96話 “幻の大地”
「でんきショック!」
「まもる!」
ラウルと別れ、“幻の大地”へ進んでいったスウィートたちはダンジョンで苦戦していた。
ライボルトの攻撃をスウィートはシアオの前に立ち、まもるで封じる。そして
「穴を掘る!」
その隙にシルドが地面にもぐり、そしてライボルトを倒す。
3匹は何とか連携して先に進んでいた。進み具合としてはいつもより遅い。
「何か、ここの敵は手ごわいね……」
「それ僕も思った。何か攻撃の威力が半端ないっていうか……」
「とりあえず話すのも歩きながらにしろ。また敵が来るぞ」
シルドの指示に従い、スウィートとシアオは歩きながら話す。ときどきシルドを交えながらも。しかし周囲の注意は怠らない。
スウィートが言ってた通り、ここの敵は他の場所より断然 だからなかなか進めないのだ。
それに加えて罠も多数ある。先ほどから自爆スイッチを踏んだりポケモンスイッチを踏んだりと色々な罠に引っかかってしまっている。
そんなこんなで進んでいた。
「それにしても……フォルテやアルは今頃 何してるかなぁ……」
シアオがそれを口にした瞬間、スウィートが一気に暗くなる。シルドはジロリとシアオを見た。それを見てシアオは口パクで「ごめん」と伝えた。
シルドにとってまた励ますのが面倒だったらこそ口にしてほしくなかったのだろう。心底 嫌そうな顔をする。
すると2匹の予想とは裏腹にスウィートが口を開いた。
「……今まで一緒にいたからかな。2匹がいないと凄く違和感を感じちゃう」
スウィートは暗い顔をしている割に声はそこまで暗くなった。一応 のりきってはいるようだ。
するとシアオも「そうだね」と賛同した。
「でもさ、帰ったらとりあえず皆でパァッとパーティーしたいよね! 皆が楽しんで笑えるような、さ。ギルドの皆はきっと賛成してくれるだろうし……」
「…………あぁ」
「うん。楽しそう」
シアオの提案にシルドは目を逸らした。スウィートはニッコリと笑って賛同する。
スウィートもシルドも未来を変えたら自分が参加できないことを知っている。けれど肯定のような返事をしたのは、シアオに感づかせないためだろう。
そんな他愛ない会話をしながら進んでいると、急に雪が降ってきた。それはだんだん威力を増し、吹雪となる。
かろうじて相手の位置を確認できるくらいだ。
「くっ、特性ゆきふらしのポケモンが近くにいるっぽいな……」
「とりあえず進まないと階段も見つからないし……」
そして手探り状態で3匹があるフロアに入った瞬間、一斉にそこにいた沢山のポケモンの目が3匹にむいた。
勿論フロアに沢山ポケモンがいる状態といえば――モンスターハウス。
「やばっ……!」
「な、何でこんなとこに……」
「チッ、とりあえず一旦 退くぞ! 走れ!」
3匹は一斉にそのフロアから出て走る。後ろを見るとポケモン、ポケモン。
「ちょ、絶対に無理だよ、あの数! 更に強いのがうじゃうじゃ!」
「一斉に相手しなきゃできるだろ」
「えぇ!?」
「あっ、嘘……!」
先頭を走っていたスウィートが止まり、2匹も止まる。そして顔をゆがめた。
運の悪いことに、3匹が進んだ道は行き止まりになっていた。逃げ場所はもうない。
敵もぞろぞろとそのフロアに入ってくる。
「もうコレ一斉に相手しなきゃいけないみたいだけど……」
「何でこうなるのさ!?」
「……こうなった腹くくるしかねぇな」
ポケモンの数は7体。トリデプス、トロピウス、ブーバーン、ユノキオー、ラムパルドが1匹ずつと、ブニャットが2匹。
だいたいの計算でいくと1匹が2匹を相手しなければならない。さらにこの吹雪の状態で、だ。
「とりあえずシアオ! お前はブニャットを片付けろ! タイプ的に2体ぐらいいけるだろう!」
「う、うん!」
