輝く星に ―時の誘い―












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第3章 遠征と謎の正体
21話 遠征メンバー決定
「できた……!」

 スウィートはそう呟いて笑顔になる。とても満足したような笑みだ。
 太陽はもう昇ったので、そろそろアルが起きるくらいだろう。
 そうスウィートが考えていると、丁度アルが起きた。

「おはよう、アル」

「ん……おはよう、スウィート。ふぁ……」

 アルは挨拶するとすぐに眠たそうに欠伸をした。これもいつもどおりだ。
 あとはシアオとフォルテが起きるかどうかなのだが、気持ちよさそうにスヤスヤ寝ていて起きる気配は全くない。

「え〜っと……はい、アル」

「……? 何だ、コレ」

 スウィートが渡したものは黄色の石がついたペンダント。アルは不思議に石を見ていた。
 その様子を見ながらスウィートは恥ずかしそうにおずおずと

「そ、それ“滝つぼの洞窟”に行った時に拾ったの。それはアルの分」

(多分、それシトリンっていう宝石で「ストレスを癒す」っていう効果なんだけどね……)

 などと考えながら説明した。
 石の意味はスウィートが「アルはまとめ役だし、いつもため息ついたり呆れ顔になってることあるからストレスが溜まっているんじゃないか」と考えたからこの石にしたのだ。
 アルはまじまじと見てから首にペンダントをつけた。

「ありがとう」

「ど、どういたしまして……!」

 面と向かってお礼を言われて照れてしまったスウィートは顔を俯かせながら返事をした。
 あとシアオとフォルテの分もあるのだが、毎回こうお礼を言われてしまっては照れてしまうなぁ、と考えるスウィートだった。

 因みにシアオには前の依頼で貰った「勇気の石」をペンダントにし、フォルテにはマラカイトという濃い緑色の宝石。効果は「邪悪なものから身を守る」。
 決してゴーストタイプから身を守る、という訳ではないと言い聞かせるスウィートだった。

 2匹が起きたのは朝礼に行く寸前で危なかったのだが、なんとかペンダントを渡したスウィートだった(勿論お礼を言われた)。





「さて……それでは遠征メンバーの発表を行う!」

「い、いよいよですわね……」
「緊張するゲス……」

 ディラがそう言うと一気に弟子たちが騒ぎ出す。
 遠征に行くと発表されてから、全員が頑張ってアピールしてきたのだ。つまりセカイイチの依頼を成功させたからといって、遠征のメンバーに入るとは限らないのだ。

 スウィートはドキドキしながらディラの言葉を待った。シアオ達もそれは同じだ。

「親方様、メモを」

 ロードは無表情でメモを渡す。寝ているのか起きているのか全く分からない。

「呼ばれたものは前に出るように。それではまず――ラドン♪」

「よ、よっしゃあ! まぁわしが選ばれるのは当然だがな、ガハハハ!!」

(よく言う……)
(よく言うゲスね……)
(てか凄い煩いんだけど……)

 ラドンはすぐに前に行く。そのとき、先ほどの発言のせいで他の弟子からは冷ややかな目で見られていた。
 ディラは構わず続ける。

「次――スウィート♪ シアオ♪ フォルテ♪ アルナイル♪」

「「「「えっ??」」」」

 スウィート達がキョトンと目を見開いて声を短く上げた。
 弟子達は皆、スウィート達の方を向いている。少しの沈黙の後――

「やったぁぁああぁ! 僕ら選ばれたんだよ!」

 とシアオがぴょんぴょん跳ねて喜んだ。
 スウィート、フォルテ、アルはついていけてなかったが、シアオの喜びようを見て、ハッとした。

「やった! 遠征に行けるんだ!」

「よっしゃ!」

「……とりあえず前に行ってくれ」

 スウィート、フォルテが喜んだあと、アルが少し呆れた声で言った。
 スウィートはそう言われ顔を赤らめながら前に行き、フォルテは『ドクローズ』に向かって鼻で笑ってから前に行った。シアオはルンルンで前に行き、アルは嬉しいんだかなんだか分からない気持ちで前に行った。

「次は……ルチル♪」

「きゃー!! 選ばれましたわー!!」

 若干(めちゃくちゃ)はしゃぎながらルチルが前に行く。少々煩いがしょうがないだろう。

「エート次……おぉ!? レニウム!」

「えぇ!? あっしでゲスか!!??」

 レニウムが目を見開いて驚く。
 だが全く前に出ようとしない。ディラは首を傾げながら声をかける。

「おい、レニウム? 前に来い。何やってるんだ?」

「あ、足が……感動のあまりに足が動かないゲスよ……グスッ」

 レニウムを見ると目に一杯の涙を溜め、体は誰が見ても分かるとおり震えていた。
 ディラはその様子を見てためらってから

「……と、とりあえずほっとくぞ。次――イトロ♪」

「よっしゃぁぁぁぁぁ!!」

 誰よりも大きな声で歓喜の声をイトロが上げた。
 その瞬間、ロード以外のポケモン達が耳をふさいだ。イトロは気にせず前にでる。

「えーとこれで遠征のメンバーの発表は――って……」

 ディラが終わろうとした瞬間、メモの端っこにまだ何か書いてあった。
 それを見てディラは渋い顔をして

(こんな隅っこまで何か書いてある……。親方様の字は汚いから読みづらい、なんて言ったらエライ目にあうからここは我慢して――)

 考えていたようだが口に出していたのは全く気付いていない。
 そのため弟子達の目線がディラに大注目したのだが。

「あとは…………アメトリィ♪ フィタン♪ シャウラ♪ ハダル♪ ……って!!全員じゃないですか!?」

「うん、そうだよ?」

 ディラが勢いよくロードの方に向かって振り返ると、ロードはニコニコしながら答えた。
 ディラは脱力しそうになったが何とか力を入れる。他の弟子達はポカーンとしていた。

「全員って選んだ意味ないじゃないですか!? さらに留守番いないし、泥棒が入ったらどうするんですか!?」

「大丈夫♪ ちゃんと戸締りはしていくよ。それに泥棒なんて入らないって、ね♪」

 ロードの答えに、ついにディラは脱力した。
 そんなディラを見ながらフォルテは

(そんなに心配なら1匹で残りゃいいのに。別にいなくても困らないんじゃない?)

