輝く星に ―時の誘い―












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第7章 それぞれの想い
68話 過去
 アルに連れてこられた(途中でシアオが先頭になったが)場所は、トレジャータウンの1番奥の場所だった。
 フォルテは此処に来た途端、「あぁ、あそこね」といって大量にあった葉っぱを簡単にどけてしまった。そこには大きな穴があり、アルはその穴を指さした。

「ここだ」

「ここ……って、この穴のこと?」

「そう」

 スウィートは不思議そうに穴を見た。
 するとシアオが「えっとね」と言いながら話し出した。

「ここはサメハダ岩っていうんだ。この岩の形がサメハダーの形に似てるからそう名づけられたんだって。
 僕たちはギルドに入る前にここに住んでたんだ」

 そういってシアオは入っていった。それに続いてフォルテとシルドも入っていく。スウィートは戸惑いながらも、アルに促され中に入った。

 そこは住むのに全く問題なさそうなところで、ギルドの部屋よりも広かった。
 葉のベットが3つあることから、本当に3匹がここに住んでいたことを実感したスウィート。
 そしてアルは入ってくる際に葉や枝をいくつか持ってきて入ってきた。それを真ん中において、穴の隅のほうを探る。
 何がしたいのか分からずスウィートは首を傾げるが、勿論。
 するとシアオが穴を見渡しながら、関心したように言った。

「なつかしーね。荒らされてないみたいだし、全く前とおんなじだ」

「そうね」

 シアオの言葉にフォルテも肯定する。
 シルドは外の風景を見ながら、関心したように呟いた。

「なるほど……。崖の中にこんな空洞があるとはな」

 すると後ろからドサッという音が聞こえ、全員がその音がした方を振り向いた。見ると、葉のベットが5つに増えている。

「え、あれ? ベットが増えて……?」

「余ってたのを出した。フォルテはこの枝に火の粉。それで話をするぞ」

 アルは1つのベットに座った。それに続き、全員がベットに座る。
 フォルテはアルが持ってきた葉と枝に火をつけ、それを囲むように全員が座った。辺りがどんどん暗くなり始めていたので、丁度よかった。
 5匹が座り、シアオが1番に口を開いた。

「教えてよ、シルド。スウィートとのこととか、シルドのこととか色々」

「……俺とスウィートは星の停止≠ノついて調べていた」

「ポケモンと人間のペアで?」

「あぁ、途中までは。後からスウィートが連れてきた7匹とか、レヴィが加わったが……」

「7匹って……」

 7匹といわれると思いつくのはあの義兄弟たちしかいない。スウィートは思わずあの賑やかな7匹を想像していた。
 シルドは4匹が7匹のことを分かってないと思い、発言した。

「イーブイの進化系の義兄弟だ。ミング、ムーン、フレア、アトラ、レンス、リアロ、シクルの7匹。
 スウィートがいきなり連れてくるもんだから俺は驚いたがな」

「ご、ごめんなさい……」

 少し罪悪感が湧いてきて、スウィートは無意識のうちに謝った。
 シルドは「謝ることでもないがな……」と呟いて、続きを話し出した。

「スウィートはポケモンと話せるし、何より特別な力を持っていた。その特別な力……時空の叫び≠ェ星の停止≠調べるための重要な役割だった。
 だが……時空の叫び≠ノは問題があった。時空の叫び≠ヘ信頼できるパートナーがいないと発動しない。だから一緒に行動していた。あと時空の叫び≠ヘ時の歯車≠ェ関係しているところでしかおきない。
 だから俺たちは時の歯車≠ェどこにあるかを探るために時空の叫び≠使っていた」

「で、でも……私はこっちに来てから、時空の叫び≠ヘすぐに発動したけど……」

 スウィートがおずおずとしながら、控えめに問いかける。それにシルドは適当に返した。

「すぐに発動したっていうのは、ただお前らが信頼しあってたからじゃないのか? パートナーが誰なのかは知らないが、スウィートはこの3匹がよほど信頼できていたんだろ。
 それにスウィートは記憶喪失。知っている者がおらず、頼るものもない。そんな中、お前らに出会ってことで、よりスウィートはお前らを信頼したんだろう」

 「確かにそれも一理ある」とスウィートは頷いた。
 するとフォルテが「待って」と言って、シルドが言おうとしてた続きを遮った。

「時空の叫び≠ヘ時の歯車≠ノ関係していないところでもおこったわよ? ねぇ?」

「確かにな……」

「そうなのか? ……もしかしたら過去の時空の叫び≠ニ未来の時空の叫び≠ニでは性質が違うのかもしれない」

(過去と未来でかわるところもあるんだ……。あ、未来で発動しなかったのはそのせいかも)

 スウィートはシルドの言葉を聞いて、未来で時空の叫び≠使おうとして発動しなかったのを思い出した。
 情報が少しでも欲しくて時空の叫び≠使おうとしたが、結局は発動しなった。未来では時の歯車≠ニ関係していないとおこらないらしいので、おそらく発動しなかったのはそのせいだろう。
 考え込んでいるスウィートを他所に、シルドは続けた。

