輝く星に ―時の誘い―












小説トップ
第8章 最後の戦い
103話 全てが手遅れになる前に
「だいぶ昇ったよね。1番上まであとどれくらいなんだろう……?」

 ダンジョンを抜け、シアオが呟く。
 2匹は少し広い場所、ダンジョンの中間地点に来ていた。

 スウィートがふぅ、と息をついた瞬間、いきなり地面が揺れた。

「うわ!?」

「ま、また……!?」

 地響きに驚きながら、2匹は近くにあった岩にしがみついて耐える。
 “時限の塔”の入口付近でおきたものより大きい地響きは、少ししたら収まった。
 シアオは地響きがおさまったことに安堵の息をつきながら、スウィートに話しかける。

「今のゆれ、凄かったね……」

「う、うん。…………ラウルさんもシルドも言ってたように……この塔が時間を司るのだとしたら、最後はこの塔が壊れて……あの未来を迎えるってこと、かもね……」

 スウィートは顔を暗くする。シアオもだ。
 しかしそんな2匹を知らないといったとうに、また地響きがおこる。地響きは先ほどのものより少し長くなっていた。
 シアオは地響きがおさまると、スウィートに話しかけた。

「急ごう、スウィート! 手遅れになる前に!」

 スウィートはその言葉に頷き、2匹は奥へと進んでいった。





―――時限の塔 最上部―――

「わっ……しんくうぎり!」

「はどうだん!」

 ダンジョンに入ってからも地響きはおき、スウィートはバランスを崩しながらも技を放った。しんくうぎりはフロア全体にきくので、バランスを崩そうが敵にあたる。
 ダンジョン内のポケモンも地響きにはどうしようもないのか、そのときは動きがとまる。
 それをシアオは利用し、地響きが終わると同時に攻撃し、ポリゴン2を仕留めた。

「地響き、おさまらないね……」

「……やっぱり、時の破壊がどんどん進んでいってるんだ。各地でどんどん時が止まっていってるって言うけど……トレジャータウンとか大丈夫かなぁ」

 シアオが心配そうに呟く。
 どれだけ進行しているか分からないが、“時限の塔”がこれほど揺れているのだ。進行具合はスウィート達が望んでいない方向に進んでいるのだろう。

「……ねぇ、シアオ。この未来が変わって、平和が訪れたらさ、シアオは何がしたい?」

「えっ?」

 そんなことを聞かれると思っていなかったシアオはうーんと唸る。
 それほど悩むものなのか、とスウィートは苦笑してしまった。でもずっと星の停止≠止めることしか考えていなかったのだから仕方のないことかもしれない。

 すると道の奥にボーマンダがいるのが見えた。
 スウィートが先を歩いていたので、シアオにいることを知らせる。そしてスウィートは銀の針を投げる。それはボーマンダに命中する。
 やられっぱなしではなく、ボーマンダはりゅうのいぶきを撃ってくる。スウィートはそれをシャドーボールで打ち消してから、真空瞬移でボーマンダの真後ろにうつった。

「アイアンテール!」

「はどうだん!」

 両側からやられては逃げ場がなく、ボーマンダは2匹の攻撃をうけて倒れた。
 そのボーマンダに「ゴメンねー」といいながらシアオは跨いでスウィートの方まで駆け寄っていった。
 それを確認にしてスウィートは進む。

 すると、シアオが「そうだなぁ」と声をあげた。

「僕の夢は遺跡の欠片の模様の秘密をとくことだったでしょ?」

「あぁ……。でも、それは解けちゃったもんね」

 “幻の大地”にいくための資格。そして虹の石舟≠動かすために必要なもの。遺跡の欠片の持ち主のシアオでさえ自身が持っていたモノがそんな大層なものだと思っていなかった。
 そんな遺跡の欠片の模様の秘密をとく、とシアオは最初に出会ったときに語っていた。だからギルドに入りたい、と。

「でも……ギルドではまだまだやることがあるでしょ? それを皆で頑張りたいなぁって思うよ」

「ギルドの依頼とか?」

「そうそう。きっとまだこの世界には僕の知らないことが沢山ある。僕が知らないだけで、謎の場所とか、色んな宝物とか、いっぱいあると思うんだ」

 スウィートがシアオの顔を見ると、シアオは陽気な笑顔で、色々なことを思い浮かべながら話していた。

「今回さ、“幻の大地”のこととか調べてみても、知らないことばっかりだったよね? この“時限の塔”に辿り着くのだって」

「そうだね。色々と調べなくちゃいけなかったし、色んなポケモンの力を借りたね」

「うん。それで、改めて思ったんだ。僕の見ている世界は小さいなぁって。だから僕はあの未来が変わったら……また4匹で、色んな場所を探検して、いろんな事を発見したい。
 それで、皆でバカみたいに笑ったりして、探検を楽しみたいかなぁ」

 シアオの言葉に、スウィートは一瞬だけ悲しそうにしたが、ふふっと笑った。
 そんなスウィートを見て、シアオは慌てた様子で「ボク何か変なこと言った!?」と言っている。スウィートはもう一度 笑ってから、シアオに「ごめんね」と言った。

