輝く星に ―時の誘い―












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第4章 怪しい賢者
38話 世間話でもどうですか?
「そういえば、私ずっと聞きたかったんだけど」

 剣の依頼を終え、夕食を待つだけの時間。

 スウィートは唐突にそんな言葉を零した。その先にはシアオ、フォルテ、アル。不思議そうにスウィートを見ている
 スウィートは気にせずに、自分の聞きたい事を3匹に尋ねた。

「皆って、いつから知り合いなの?」

「え……」

 これがスウィートが聞きたいことであった。3匹はそんな質問をされるなんて思っていなかったのか、目を丸くしているが。
 スウィートはけっこう前から気になっていたりしたのだ。
 自分に初めて会ったときには3匹とももう仲良さげであった。それはもう親密で。喧嘩はしているけれど。
 それでふと疑問に思ったのだ。「いつからこんな風に仲がいいんだろう」と。

 シアオとフォルテは「うーん」と唸った。そしてアルは

「俺はもともとトレジャータウンの近くに住んでたからな。だからイオラさんとかシルラさんともよく話してたし、手伝ったりもしてたんだが」

「あ、新しい発見……!」

 そんなこと知らなかった、とスウィートが自分の無知さに気付く。
 そしてあれ、と思う。どうして身近にいる者たちのことをこんなにも知らないんだろう、と。そして凹む。

 するとシアオが気付き

「うわぁ!? ちょ、スィート、何でそんな暗くなってんの!? というか何でそんなに凹んでんの!?」

「リーダーなのにこんなにも皆のこと知らないなんて……私、無能だよね……」

「いや、そこまでいかないと思うけど!?」

 どうしてそうなる、と言いたげなフォルテとアルの目線。シアオは思いきりつっこんでいるが。
 それでも無能には繋がらないはずなのでフォルテとアルは正しい。
 暫くしてからスウィートが多少は涙目だが復帰し

「それで……シアオとフォルテとはどうやって知り合ったの……?」

「客として来てた。シアオが先で……フォルテがその数日後くらいか。とりあえず迷惑だった。コイツら、店の前で喧嘩ばっかすんだよ」

「いやいやいやいや、それはフォルテが突っかかってくるから!」

「違うわよ、あんたがうざかっただけでしょうが!」

「いや、まずお前らが喧嘩してたことに反省しろよ」

 やはり色々しらないことがあるらしい。
 
 スウィートが突然に聞いたのはもちろん、きちんとした訳があった。

 自分は過去を知らないけれど、この3匹にはある。それがとても羨ましくも思えたのだ。
 そしてその過去があるからこそ、自分の知らない3匹だって存在する。
 それを完全に共有はできないが、ある程度は知っておいて、共有しておきたいのだ。
 メンバーのことを、もっときちんと知って、仲良くなりたいというのがスウィートの本音だ。

「それで最初はイオラさんとシルラさんが止めてたんだが……。俺がちょっと機嫌が悪いときがあって、それでムカついたから「いい加減にしろ」って頭殴った」

「え、知り合いじゃないのに?」

「あぁ。煩かったから。どうせ同い年くらいだろうと思ったし」

「知り合いでもないのに殴るとか酷いと思わない!? 更にすっごい痛かったのよ、アレ!」

「営業妨害」

「それでも殴るって酷くない!?」

「そーよ、そーよ!」

 2匹がアルに文句を言っているが、アルはしれっとしている、アルらしいといったらアルらしいが。
 スウィートは「そんな知り合い方をしたんだ……」と驚きつつ、記憶に刻んでいた。

 しかしこんな出会い方をしているのは驚きだろう。
 知り合いでもないのにシアオとフォルテが喧嘩をし、アルが殴ってとめる……。カオスである。
 スウィートとしてもこんな出会いしているなどと思っていなかっただろう。

「それでどうやって仲良くなったの?」

「アルに殴られてからもさー、フォルテと顔をあわせる度に喧嘩は続いてたんだけど。それでアルもちょこちょこ止めるようになってね」

「まぁ、そんなこんなで話すようになったわけよ」

「そんでシアオとギルドに入りたいって夢を聞いて、俺もまぁ少し興味あったからついでに。フォルテは……」

「おまけ?」

「ふざけんじゃないわよ、誰がおまけよ」

 フォルテがシアオを睨む。先ほどの発言にイラついたようだ。

「あたしは故郷から離れて……まぁ、無理やりでてきたんだけど。それでちゃんとやってるってことを証明したかっただけよ。
 それが家族に通じてるかどうかなんて知らないけど」

「へ、へぇ……」

 またしても新しい発見をしたスウィートだった。

 無理やりでてきた……いわゆる家出? とスウィートは考えた。スウィートとしてはちょっと家族が心配になった。
 フォルテを探していないのか。とも思ったが、そんなんだったらもっと早く見つかっているだろう。だとしたら家族は「大丈夫」と信じているのだろう。

 「やっぱ知らないことなんて沢山あるなぁ……」と考えながらスウィートはまたしても質問する。

「シアオとアルは? 家族には……」

「え? 僕? 僕はきちんと家族にいって来たから。お母さんにはすっごい心配されちゃった。お父さんは盛大に笑って見送ってくれたんだけど」

「俺は家近くにあるし。家族にもきちんと伝えた。妹が煩かったがな……。「ずるい」って。何がずるいんだか」

「あれ、アルって妹いるんだ?」

「かなーり元気なワガママな妹がな……」

 アルの妹だというのでかなり賢く真面目なイメージかと思ったスウィートだったが、予想ハズレだったようだ。
 シアオもフォルテも「へぇー」といってるところを見ると知らなかったようだ。

「いいなー、その子と知り合ってみたい」

「やめろ。お前と組んだら恐ろしいことこの上ない。というかシアオとフォルテにはいないのか?」

「僕は一人っ子ー。兄弟ほしかったけどね」

「あたしは兄貴とお姉ちゃんがいるわよ。あたしは末っ子」

「いいなー、フォルテもいるんだ」

「末っ子ってのは全部似んのか……」

「あたしはそんなワガママじゃないわよ」

「いや、お前もそうだろ」

 そんなやりとりを聞いて、スウィートは少し笑う。
 シアオは兄弟ほしいなーと駄々こねて。フォルテは末っ子だからじゃない、とアルに反論して。アルはそんなフォルテにいや正しいって、と言う。

 それでスウィートはふと気付いた。
 自分にも兄弟っていたのかなぁ、と。それ以前に両親さえもわからないのだが。

「どうなんだろう……?」

 いたんだろうか、自分に。兄弟は。
 両親はどんな人だったのだろう。兄弟がいたら、どんな人なんだろう?

 その時、チリリーン、という明るい音が鳴り響いた。

「みなさーん! 夕食ができましたよー!!」

 その音の後に、アメトリィの声。

 シアオはその声を聞くととんでいった。
 それを見てスウィートは考えるのを止め、フォルテとアルとともにゆっくりと食堂に行った。

(どう、だったんだろうなぁ)

 そんなことを考えながら。

■筆者メッセージ
短くてごめんなさい。
ちょいと皆の過去に触れてみたかったんだよー!みたいな。

それだけです、ごめんなさい。
アクア ( 2012/11/27(火) 22:26 )