74話 ギルドの意味
「来ちゃった、来ちゃったよ……。懐かしいなぁ、この緊張感……!」
「知らないわよ」
シアオの言葉をフォルテがバッサリと切る。
今いるのはギルドの前。
起きるのが遅く、そして少し海岸で考え事をしていた結果、もう夕方だ。時間がないというのにゆっくりしすぎだと言われても仕方ないだろう。
とりあえずギルドに入る。……ためには門を開けてもらわなくてはならない。つまり足型確認をしてもらわなければならないのだ。
シアオが最初に言ったのは足型確認が懐かしい、といったのだ。何故か乗るのはシアオ。
そして何故か時間がかかっていた。
「うわぁ、ホントに懐かしいよ、この緊張感! ドキドキするっていうかさ、何というか……」
「うっさいわよ、シアオ。アンタ黙んなさいよ。つかとっとと乗れ!」
「全くだ。お前の心情とか興味ない」
グサグサと棘のある言葉がシアオに突き刺さる。容赦というものを知らないのだろうかこの2匹は、と思える言いっぷりだ。
スウィートは何ともいえない表情で3匹を見ている。フォローしても恐らくは無駄だろう。
するとシアオがはぁーっと息を思いきりはいた。気持ちを落ち着けているつもりなのだろう。
「よし、じゃあいくよ!」
「早くしろっつってんでしょ」
「とっとと乗れ」
「ちょ、酷くない!?」
「と、とりあえずシアオ、乗って!」
色々と酷い2匹にシアオがツッコむ。スウィートは時間がないのでとりあえず、と促す。因みにいうとフォルテの目がどんどん吊り上がってきているので、シアオの身を案じて促したのもあるが。
シアオは渋々とだが、格子の上に乗った。すると
「ポケモン発見! ポケモン発見!」
「ハダルの声だ……」
懐かしい元気な声。シアオはそれだけで涙目になっている。
他3匹というとスウィートもちょっと泣きそうになっている。フォルテは若干だが嬉しそうだった。アルの表情には変化はなかった。
そんなこと知らず、ハダルは続ける。
「誰の足型? 誰の足型? 足型は――」
そこで声が途切れた。
アル以外は首を傾げる。おそらくアルは察しているのだろう。
「あし、がた……は…………。この、足型は……!」
「おい、ハダル!? いったい何処いく気だ!?」
次にラドンの声がする。どうやらハダルが持ち場を離れたらしい。
そんな会話を聞いていると「帰ってきた」という気持ちが本当に湧いてきた。ここまできてからアルの少々頬が緩んだ。
そんな『シリウス』の様子は知らず、ハダルが言葉を続ける。
「だって、だってあの足型は…………
シアオさんなんです!!」
「やった、ちゃんと気付いてもらえた!」
ハダルの声のあと、場違いなシアオの声。そしてすぐに
「な……な……」
「「「「「「「何ぃぃぃぃぃぃいぃぃ!?」」」」」」」
弟子達の煩い声が響いた。思わず『シリウス』が耳を塞ぐ。
するとギルド内からドタドタという煩い音が聞こえる。弟子達にとっては知ったこっちゃないという感じだが。
すると格子からほんの少し離れたところから土が盛り上がり、久しぶりの顔を見た。
「やっぱりシアオさんだ! それにスウィートさん、フォルテさん、アルさんも!」
「ハダル! 久しぶり!」
ハダルだ。おそらく見張り穴からそのままこっちに来たのだろう。
シアオはハダルを見た瞬間に顔を明るくさせ、そして完全な涙目になった。シアオだけだが。
「帰ってきたんだ……ギルドに……」
スウィートがポツリと呟いた瞬間、ギルドの門が大きな音をたてて開き始めた。その門は、案外はやくに開いた。
そして開いた瞬間に、見慣れた顔ぶれがすぐに出てきた。
「ヘイヘイ、ホントだ!」
「『シリウス』ですわ!」
「お前達、生きてたんだなぁ!」
「どうやら無事そうだな」
「心配してたんですよ?」
「うぅ……あっしは……あっしは……!」
「怪我とかねぇか?」
「よく無事だったな」
次々と弟子達が『シリウス』に声をかけてくる。とても温かい言葉ばかりだ。一部失礼なものもあるが。
シアオはついに涙を流し始め、スウィートは堪えている。フォルテは普通に笑っており、アルも笑顔だった。
