輝く星に ―時の誘い―












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第7章 それぞれの想い
91話 信じろ
「ディ、ディラ!!」

 シアオが慌ててディラに駆け寄る。
 ディラは誰にも支えてもらうことなく、ゆっくりと立ち上がった。だが体は限界がきているのか震えている。

 すると襲ってきたポケモンの1匹が関心するように呟いた。

「ほう、まだ立つか。大したもんだな。ま、もう役には立たないだろうが」

 スウィートはディラを嘲笑うかのような喋り方をするポケモン――カブトプスを睨む。しかしそのカブトプスは怯まない。
 フォルテもアルもすぐに駆け寄ってきて、そのカブトプスと傍にいるオムスター2匹を睨んでいる。

 するとオムスターの1匹がディラを見てあ、と声をあげた。

「思い出した! クヴィ! コイツ前にもここに来たことがあるぜ! そんでその時もこんな感じにやられたんだぜ!?」

「繰り返し同じことを? 本当に愚か者だな! グハハハッ!」

 馬鹿にするように笑うクヴィと呼ばれたカブトプスに、オムスター2匹。
 ディラは何とかボロボロの体を支えながら、3匹を睨む。

「ぐっ……なんとでも、いえ……。コイツらは、私のかわいい弟弟子たちなんだ……! お前らなんかに、手出し、させるか……!」

「ディ、ディラ……」

「うぐぐっ……ぐっ……ぅ……」

「ディラ!」
「ディラさん!!」

 バタッ、と力尽きたディラが倒れる。
 慌ててシアオとスウィートが駆け寄る。しかしディラが起き上がる気配はない。しかし2匹は一生懸命 呼びかける。

「グハハハハハ! 次はお前達の番だ! 喰らうがいい!」

 そう言って首たちが攻撃を繰り出そうとする。
 咄嗟にスウィートとシアオはディラを抱えて飛びのこうとする。だが、間に合わない。
 するとバチッという音とともに、クヴィたちが飛びのいた。

「な、何だ!?」

「電気!?」

 スウィートが後ろを向くと、バチバチと電気を纏わせているアル。
 そして今度はいきなりオムスターの1匹、さっきディラを思い出したと言っていた方が吹っ飛んだ。
 そのオムスターがいた場所にはフォルテが立っていた。

「き、貴様ら……!」

「スウィート、シアオ。ディラさんを安全なとこに連れてけ」

 アルがいつもより冷ややかな音色で言う。クヴィの睨みをもろともしていない。
 しかし、となかなかスウィートとシアオが動かずにいると、元きた道から声がした。

「ディラ!! 『シリウス』!」

 スウィートが後ろを向くと、そこにはロードと、そして何故かシルド。
 分からない組み合わせに首を傾げる。
 すると今度はフォルテがでかい声で叫んだ。というか怒鳴った。

「とっとと連れてけって言ってんのよ! つべこべ言わずに運びなさい!!」

 フォルテに気迫におされ、スウィートとシアオはディラをうまく担いででんこうせっかでロードたちの元までいく。
 ロードはディラを見ると悲痛の表情を見せた。

「ディラ! ディラ!!」

 一生懸命にロードがディラの名を呼ぶが、ディラは動かない。
 スウィートが心配そうな表情をしていると、シルドが何も言わずに動いた。そしてディラの体の傷を診る。

「…………今すぐギルドに運んで治療するんだ。まだ大丈夫だ」

「じゃ、じゃあ早くギルドに運ばないと……」

 しかしシアオの言葉はそこで途切れる。
 まだカブトプス達がいるのだ。簡単に逃してもらえるとは思えない。

 すると未だ電気を纏ったアルがスウィート達の方を見ることなく、静かに言った。

「スウィート、シアオ、シルド。お前らは先に進んでくれ。
 親方様はディラをギルドまで運んでください。あと……先輩方に会ったら此処まで来ないよう言ってもらえますか。俺たち2匹で十分です」

「え?」

「…………。」

 スウィートとシアオは困惑した表情を見せる。シルドとロードはただ黙り、アルを見つめている。
 するとアルは少しだけスウィート達の方へ視線を寄越した。

「フォルテと昨日 話してな。欠片を持ってるのはシアオ、そして未来を変えようと未来から来たスウィートとシルド。
 お前らと違って、俺たちは完全なイレギュラーだ。“幻の大地”にいく者じゃない。……どっかではぐれようとは思ってたんだ」

