輝く星に ―時の誘い―












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第3章 遠征と謎の正体
20話 散歩
「どうする? アル……」

 スウィートが困ったような顔をしてアルに尋ねる。
 アルははぁ、とため息をついてから

「どうするこうするも、アイツらなぁ……」

 アルがチラッと目をやる。スウィートもそちらに目をやった。
 そこには――

「お前達は何度言ったら分かるんだ! これで二度目とはこのギルドで初めてのことだぞ!?」
「うぅ……足、痺れてきたぁ……」
「早く終わらせなさいよね……。長いのよ……」

 フォルテとシアオが仲良く(?)ディラにお説教を喰らっているからである。
 理由は……ただの寝坊である。シアオとフォルテというと、一度説教をうけている。

「仕方ない……。そこら辺、ブラブラしてきていいぞ、スウィート。まだ此処に慣れてないだろ?」

「えっ、いいの?」

 スウィートが驚きの目でアルに尋ねる。確かにスウィートはまだ慣れていない。
 だが探検隊の仕事があるので自由に探索など出来なく、まだゆっくり見れていないのが現状だった。

「あぁ、あの様子じゃまだまだかかりそうだしな。終わったら呼びに行くから、安心して行って来い」

「あ、ありがとう。じゃあお願いね……?」

 そう言うとアルは頷いた。
 スウィートは少しウキウキしながらギルドの梯子を上るのだった。





(Side.スウィート)

「まず……トレジャータウンをゆっくり回ろうかな……」

 いつもはゆっくり見ている暇なんてないしなぁ……。
 せっかくアルもああ言ってくれた事だし、いろいろ見て回ろう! そう思いながら私はトレジャータウンに足を運ぶ。

「まぁ見て回るっていっても、特になんにもできないしなぁ」

 そう独り言を呟きながら歩いていると――

「あら、スウィートちゃん?」

「あっ、フィーネさん、シャオさん。おはようございます」

 声をかけてきてのはフィーネさん。隣にはシャオさんもいる。
 私はペコリと頭を下げて挨拶する。フィーネさんはクスクスと笑っていた。

「あの……?」

「あぁ、ごめんなさい。スウィートちゃんって凄い律儀だなぁって思って。」

「確かにね。敬語も使わなくていいのに。」

 フィーネさんとシャオさんの言葉に「うっ」と詰まってしまう。
 私だって意識している訳じゃない。無意識にやっちゃうんだよね……。シアオ達には大丈夫なんだけど……。というか律儀って前誰かに言われた気がする…。

「そういえば今日は探検隊の依頼は?」

「あっ、シアオとフォルテが寝坊してしまって今お説教を喰らってるところで……。私はトレジャータウンをブラブラと…」

「そ、そうなの……。大変ね。」

 シャオさんの質問に私が答えると、フィーネさんが苦笑いをしていた。
 まぁ、確かに大変ですけどね…? するとフィーネさんのお腹が鳴った。

「ご……ごめんなさいね……。昨日色々あって夕食を食べていないの。」

 フィーネさんは顔を赤くして伏せてしまった。
 そんなに恥ずかしがらなくても……。シアオなんて夕食前にはいつもお腹鳴ってますよ?

「今から朝ごはんとして食べようと思ってたんだ」

「そ、そうなんですか。引き止めてごめんなさい」

 私はまたしても頭を下げてお辞儀した。
 顔を上げるとフィーネさんが飛びっきりの笑顔で

「じゃあまた今度、またね♪」

「は、はい。」

 そう言うとフィーネさんはシャオさんと一緒に行ってしまった。やっぱりフィーネさんは笑顔が綺麗だなぁ……。って、時間なくなっちゃう!
 私はトレジャータウンより奥の方に足を進めた。
 そこには先客がいらっしゃいました。あれは――

(フィタンさん……?)