「えっと……てだすけ!」
スウィートが技を発動した瞬間、シアオとシルドの体が少しだけ光に包まれる。
シアオはよく目を凝らし、ブニャットを見つけるとそちらへ走っていく。スウィートもすぐさま援護した。
「しんくうぎり!」
しんくうぎりで少しだけ吹雪をのかせ、シアオが少しでも見やすいようにする。
そんなスウィートを狙おうとするブーバーンにシルドはいつの間にかあなをほるで攻撃していた。
シアオは構わずつっこんでいく。
「はっけい!」
ブニャット2匹ともを狙ったが、1匹には逃げられる。しかしシアオは攻撃をつづけた。
「ひっかく!」
「っと、特大はどうだん!」
ひっかくを軽く避け、パワーをためて前に使ったときは巨大はどうだんとよばれた特大のはどうだんを至近距離でブニャットに撃つ。するとそのブニャットはすぐに倒れた。
しかし次のブニャットがシアオに狙いを定める。
「みだれひっかき!!」
「真空瞬移―ーアイアンテール!」
すぐさま移動したスウィートがブニャットの頭にアイアンテールを打ち込む。
そしてシアオはそのブニャットにはっけいをして仕留める。
「っ、でんこうせっか!」
「きゃっ!?」
「わっ、」
次、と2匹が思った瞬間、シルドに抱えられ移動させられる。でんこうせっかで移動したので速度は速かった。
そしてスウィートが元の場所を見るとそこにはトロピウス。何かを仕掛ける気だったのだろう。間一髪でシルドに助けられたのだ。
「あ、ありがとシルド……」
「それより気を抜くな。2体はパパッとやれたが、あと5体もいるんだから、な!」
シルドの言葉の途中にとっしんしてきたラムパルドを3匹とも避ける。
スウィートは鞄をあさり、不思議玉を取り出す。そしてそれを勢いよく投げた瞬間、雪がやみ、眩しいほど輝く太陽が出てきた。スウィートが使ったのは日照り玉だ。
「ナイス。すいとる!」
ラムパルドの体力を奪い、シルドは地面に身を隠す。その間にシアオは戸惑っているラムパルドに特大はどうだんをうち、仕留めた。
「っと、うわ!!」
少し気が緩んだシアオを狙おうとしたブーバーンの攻撃をかろうじてシアオは避けた。そしてスウィートはそれを見逃さず、ブーバーンの頭にシャドーボールを打ち込み、そしてシルドが穴をほるでブーバーンを仕留めた。
ふ、と息をついてスウィートは敵を見る。残りはトリデプス、トロピウス、ユキノオーの3体。これでようやく数が公平になった。
「これであとは……3体、だね」
「凄いねー。僕ここまで順調にいくとは思わなかったよ……。絶対に終わったと思った」
「笑えない冗談を言うな」
シルドが地面に潜り、シアオは特大はどうだんのパワーをためる。スウィートは襲い掛かってきた3匹にしんくうぎりをして動きをおさえる。
「特大はどうだん!」
しんくうぎりで気付かなかったのか、特大はどうだんはユキノオーに直撃し、ユキノオーが倒れた。
しかしトロピウスは空をとび、トリデプスはそのまま突っ込んでくる。
スウィートはギリギリのところまでひきつけ、シアオとともに真空瞬移で別の場所に移動した。スウィートとシアオは空中に、さらにトロピウスの上にいた。
トリデプスはいなくなったことに驚いたのか、キョロキョロと辺りを見渡す。その瞬間、地面からでてきたシルドにノックアウトさせられた。
「シャドーボール!」
「はっけい!」
スウィートとシアオは空中からトロピウスに攻撃し、そして仕留めてから地面に降りた。シアオはこけたが。
はは、と笑いながら呆れ顔のシルドの手をかり、シアオは起き上がる。
「いや、空中からの着地って難しいね!」
「スウィートはばっちり出来てたがな」
「え、いや……たまたまだと思うんだけど……」
とりあえずモンスターハウスをのりきった3匹はダンジョン内を進んだ。