「変じゃなくて、素敵だなぁって思っただけだよ。シアオらしくって」

「僕らしくって……一体どんなのさ」

「うーん……無邪気なところかな?」

「褒められているのか貶されてるのか分からない……!」

「け、貶してないよ!?」

 そんな会話をしてから、2匹は一緒に吹き出した。
 





 ダンジョンを抜けると、頂上らしい場所に抜けた。スウィートとシアオは進みながら辺りを見渡す。
 折れている柱と折れていない柱が何本かたっており、風の音が絶えず聞こえる。そしてゴオォォォ……という音がずっと聞こえていた。

「此処が“時限の塔”の頂上なのかな……」

 スウィートがそう呟くと、何かが光り、激しい音が2匹の耳に届いた。反射的に2匹は目を瞑る。
 するとシアオが「うわっ!」と声をあげた。シアオが見ている方向は上。スウィートもつられるように上を見た。そこには

「何、あれ……」

 赤く禍々しい雲が渦巻き、たえず稲妻を発生させている。赤い雲の中心にはぽっかりと穴があき、そこから雷がでている。
 そこからバチッ、バチチチッという音が絶えずでていた。

 それを呆然と2匹が見ていると、ズンッという音ともに地響きがおこった。 
 
「わわっ! ……お、おさまったかな。何か直ぐにでもこの塔は崩れそうだね……。急ごう、スウィート!」

「うん。……あれ、あそこ」

 少し前に進むと、前に何か見えた。2匹はそれに近づいてく。
 スウィートとシアオが発見したものは、何段かの階段をのぼったところにあった。2匹は階段をのぼり、それを見る。

「コレは……何かな。何か神秘的な感じがするけど……」

 シアオが指しているのは円状のものだった。
 円状のものには模様があり、その模様は赤と青とで交互に光っている。ほかの同じような模様のところも同じように光っていた。

(サークルの模様の中に……抉れるように崩れたくぼみがあるけど……これは……?)

 スウィートが発見したとおり、円状のところには5つのくぼみがあった。そこには模様が繋がっているが、抉れているので途中になっている。
 しばらくスウィートはそれを眺めて、あることに気付いた。

(くぼみが……5つ……。5、つ……?)

「そっか!」

 スウィートが納得したように声をあげる。するとシアオがビクッと驚いて体を揺らしながらも、「どうしたの?」と聞いた。
 スウィートは嬉嬉とした様子でシアオに考えを話す。

「時の歯車≠セ! このくぼみは全部で5つ。時の歯車≠烽Tつでしょう? それにこのくぼみは円状だし、うまくはまるはず!」

「あ……確かに。そっか!」

 するとシアオが時の歯車≠取り出す。スウィートとシアオはそれを1つ、くぼみにはめる。するとうまくはまった。
 顔を見合わせてから頷き、次々とはめていく。

「これで、最後――」

 スウィートとシアオが最後の歯車をおさめようとした瞬間、

「きゃあっ!?」

「うわぁぁ!!」

 紫色の光が2匹を直撃した。シアオはそのときの反動で最後の歯車を落とし、最後の時の歯車≠ヘサークルがあるモノの前に落ちた。
 スウィートとシアオは光に吹き飛ばされ、階段から転げ落ち、そして地面に倒れる。

 痛む体をなんとか起こすと、辺りが急に暗くなった。

「な、何!?」

「急に暗く……」

 2匹が辺りを見渡すが何もいない。しかしどこからかグルルル……という音が聞こえた。
 聞いたことのあるモノで、スウィートは冷や汗をたらす。

「これって……」

「お前達か……。この“時限の塔”を破壊するものは……!」

「え、え!? ちょ、ちょっと待って!」

 どこからか消える声にシアオは反論する。

「ぼ、僕らは時の破壊を防ぎにきたんだ!」

「トキノ……ハカイ……」

 スウィートはビクリと体を揺らす。嫌な予感しかしない。
 シアオの言葉を復唱した声は、最初の理性があった声とは違い、理性がないような声だった。
 すると暗くなった場が明るくなった。

「トキノ……グオオォォォォォォォォォーーーー!!」

 大きな咆哮とともに、眩い光が場を包む。
 スウィートとシアオが目を瞑り、そして目を開けると、さっきまでいなかった者が、ディアルガが、そこに、いた。

「お前達! どうしてもこの塔を破壊するというのか!」

「ち、違うってば! そうじゃない! 僕たちはこの塔が崩れるのを防ぐために――」

「シアオ!!」

「――黙れ!!」

 咄嗟にスウィートがシアオの手を掴んで真空瞬移で移動する。
 移動してから自分たちがいた場所を見ると、ディアルガがメタルクローをし、空をきったところが見えた。

「グルルルルル……」

 スウィートはディアルガの目を見る。唸り声をあげるディアルガは、理性があるのかどうかわからない。ただ、理性が沈みかけているのだけは確認できる。
 このままいけば、完全に闇のディアルガと化すだろう。

「“時限の塔”を壊すものは……私が、私が許さん!! グオォォォォオ!!」

 やばい。これは非常にまずい。
 スウィートはそう感じ取っていた。闇のディアルガとなる前に、ディアルガを正気に戻さなければならない。まだ理性が灯っているうちに

「シアオ、いくよ。今ならまだ、間に合う。助けられる」

「う、うん!!」

 助けられるものなら、助けなくてはいけない。

■筆者メッセージ
おそらく明日から1日更新でいきます。
次の戦闘描写はほとんどできているもので。それ(戦闘描写)以外はアクアは一日で書けますから。気合で←
アクア ( 2013/07/30(火) 13:52 )