輝く星に ―闇黒の野望― - 2章 家族への贈り物
16話 出発
「“空の頂”に登るにあたっての注意事項。ひとーつ」

 朝、『シリウス』が宿を出ると既に『アズリー』とクラウアと、クラウアに掴まれて顔面蒼白になっているスティアがいた。
 そして何故か非情に緩い流れでクラウアが注意事項を言い出した。

「そんじょそこらの山とは違うので準備はしっかりしておくこと」

「「はーい」」

「ふたーつ。逃げ出さないこと」

「自分の方を見て言わないでほしいのですよ!!」

 スティアが声を荒らげて言うが、それも意を受けずにクラウアは緩いままつらつらと注意事項を並べていく。

「みーっつ。スティアを頼らないこと」

「わざと!? 絶対わざとですよね!? もう自分に対する注意事項はいらないのですよ!! 自分で分かってるのです!」

 若干スティアは涙目である。それさえもクラウアは気にしていないらしい。
 スウィートは苦笑しかできず、シアオ以外はスティアに同情の眼差しを送っていた。因みにシアオは注意事項を真に受けている。

「よーっつ。ゴミは各自で持って帰ること」

「ねえ。バカにされてんのよね、あたし達 完全にバカにされてるわよね?」

「そ、そんなことないよ。……たぶん」

 自信なさげなスウィートの返答は全く参考にしてないらしく、フォルテは少しキレかけている。火炎放射を噴くことはなさそうだが。

「そして最後ー。遭難だけは避けるように。救助いくの面倒くさい」

「「「「それが1番本音でしょ(だろ)!!」」」」

「お主ら救助に行くのがどれだけの手間がかかるか分かっているのか? わっちはゴメンじゃ。何があっても」

 アルとフォルテとメフィとスティアが見事に声をハモらせてそう言ったが、やはりクラウアはこれといって気にした風ではなかった。
 するとクラウアは凛音の方を向き

「では頼んだぞ。引きずってでもスティアを頂上に連れて行ってくれ」

「分かりました。引きずってでも何が何でもお連れします」

「無理です無理ですごめんなさい私は残るんです絶対に残って此処でいつも通り……」

 ブツブツと何か言いながら逃げようとするスティアの体をがっちりと蔓で掴み、凛音は「さて行きますか」と言った。その時クラウア以外の全員が同情の眼差しを向けた。
 そしてメフィはそんな2匹を見てから『シリウス』の方を向いた。

「あたし達はそのまま行きますけど……先輩たちもすぐ出発ですか?」

「うん。私とフォルテ、シアオとアルに分かれて頂上を目指すつもりだよ」

 ちらりとスウィートが他のメンバーを見ると、シアオとフォルテが宣戦布告か何か知らないがしており、それをアルが呆れて見ていた。
 こんなので大丈夫だろうか。そんな考えが過ぎったスウィートだが、いつものことだと切り替えた。

「頂上までいけるといいけど……頑張ろうね」

「はいっ! 凛音をおさえながらスティアを引っ張っていこうと思います!」

 メフィちゃん大変だなぁ、と他人事のようにスウィートは思いながら「頑張ってね」とメフィに言った。メフィは気付かず元気よく返事したが。
 すると先ほどまで言い合いしていたシアオが会話に入ってきた。

「呼び捨てするほど仲良くなったの?」

「だって歳近かったんですもん」

 それは呼びたくなるじゃないですか! というメフィにスウィートは首を傾げた。
 シアオは「気持ちは分かる」と同意しているが、スウィートは全く理解していないようだ。そしてついでとばかりにメフィは「あ、凛音も呼び捨てしてます」と付け加えた。