「とにかく、俺たちは星の停止≠ノついて調査を進めた。時の歯車≠フ在り処を調べたり、星の停止≠ノついて、もっと詳しく調べたり。まぁ……ゼクトの邪魔とか色々はいったが……。
 そして5つの時の歯車≠フ在り処を調べた後、時の回廊≠使った。しかし……」



〈うわっ!?〉
〈きゃっ!?〉

〈危ないっ!! 避けて!!〉

〈――――!!〉



「……タイムスリップ中に俺たちは何かの攻撃をうけ、離れ離れになってしまった。スウィートがポケモンになったのは、俺を庇って代わりに攻撃をうけたからかもしれない」

(……私は未来の人間で、そして過去にきた。シルドとともに星の停止≠食い止める使命までおって……。何というか、まだ実感がわかないなぁ……)

 スウィートは「うーん」と考える。
 記憶をなくす前に自分について分かったのはいいが、まだ実感が湧かず、少しあやふやだった。教えてもらったとはいえ、記憶が戻ったわけではないので仕方ないのだろう。
 すると考えているスウィートにむかって、シルドが声をかけた。

「ポケモンに変わろうが、スウィートはスウィート。俺の親友であり、相棒だ。
 無事でよかった……。あと、タイムスリップ中にスウィートが攻撃をうけてしまったのは俺の不注意だ。悪かった」

「う、ううん。攻撃を庇ったのはきっと私の勝手な行動だから、謝る必要はないよ。
 それに誰かを、シルドを守ってポケモンに、記憶喪失になったのなら別に構わない。私が大切な人を守れたってことだから……」

「……やっぱり変わってないな。考え方も」

 ポツリと漏らしたシルドの言葉に、スウィートは苦笑した。
 そしてシルドは考えるように、少しの間だけ黙った。しばらくの沈黙のあと、シルドが口を開いた。

「さて、この後のことだが……」

 どうやらスウィートやシルドのことについては一旦、終わりにして、これからの話をするらしい。
 全員の視線がシルドの方に向いた。

「俺はとりあえず時の歯車≠集めに行く。お前らはどうする?」

「あのさ、シルドは時の歯車≠とると一時的にその地域の時が停止するっていってたよね?」

「そうだ。時の歯車≠“時限の塔”にさえ納めれさえすれば、また元に戻る」

 シアオの問いに、シルドが答える。暫し悩んだあと、シアオはもう一度口を開いた。

「じゃあ僕たちはシルドについていくよ。
 時の歯車≠とっちゃうってことで、そこのポケモン達には迷惑をかけちゃうけど……でも星の停止≠ヘ絶対に食い止めないと!」

「あーでも……俺は情報収集にいってくる」

「え?」

 アルの言葉に、スウィートが首を傾げた。アルはついてこないということなのだろうか、と。
 すぐにアルは口を開いた。

「俺たちが未来にいってる間、何か変化があるかもしれない。だから少しでも情報を集めなきゃな」

「じゃああたしも、」

「フォルテはついていけ。正体が分からないように情報を集めるんだから、お前には不向き。俺1匹で十分だ」

「んなっ!?」

 アルについていこうとするフォルテだったが、すぐにバッサリと切り捨てられた。
 今にも火炎放射を繰り出そうな勢いだが、スウィートが懸命におさえていた。そのおさえもあまり意味がなく、今にも攻撃しそうである。

「こ、このっ、アンタねぇ……!?」

「だ、駄目だよ! こんなところで火なんて……!」

 アルは未だしれっとしているが、フォルテは本気で口に火をためているし、スウィートはとめるのに精一杯だ。
 そしてシアオの最後の余計な一言。

「確かにフォルテだったらすぐにバレそうだし、役にたたないよね」

 それを聞いた瞬間、ブチッという音が聞こえた。

「1番はじめにアンタが死ねぇぇぇぇぇぇぇえぇッ! 火炎放射!!」

「うぎゃぁぁぁぁぁあぁぁ!?」

「フォ、フォルテ!?」

 スウィートの静止も虚しく、フォルテはアルではなく、余計な一言を言ったシアオにむかって火炎放射を繰り出した。
 アルは「はぁ」と溜息をつき、シルドは慣れたのか、全く気にしていないようだった。

「とりあえず今日は遅いから寝るぞ。お前らも疲れているだろう。行動は明日からだ」

「了解」

「あたしはもう寝る! おやすみっ!!」

「え、ちょ、シアオは!? 皆もう寝ちゃうの!?」

 シルドの言葉に、アルは短く返し、フォルテは不機嫌なままベットに寝転がって寝る態勢に入ってしまった。シルドもアルも、ベッドに寝転がる。
 スウィートは未だプスプスという効果音が似合いそうなシアオの身を、ただ1匹だけ心配している。

「ほっとけ、スウィート。自業自得だ」

「えぇ!? で、でも……」

 アルの言葉にスウィートはうろたえる。
 この状態で放っておけというのがまず無理な話だ。だが他は気にかけることなく寝る体制に入ってしまって、何かする気はないらしい。
 すると当然、何かできるとしたら自分だけだ。

(放っておけっていっても……このままじゃ気の毒だし……)

 スウィートは暫く悩んだ後、悪いと思いながらもシアオの片手を掴み、引きずるようにしてベットに乗せた。
 そしてふぅ、と息をついてから自分のベットに寝転り、目を閉じた。

アクア ( 2012/12/04(火) 22:15 )