輝く星に ―闇黒の野望― - 2章 家族への贈り物
13話 “空の頂”
 朝、もう太陽がのぼった頃。

「シアオ、もういいよ。もういいからこっちを見ていて。お願い」

「え? あ、うん」

 シアオは頭に疑問符を浮かべたが、すぐにスープの火加減を見に行った。
 スウィートはそれを確認して、シアオが作業していた所を見る。木の実をすって潰せと言ったが、そこらじゅうに巻き散ってしまい、器に入っているのは少量である。
 それを見ながらスウィートは「どうしようか」と考えた。

 『シリウス』の中で1番 料理が下手なのはシアオである。
 1番上手いのはアルが意外だと言ったフォルテだ。火加減さえ間違わず、大雑把さがでなければ、1番上手い。
 スウィートとアルは人並みだ。
 しかしシアオの下手さは同じ当番になった者が頭を抱えるほどである。同じ当番になったフォルテが何回シアオに火の粉を食らわせたかはもう分からない。アルが何回溜息をついたかがわからない。
 それほどである。

 そして今日はスウィートとシアオが当番だ。
 スウィートはフォローしながら何とか作り、シアオに難しい作業はさせていない。なのにこの様である。

(……あぁ、本当にどうしよう)

 解決策は浮かばない。それほどシアオの料理の腕は酷いのだった。





 けっきょく朝飯は「まずい」とフォルテから辛辣な感想をもらい、『シリウス』はトレジャータウンを通りながらギルドに向かっていた。

「それにしても、今日は何だかトレジャータウンに探検隊がいないね」

 シアオがそう言うと、3匹が確かにと頷いた。
 いつもトレジャータウンにはいくつかの探検隊がいるのだが、今日はほぼいないに等しかった。
 それに首を傾げながら、『シリウス』は先に進んだ。

 少し進むと、交差点につく。そこで“パッチールのカフェ”の看板を見ている二匹のポケモン、バリヤードとオクタンに気付いた。
 スウィートはそーっとフォルテの後ろに隠れながら、シアオはその2匹に話しかけた。

「ねえ、何かあるの?」

「あぁ、何だか探検隊の皆に嬉しいお知らせがあるみたいだよ」

「嬉しいお知らせ?」

 バリヤードの言葉にシアオが首を傾げる。
 嬉しいお知らせが何なのか想像でもしているのだろう。

「アタクシちょっと気になるから行ってみますわ」

「ボクも行ってみよっと」

 オクタンとバリヤードがパッチールのカフェに入っていく。
 するとバッとシアオが勢いよくスウィート達の方を見た。

「ねぇ、嬉しいお知らせだって! 嬉しいお知らせ!! 行こう!!」

 生き生きとした様子でシアオがパッチールのカフェを指さす。シアオの想像としてはいい方向に向かったらしい。
 フォルテは心底どうでもいいといった顔をして、アルの「じゃあ行くか」という言葉によって行くことが決定した。

「あれ」

 カフェに入ると、沢山のポケモンがいた。その中で『シリウス』は見慣れた姿を確認した。
 あちらも『シリウス』に気付いたようで、1匹は大声で『シリウス』に挨拶してくる。

「先輩、おはようございますっ!!」

「おはようございます」

「おはよう、メフィちゃん。凛音ちゃん。2匹も来てたんだね」

 スウィートが呼んだとおり、『アズリー』のメフィと凛音だった。
 メフィはニコニコとしているが、凛音は相変わらずの無表情だ。どうやら知らせを楽しみにしているのはメフィだけらしい。

「メフィも凛音も嬉しいお知らせを聞きに来たの?」

「そうですよ! 何だか楽しそうだったんで!」

「メフィに無理やり引っ張ってこられただけです」

 シアオの質問に答えた凛音の回答にスウィートは苦笑した。凛音は本当にどうでもいいといった顔をしていた。
 シアオとメフィは嬉しいお知らせについて話をして盛り上がっている。
 その様子を見てフォルテとアルが呟いた。