 などと考えていた。そんなフォルテの思考は誰も読み取れるわけがない。
 すると『ドクローズ』のリーダー、ウェズンが前に出てきた。

「親方様、私も思うのですが。メンバーが少し多すぎるのでは?」

「う〜ん……。ともだちにそう言われると困るなぁ……」

((((いつから“ともだち”になった!?))))

 ロードに全員が心の中でツッコんだ。ロードは全く気付いていない。
 ウェズンはあと少し、と思いもう一言付け加える。

「それに、全員で行く意味などあるのですか?」

「えっ、そりゃあるよ! 皆でいった方が楽しいでしょ?」

「…………は?」

 ロードは顔をニコニコさせながら答えた。
 ウェズンは口を開いてポカーンとしている。それはホルクスもギロウもだった。

「僕、ずっと楽しみだったんだ〜♪ 皆、遠征思いっきり楽しもうね!!」

「「「「「お、おぉぉぉぉぉぉおおぉ!!!」」」」」

 ロードが弟子達の方を振り返ると、全員嬉しそうな顔をして声を上げた。ロードは満足そうにしていた。
 それを身ながらディラはため息をついてから渋々

「じゃあ遠征のメンバーは(全員だけど……)説明を行うから、遠征の準備をしてから此処にもう一度集まること。それでは一旦解散!!」

 と言い、弟子達は散らばり始めた。





――――交差点――――

「準備、準備……。何を準備すればいいんだろう?」

 シアオが交差点でスウィート達に聞く。
 スウィートは困った顔をして首を傾げ、フォルテは知らん顔、アルはまともに答えた。

「木の実やリンゴはいるんじゃないか? あと種とか……。いらないものを倉庫に預けて、あとカクレオン商店にも寄らなきゃな」

 アルの答えに頷くと、『シリウス』はトレジャータウンに向かった。





――――ギルド――――

「全員揃ったな。では説明するぞ。今回行くところは“霧の湖”という所だ♪ 皆、不思議な地図を広げてくれ。」

 ディラの言葉に全員が不思議な地図を広げる。
 ディラは全員広げたのを確認すると、そのまま説明を続ける。

「東の方にあるのだが……そこは霧でおおられており、故に誰も確認されていないらしい。噂では、とても美しいお宝がねむっているといわれている♪」

 ディラが説明しながら指指した場所は、ここからかなり遠い、雲に覆われている場所。行くとしてもかなり時間がかかりそうだ。

「だがギルドからはかなり遠い……。そこで、途中であるベースキャンプまでは、グループに分かれて行ってほしい。今からそのグループを言うからよく聞け!」

 と言うと、騒がしかったギルド内が静まり返った。

「まず1グループ目は……ラドン♪ ルチル♪ ハダル♪ レニウム♪」

「お前ら! わしの足を引っ張るなよ!」

「それはこちらの台詞ですわ!」

「な、仲良くしましょうよ……」

「なんか心配でゲス……」

 ラドンの言葉にルチルが反論する。
 それを何とか宥めようとするとハダルと不安そうなレニウム。このグループはとてつもなく仲が悪そうだ。

「2グループ目、フィタン♪ アメトリィ♪ シャウラ♪ イトロ♪」

「いいメンバーだ」

「皆さん、よろしくお願いします!」

「グヘへ。よろしく」

「1番目指すぜ! ヘイヘイ!」

 このグループは1グループ目とは違って仲が良さそうだ。と言っても色々不安要素はあるが。

「3グループ目は、スウィート♪ シアオ♪ フォルテ♪ アル♪」

「変わらないね」

「『シリウス』って言えば簡単なのにね?」

「あ、それあたしも思った」

「お前らな……」

 スウィートはポツリと呟き、シアオとフォルテがディラに対して素直な意見を述べる。アルは呆れ顔でまたため息をついた。

「『ドクローズ』の皆さんは単独でお願いします」

「クククッ、承知しました」

 『ドクローズ』のリーダー、ウェズンは怪しい笑いを含めて返事をした。

「あと……親方様とワタシで行って――」

「えぇぇ!? ディラと2匹だけ!? つまんなぁい!!」

 小さな子供のように反論するロード。ディラはぐったりとしながら

「これは大切な作戦なんです。ワガママを言わないで下さい」

「………………ケチ」

 ロードはすねたような顔をしながら呟いた。その呟きは弟子達全員に聞こえていたのでおそらくディラにも聞こえているだろう。
 ディラはスルーして全員の方を向いた。

「では皆、はりきっていくよーーーー!!」

「「「「「おぉぉーーーーーー!!」」」」」

■筆者メッセージ
相変わらず遅く、不定期更新ですみません……。
アクア ( 2012/09/29(土) 22:25 )