輝く星に ―闇黒の野望―







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1章 星の独り立ち
4話 卒業試験開始
「とりあえず……手助け!」

 スウィートが技を発動させたことで、3匹の体が光る。
 そしてシアオとフォルテがでんこうせっかで動いたところから、アルも補助の技を使った。

「こうそくいどう!」

 それを見てすぐさま攻撃をしかけようとしている全員を止めようと、スウィートは先手をうつ。

「しんくうぎり!!」

「はっぱカッター」

「わたくしもはっぱカッターですわ!」

 1匹だけならともかく、凛音とルチル2匹となるとスウィート1匹のしんくうぎりは数で負ける。
 はっぱカッターを全てはじくことが出来ずスウィートとアルの方へ向かってくるが、スウィートはアルの腕を掴んで真空瞬移で移動した。

「手始めに……特大はどうだん!!」

「ちょっ……何だあれ!?」

 シアオの特大はどうだんを見たことがなかった弟子達は焦りだす。当たり前だ。随分とデカい。
 あれから少し特大はどうだんの改良をして、なるべく時間がかからず撃てるようになった。少しは時間がかかるが、それでもマシな時間になるという進化を遂げている。

「炎の渦!」

「バブルこうせん!」

 呆然としている弟子一部とは裏腹に、メフィとイトロはすぐに動き、特大はどうだんに技をあてる。技同士がぶつかり、砂埃がおきる。
 その間にフォルテはアルの尻尾にのり、上に飛び上がった。スウィートはシアオとアルのもとにいき、フォルテより上に真空瞬移で移動する。

「くらいなさい、火炎放射!!」

 ゴオッという音とともに、フォルテが地面にむけて火炎放射をする。
 まだ砂埃がまっている中で、よく状況を理解していない弟子たちは音の原因を探った。よく聞く音だと気付いたのは、もう火炎放射が十分 近づいている頃。

 火炎放射が地面に広がり、まずディラが飛び、凛音が蔓で壁から出ている岩に捕まって避けたのが見えた。そして一箇所だけ炎が広がっていない部分、これはアメトリィがねんりきで避けているのだろう。
 メフィは炎タイプなのであまり効かないし、イトロも水タイプなので自分の周りの炎を消してダメージを最小限に抑えているだろう。他はどうか分からないが。

 フォルテは炎の中に飛び込んでいき、攻撃をできそうな相手を探す。

 アメトリィの場所を認知したスウィートは、シャドーボールをつくり、そして真空瞬移でアメトリィの後ろに移動させた。勿論アメトリィがそれに気付いている訳がなく

「あぐっ!!」

 そのままシャドーボールが当たり、効果抜群のこともあってか、アメトリィが倒れた。
 スウィートはまた真空瞬移を使って、更に上へ移動する。落下しながらも全員の位置を確認していた。

 その間にアルは下に落下しながらも手に電気をため、放った。狙いはディラ。

「10万ボルト!!」

「っ、オウム返し――火炎放射!!」

 アルとディラの技がぶつかる。
 ちらりとアルは地面を見て、一旦の区切りをつけてから技をストップして地面におりた。地面はまだ熱いが、炎は完全に鎮火されていた。

 シアオも地面におりて、残りを確認する。ルチル、アメトリィの♀2匹は倒れていた。残りは9匹。
 それでも多いな、と辺りを見るとフォルテが丁度 あの頃には覚えていなかったエナジーボールをハダルに撃ってハダルを倒したところだった。残りは8匹。

 すると『シリウス』にとっても他のものたちにとっても予想外のことがおきた。

 イトロが丁度ハダルを倒したフォルテにバブルこうせんを撃とうとしている所だった。
 『シリウス』のメンバーは完全に間に合わないタイミングで、フォルテも気付いたがもう遅い。

「バブルこうせ――」

「はっ、エナジーボール!!」

「え、ぐほぉ!!」

「凛音ぇぇぇぇええぇぇ!?」

 味方であるはずの凛音がイトロを攻撃したのだ。効果抜群プラス予想外すぎて気付けなかったイトロは直撃してそのせいで倒れた。
 メフィは気にせずに名前をよんだが、『シリウス』も他の者たちもそれをツッコむことは出来なかった。ただ呆然としていた。