「だから、此処はあたし達に任せて先に進みなさい。時間は残り僅かなのよ。こんなとこで時間くってどうすんの」

「……ゴメンだけど、ボクは2匹に任せるよ。ディラが危ないし……。2匹とも、すぐギルドに戻るんだよ」

「はい」
「分かってるわよ」

 するとロードはディラを抱えて元きた道を戻っていく。
 スウィート達はなかなか動こうとしない。迷っているのだろう。何せ相手はあれだけ強敵とよばれた相手だ。

 しかし、フォルテが静かに、言い聞かせるように言った。

「信じなさいよ。こんなトコでくたばったりはしないわ。『ドクローズ』じゃあるまいし。
 あたし達はアンタ達を信じて、「未来を必ず変えてくれる」って信じて先に進んでもらうの。アンタ達だって、あたし達を信じなさいよ。そんできちんとやるべきことやってきなさいよ」

「……!」

「…………いけよ」

 シアオは涙目になって決心したような目をする。しかしスウィートはまだ迷っている。
 するとシルドはスウィートを一瞥してから

「……悪いが行かせてもらう。頼んだ。いくぞ、シアオ、スウィート」

「……うん。絶対、絶対にギルドで待っててよ。必ず変えてくるから」

 シアオとシルドは動こうとするが、スウィートはやはり動かない。

「スウィート、いけ。今やるべきことを考えろ」

「…………うん。絶対に、変えてくるから……!」

 ようやくスウィートも動く。
 3匹が通ろうとするが、勿論クヴィ達が黙っていない。

「待て! 易々と通らせてたまるか――」

「アンタらの相手はこっちでしょう? 炎の渦!」

 フォルテが技を放つ。
 するとクヴィたちと、そしてフォルテとアルを炎が囲んだ。少し大きな円で、炎は結構な高さまである。
 クヴィたちはアルとフォルテを睨む。

「貴様ら……!」

「通らせねぇって言ってんだろ」

「スウィート達の邪魔はさせないわよ」

 ニッ、とフォルテとアルが笑った。








「……っ、ディラ! 頑張ってね! すぐに運ぶから!」

 ロードはディラを抱えながら元の道を走って戻っていた。何度も何度も声をかけながら。
 するとディラがピクリと動く。

「おやかた、さま……?」

「! ディラ! 気がついたんだ! ちょっと痛いだろうけどギルドにつくまで我慢してね!」

 ロードは必死に声をかけながら走る。
 すると前から「親方ー!」と呼ぶ声が多数 聞こえた。
 その声には聞き覚えがあり、ロードが顔を綻ばせる。その声の主は見慣れたものたち。

「「「「「「「「親方様ー!!」」」」」」」

「皆!」

 ギルドの弟子達が前から凄い速さで走ってきている。ロードが止まると、弟子達はそこまで走り、やっと止まった。
 そして弟子達はロードが抱えている者を見ると様々な反応を見せた。

「ディ、ディラさん!?」

「こ、これ……ど、どうしたんだよ親方!」

「訳は後で説明するよ! とにかくギルドに急がなきゃならないんだ! 模様については『シリウス』に任せてあるから、皆はボクと一緒に来て!」

 そのロードの言葉に弟子達は困惑の色を見せたが、親方の命令ということもあって、頷いた。
 すぐにまた走り出そうとすると、ディラから言葉を紡いだ。

「しか、し……情けないです、よね……」

「ディラ?」

「同じ、敵に……また……やられるなんて……」

 ディラはおそらく自分を責めているのだろう。
 また同じ相手に、更に同じやり口でやられた自分のことを。そんな自分を責めること以外できないのだろう。
 しかしロードは首を横に振った。

「そんなことない! 前に僕たちが此処に来たとき……ディラはすぐにやられちゃったから覚えてないかもしれないけど……けど……ディラはクヴィたちに襲われたときディラは……僕のことを庇ってくれたんだよ」

「えっ……?」

「カブトプスたちはその後僕が追い払ったけど……ディラが庇ってくれなきゃ僕はやられていた。ディラは僕にとって命の恩人なんだよ」

「そう……だったんですか……」

 ディラは小さく笑みを浮かべる。

「ただで、やられた訳じゃ、なかったんですね……」

「ごめんね、またこんな目にあわせて……。ディラは……ボクにとって……1番 大切な相棒だよ……」

「そんなこと……親方様に、言っていただけるなんて……とても……幸せ、です……」

「ディラ!? ディラ!!」

「ディラさん! しっかりしてください!」

「おい、ディラ!」

 言った後、ディラは何も言葉を発さなくなった。
 ロードも、ギルドの弟子達も何度も名を呼ぶ。しかし完全に気を失ったようだった。
 目でロードは合図し、弟子達とともにギルドへの道を走る。

■筆者メッセージ
ストックがきれた。あぁぁぁ……。
今まででてこなかったのはあれです、テスト週間だったからです。すみません。
アクア ( 2013/05/17(金) 19:42 )