「まあ何がともあれ健闘を祈る。……くれぐれも遭難せぬように」

「「もういいっての」」

 クラウアの注意にフォルテとアルがツッコんだ。
 そのままヒラヒラと手を振ってクラウアは何処かに行き、それを見てから山に続く道を見た。

「えっと……じゃあいこっか。フォルテ」

「よしっ!! シアオなんかに負けないようとっとと行きましょ!」

 駆けていったフォルテをスウィートが追いかけ、まず一組が出発し

「えっ、ちょ、僕らも早く行こう!」

「行くなら行け」

 シアオが先ほど行った一組を追いかけるように出発し、アルが慌てることもなくそれを追いかけ

「じゃああたし達もいこっか! 先輩たちに負けないよう頑張ろう!」

「とりあえず山頂に行ければどうでもいいです」

「無理です無理ですごめんなさい帰ります生きててごめんなさい無理です」

 未だブツブツと言っているスティアを引きずる形で『アズリー』も出発した。





――――空の頂 1合目までの道のり――――

「なーんか、」

「うん?」

「思ってたよりは敵は弱いわね。火炎放射」

 スウィートがてだすけを発動し、フォルテが敵に向かって火炎放射をうち、敵は全て倒れた。
 それを見てからスウィートはフォルテの言葉に苦笑した。

「それはフォルテだからであって……アルは大変なんじゃないかなぁ」

 少し山を登り始めて分かったことだが、一合目までの道のりでは草タイプが多い。なのでほぼスウィートが援護し、フォルテが倒していた。
 なので順調に進めているが、他はどうか分からない。

 『アズリー』の方はメフィは炎タイプだが、凛音とスティアは草タイプだ。凛音はそれさえも関係なさそうではあるが。
 そしてもう一組、アルとシアオはどうともいえない。電気技はほぼ効かない中、どうやって進んでいるのか。そしてシアオはあの悪運も持ち主である。……罠に何個 引っかかっているか想像もつかない。
 そう考えて少し不安になってきたスウィートだったが、「きっと大丈夫」と言い聞かせた。





――――空の頂 1合目――――

「あーっ、負けたぁぁぁああぁぁぁぁ!!」

「ふふーん、1合目まではあたし達の勝ちね!」

「凛音の勝ちだけどな」

「多分 2匹だけの勝負なんじゃないかなぁ……」

 あはは、とスウィートが困ったような笑い声をあげる。その先にはギャーギャー言いあっているフォルテとシアオ。
 たった数秒の違いだが、スウィートとフォルテの方が一合目に来るのが先だった。まあその時は既に凛音が一合目にいたのだが。ほぼ屍と化しているスティアとともに。
 すると「あーっ」という声が元来た道から聞こえてきた。

「凛音いたーっ!! スファイは連れて行くのに、何であたしは待ってくれないのー!?」

 「さみしかったんだよ!」と抗議の声をあげるメフィに「知りません」と切り捨てたのが凛音。スティアは本当の屍のように動かない。
 あっちも大変そうだなぁ、とスウィートが苦笑しながら見る。

「気付いたらメフィがいなかった。それだけです」

「凛音が早いだけだってば〜!!」

 少し涙目になりながらメフィが抗議をする。
 するとアルがスティアに声をかけだした。シアオもフォルテもそれに気付き、一旦 喧嘩を中断してそちらへ向かう。

「おい、スティア。生きてるか?」

「無理です。きっと今日で自分は終わるのですよ……。短かったサヨナラ私の人生……」

「スティア頑張れ! 僕も引きずられたり殴られたりするけど、めげちゃダメだよ! 元気をだして頑張ろう?」

「主にフォルテにされてるな」

「シアオが悪い」

 シアオの励まし方はどうかと思うが、確かに色々とやられているので異論は唱えられないフォルテとアルであった。
 しかしスティアはまたズーンと暗くなる。「何で!?」とシアオが声をあげると、真っ青な顔でブツブツとまたスティアが言い出した。

「無理です死んじゃいます。というかペースについていけないのですよ!!」

 バッと顔をあげたスティアに何を勘違いしたのか、「あ、元気でた?」と場違いなことを言ったシアオはアルによって頭を殴られた。
 すると言い合いは終わったのか、凛音とメフィがこちらに来た。スウィートもつられるようにそちらに行く。

「さて行きますよスティア」

「つ、次はあたしもはぐれないように頑張るから、ね! あとポケで暴走する凛音を止め……少しは、うん、少しはおさえるから」

 ポケで暴走する凛音を「止める」ではなく「おさえる」に変えたメフィ。止めるのは自身で無理だと判断したようだった。
 それにどんどん涙目になっていくスティア。

「もう自分はおりますぅぅ……!」

「さて行きますか」

 ズルズルとまたしても引きずられていくスティア。
 今日一日はスティアちゃんは散々な目にあうことになるなぁ。そんなことを思いながら『アズリー』とスティアの背を見たスウィートだった。

■筆者メッセージ
はい、遅くなりました。テストがようやく終わってようやくです。
停滞ぎみな自分でありますが、できるだけ早く更新できるように頑張っていきたいです……。しかしスランプになりかけている。どうにかせねば。

そしてシアオの影が薄くなっていく件について。お前パートナーだろうがと言いたくなる。
まあでも今回と『アズリー』メインになりつつありますからね……。あれ、何でだろう。
アクア ( 2013/10/26(土) 20:57 )