輝く星に ―時の誘い―












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第2章 謎の力と初探検
15話 報告と苦手な物
――――ギルド――――

 温泉から上がり、トレジャータウンに帰ったスウィート達は、フィーネとシャオと別れ、ギルドに帰ってディラに報告しているところだった。

「まとめると……滝の裏にはダンジョンで、ダンジョンをぬけた奥地には宝石があり……宝石を壊したら激流がきて温泉まで流されたと」

 とディラがまとめると、フォルテが不満ありげな顔をしながら大声で。

「壊したんじゃなくて押したの! 押したのに砕けたのよ!!」

「つまり壊したんだろ」

 訂正しようとしたがアルにつっこまれた。
 フォルテはキッとアルの方を振り返るが、アルは一瞬睨み返すと、知らん顔をして前を向いた。フォルテが内心愚痴っていたのはいうまでもない。

「宝石はとれなかったんだけどね〜……。はぁ」

 とシアオがため息をついてシュンとうなだれる。するとディラが焦ったように

「いやいや! そんな事ないよ。これは凄い発見だ!」

 と言った。
 するとシアオの顔が一気に明るくなる。シアオは本当に子供っぽい。簡単にいえば無邪気である。いいところではあるが。
 アルがそんあことを考えている間、スウィートは全く別のことを考えていた。あの映像の事である。

(耳や体の形……あれは……親方様なんじゃ? そう考えると……映像のポケモンとは一致する)

「あ、あの……」

 スウィートが控えめに声をだす。
 すると皆が一斉に振り返った。見られているのが恥ずかしく、つい顔を伏せ気味にしながら恐る恐る発言する。

「親方様に聞いてほしいことがあるんです……。あの場所に行ったことがあるかどうかを」

「「「「「はっ?」」」」

 全員の声がハモった。そんな皆の様子に、スウィートは少々オロオロしている。
 するとと、ディラは口を開いた。

「い、いくら親方様でも一度行った場所に、お前達を行かすとは思えないが……」

「と、とりあえずお願いします。聞くだけでいいので」

 とりあえず、あの映像のポケモンが何なのかを知りたいスウィートは、ディラに必至に頼む。
 スウィートの必至さに負けたディラは

「わ、分かった。お前達は此処で待っておけ」
(自分の手柄だというのに……。またおかしな奴を弟子にしちゃったなぁ……)

 と言い後ろを向き、心の中で言ったのだろうが口に完全にだして親方様の部屋に入っていった。
 ディラが部屋に入ったのを確認すると、シアオ達はスウィートの方に向く。
 その瞬間、スウィートはビクッと体を揺らした。シアオは構わず言葉を発する。

「どうしたの?急に」

「えっと……その……」

 スウィートは恐る恐る口を開き、映像のことについて詳しく(じゃないと3匹が納得しそうにないので)説明した。
 説明が終わると同時に、ディラが部屋から出てきた。

「親方様はなんて?」

「…………『思い出♪思い出♪たぁっーーーー!!僕、あそこに行ったことあるかも♪』……と仰られた。つまりスウィートの言う通り、親方様はあそこに行った事があるみたいだ」

「え〜っ、そんなぁ……」

 シアオががっくりと肩を落とす。スウィートは顔を少々俯かせて、シアオを見ながら心の中で謝った。
 言わなければよかったか、という考えも浮かんだのだが、聞いてしまったものはしょうがない、とスウィートは顔をあげた。

「とりあえずもう夕食だから、お前達は食堂に行っておけ」

 ディラにそういわれ、フォルテは少々重い足取りで、スウィートとアルはいつも通りに、シアオは食堂へとんでいった。





――――ギルドの食堂――――

「「「「「「いただきまーす!!」」」」」」

 皆が声をそろえて言うと、全員凄い速さで皿にのっている木の実やグミを食べる。スウィートは最初の頃は、皆の食べっぷりにひいていたのだが最近は慣れてきて、自分のペースでゆっくりと食べている。

 前に座っているシアオとフォルテを見ると、凄い速さで食べている。正直に言うと恐ろしい。
 スウィートはグミを1つとって、口に運ぶ。そしてチラリと隣のアルの方を見た。するとアルは皿をジーッと見て、食べようとしていなかった。
 スウィートは変に思い、声をかけてみる。

「アル? どうかしたの?」

「………」

 聞いていないのか聞こえていないのか、アルは返事もしないし首も振らない。体も動かさずにただただ皿を見つめているだけである。
 スウィートはアルが見つめているほうに目線を向ける。
 アルの視線があるのは、イバンの実。ただそれだけであった。不思議に思いながらもスウィートはアルにもう一度話しかける。

「アル? ……アルってば!」

「……! どうした?」

 アルはようやく気がついたようで、スウィートの方を向く。
 スウィート的にはこちらがどうかしたのか、と聞きたいのであった。

「さっきからお皿ばかり見てるから。どうかしたのかなぁって」

 スウィートがそういうと、アルは苦笑いをした。スウィートが怪訝そうな顔をする。

「……俺が何を見てるのか分かるか?」

「えっと……イバンの実、かな……?」

「正解。イバンの実の味ってどんなのか知ってるか?」

 スウィートは不思議に思いながらも考える。そういえば今日、最初に食べたのを思い出した。とても甘く、ほんの少しだけの苦味があった木の実だ。
 甘いものが好きなスウィートにとってはとても美味しいものだったが。