「ふぇっ……っ……。よかったぁ……!!」
「……よくご無事で」
遅れてでてきた『アズリー』も『シリウス』に声をかける。
メフィはシアオと同じで涙を流して「よかった」と何回も呟いている。しかし久しぶりに会っても凛音は凛音だった。無表情だ。
するとギルドの中からロードと出てきて、弟子達が道を開けた。
そして『シリウス』の前に立つと、ロードはいつもと変わらぬ様子で言った。
「おかえり、『シリウス』」
その言葉は何よりも4匹を安心させる、何かがあるように聞こえた。
「「「「「「「え、えぇぇぇぇぇぇえぇぇ!?」」」」」」」
ギルド内――『シリウス』を囲むように弟子達が立っている。そしてその弟子達は鼓膜が破れそうなくらいの大声を出した。
スウィートとアルは耳を塞ぎ、シアオは「うーっ」と何故か唸っており、フォルテは不機嫌であった。煩かったからだろうが。
ギルドに入ってから『シリウス』はギルドの皆に未来で見てきたこと、ゼクトのこと、シルドのこと、全て話したのだ。勿論、真実を。ゼクトのことも包み隠さず。
それが終わると弟子達が大声をあげた。そして冒頭に戻る。
すると皆が慌てている中、ディラが言葉を発した。
「ちょ、ちょっと待て。話を整理させてくれ」
「うん」
シアオが頷くと、ディラは何故か深呼吸した。意味がわからない。
「エート……今までの話を纏めると……まず、シルドは実はいい奴で、世界を救うために時の歯車≠集めてたと」
「は、はい」
「逆にゼクトさんは親切そうに見えたのは表の顔で……実は極悪非道の悪者だったと」
「……うん(極悪非道までは僕は言ってないよ)」
「スウィートは実は未来世界の人間であり、シルドの仲間で、相棒だったと」
「そーよ」
「ゼクトさんはそのスウィートとシルドの命を狙って未来世界へと連れて行ったと。因みに3匹はオマケで」
「そうです。……オマケかどうかは知りませんが」
「お前らはそのゼクトさんから逃げ、命からがらこの時間に帰ってきたと」
「そー、そー。恐ろしかったわー」
「棒読みで言うな。というか黙ってろ」
「そしてこの世界はもうじき星の停止≠ェおこると」
「うん。時間ないよ」
「シアオ。今はそれいいから……」
「それを食い止めるためにシルドは再び時の歯車≠集め、お前達は“幻の大地”を探していると! こういうことだよな?」
「「「「うん/はい」」」」
ディラの推測に4匹は交代ごうたいで返事をしていきい、最後は息ピッタリで頷いた。返事のシンクロ率は高いらしい。
するとディラは俯き……そして体が震えだした。
「ははっ……」
「どかした、ディラ?」
「はははははははっ!!」
顔をあげるとディラは満面の笑み。そしていきなり笑い出すので、『シリウス』はちょっと引いた。因みに凛音の冷たい目線も頂戴した。
そんなことは気にせず、ディラは続ける。
「お前ら。きっと悪い夢でも見たんだろう♪ 自分達の部屋で休んできなさい!」
「うん! ……って、アレ?」
「は?」
シアオは勢いよく頷いてから、首を傾げた。因みにフォルテは不機嫌オーラ丸出しである。
スウィートは言葉の意味に気付き、すぐに弁解しようとする。
「ちょ、ちょっと待ってください! 嘘とか冗談いってるわけじゃないんです! これは全部 本当のことなんです!」
「分かってる、分かってる♪ 大分お疲れのようだが、一晩寝れば治るから!」
全然分かっていない。何を分かっているというのか。そんな『シリウス』の気持ちは残念ながらディラに通じていない。
フォルテは今にも火を噴きそうで、アルはそれをとめている。スウィートはどうすればいいか分からずうろたえている。シアオはすぐに反論した。
「違うって! 全部ホントのこと――」
「しつこいぞ! お前達の話のどこが本当だというん、うわっ!?」
「全部ホントっつってんでしょうが、鳥! マジで焼き鳥にするわよ!?」
「お前……!」
シアオが言おうとしても、ディラの怒鳴り声で遮られた。そしてディラの反論も、フォルテの火炎放射によって遮られた。