「……今頃だけど、シアオとメフィって少し似てるわよね」

「あぁ。……今の姿を見てるとシアオを2匹見ているみたいだ」

 凛音は無言で頷き、スウィートは苦笑する。
 するとパッチールが話し始めた。

「えー、皆さん! お忙しい中お集まりいただきありがとうございますぅ〜」

 パッチールが話し始めたことにより、全員の目がそちらにいき、静かになる。
 先ほど意気投合して盛り上がっていたシアオとメフィも大人しくパッチールの言葉に耳を傾けていた。

「今日は皆さんに嬉しいお知らせがございますぅ〜。みなさん“空の頂”という山をご存知でしょうか?」

「“空の頂”?」

 オクタンが首を傾げる。他のポケモンも同様で、首を傾げていた。
 スウィートは知っているはずもなく、『シリウス』の中で1番の物知りなアルでさせ分からないといった顔をしていた。

「ああ、ボク知ってるよ」

 知っている、とったバリヤードに全員の目線がいく。そのままバリヤードは“空の頂”のことを話し始めた。

「東の方角にある物凄い高い山のことだよね。何でもそのその高さは天にも届くほど高いっていう噂だよ」

「て、天……!?」

 バリヤードの言葉にシアオが目を輝かせる。否、隣にいるメフィも目を輝かせていた。

「でも険しい山脈に囲まれているせいで、そこにいくルートが開拓されていないんだ。だから今まで詳しい調査はほとんどされていないみたいだよ」

「はい〜、その通りですぅ〜。よくご存知で〜」

 再び発言したパッチールにまた目がいく。
 フォルテも全く興味がなさそうであったが、どうやら興味をもったようでしっかりと話を聞いていた。

「先ほど仰られたとおり、“空の頂”はほとんど調査されておらず……未だ多くの謎に包まれているのです」

 へぇ、と小さくスウィートが声をあげた。
 凛音を見ると、相変わらずどうでもいいという顔をしていた。

「天に届くほど高く! そして多くの謎に包まれたミステリアスな山……!」

 どんどん声のトーンが上がっていき、パッチールは一歩前にでて、両手を上にあげた。

「ああ! なんて探検心をくすぐる響きなのでしょう!」

 ぱん、と両手をあわせてパッチールがいう。
 シアオとメフィは完全に探検心をくすぐられたようで、目をキラキラさせていた。
 それを見てアルと凛音がめんどくさいといった顔をしたのは、スウィートと本人しか知らない。

「いってみたい! 見てみたい!!
 そこで手前どもプロジェクトPではその願いを叶えるべく……しばらく前からその“空の頂”に通じるルートを開拓してきたのです……!!」

 そしてまたパッチールは興奮したように両手をバッと上にあげた。

「そして先日! ついに! そのルート開拓に成功したのです!!」

「「「「「「おぉぉぉ〜!」」」」」

 集まっているポケモンたちが感嘆の声をあげる。
 それはシアオもメフィも、そしてフォルテもだった。他スウィートとアルと凛音はただ話を聞いているだけだ。凛音に至ってはどうでもよさそうだが。

「しかも、しかーも! ルート開拓に成功しただけでなく……なんと! 山のふもとに小さな隠れ里を発見したのです!!」

「「「「「おぉぉぉぉぉ〜!」」」」」」

 更に感嘆の声を大きくするポケモンたち。
 するとその「隠れ里」というバリヤードが反応した。

「隠れ里……何だか忍者みたいだね」

「はい〜。流石に忍者はいないのですが……その代わり、とても珍しいシェイミ≠ニいうポケモンが住んでいるらしいですよ〜」

「シェイミ?」

 ニョロトノが首を傾げたように、全員が首を傾げる。
 スウィートも首をかしげ、シェイミというポケモンについて少し考えた。
 しかしパッチールが説明し始めたので考えるのを中断し、それを聞くために耳を傾けた。