「危ない……286ポケが踏まれるところだった……!!」

「凛音!? そんなことで先輩やったの!?」

「そんなこととは何ですか! ポケですよ!?」

 そんな会話をしながらちゃっかり自分の懐にポケを入れるのが凛音らしかった。
 するとメフィが穴の上をむいて大声で叫んだ。

「せんぱぁぁぁぁぁぁいッ!! 縄! ロープ!!」

 小さく声が聞こえてから縄がスルスルと降りてくる。そしてそれを掴んで

「ごめんなさい! やっぱ参加するべきじゃなかったです!!」

「元々は貴女のせいですけどね」

 そう言って上っていった。おそらく戦線離脱だろう。凛音のための。……いや、仲間のための。
 それを黙って全員で見送ってから、残りの5匹と『シリウス』は固まった。この状況をどうしろ、と。

 しかしディラがまず動き、シャウラを掴んでとんだ。
 それの意図にいちはやく気付いたスウィートはフォルテとアルをできるだけ高く、真空瞬移でとばす。
 するとフィタンが技を繰り出した。

「マグニチュード……9!!」

「シアオ! こっちは大丈夫!」

「分かってるよ! ――地震!!」

 2つの技のせいで地面が思いきり揺れる。
 スウィートは何とか耐えながらでんこうせっかで移動し、隙ができたフィタンの背後にまわって攻撃しようとした。

「アイアンテール!!」

「ごめんね〜、サイコキネシス!」

 しかしロードの方が先で、スウィートの体が壁までふきとばされる。
 スウィートは「そういえば1番 厄介なのは親方様だったな……」と小さく呟いて起き上がった。揺れはもうおさまっている。

 その間に上にとばされたフォルテとアルは、ディラとシャウラを狙っていた。

「おい、フォルテ! ちょっと近づくなよ!」

「近づかないわよ、危険だもの!」

 バチバチとアルの体内から電気が少し放出される。
 ディラに捕まったままシャウラは2匹に何本もの毒針を投げてくる。フォルテは自身とアルの周りに炎の渦をはって毒針を防ぐ。

「いける――フォルテ!」

「了解! しくじんないでよ!!」

 炎の渦がとかれる。そしてアルが体内にためていた電気を手に全て集めた。
 そしてしっかりと狙いを定め、毒針があたる寸前のところで、放った。

「100万ボルト!!」

 高電圧の電気がディラとシャウラの方へ向かう。アルは反動で少し後ろにとばされる。
 ディラはすぐにシャウラを放した。シャウラは地面に落下するが、怪我をするほどの高さではない。揺れはもうおさまっている。

「オウム返――ぐああ!!」

 すぐさまディラは反撃しようとしたが、あちらが早く、ディラは効果抜群の技をくらって倒れた。
 アルは反動で少し着地に失敗したが、フォルテは綺麗に地面に着地した。

 しかし地面にいたラドンとシャウラはその2匹の隙を見逃さなかった。

「さわぐ!」

「うっ……煩っ!!」

「っ……」

 ラドンの技のせいで場が煩くなる。『シリウス』4匹も、そしてフィタンも顔をしかめて耳を塞ぐ。
 シャウラも耳を押さえたい衝動に何とか耐えて、フォルテとアルに攻撃をしかけた。

「どろばくだん!!」

「きゃ!?」

「ぐっ!」

 ラドンに気を取られていたせいで、フォルテもアルも諸に喰らってしまう。
 そしてフォルテは少し泥が目に入ってしまい、前があまり見えなくなってしまった。本人はゴシゴシと目を擦っている。

 スウィートは耳を塞ぐのをたえて、もう一度フィタンを狙う。
 するとシアオも耳を塞ぐのを止め、スウィートの邪魔をさせまいとロードを狙った。

「アイアンテール!」

「はどうだん!」

 今度はロードがサイコキネシスではどうだんを操ってシアオに跳ね返し、スウィートの邪魔はされなかった。フィタンはスウィートの攻撃によって倒れる。
 シアオははどうだんをもう1つ作り、ロードの操っているはどうだんを掃滅した。

「残り……3匹」

 ロードにラドンにシャウラ。
 スウィートは目で合図して、ロードに突っ込んでいく。そして途中で真空瞬移を使い、ロードの後ろに移動した。
 シアオはロードにはどうだんを仕掛け、ロードはそれをやはりサイコキネシスで返してくる。スウィートのはその隙を狙った。

