14話 シェイミの姉妹
「わぁぁぁ……何かのどかなトコだね!」
シアオが見渡してそう言う。空は赤く染まり、もう夕方だ。
『シリウス』と『アズリー』はパッチールの話を聞いた後に準備をしてから、シェイミの里を目指した。そしてトレジャータウンを出発したのが昼前。
しかしシェイミの里は遠く、ついたのが夕方になってしまったのだ。
そしてシェイミの里はシアオが言ったとおり、のどかでリラックスできそうな場所であった。
緑があり、何個かの家は草でしっかりとできている。そして所々に綺麗な花が咲いていた。山に囲まれているものの、とてもいい場所であった。
シェイミの里には既に何匹かの探検隊や探検家が来ているようで、カフェで見たポケモンが何匹かいた。
そして見慣れないポケモンが何体かいる。そのポケモンの体は緑と白の色で、顔の横の右左に見慣れないピンク色の花がついている。
するとその1匹が『シリウス』と『アズリー』の元に来た。
「ようこそ、シェイミの里へ。そなたらも探検隊か?」
バッと凄まじい速さでスウィートが近くにいたアルの後ろに隠れる。するとアルが牽制のためか、スウィートの頭を軽く小突いた。しかし出てくるつもりはないらしい。
するとそのポケモンの質問にシアオが元気よく返した。
「うん! 僕はシアオ・フェデス! 探検隊『シリウス』の一員だよー」
「あたしはフォルテ・アウストラ。同じく『シリウス』のメンバー」
「同じく『シリウス』のメンバーで、アルナイル・ムーリフ。で、隠れてるのが……」
「リ、リーダーの、スウィート・レクリダ、です……」
「あたしは探検隊『アズリー』のメフィーレ・アペーディヌです!」
「『アズリー』のリーダー、草花 凛音と申します」
それぞれ自己紹介すると、そのポケモンは微笑んで挨拶をした。
「わっちはクラウア・カラヴィン。種族はシェイミじゃ。何卒よろしく」
「シェイミ!?」
シェイミ、と聞いた瞬間にシアオがじーっとクラウアを見る。メフィも興味ありげに見た。
最初こそ怪訝そうな顔をしていたクラウアだが、暫くして笑った。
「そうか。シェイミという種族は珍しいんじゃったな。この里にはシェイミしかおらんが、そなたらの近くにシェイミはおらんらしいな」
「始めて見たわ。確かに可愛いっていうのも納得いく」
「褒めても何もでぬぞ」
笑っていうクラウアは独特な喋り方ではあるが、何だか様になっていた。
するとシアオは質問をクラウアに投げかけた。
「ねぇ、クラウア。クラウアはこの山に詳しいの?」
「勿論。シェイミという種族は元々この“空の頂”の案内役をしていたのじゃぞ? まあ大昔の地震でここに通じる山道が崩れて探検家が来れなくなってからはそれもなくなったがな」
「へえ……」
「だからこの里に調査チームが来たのは驚いたぞ。里の者全員がな」
ふふ、と笑うクラウアにシアオが関心したように「へぇ」と声をあげた。
「だから言い伝えでしかなかったのかぁ……」
「そういえば……言い伝えといえば、この山にはどんな宝にも勝る秘宝が眠っているって聞いたけど……それってホントなわけ?」
フォルテがそう聞くと、悪戯気にクラウアが笑った。
「それは教えられんな。山を登るのはそなた達じゃ。わっち共はそれを支えるだけの役目じゃからの」
「へぇ〜……なんかよく分かんないけど奥が深いんだね!」
「いや、理解しろよバカ」
アルにそう言われ、シアオが文句を言う。
それにスウィートが苦笑していると、クラウアが空を見上げて声をあげた。
「山を登るにしても……この時間帯に登るのは危険じゃ。それに里の長が探検家を宿に休ませるよう言っているのでな。宿に案内しよう」
「……それは有料ですか? 有料でしたら私は野宿をしてみせますが」
「安心せよ。無料じゃ」
すると凛音が「お借りします」とお辞儀した。やはり凛音はポケ中心らしい。
メフィがそんな凛音に「やましいよ……」と正論を言っていたりしたが、とりあえずクラウアに宿に案内された。
クラウアに着いていくと、立派な葉っぱで作られた建物に連れて来られた。
「スティア、客じゃ。2部屋 用意せよ」
「は、はい!」
入った途端にクラウアが1匹の首元に桜色のリボンをしているシェイミにそう言うと、慌ててそのシェイミは駆けていった。
スウィートがそれを見ていると、クラウアが後ろにいる『シリウス』と『アズリー』の方に向き直った。
「調査チームが来てから、今日のうちで何匹もの探検家が来たからの……。部屋があるといいのじゃが」
「な、なかったら別に構いませんよ……?」
「何いってんの、スウィート。あたしは野宿は嫌よ」
野宿でも構わないというスウィートの気遣いを、フォルテが思いやりのひとかけもない言葉で見事に消した。アルはバシンッとフォルテの頭を叩いた。
クラウアが「あるといいが」と言っていると、先ほどのシェイミが戻ってきた。
「1つは確保できたのですが、もう1つは確保できなかったのですよ……」
「ふむ、そうか」
ううん、と悩むクラウアにスウィートが野宿を提案しようと、声をかけようとする。しかしフォルテに止められた。
すると何か閃いたように、クラウアがスウィート達の方を向いた。
「『シリウス』はその確保できる部屋を使うとよい。『アズリー』はわっちの家でもよいか?」
「私は何処でも構いません。しかし別に私は野宿でも平気ですが」
「あ、あたしも気を遣ってくれなくても大丈夫ですよ?」
凛音とメフィの発言を聞き、アルがじーっとフォルテを見る。フォルテはそれを睨みで返したが、結局負けて目を逸らした。シアオは「僕も野宿でも大丈夫だけどねー」と何か言っているが全員にスルーされた。
するとクラウアは『アズリー』の言葉に首を横にふった。
「客に野宿など言語道断。しかしわっちの家はそこまで広くないのでそれも申し訳ないが……」
「泊めていただけるで有難いのでお願いします!」
バッとメフィが頭を下げると、クラウアが「悪いな」と言って頭を下げた。
そしてクラウアは先ほどのシェイミに目をやった。
「スティア、よいな?」
「じ、自分は構わないのですよ」
するとシアオが首を傾げた。
「あれ、一緒に暮らしてるの?」
「あぁ、姉妹でな。スティア、挨拶せよ」
見分けは全くつかない。同じ種族だからか、リボンがつけているのがスティアだというのしか分からなかった。
すると慌ててスティアが自己紹介をした。
「じ、自分はスティア・カラヴィンと申すのですよ。よろしくお願いします!」
別に人見知りという訳ではないらしい。きちんと自己紹介をした。
そしてスウィート達も順に自己紹介をした。スウィートはやはり隠れて自己紹介をした。
「ではスティア、先に『アズリー』を連れて帰っていてくれ。わっちは宿の案内してから帰る。よいな」
「は、はい!」
どうやらクラウアが『シリウス』が案内してくれるらしい。
すると凛音がスウィートたちの方を向いた。
「ではまた明日、また此処に来ますので」
「あ、うん。それじゃあまたね」
「また明日!!」
「えっと……こちらなのですよ」
スティアに連れられ、『アズリー』が歩いていく。
それを見てから「では行くか」というクラウアの声を聞いて、『シリウス』も宿の中を進んでいった。