ディラはフォルテの発言にお怒りのようだが、当本人は気にしてない。
「それに“幻の大地”なんて情報屋の私ですら聞いたことがないよ!」
「それはアンタの情報が少ないだけでしょ! どーせ刃とかの方が詳しいもの!」
「知らん! 第一、あの親切なゼクトさんがそんなことをするわけないだろう!?」
「馬鹿じゃないの!? ゴーストタイプはこの世の悪だって習わなかったわけ!?」
「習わんわ、そんなもの!」
フォルテとディラの煩い言い合いが続く。
『シリウス』としてはフォルテを応援したいところだが、色々と間違っているので応援のしようがない。
すると言い合いをするフォルテとアルが頭を叩いてやめさせた。
するとシアオが俯きながら話す。
「そりゃゼクトのことは僕だってショックだったし……信じられなかったけど……」
「私はゼクトさんを尊敬している。だからやはり信じられない」
控えめで、どんどん声が小さくなっているシアオの言葉に、フィタンが発言した。確かに信じられないというのも無理はない。
するとそれを聞いたディラがドヤ顔で『シリウス』を見た。
「だろ? ほら見ろ! 皆はワタシと同じ意見だぞ!」
「まだ1匹しか発言してないじゃないの」
「というか私まで勝手に巻き込むのやめていただけませんか。大変 不愉快です」
ディラが高々しく言ったのに対し、刺々しい言葉が返ってくる。
フォルテと凛音であった。凛音もキッパリ言うタイプなので、年上だろうと容赦はしない。ディラは凛音に対し、若干顔がひきつっていた。
すると難しい顔をしたルチルが声を発した。
「でも……よく分からないことがありますわ。ゼクトさんが未来に帰ろうとしたあのとき……」
〈別れるのはまだ早い!〉
〈きゃっ!?〉
〈わっ!?〉
〈スウィート!! シアオ!!〉
〈2匹を放せ!!〉
〈お前達も……お前達も未来に来るんだッ!!〉
〈うわぁぁぁぁぁぁあ!!〉
「――あの時のゼクトさんの様子は、どう見ても変でしたわ……」
「そうか? あれはたまたまシアオ達が時空ホール≠ノ落ちたんじゃないのか?」
するとディラの言葉に反論する声が出される。
「いや、違う! 確かにあの時、ゼクトさんはシアオとスウィートを引きずり込んでた!」
「ヘイ! そうだぜ! 確かにあんときは妙に変だった……様子も……」
どうやら弟子たちはきちんとあの時のことを見ていたようだ。ゼクトの様子が変だったということも。全て。
「でも何でゼクトさんはそんなことをしたんでゲスかね?」
「もし……もしシアオさん達の言う事が本当なら……ゼクトさんの行動も辻褄があいますわ」
「ちょ、ちょっと待て!」
皆の発言を黙って聞いていたディラだったが、突然言葉を発した。少々焦っているようにも見える。
「じゃあ何だ? 皆はシアオ達のいう事を信じるって言うのかい?」
「他の方々はどうか知りませんが……私は信じますよ、その話」
「り、凛音!?」
皆が目を見開きながら凛音を見る。凛音はいつもどおり、淡々と告げる。
「確率が高いのはこちらです。もともと私は確証のない真実なので信じておりませんので。あのゼクト・スペクテースの行動を見ているのなら、信じる以外ないでしょう」
「り、凛音ちゃん……」
凛音はそれだけ言うと黙った。目を瞑ってしまったところを見ると、これ以上話す気もないのだろう。嬉しかったスウィートがキラキラした目線も送っているのも無視だ。
ディラはそれでも、という感じで辺りを見渡す。
「で、でも他の皆はどうなんだい!?」
弟子達は誰一人として口を開こうとしない。
尊敬しているポケモンだからこそ、そんなことなど信じられないのだろう。けれど凛音の言うとおり、あのゼクトの行動を見たら辻褄があうのはシアオ達の話だ。だから、迷ってしまうのだ。
するとおそるおそるとあるポケモンが口を開いた。
「あっしは……あっしはスウィート達の話を信じるでゲス」
「えぇ!? なんだって!?」
レニウムだった。彼もゼクトのことはとても尊敬しているはずだ。だからこそ、誰もが目を見開いていた。