「アイアンテール!」

「冷凍ビーム」

「っあ、ぐっ!」

 すぐさま尻尾を引っ込めスウィートはロードから離れる。尻尾を見ると少しだけ凍っていた。
 久々にまずいなぁ、などと考えながらスウィートは冷や汗をたらして笑った。

 その間にアルはよく目が見えていないフォルテに指示しながらシャウラとラドンと対峙していた。

「フォルテ、右だ! 炎の渦してからシャドーボールを上に撃て!」

「っ……シャドーボール!!」

 フォルテは言われたとおりに炎の渦をし、上にシャドーボールをする。上にいたシャウラは攻撃の手を引っ込め、右にいたラドンはアルにちょうおんぱをしたがアルは何とか免れた。
 そのままアルはラドンに10万ボルトを撃つ。しかし避けられてしまった。しかし丁度いい場所にラドンは避けてくれたとアルは笑った。

「フォルテ! 尻尾のちょうど後ろだ!!」

「後ろ!? すいへいぎり!」

「なっ、ぐあ!!」

 尻尾でとりあえずすいへいぎりをすると、何かが当たった感触がした。声からしてラドンをやれたらしい。
 次にシャウラはフォルテに向かっていた。おそらく10万ボルトをすると巻き込むだろう。アルはどうすればいいか判断し、指示をした。

「前に進め!!」

「はぁ!? ……ってうわ!!」

 訳の分からないといった声をしてから、フォルテの姿が消えた。シャウラは目を瞠る。

「10万ボルト!!」

「うぐぁ!!」

 その間にアルはシャウラに10万ボルトを食らわし、シャウラは倒れた。
 アルはそれを見てからフォルテがいた場所へと近づく。そして手を差し伸べた。

「お前が最初に火炎放射をやったときにフィタンさんは地面に潜って逃げてたらしくてな。その穴が丁度あったから落ちてもらった」

「落ちてもらったじゃないわよ……!!」

 ビックリしたじゃない! とかギャーギャー言っているフォルテを引き上げ、バッグから玉を取り出して渡した。
 渡されたフォルテは何か分かっておらず、首を傾げた。

「何、これ……」

「洗濯玉。使い方は違うが目くらい洗えるだろ。俺はあっちの加勢に行ってくるから早めに」

「ちょ、ちょっと!?」

 アルがロードと戦っている2匹の方に向かう。

 スウィートが苦々しい顔をしながら、突破口を見つけようと技をシアオと仕掛けていた。
 いち早くアルに気付いたスウィートはすぐさま目で攻撃するように合図する。

「叩きつける!」

「はっけい!」

 シアオとアルがロードに攻撃をしかける。

「サイコキネシス――往復ビンタ!」

「がっ!!」

「うわ!? ぶっ!!」

 アルは吹き飛ばされ、シアオは3,4発のビンタを喰らう。それもかなりの威力で、シアオの頭の中はぐわんぐわんいっていた。
 すると目を洗ったのか、フォルテがびしょ濡れになりながら加勢に入ってきた。

「火炎放射!!」

「っと、危なっ!!」

 シアオは当たりそうだった火炎放射を何とか避け、火炎放射はロードにあたる。しかしロードは平気そうにニコニコしている。
 化け物かなどと思いながら、アルは攻撃をしかけた。

「10万ボルト!」

「フフフ〜、きあいだま!」

 その間にシアオの様子を確認すると、未だ先ほどの往復ビンタが効いているのか顔を顰めている。
 スウィートは目でフォルテに合図し、ロードにむかって技を繰り出した。

「スピードスター!」

「火炎放射!!」

 フィーネに教えてもらった技をスウィートは使い、フォルテはお得意の火炎放射でロードに攻撃する。
 しかしそれさえもロードはよんでいたといった様に、軽い動きで2つの攻撃をかわした。それにスウィートは顔を顰める。

 するとシアオがでんこうせっかでロードが避けた場所に移動した。

「かわらわり!」

「じゃあこっちもかわらわり!!」

 シアオとロードのかわらわりがぶつかる。するとシアオの体がぶっ飛んだ。力はあちらの方が上らしい。

 最後にこの上なく厄介な悪の大魔王ことギルドの親方が残ったものだ。

 スウィートはあまりの強さに苦笑いをうかべる。
 するとロードが未だ悪の大魔王を演じているのか、少し違和感のある喋り方をしてきた。

「フッフッ……君たちのことは聞いているんだ。それでそっちのイーブイは通常のイーブイと違う技が使えるらしいけど……使わないのかい?」

 正体に気付いていないシアオとフォルテは目を見開くが、分かっているスウィートとアルは何でだと2匹にツッコミたくなった。
 スウィートは苦笑しながら答える。

「皆の力を借りたら、意味ないじゃないですか。ギルドの卒業試験で来てるんですから、今回は皆の力は何があっても借りません」

 卒業試験なのに、自分の力で試験にうけないのはおかしい。借りてしまったら、自分の力じゃなくなってしまう。
 自分の力を認めてもらわなければならないのだから。

 するとマスクの下で少し目を丸くしてからロードはアハハ、と笑った。

(スウィートは何に対しても真剣な子だからなぁ)

