70話 守るための代償《前編》
俺たちは最初からずっと一緒に居たわけじゃない。最初はバラバラだった。
ミングとムーンは幼馴染らしいから一緒に。
アトラは1匹だけで星の停止≠フ調査。
フレアはただ単に旅。
俺とシクルは姉がいて、その姉とともにふらふらと歩いてた。
リアロは両親とはぐれて1匹に。
ミングとムーンは困っているポケモンを助けたり、暴れているポケモンを止めたりしていた。
「その頃から」ってムーンは言ってたが、ミングは我を忘れて暴れているポケモンが嫌いだったんだと。それでも止めるのに必死だったとか。
アトラは星の停止≠ノついて、ゼクト達に見つからないように調査していた。
スウィートやシルドについては知っていて、「情報交換とかできたらいいな」とか思ってたらしい。
とりあえずアトラはそのまま星の停止≠ノついての調査を続けた。闇のディアルガ≠ノついてもな。
フレアは……星の停止≠フせいで狂った兄から逃げて、それで旅をすることにしたらしい。
兄がどうなったかは知らないし、フレアは語ろうとはしない。ただ「何で逃げたのか」と後悔していた。もしかしたら死んでいるかもしれない、って。
それから後悔しながらも、旅を続けた。目的も意味もない旅を。
俺とシクルは姉と一緒にいた。いや……逃げていたといった方がいいか。
両親は星の停止≠とめようとしていたポケモンだった。だから俺たち家族は追われていた。
結局ゼクトに両親はやられ……そして俺たちも追い詰められた。
そのとき、ゼクトが出した提案……「人手が足りないから、もしもこちらに協力するならその2匹は逃がしてやる」とな。姉はそのままその条件を呑んだ。
そのお陰で俺とシクルは逃がされたが、姉がどうなったかは俺も知らない。シクルに至っては小さかったし、もう姉のことを覚えてない。
それからは俺とシクル、2匹だけで辺りをさまよい続けた。
リアロは両親と一緒にいたが……はぐれてしまったらしく、ずっと1匹でいた。
だがそのとき、リアロは完全な小さな子供だ。そんな子供が1匹だけで生きられるはずも無く、リアロは途中に倒れた。
そのときの心中としては「死んでもいい」とも思ったらしい。
結局そこをミングとムーンが丁度通りかかり、救われたけどな。
まず皆が出会った経緯について話そう。
さっき言ったように、リアロはミングとムーンに助けられ、そして共に行動するようになった。
リアロは最初は躊躇っていたらしいが、親を探す目的を果たすまでは一緒に行動することにしたらしい。ミングがそう宥めたらしい。
俺とシクルはアトラに会った。そして星の停止≠ノついて調査していると聞いて、同行を願った。勿論アトラは何の躊躇いも無く受け入れてくれた。
俺としては星の停止≠調査し、そうしていれば姉の情報が手に入ると思っていた。アトラは闇のディアルガ≠ノついても調べていたから、その手下のゼクト、そして姉の消息も分かると思って。
シクルは俺の真意は知らなかったから、きっと何も分かっていなかっただろうな。ただアトラから太陽とか光ある世界とか聞いていると、星の停止≠止めようと思ったみたいで、やたら積極的になってた。
俺らはそのまま何年かともにいた。ミング達も。フレアは相変わらず1匹だけだったが。
とりあえず話がしやすいよう、俺たちの方の話をしよう。
俺とシクル、アトラは星の停止≠フ調査。
だがなかなか進まなかった。それと同じで姉の情報も手に入らなかった。
けど出来ることは全てやった。ゼクト達に見つからないよう。けれど調査は難攻した。
そんなある日だ。俺たちは普通に森の中を歩いていた。
別に森を歩くことは珍しいことでもなかったし、普通に進んだ。なんとも思わずに。
それが、スウィートとの出会いに繋がった。
普通に歩いていて広い場所にでた。だがその場所は……我を忘れて狂っているポケモンたちがいる、モンスターハウスだった。いたのは確か……8体だったか。
そのときの俺たちは戦いに慣れているわけでもなかったから、苦戦を強いられた。
まず全員を相手にすることさえ不可能だっただろうな。
それでやられると思ったところに、丁度フレアが来た。
登場の仕方はめちゃくちゃだった。いきなり炎ふいてきたし。巻き添えくらう所だった。助かったっちゃ助かったんだが。
まぁ、フレア1匹が来たところで何かかわることも無く。
全員やられて……気を失った。その後のことは俺ふくめて4匹、何にも覚えてない。
気絶した後の俺たちを助けたのはミングとムーンとリアロ。
