輝く星に ―時の誘い―












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第6章 暗黒の未来
64話 再会
「フォルテ!! アル!!」

 2匹を見た瞬間、スウィートは無意識に名前を呼び、そして駆け寄っていた。シアオも同じだ。
 その呼びに2匹も反応し、そしてスウィートとシアオを見た瞬間、目を見開いた。
 そして驚きに目を大きく開いているフォルテが、言葉を発した。

「スウィート!? シアオ!?」

「やっぱり! 何で2匹ともこんな所にいん――うわ!?」

 シアオが嬉しそうに駆け寄って声をかけると、フォルテがいきなりシアオ限定で火炎放射をした。大事なのはシアオ限定。
 スウィートは驚いて駆け寄るのをやめ、止まった。何が起こった? と疑問に感じながら。さっき見えた赤いものはなんだ? と。
 フォルテは顔を俯かせ、そして体をプルプルと震わせていた。普段はないフォルテの様子だ。そして震えが止まったと同時に顔を上げたと思うと、ニッコリ怖いぐらい綺麗に微笑んで見せた。

「ちょっとあたし、今まさに腹立ってんの。だから……ストレス発散させなさい? 火の粉!!」

「感動の再会と思いきや、いきなり攻撃ぃぃぃぃぃいぃ!?」

 何とかフォルテの攻撃を避けながら、シアオは叫ぶ。フォルテは気にもせずシャドーボールやら火の粉やらを使って攻撃している。
 スウィートがオロオロと見ていると、アルが近寄ってきた。

「スウィート、無事だったか」

「あ、うん。アルも無事?」

「あぁ。とにかく無事そうで何よりだ」

 賑やかに追いかけまわっている2匹を無視して、平和な会話をする2匹。
 慣れているからだろう、こうやって会話できるのは。だからといって放っておくのはどうかと思うが。
 スウィートは未だ追いかけっこをしているシアオとフォルテを見て、アルに疑問を投げかけた。 

「ねぇ……何でフォルテは怒っているの?」

「あー……待たされてたからって理由もあるんだが、シアオの顔を見たからってのもある……かもな」

「…………え?」

 アルの答えにスウィートは首を傾げる。
 なぜシアオの顔を久々に見たからといって攻撃するのだろうか。普段ならしないのに。

「大方、シアオがニッコニコしながら近づいてきたのが腹立ったんだろうな」

「理不尽……」

 スウィートの言うとおりである。そしてスウィートは2匹の方に目をやる。
 それに気付かずフォルテはシアオをまだ追い掛け回している。久々の2匹の追いかけっこを見たスウィートは、なぜか頬は緩み、自然に笑っていた。

「ふふっ……」

「どうかしたか、スウィート?」

「え、いや……フフッ……。なんか、2匹のこういう光景みるの久々な気がして、笑いがこみあげてきて……」

「あー確かにそうかもな」

 アルがスウィートの意見に頷く。アルは笑ってはいないが、どこか楽しそうだった。
 するとゆっくりと来ていたシルドとレヴィが追いついた。

「……! お前らは確か」

「あら、やっぱり知り合いだったの?」

 シルドは驚いたようにフォルテとアルを驚いたように見て、レヴィは少しだけ意外そうに言った。
 アルはシルドを見やる。フォルテはまだシアオを追いかけて気付いていないが。

「あ、あのね、アル。シルドは別に――」

「分かってる」

 悪いポケモンじゃないんだよ、とスウィートは続けようとしたが、アルが強引に言葉を遮った。
 言葉を遮られたスウィートは、驚いた表情でアルを見る。
 フォルテとアルは真実を聞いていないだろうと思って言おうとしたのだが、アルの言葉からすると知っているといった感じだ。

「えっと……その、アル。それは……どういう意味で……?」

「未来世界での真実、シルドが悪党じゃないってこと、ゼクトが刺客で言っていたことが全部デタラメだったってこと……。
 レヴィから真実は全部きかせてもらった」

「あ……」

 スウィートはレヴィを見る。レヴィは何も言わず、ニッコリと微笑むだけだった。
 すると追いかけっこが終わったのか、シアオとフォルテがやってきた。フォルテはシルドの姿に目を見開くと、すぐにレヴィの方に顔をむけた。

「ちょっとレヴィ! 遅い!!」

「しょうがないじゃない。いつ来るか分からなかったし……」

 シルドについてはスルーで、フォルテはレヴィに文句を言っている。
 その光景にスウィートだけではなく、シアオもシルドも驚いていた。何も言われないことが意外なのだろう。
 するとアルが言葉を発した。

「疑って悪かった。アンタの事とかはレヴィから全部きいた。なんで時の歯車≠集めているのかも、全て」

「……コイツとは違って、すんなりと受け入れてるんだな」

 コイツ、とはシアオのことだろう。シアオはむっとした表情をしているが、完全にスルーされいてた。

「俺は完全にゼクトを信用してたわけじゃない。少し疑ってたし。それでもレヴィから真実を聞いて、戸惑ったのは事実だ。
 だが……この世界を見ると、肯定するしかないだろ」

 アルが時の止まっている世界を見渡す。スウィートはなるほど、と納得した。
 だが、すぐに首を傾げた。アルがすぐに受け入れる、というのは予想できるが、フォルテは受け入れることはできたのだろうか、と。
 そんな事を考えていたスウィートは、無意識にフォルテの方を見ていた。視線に気付いたフォルテは、真顔でスウィートの方を見ながら言い張った。