 確かハダル先輩の父親……だったはず。海を見つめてジッとしている。
 点…どうしよう。これはばれないように撤退するべきかな……。などと私が考えていると――

「海よーーーー!!!!」

「ッ!?」

 いきなりフィタンさんが叫びだしたのでもうビックリ。思わず私は飛びあがってしまいました。
 幸い、フィタンさんは気づいていないようでまだ叫んでいる。私はそそくさとその場を後にした。





―――パッチールのカフェ―――

「ふぅ……結構回ったかな……」

 私はパッチールさんに白いグミでジュースを作ってもらい、そのジュースを置いてあるテーブルでゆっくり飲んでいる。
 パッチールさん曰く「極上の出来」らしい。甘くてとっても美味しい。

 あの後、トレジャータウンの不思議な置物みたり、お世話屋ラッキーのリネーノさんの育て話を聞いたり、交差点の水飲み場の意味を考えてり……。
 それでもアル達がまだ来ないのでギルドの階段の段を数えてみたり…。そして今に至ります。

「まだかかってるのかな……お説教」

 ディラさん、怒ってたもんなぁ……。二度目だしやっぱり時間がかかるのかも。
 そうおもいながらジュースを飲んでいると

「あれっ、スウィート !お久!」

「へっ……。あ、セフィンさん。と……刃さん?」

 声をかけてきたのはセフィンさんでした。
 その隣には昨日会った刃さんもいた。……あれ? 知り合い??

「おぉ、スウィート殿。セフィンとは知り合いでござるか?」

「それはこっちの台詞や。アンタら知り合いだったん?」

「昨日会ったばかりでござるが。セフィンは?」

「依頼で知り合った。」

 なんだか私、忘れられてませんか? というより私的にはお二方の関係の方が興味あるんですが……。
 私は恐る恐る聞いてみる。

「あの……セフィンさんと刃さんはどのような関係で?」

「え? あぁ、幼馴染」

「………………え?」

「だから幼馴染でござるよ」

 …少し考える時間を私に下さい。え、そんな小さな頃から知り合いだったんですか? 幼馴染?

「えぇぇぇぇぇ!?」

 私は思わず大声を上げてしまいました。
 幸い、店がにぎやかで誰も振り向くことなどしませんでしたが。でも、意外…!

「んな驚かんでも。まぁしゃあないか。」

「それでスウィート殿、昨日の助言は役にたったでござるか?」

「えっ、あ……はい。とっても。ありがとうございました。でもなんで……」

 あの助言がなければ完全にディラさんに叱られていた。セカイイチなど取れているものか。
 私は感謝しているが、だが何故あんな助言をしたのか理解できなかった。

「刃はな、占い師の仕事やってんねん。裏では情報屋。秘密やで?」

「う、占い師に情報屋……!?」

 裏ってなんですか!? とツッコミたいですが止めておきましょう……。
 きっと深い理由があるはず…。でも確か情報、といえばディラさんがギルドの情報通だったな。

「拙者の占いも外れる事はあるでござるから、あまり自信がないんでござるよ」

「でも当たってましたよ?」

 だから助かったんですけど……。
 自信を持って全然大丈夫だと思うのは私だけですか? するとセフィンさんは私の隣に座り、刃さんは私達の前に座ってジュースを注文。

「で、スウィートは何やってんの?仕事は?」

「シアオとフォルテが寝坊してディラさんにお説教を喰らってます。アルは……付き添い
、ですかね?」

 付き添いというか……見ているだけだけど。シアオ達のお説教、いつになったら終わるのかな?