ディラは「嘘だろ!?」とでも言いたげに声を荒らげる。
「じゃあレニウムもゼクトさんが悪者だっていうのか!?」
「うぅっ……確かにあっしもゼクトさんのことは尊敬してたゲス……。だからこそ、そう言われると辛いでゲス」
「だ、だったら――」
「でも、あっしにとって……それ以上に、スウィート達の方が大切なんでゲス……。だから、あっしはスウィート達を信じるでゲス。何たって大切な仲間でゲスから」
「な、何と〜〜!?」
「レ、レニウム!」
今度はシアオがレニウムにキラキラした目線を送る。無論スウィートも。フォルテは「どーだ」といった感じな目線をディラに送った。アルに叩かれたが。
それに続くように、また1匹が声をあげる。
「あ、あたしも信じます! センパイが嘘つくなんて思えません!」
「メフィ……」
するとそれに続いて、他の弟子達が声をあげ始めた。
「ヘイ、おいらも信じるぜ!」
「私も! 何ていったって大切な仲間ですもの!」
「ワシも信じるぜ!」
「僕も!」
「私もです!」
「俺もだ!」
「仲間のことが信用できなくてどうするのだ!」
「ひぇぇぇ……」
「み、みんなぁ……。ありがとう……! ホントに……本当に、ありがとう……!」
ディラ以外の全ての弟子達が「信じる」という言葉をかけてくれた。ディラは未だ驚いたような顔をしている。シアオは涙を流しながらも礼を言う。
スウィートは嬉しそうに微笑み、フォルテは未だドヤ顔。アルも満足そうな笑顔をしていた。
するとロードが弟子達の輪に、いつもと変わらぬ笑顔で入ってきた。
「やぁ! この話は纏まったみたいだね♪」
「「「「「「「「「えぇ!?」」」」」」」」」
ロードの発言にほとんどの弟子が声をあげる。だがロードは構わず続けた。
「みんな友達のことを信じてくれて良かった、良かった♪ じゃ、早速“幻の大地”を探しに――」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ親方!」
「ん? どーしたの?」
話をそのまま勝手に勧めようとしていたロードを、ラドンが止める。それの意味も分かっていないロードは首を傾げる。
「まだ話は纏まってないんじゃないか?」
「え?」
「ワシ達はいいとして、ディラがまだ納得してないんじゃないかと……」
そう、弟子達が気にしているのはディラのこと。ディラは俯いていた。
ずっと『シリウス』の話が信じられないと反論しているディラ。もう嫌ってくらい。誰よりも反論した。
そのディラが納得していない。つまり纏まっていないという事。全員が気になっていたのだ。
するとロードは笑顔で
「なぁんだ。そんなこと? ディラなら心配ないよ?」
「「「「「「え?」」」」」」
全員がその言葉に素っ頓狂な声をあげた。ディラは未だ俯いたまま。
「ディラも納得してるもんねー?」
(((((((えぇぇぇぇえぇ!?)))))))
「ディラもシアオ達のこと信じてるもんねー?」
それは拷問に近い言葉だった。ロードは気付いていないが。
これで「いいえ」なんて答えた場合、どうなるかなんて明白である。ある意味で拷問に近い。
「ねー? ディラー?」
それは正しく悪魔の言葉のようにも聞こえた。
「ふふっ……ふふふ……。ふははははははっ!」
またしても不気味に笑いだしたディラ。悪者のような笑い声だった。
ディラの目には涙があり、笑顔をやけくそで作っていた。弟子達は冷たい目線でディラを見る。ロードは相変わらずニコニコとしていた。
「フッ……さすが親方様。バレてしまってはしょうがない。そう、ワタシは最初からシアオ達のことを信じていたよ」
(嘘だな)
(見苦しいにもほどがあるぞ)
「ただワタシが信じてしまうと、他の皆がついてきちゃうからな……」
「見苦しい嘘つかないでくださいます? それにその考え方は自画自賛にもほどがあります」
(どんなんだよ……)
(凛音の言うとおりだよなー)
「フッ……だからワタシはお前らの友情を試してみたのだ」
(マジでゲスかぁ……?)