「凄く甘くて……苦味がほんのちょっとある木の実だよね」

「当たり。……まぁ、皿を見てた理由を簡単に言うと……イバンの実が苦手な訳」

「…………え?」

 スウィートは目をパチパチして目を見開く。

 アルの苦手なものがイバンの実? お化けもお尋ね者も何も怖がらない、なんというか苦手なものがないような雰囲気を漂わせるアルが?
 ……ありえない。というか想像ができない。

 そんな事を考えていると、アルは苦笑しながら「嘘じゃない」と言ってきた。
 スウィートは恐る恐る口を開く。

「え……本当に苦手、なの?」

「ああ。モモンの実とかならまだいけるんだが、イバンの実の甘さって凄い濃くて無理なんだ。……小さい頃はまだ食えたんだがな」

「えっ、なんて?」

 アルが最後の方に言った言葉がよく聞こえなかったため、スウィートは聞きなおす。アルにはなんでもない、と言われてしまった。
 という事は、あるが皿、イバンの実を見つめていたのは食べられないからなのではないだろうか?
 スウィートはそう思うとさりげなく(スウィートはそのつもり)

「あ、あの……私、イバンの実好きだし……。そ、その……食べよっか……?」

 と聞いた。アルは小さく笑ってから

「じゃ、ちょっとだけ食べてもらっていいか?」

 と言った。
 スウィートが自分の事を気遣って言ってくれているのだから、その行為を無駄にはしたくない。かといってスウィートに全部食べてもらうわけにもいかない、と思い三分の一だけ食べてもらうことにした。
 スウィートは役にたてた、という事でちょっと喜んでいた。

 その光景を、シアオとフォルテは見逃したのだった……。










「ふー……お腹いっぱい……」

 そう言いながらシアオがベッドに寝転がる。スウィートも自分のベッドに座る。アルもフォルテもベッドに座り込んだ。
 するとスウィートが何かを思い出したように、シアオの方に向く。

「シアオ、前の依頼の報酬の……勇気の石貸してくれない?」

「え? いいけど……どうしたの?」

 シアオはバッグから勇気の石を取り出してスウィートに渡す。
 スウィートは秘密、と言いながら勇気の石を自分のバッグに入れた。

 するとフォルテが口を開いた。

「そういえば、スウィートの眩暈と映像……あれって何かに触ったときにおきてないかしら?」

「あ……! 確かに。1番始めはサフィアちゃんに触れたとき。後ウェーズさんに触れたときや滝……そして宝石。全部触ったときにおきてる」

 場が沈黙し、スウィート達は考え込む。どういう事だろうか、と。
 するとまったく緊張感のない声で沈黙が破られた。

「触れたら過去や未来が見えるんだよね!? 凄いじゃん!」

 沈黙を破った者、それは勿論のことシアオだ。
 シアオが言い終わると、フォルテとアルが同時にため息をつく。大きいため息を。スウィートはそんな光景に苦笑する。
 シアオはまったく訳が分からないような顔をしていた。

 するとディラが部屋に入ってきた。

「お前達、親方様がお呼びだ」

「「「「親方様が?」」」」

 4匹の言葉がハモる。一体何のようだろうか。
 スウィート達は不思議に思いながら、ロードの部屋に向かうのだった





「親方様、『シリウス』を連れてきました。……親方様?起きて――」

「やぁっ! !君達、今日はご苦労様♪」

 またもやロードはいきなり振り返り、声を発した。
 アルはまったく驚きもせず平然としていたが、スウィート達は小さな悲鳴をあげた。

「今回来てもらったわけは、遠征についてなんだ♪」

「「「「遠征?」」」」

 ロードの言葉に4匹が首をかしげる。
 するとディラが説明してくれた。

「遠征というのは、選ばれたメンバーで遠くまで出かけ、宝を探しに行くんだよ♪」

「わぁっ! 楽しそう!!」

 シアオがパッと顔を明るくさせた。とてもわくわくしているような顔だ。
 アルは呆れ顔になりながら

「選ばれたら、だからな?」

「うっ……わ、分かってるって」

 シアオが言葉に詰まったところを見ると、絶対わかっていなかったようだ。全員で行く、と思っていたのだろう。
 アルはそう思うと自然にため息がでてきた。

「その遠征なんだけどね……。なんと! 君達を遠征のメンバーの候補に入れることにしたんだ♪」

「「えっ!?」」

 スウィートとフォルテが声をあげる。アルも驚いているようだ。
 シアオだけがまたまた顔を明るくさせているが。

「あくまでも『候補』だからな。遠征までの頑張り次第だ」

 ディラは一応忠告をいれておく。シアオは「候補かぁ」と少し肩を落とした。
 スウィートは微笑みながら3匹に

「頑張ればいいんだから。ね! 遠征までがんばろ!」

「そうだな。失敗さえしなきゃいいんだからな」

「そうね。なんとかなるわよ」

「よーっし! 頑張るぞーー!!」

 スウィートの言葉にアル、フォルテ、シアオという順に言葉を発する。
 ロードはその光景を笑顔で見ていた。

アクア ( 2012/08/10(金) 15:25 )