけ、『シリウス』はそこに入っていった。辺りはかなり冷えている。

 とりあえずトレジャータウンを出る前、スウィートの言葉により、全員スカーフではなく暖かい毛糸のマフラーをしていた。ただの布であるスカーフよりは、毛糸であるマフラーの方が暖かいので少しは寒さを凌げる。
 しかしそれも少しの効果しかないのだが。

「寒いぃぃぃぃぃぃ……!!」

「だっらしないわね。つーか“空の頂”のときはあんだけはしゃいでたのに、何で今になって寒がるわけ?」

「お前は炎タイプだから分からないかもしれないが……あの時よりキツいぞ、この寒さ」

 シアオが寒さで震え、それをフォルテが冷たい目で見る。アルは白い息を吐きながら言葉をだすが、明らかに寒そうである。スウィートもフォルテにひっついて暖をとっている。
 “吹雪の島”というだけあって、かなり冷えているのだ。

「うぅ……寒いぃ……。こ、これ……忍冬 暁≠ウん、大丈夫なのかな……」

「うーん……凍死してなきゃいいけどごめんなさい嘘です」

 凍死、という言葉を聞いた瞬間にスウィートが泣きそうな顔になり、シアオはビビってすぐに謝った。そういうことをスウィートの前では言ってはいけないというのは『シリウス』の中での暗黙のルールだ。
 そしてそのままダンジョンを進んでいると、目の前に敵が見えた。

「レッツゴー、フォルテ!」

「火炎放射!!」

「危なっ!!」

 敵ポケモンを狙いつつ、シアオにも。そんな感じでフォルテは火炎放射を放った。シアオには避けられ、小さく舌打ちをして。フォルテの近くにいたスウィートは無言で離れていた。何を汲み取ったかは分からないが、予測はしたのだろう。
 フォルテの火炎放射は見事にユキワラシに当たった。
 しかし敵はまだ残っている。ゴルダックにヤルキモノ。

「……嫌なこと思い出したなぁ」

「奇遇だな。俺もだ」

 ゴルダックを見てスウィートがそう呟くと、アルが賛同の意を示した。

「みずのはどう!」

「瞬間瞬移――アイアンテール!!」

 ゴルダックのみずのはどうを避け、スウィートがヤルキモノに向かってアイアンテールをしようとする。
 しかしヤルキモノの様子を見て、咄嗟にスウィートはでんこうせっかでヤルキモノから離れた。ヤルキモノがやろうとしているのはきあいパンチ。

「やっぱ相性だよね、てだすけ!!」

 スウィートがてだすけを発動させる。
 そしてスウィートがひきつけている間に、シアオがヤルキモノに狙いを定めていた。それはアルも同じ。アルはゴルダックに標準をあわせる。

「いくよ、はどうだん!!」

「10万ボルト!!」

 勢いよく2つのものが2匹にむかっていく。
 ゴルダックは避けようとするが、アルの10万ボルトは瞬間にバラバラな方向へと分散し、ゴルダックに命中し、倒した。これはアルが成長させていたおかげのものである。
 シアオの方は、そう上手くはいかなかった。

「――きあいパンチ!!」

「えっ、ちょっ、そんなのありぃ!?」

 ヤルキモノははどうだんをきあいパンチで跳ね返してきたのだ。シアオは微塵も考えていなかった事態に顔をしかめる。でんこうせっかで慌てて避ける。
 そしてそのはどうだんはフォルテに真っ直ぐ向かっていく。

「あたしがあんなヘタレの攻撃を喰らってたまるか! もう1回跳ね返ってきなさい!! アイアンテール!」

「ヘタレ!? 今ヘタレって言った!? 聞き間違いじゃないよね!?」

 尻尾に思いきり力をため、フォルテがはどうだんを何とか跳ね返した。しかし流石にキツかったのか、フォルテが後ろに下がった。跳ね返ったはどうだんは見事にヤルキモノに命中し、倒していた。
 清清しい顔をしているフォルテに、シアオが食って掛かっていった。

「さっき僕のことヘタレって言ったよね!?」

「は? 何を今更。間違ってないでしょ?」

「間違ってるよ!? 完全に間違ってるよ!!」

「どこが?」

 抗議するシアオに、フォルテが「何言ってんの?」というような表情をする。
 それを見ながらアルが呟いた。

「寒さとか忘れて元気だな……」

「くしゅっ! うぅ、やっぱり寒い……」

 喧嘩する2匹を見ながら、スウィートとアルはマフラーに『顔をうずめるのだった。

■筆者メッセージ
章の名前が決まらないので空白にしてます。決まらないだけで、意味はないですからね!?
とりあえず吹雪の島とつにゅー。シェイミ編が長すぎてここまでくるのが凄い遅くなった気がするのは私の気のせいか。
アクア ( 2014/03/18(火) 21:55 )