「そういえばギルドでは今、遠征メンバー選抜をしていたでござるな。大丈夫なのでござるか?」

「……多分。寝坊ぐらいでは大丈夫だと思いますが」

 そういえば今、遠征のメンバー選抜中だった……。
 これで落とされる事はないと思うけど……。だってセカイイチの仕事はきちんと成功させたし……ね。

「『ドクローズ』が参加するそうでござるが……気をつけた方がいいでござるよ? 悪い情報なら漂っているでござるからな」

「あぁ、アイツらか!うち依頼頼んだことあるわ!勿論、驚かせるためやで? あのズバットがめちゃビビリやって面白かったわ〜。フォルテには負けるけどな」

「そ……そうですか。気をつけます」

 『ドクローズ』までにも依頼を頼んで驚かせたって……。
 そして悪い情報が漂ってるってどれだけ…?刃さんが情報屋って事は確かみたいです。

「あっ、スウィート! 終わったよ〜!」

「げっ!! あたし外に出てるわね!?」

 声がした方を振り返るとそこにはシアオとフォルテ、そしてアル。
 フォルテは逃げようとしてるみたいだけど、見事にアルに掴まれてる……。

「あ、セフィン! やっほ〜」

「やっほ、シアオ。久しぶりやなぁ。フォルテもアルも」

 シアオとセフィンさんは仲がいいみたいで、とても会話が弾んでいるみたいで。
 フォルテは相変わらず逃げようとしているみたいで。……賑やかだなぁ。

「で、そっちは……? スウィート、知り合いか?」

 アルが言っているのは刃さん。なんで分かるか?だってアルの目が完全に刃さんの方に向いてるんだもん。

「拙者は月影 刃。南の方からきた者でござる。セフィンとは幼馴染でスウィート殿とは昨日知り合ってばかりでござる」

「あぁ、そうか。俺はアルナイル・ムーリフ。探検隊『シリウス』のメンバーだ。んでこっちはフォルテ・アウストラ。ゴーストタイプが苦手だから逃げようとしてるだけだから。よろしく。」

「僕はシアオ・フェデス! よろしくね!」

 フォルテは逃げようとしているが、アルは手を緩めない。流石アル……。刃さんはシアオ達に一礼した。

「シアオ達には教えてもええよな。刃は表は占い師、裏で情報屋やっとんや。なんかあったら頼み。因みに秘密やで?」

「情報屋!? 占い師!? じゃあ今日の運勢も占えるの!?」

「シ、シアオ……。声大きいよ……」

 誰も見てないから良いけど。
 秘密って言われたんだから小声じゃないと……。シアオは1回頭に疑問符を浮かべてからぎこちなく頷いた。……理解したのかな?

「おいコラ、シアオ。今日はお前らのせいで時間減ってんだから、んな事してる場合じゃない。とっとと行くぞ。スウィートももういいか?」

「え、うん。大丈夫」

 私はジュースを飲み干してグラスを返す。するとセフィンさんがいきなり声をあげた。……嫌な予感がする。

「な、仕事やる気あらへん? 次は“闇の館”っていうダンジョンで! 報酬は10000ポケで!」

「10000ポケ!? やろうよ、やろうよ!!」

 フォルテの事をしっかり忘れてる……? というかダンジョン名からしてフォルテが無理そうな感じなんだけど。セフィンさんはわざと?
 フォルテは勿論激しく首を振っている。でも10000ポケって……。どこからそんな額がでてくるんだろう?不思議なんだけど……。

「セフィンさん、そんな額出しちゃって大丈夫なんですか?」

「だいじょーぶ! こんくらい余裕やで!」

「スウィート殿、聞いてないでござるか? セフィンは一応……世間でいうお嬢様で……」

「なんや一応って。れっきとしたお嬢様やで!」

「「「「えぇぇぇぇぇぇ!?」」」」

 『シリウス』一同、大声を上げました。でもしょうがないですよ。だって意外ですよ…!?刃さんとセフィンさんは気にせず話している。

「金づかいが荒いのではないでござるか?」

「だから大丈夫やって! これくらいどうって事ないし! たったの10000ポケやし。」

 ……尋常すぎるな金銭感覚ですね、セフィンさん。私はもうなんて言ったらいいか分かりません……。

「……遠慮する。今日はもう依頼決まってるんでな」

「え〜〜〜〜。じゃあまた今度頼むわ。んじゃ!」

 セフィンさんはにこやかに言いましたが……フォルテが小さな悲鳴を上げて逃げましたよ? アルを引きずっていって。
 凄い速さで何も言えなかったけれど……。

「じゃ、じゃあ失礼しますね……?」

「勿体無いな〜。じゃあまたね、セフィン、刃!」

「それでは」

 私達が店を出ると、アルが呆れ顔でフォルテを見てました。
 フォルテは「今日は大凶よぉぉ!!」とか叫んでいて…。もうなんともいえない状況でした。
 私的にはトレジャータウンの事やセフィンさん、刃さんの事を知れてよかったんだけどね?

 因みに……お説教の時間は25分かかって、シアオの足が痺れて動けなかったから、5分程度かかったみたいです。
 そして今日の依頼ではフォルテが罠に2回、シアオが3回もひっかかって…今日は大変だったなぁ…(アルが)

アクア ( 2012/09/22(土) 20:31 )