「えぇ。手前も知らない種族なので詳しいことは分からないのですが……とても可愛らしい方たちだそうですぅ〜♪」

「か……可愛い……」

「き、気になる……!」

「うわ、行きたい理由が超最低」

「フォルテ……ちょっと発言を考えよ……?」

 可愛らしい、というのに反応したポケモンたちに、フォルテが反応する。スウィートはフォルテをやんわりと窘めたが、効果はない。
 するとまたパッチールが声のトーンをあげて話し出す。

「更に更に! 調査チームの報告によると……シェイミの里のはずれに、“空の頂”へ続く登山道を発見したとのこと! これは大発見ですよ〜! この山は今までほとんど調査されていないので、お宝がザックザク!」

 ぴく、と凛音が反応する。

「新発見がドッコドコ!」

 今度はシアオがぴく、と反応した。

「かもしれません!」

 それを聞いた瞬間、凛音があからさまにイラついたような顔を一瞬だけし、シアオがずっこけた。
 その様子にスウィートは苦笑する他ない。アルはやはり溜息をついた。
 しかしそんな様子を気にした風もなく、パッチールは続ける。

「それに古い言い伝えではどんな宝にも勝る秘宝が眠るとも言われているのですッ!」

 するとシアオがぱぁっと顔を明るくした。
 シアオにとってはもってこいの話題だろう。スウィートは今日の予定が決まったな、と心の中で考えた。

「お宝!」

「新発見!」

「すごいッスー!!」

 “空の頂”の想像を膨らませ、騒ぎ出す。
 フォルテもメフィも、そして1番シアオが目を輝かせている。凛音は確信のない言葉はもう信じていないのか、どうでもよさそうであった。

「それでは皆さんお待ちかね! シェイミの場所をお伝えいたしますぅ〜!」

 そのパッチールの言葉で全員が静かになる。
 その静かの空間のなか、ソーナノとソーナンスが大きな地図を全員に見えるように広げた。そしてパッチールがある山を指した。

「この山ですぅ〜。この山が“空の頂”となります。そしてシェイミの里は……」

 そのままパッチールが地図を指しながら、詳しく説明していく。
 そして説明が終わるとソーナンスが地図を片付け、パッチールが全員の方に向き直った。

「詳しいことは現地にいるプロジェクトP『フロンティア』に聞いてください〜。
 それでは皆さん、夢とロマンにむかって張り切っていきましょー!」

「「「「「「おおぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」」

 気合を入れて全員が返事をし、カフェを出るものもいれば、そのままカフェで話し出す者たち。
 シアオは未だ目をキラキラしながらスウィート達を見た。

「えっと……その、シアオは行きたいの? “空の頂”」

「勿論!! だって新発見とかあるかもだし、何より秘宝とかがあるっていう言い伝えだよ!? 気になるじゃん!」

 シアオらしいなぁ、とスウィートはつい笑ってしまった。
 フォルテは呑気にのびをし、アルは呆れ顔だった。『アズリー』、というよりメフィは行く気満々のようだ。この様子であれば凛音も引っ張っていかれることだろう。
 するとメフィに熱く語られていた凛音が『シリウス』に話しかけた。

「先輩がたも行くのですか?」

「あ、うん。そうなる、かな……。凛音ちゃんとメフィちゃんも?」

「メフィが煩いので」

 どうやらメフィの気迫に負けたらしい。凛音は相変わらずの無表情である。
 すると何か思いついたようにシアオが声をあげた。

「じゃあシェイミの里まで一緒に行こうよ! そっちの方が楽しいし!」

「あ、それ賛成です! 一緒に行きたいです!!」

 どこまでも元気な2匹に、スウィートは苦笑して「そうだね」と頷くことしか出来なかった。

■筆者メッセージ
『アズリー』の出現率が「誘い」に比べて増えてる気がする……。
そういえばパッチールとかソーナノとかソーナンスとかの名前がない。あれ、何でだ。
因みに『アズリー』はきちんとディラ達に許可を得てきますよ……! またどこかにでも入れておきます。
アクア ( 2013/09/19(木) 21:37 )