(いや、絶対的に嘘だろ)
「でもワタシは確信してたよ! 皆は仲間を信じると!!」
(ドヤ顔だなぁ……)
(よく言う……)
皆がディラの言い分を聞きながら、弟子達がそれぞれ思う。まぁ、嘘だろうという気持ちしかないので、疑うものしかないが。
因みに途中で入ってきた凛音の言い分は完全スルーで、凛音が思いきり顔を顰めていたのにディラは気付いていない。
「ハハハハハハッ♪ ハハハハハ――うわっちゃ!」
「調子のってる鳥が……今すぐに焼き鳥してやるわよ!!」
笑っているディラに、フォルテが本気で狙って火炎放射を撃った。ディラは反射的に避けたが。
見るとフォルテの目は本気である。本当に焼き鳥にする気満々である。
「わぁぁぁあぁぁぁ!! 何やろうとしてんのフォルテ!?」
「フォルテ落ち着いて……!?」
「アホ、やめろ」
狙いを定め、ディラに向かって火炎放射を撃ちそうなフォルテにスウィートとシアオが声をかけるが無意味。結局アルがフォルテの頭を叩いて終わった。
フォルテは未だ不機嫌オーラ丸出し。ディラは顔をひきつらしていた。
「スウィート、シアオ、フォルテ、アル」
相変わらずの笑顔でロードが『シリウス』を呼ぶ。
「僕は信じるよ。何たって仲間だもん♪」
「親方様……」
スウィートは嬉しそうに顔を綻ばせた。やはり「言ってみてよかった」とスウィートは心の中で思っていた。
仲間だから。そういう理由で信じてくれている。それがスウィートにとってはとても嬉しかったのだ。
「皆も聞いて。今、色んな所で時が止まり始めてる。そして『シリウス』の話で、今 僕達の世界に危機が訪れていることが分かった。
であれば何とかしなくちゃね。だから、ここは“プクリンのギルド”の名にかけて皆の力をあわせ、そして“幻の大地”を発見するよ! 頑張ろうね、皆!」
「「「「「「「「「「おぉぉぉぉぉおぉ!!」」」」」」」」」
ロードの言葉に、弟子達が元気よく声をあげた。これだけのポケモンが協力してくれるのだ。心強いだろう。
「ディラ!」
「は、はい! 皆! 今から全ての仕事を“幻の大地”発見にシフトする! また、今この世界でおこっている事も他のポケモン達に知らせるぞ! 忙しくなるが、みんな頑張ってくれ!」
ロードの呼びかけに答え、説明したディラはさすがだろう。まぁ、さっきのがなかったような感じの素振りだが。汚名返上といったところだろう。
するとルチルが挙手をして発言した。
「だったらファーム達にも知らせないと! このままではシルドと戦いになってしまいますわ!」
「ヘイ! じゃあおいらもそっちに行くぜ!」
「では皆。それぞれ役割を決め、各自で動いてくれ!」
『シリウス』だけでは、こんなにできなかった。色々なことができなかったに違いない。
仲間が自分を信じ、そして動いてくれている。それがスウィートは嬉しくて堪らなかった。ありがとう、それ以外みつからなかった。
「皆、“幻の大地”を探すよー! たぁぁぁぁぁぁあぁぁ!!」
「「「「「「「「おぉぉぉぉおぉぉ!」」」」」」」」
またしても弟子たちが声をあげる。よほど気合が入っているようだ。そして皆がわいわいと喋りだす。いく気満々である。
しかし、といったようにロードが言葉を紡いだ。
「けど……とりあえず今日は駄目だよ? 気付いてないかもしれないけど、もう夜だから♪」
「あっ……!」
「そ、そうでした。夕食の支度してない……!」
「忘れてた……」
「という訳で今日はご飯をしっかり食べてから明日に備えてねー!!」
「「「「「「「「「おぉぉぉぉおぉぉ!」」」」」」」」」
何度聞いても、その弟子達の揃った声は大きかった。