俺たちが3体はしとめ、ミング達は7体。ミングとムーンも倒れている俺たちを庇いながら、そしてリアロも庇いながらはキツすぎたらしく、ダウンしたらしい。
……まあそれもそうだよな。
これで1匹あまってるわけだ。これを倒したのは――スウィート。倒したというより、癒しの力(ヒーアアビリティ)を使用したんだ。
それで気を失ってた俺たちをスウィートは手当てし、全員を担いでシルドのところまで運んだんだと。
その時の光景はとてもじゃないが異常すぎて、シルドは顔をすごいひきつらせたらしい。「何を運んできてんだ、コイツは」的な感じで。
スウィートはシルドに謝りつつも「治療して」と頼んだ。
シルドもすぐに頷いてくれて、1匹と1人で俺たちは手当てされた。
そして俺が目を覚ますと、スウィートとシルド、アトラ、ムーンが話をしていた。
俺が目を覚ましたのに、スウィート達はすぐに気がついて、俺も話し合いに参加させられた。
アトラは「スウィート達とともに行動したい」と申し出た。目的は同じなんだから、そう申し出るのは全くもっておかしくない。
俺も賛成した。というかアトラに同行したいといった俺が拒否する訳にもいかないしな。
スウィートは何の躊躇いも無く頷いていたんだが……シルドは見事に渋ってくれた。確かにすぐに信用しろというのは無理な話かもしれないが、疑いようは凄かった。
スウィートが懸命に説得しようと試みて、シルドが結局おれた。スウィートの猛烈な説得によって。
その説得の間にフレア、リアロ、シクルが目をさました。
「その説得を見たから」とミングは言っていたが、真意は知らない。
何故かミングも同行したいとか言い出した。そうなるとムーンもリアロもついてくるわけで。それで何故か(ほぼノリで)フレアまで加わり。
これで7匹揃ったわけだ。これが俺たちの出会い。
それから暫くたち、レヴィリネ……レヴィと出会った。
レヴィも俺たちに着いてきてくれるといい、俺たちは10匹で行動することになった。もう完全な団体だ。
星の停止≠ノついて調べながら、ゼクトたちに追われながら。
そのとき、俺が姉のことについて言うと、ミングが1つの意見と案をだした。
「姉があちらにいるのなら、名前はともかく、姓は知られているのではないか? だとするとレンスとシクルは危ないじゃろう。
という事でわしの意見なのじゃが。色違いで種族もイーブイの進化系で丁度いい。いっそ、7匹ぜんいん義兄弟になるというのはどうじゃろうか? これならレンス達の姓も伏せておけるじゃろ。レンスとシクル以外の者の姓を名乗れば」
という意見だ。
賛成はしたさ、全員。そして誰の姓を名乗るかという事で揉めて――結局1番年上の、そして案をだしたミングの姓に決定した。本人は少し渋ったが。
そして「ヴァーミリオン」を名乗るようになり、義兄弟になった。
それからまた同じように過ごした。調査し、逃げながら、またはしゃぎながら。
大変だったけど、なかなか楽しかった。フレアとリアロは相変わらずだったけれど、アイツらのお陰で賑やかだったのは確かだ。
それにしても賑やか過ぎて怖かったけどな。
ゼクトとも何度か接触したらしいし。俺はその何度かのところに居なかったから知らないけど。
そしてこれから――サファイアの中へと入ってしまう事件がおこる。
その日、俺たち義兄弟はスウィートとシルドとレヴィと別行動をした。他2匹と1人は一緒に行動で。
待ち合わせ場所、だいたいの集合時間を決め、それぞれ星の停止≠ノついて調査することになった。
残念ながら情報を得られなかった俺たちは、集合場所へと行った。だが、何時間まってもスウィート達がこないため、7匹で話し合ってからスウィート達が向かった場所へと向かった。
この時、俺らは待っていたらよかったのか、それともこの行動でよかったのか、どちらが正しかったのかは分からない。
今でも……この判断が正しかったのか分からない。他は「これでよかったんだ」というが。
俺たちは森の中へと入った。奥へ奥へと進み、あまり大声にはならないよう、少し声をおさえてスウィート達の名前を呼びながら探した。
そして……1番に見つけたのがスウィートだった。
見つけたのは良かった。だけど……スウィートはいつものように、俺たちの方をむいて声をかけなかった。
いや、かけられなかったの方が正しいだろう。
スウィートは――腹からどよめなく、赤い液体をだして倒れていた。
青白い顔をして腹をおさえ、そのまま地面に倒れていた。地面は、赤く染まっていた。