「あたしだってとーぜん、戸惑ったわよ。シルドのことや、未来世界での真実。
 けどね……

      ゼクトが悪者っていうなら、この話を信じないわけにはいかないでしょ?」

「ゼクトが刺客だとレヴィが言った瞬間、ぜんぶ信じ始めやがった。……どんだけゴーストタイプ嫌いなんだよ…………」

((うわぁ……))

「何いってんのよ。ゴーストタイプはこの世の敵。つまりアイツも敵なのは必然的なのよ」

 アルはハァ、と溜息をついた。確かに溜息をつきたい気持ちも分かった。
 どうやらフォルテは最初こそ信じていなかったが、ゼクトが刺客と聞いた瞬間に全てのことを信じ始めたらしい。
 フォルテらしいといったらフォルテらしいが……彼女の将来が少し心配になったスウィートだった。
 するとレヴィがシルドにむかって問いかける。

「えっと……とりあえず時の回廊≠渡るのはこの5匹……でいいですね?」

「あぁ。準備ができたらすぐに出発するぞ」

 そういってシルドはガルーラ像のほうへ向かっていった。
 するとシアオがガルーラ像を指さしながら、3匹に問いかける。

「僕らも準備するの?」

「私は……別に前のダンジョンで道具を使ったり、拾ったりしなかったから……。別にいいや」

「そっか」

 シアオはそういって指さしていた手を下げた。
 それとほぼ同時に、レヴィがこちらにやってきた。そして『シリウス』に「ねぇ、ねぇ」と言って話しかける。

「ちょっと内緒の話なんだけど……シルドさんって実はすっごいせっかちなの知ってた?
 急ぐのは分かるんだけど、もうちょっとゆっくりしてくれた方が、私も嬉しいんだけどなぁ……。できるだけ長い時間、一緒にいたいし……」

「「「…………」」」

「へぇー。確かにせっかちだよね」

 レヴィの言葉を聞いた瞬間、スウィートとフォルテ、アルは言葉の意味を理解した。シアオは分かっていないようで、せっかちという部分に頷いているだけだが。
 するとレヴィはいきなりハッとなり、4匹の方に勢いよく振り返ると

「あっ、あ……ち、違うからね! 私、別に何とも思っていないからね!」

「は、はぁ……」

「……何が?」

「ははーん……」

「あー……分かった、分かった」

 頬を赤に染めながら言ったレヴィに対し、スウィートはぎこちなく、シアオは何も分からずキョトンと、フォルテはニヤニヤと、アルは適当に返した。
 それぞれ違う反応を見せたが、完全にフォルテは怪しい。面白いものを見つけた、といった顔だ。
 それにはレヴィも気付いたらしい。

「そういう事ねぇ……。へぇ……シルドのことをそう考えてるんだー……」

「ち、違うのよ!? 別に恋愛感情で考えてるとかじゃなくて……!!」

「あたし、別に恋愛とはいってないわよ?」

「いや、だから……!!」

 完全にフォルテはレヴィをからかっている。あれは当分のこと止まらないだろう。
 アルはハァ、と溜息をつき、シアオは首を傾げている。スウィートは心の中でレヴィに同情した。あれでは弱みを握られたも同然だろう。
 すると準備を終えたシルドが5匹のもとに来た。
 そして顔を真っ赤にしているレヴィと、それに笑っているフォルテを見て首を傾げた。

「……何をやってるんだ? あいつら」

「あー……えっと……まぁ、じゃれあってる、みたいな……」

 シルドの事実を述べたら、間違いなくレヴィが何か言うのは目に見えている。
 とりあえず適当にスウィートは返しておいた。シルドはやはり納得いかないように首を傾げているが。

「……まぁいい。準備はできたのか?」

「あ、私は大丈夫だよ」

「僕も大丈夫!」

「俺もオッケー」

 シルドの言葉に、スウィート、シアオ、アルが頷いた。あとはフォルテとレヴィだけだ。
 しばらく見て終わるのを待とうと思っていたスウィートだが、終わるような気がしないので、声をかけることにした。

「あの、フォルテ、レヴィちゃん。みんな準備できて行く気なんだけど……」

「あ、了解。あたしは大丈夫よ。行くなら行きましょ」

「わ、私も大丈夫です」

 フォルテは普通に何事もなかったように、レヴィは顔をまだ赤くしながら答えた。
 フォルテの言葉に「お前のせいで行けなかったんだよ」とアルとシルドが心の中でつっこんだのは、本人たちしか知らない。
 するとシルドが歩き出した。それに5匹もつづく。

「時の回廊≠ヨ急ぐぞ。ゼクトたちが来たら厄介だ」

「あのさ、時の回廊≠チて……いったい何なの?」

 シルドの言葉に、シアオが尋ねる。それはスウィートも気になったようで、シルドの方を見た。

「レヴィが時渡りにつかう回廊のことだ」

「時空をこえることのできる秘密の道なの」

 シルド、そしてレヴィが後に付け足して説明してくれた。
 その説明を聞いたスウィートは「時空ホール≠ニ同じようなもので、タイプスリップできるもの」と覚えておいた。あながち間違いではないが。

「まぁ……それを渡れば過去に帰れるのよね?」

「えぇ」

 フォルテの言葉に、レヴィはニコリと微笑んで短く返した。「それならいい」とフォルテは興味なさげだったが。

 6匹は時の回廊≠ノ――過去の時代にいくために、道を進む。

 そのとき、ある者が自分たちの姿を見ていることを気付かずに。会話を全て聞かれているのも知らずに。

「ゼクト様に知らせなくては……」

 そう言い、その者は去っていった。

■筆者メッセージ
感動の再会とはいかない。これは『シリウス』の性質である。←意味わかんねぇよ
アクア ( 2012/12/03(月) 20:13 )