81話 やってみなくては分からない
「はどうだん!」
「シャドーボール」
2つの技がぶつかり合い、地上で小さな爆発がおきる。シアオは土煙が舞っていない所までさがった。そして様子を見る。
シャオがこちらへ来ている様子はない。だが、遠距離で攻撃していくる可能性は高いため、安心はできない。
「サイコキネシス」
「うわ!?」
声が聞こえ、シアオは急いで右に動く。横を見ると地面が大きく凹んでいた。
いつ晴れたのか、土煙はほとんどなく、シャオの姿がはっきりと見える。もう笑顔はない。
「まねっこ――サイコキネシス!」
同じようにシャオに向かって技を放つが、軽々と避けられる。やはり使える技となるとパターンも分かっている。
シアオは足に力をいれ、でんこうせっかでシャオの元まで近づく。そして少し離れたところから
「はっけい!!」
「甘いね、悪の波動」
当たる寸前のところで攻撃は跳ね返された。
「やっぱ、凄いや」
「これでも一応、君よりは多く戦っているからね。悪の波動」
撃たれた悪の波動を避けてシアオはすぐに離れ、シャオの様子を見るように止まる。少しするとシアオはまた動く。
「まねっこ!」
先ほどシャオがやった技――悪の波動がシャオに向かっていく。シャオは動こうとせず、それを黙ってみている。
シアオはおかしい、と訝しげにシャオを見る。
しかしすぐにドォンッという音をたてたのに、シアオは目を見開く。
「当たった……? いや、そんな訳ないよね。だってさっきの距離なら避けられたし……」
「戦闘中に考え事とは余裕じゃないか、シャドーボール!」
「な、うわっ!!」
いきなり上からシャドーボールが降ってきて、シアオは何とか直撃は避けるが、少しだけ当たりダメージを食らう。
横に転がるように避けたので、シアオはすぐに体を起こす。そして空中から地上におりてきたシャオを見る。おそらく浮いていたのはサイコキネシスだろう。
「攻撃、やっぱりあたった訳じゃないんだ……」
「勿論。あの攻撃だったら簡単に避けられる。あれはただ、攻撃の打ち消しあいをしていても無駄だと思ったからとらせてもらった戦法、とでも言っておこうか」
シャオの顔には余裕の二文字が似合う。それほど、戦い慣れているのだろう。
「シャドーボール」
「なっ……!」
小さいが、大量のシャドーボール。
一瞬にして作ったシャオを見ると、やはり余裕といった表情。一挙に迫ってくるソレをシアオは避けようとでんこうせっかで遠くに逃げるが――
「これで終わりだと思った? 甘いよ、シアオ君」
「う、嘘……!?」
シャドーボールは真っ直ぐに進んでいたが、急にシアオの方に向きをかえて向かってきた。
おそらくシャオがサイコキネシスで操っているのだろう。シャドーボールはシアオを追うようにしてとんでいる。
「くっ……」
「さて、いつまで追いかけっこは続くかな? まぁ、」
長続きはしないだろうね、シャオがその言葉を言った瞬間、いくつかのシャドーボールが上にいく。おそらくシアオを囲むつもりだ。
シアオは忌々しげに顔をゆがめる。四方八方で囲まれたら絶対に避けきれないと分かっているからだ。
「はどうだん!!」
シアオはいくつかのシャドーボールにはどうだんを撃って、消滅させる。
だがシアオが撃てるはどうだんと、シャオが作った小さなシャドーボールの数では、全てを消しきれない。
ドォンッという音をたてて、多数の小さなシャドーボールがシアオに直撃する。
「………………。」
無言でシアオがいた場所をシャオは見る。その場は土煙が舞っていてシアオの居場所は分からない。
そのままシャオは見ていたが――
「なっ!」
後ろからシアオがからわりをしようとしているのを、アイアンテールで受け止めた。シアオは気付かれたのに驚愕を隠せていない。
するとシャオは顔だけ後ろに向け、不敵に笑って見せた。
「大体の行動パターンは読めてるよ。残念」
「うわ!」
サイコキネシスで飛ばされ、シアオは体を強く岩に打ち付ける。その衝撃にシアオは顔を顰める。
シャオはニコリとシアオに向かって微笑んだ。だがシアオはその微笑を見て、少し身震いをする。微笑でも、前と同じように見えても、全く違うと分かるのだ。
「その程度でよくゼクトから逃げられたものだ。あぁ、シルド君もいたからかな? でも……今の君がゼクトと戦ったら必ず負けるだろうね」
「ッ……。そんなの、やってみなくちゃ分からない!」
「そうだね。でも僕程度を倒せないようでは、絶対に勝てないよ」
そんなの重々 承知だ。シアオは心の中で呟いた。
体を起こしてシャオと向き合う。そして慣れないがどうしようか、と少し頭の隅で考えた。
だが、シャオはそんな時間さえ与えなかった。
「悪の波動!」
「で、でんこうせっか!」
急いで思考を止め、攻撃を避ける。
シアオは考えることを放棄し、シャオに攻撃を放った。
「はどうだん!」
「サイコキネシス」
はどうだんがサイコキネシスによって操られ、シアオの方に向かってくる。
だがシアオは避けず、そのはどうだんと真正面から向き合った。そんなシアオにシャオは顔を顰める。
するとシアオははどうだんが当たる寸前のところで、声をあげた。
「はどうだんっ!!」
「なっ、」
今度はシャオが驚愕した。
シアオが撃ったのは――とても巨大な、さっきとは比べ物にならないくらいの大きさのはどうだんを作り出したのだ。そしてそのはどうだんでシャオが操っているはどうだんを掃滅させた。
だが、シアオはこれで終わりではなかった。
「はっけい!!」
自分で撃った巨大なはどうだんにはっけいをし、それをバネとさせて加速させた。
サイコキネシスで巨大なはどうだんを操ろうとしてたシャオは、それにも目を見開いた。加速させるとは思ってもおらず、操る前にシャオに巨大なはどうだんが直撃した。
はどうだんは格闘技。そしてシャオは悪タイプ。効果は抜群で、それに加えてはどうだんは強大なものだった。これは結構なダメージを与えただろう。
シアオは目を瞑る。さっきのように不意打ちで攻撃されるのを防ぐため、周りの気配――はどうを探る。
すると、斜め後ろにはどうを感じたシアオはすぐさま攻撃態勢にうつった。
「アイアンテール!」
「はっけい!!」
シアオが感じたとおり、シャオは斜め後ろから来ていたが、シアオのはっけいによって飛ばされる。
アイアンテールは寸のところで当たらず、シアオはすぐに攻撃をする。
「まねっこ!」
「っ……! アイアンテール!!」
予想以上の速さで態勢を整えたシャオは、すぐにシアオがシャオのまねをしてやったアイアンテールを同じ技で受け止めた。
すると相打ちで、シャオもシアオも吹っ飛んだ。
「うわっ!!」
「ぐっ……!」
シアオは何とか岩に当たる寸前に態勢を整え、岩に足をつき、1回転して着地する。シャオも受身をとり、ダメージを軽減したようだ。すぐに起き上がった。
するとシャオは自虐的に笑った。
「どうやら僕は、君を甘く見すぎていたようだね」
これだけダメージを食らうとは思わなかった、そうシャオは続ける。
シアオは少しだけ笑みを浮かべる。少しはダメージを与え認識を改めた、という優越感から。
だが、そんな優越感もすぐに消え去ることになる。
「やっぱり、気を抜くものではないね」
そう言ったシャオが、口の両端を少しだけ吊り上げたことで。