 するとスウィートが動き出す。それと同時にシアオも動く。他の2匹も構えていた。

「スピードスター!!」

(そして誰にも負けない優しさを持ってる。バトルでは周りをよく見て戦闘することができてる)

「サイコキネシス!」

 スピードスターが操られてスウィートの元に返ってくる。するとスウィートの前に素早くアルがでてきた。

「放電!」

(アルは個性豊かなメンバーのまとめ役で、頭脳派だ。もう少し戦いに慣れたら、司令塔としていい役割を果たすかもね)

 最小限に抑えた放電で、スピードスターを一掃する。勿論スウィートには電撃があたらないように配慮してある。
 ロードは未だニコニコとしながらそんな2匹に攻撃をしかける。

「冷凍ビーム!」

「こっちにもいるわよ! 火炎放射!!」

(フォルテは頭に血がのぼると危険だけど……冷静なときは仲間のサポートをしっかりしてあげられている)

 冷凍ビームが炎で溶かされ、炎がそのままロードにあたりそうなる。ロードはすぐに反応し、きあいだまで炎をどける。
 そのままきあいだまがフォルテに真っ直ぐに行こうとした後、フォルテはでんこうせっかで移動した。その後ろには、シアオ。

「特大はどうだん!!」

(シアオはチーム一番の攻撃系。仲間に作ってもらった隙に相手に大ダメージを与える役割だね)

 きあいだまがかき消され、特大はどうだんがロードの眼前に広がる。
 フフと笑って、サイコキネシスでそれを止めた。


(ボクは、『シリウス』がもう立派な探検隊だと……そう思うよ)


「アイアンテール!!」

 サイコキネシスで操っている特大はどうだんを受ける覚悟でスウィートがやったアイアンテールは、呆気なくロードの頭に当たった。スウィートはそれに目を見開く。
 ロードがゆっくり倒れると、特大はどうだんが消えた。

「えっ……?」

 どういうことだ。スウィートはそう思った。

 しかしそんなスウィートを尻目に、ロードがゆっくりと起き上がる。スウィートはビクリと体を揺らす。
 すると倒れていた弟子達が次々と起き上がった。シアオとフォルテとアルも驚く。そして

「に……」

「……!?」

「に、逃げろ〜〜〜ッ!!」

「!?」

 するとロードは一目散に縄まで走っていき、それに掴まってあがっていった。変なマスクは捨てて。

「ひぃぃぃぃぃいぃ!!」

「きゃーーー!!」

「うわぁぁぁぁ!!」

 他の弟子達も何故か悲鳴をあげながら縄を使って上に上っていく。ロードと同じように変なマスクを捨てていきながら。
 スウィートもシアオもフォルテもアルも、全員がポカンとしてそれを見送った。そして全員がいなくなって数秒後

「か……勝った!! 悪の大魔王に勝ったんだ!」

「これで卒業試験を安心して受けられるわね!」

 シアオとフォルテが喜びの声をあげた。
 アルは疲れたように「あー……そうだなー……」と棒読みで言い、スウィートは苦笑をした。

■筆者メッセージ
卒業試験は弟子達だと技を一発直撃させられたらアウト、親方様は制限はないけど認めてくれたらオッケーみたいなハンデ←
因みに上記のルール。呆気なかったのはそのせい。先輩たちは決して弱くないんです。ただイトロだけは不憫。ごめん、君が適役だと思ったんだ。
絶対に親方様は本気だしてないと思うんですよね……。探検隊としての素質が見えてきたらオッケーみたいな。卒業試験ですから。
凛音とメフィは本当はレニウム先輩と上でいるはずだったので退場。ていうか迷惑かけることしかしてないよ、アイツら。

……途中からラドンのこと忘れてたや…………ごめん。
敵が多いとどうも書きづらい。

因みに時間が経ってますから『シリウス』が使える技が増えてたり色々とレベルアップしてたり。
アクア ( 2013/08/18(日) 20:40 )