98話 因縁の戦い
「《シルド、ヘタレ。作戦を伝えるからよく聞くこと》」
「ヘタレ!? 僕そんな呼ばれ方してんの!?」
「お前のその命令形は何とかならないのか……」
シクルの言い分にシアオは抗議するが、今はそんなことをしている場合ではない。シルドも小言は言っているが、目線は敵から外していない。
そんな小言を全てスルーしてシクルは続ける。
「《ヤミラミ6体くらいならあたし達で十分。だから2匹はゼクト》」
「い、1匹で!?」
「《1匹じゃない。8対6》」
駄目だ、コイツ。とかシルドが思ったのは本人しか知らない。
はぁ、と小さめの溜息をついてシルドはスウィートもといシクルを見て、シアオに指示した。
「シアオ、とりあえずその作戦でいくぞ。コイツらの強さは俺がよく知ってる。確かに6体くらい仕留められるだろ」
「え、でも……」
「《とっとと行け。そんなんだからヘタレとか呼ばれてるんだ》」
「フォルテより辛辣なんだけど!」
シクルはそんなシアオの言葉を無視してヤミラミ達の方へつっこんでいく。そしておおよその中心までいくと、技を使った。
「《凍える風》」
冷たい、雪が混じった風が吹き、ヤミラミ達は避けられず喰らう。しかしやられっぱなしとはいかず、ヤミラミはすぐに攻撃をしかけてきた。
後ろから2体、右から2体、そして左、前から1体ずつでみだれひっかきを仕掛けようとしていた。これなら普通は避けられないだろう。しかし、表面上は1匹でも、1匹ではないのだ。
「《鬱陶しい……悪の波動》」
「「ウイィッ!?」」
スウィートを守るように、黒い波動が周りに放出される。ヤミラミ達が攻撃する寸前だったので、ヤミラミ達は受身を取れず喰らった。
そのままでは終わらず、スウィートはでんこうせっかで1匹に近づくと、容赦なく技を放った。
「アイアンテール!!」
動けず諸に喰らってしまったヤミラミ1体は倒れる。
ヤミラミ2体はそれに怯まず、スウィートに攻撃をしかける。それにまもるで防ぐが、残りの3匹が後ろから攻撃してきて、スウィートは少し攻撃を受けながらもすぐにその場をさがった。
「……やっぱり、全部やるのはキツいかな」
《弱音いわない》
《スウィート、後ろじゃ》
シクルの小さな注意の後、ミングの声を聞いてスウィートは真空瞬移で移動する。さっきいた場所を見るとヤミラミ達がいた。危機一髪といったところだろう。
「リーフブレード!」
息をつく間もなく、スウィートは1番 近くにいたヤミラミに技を仕掛ける。スウィートに気付いていない様子のヤミラミに当たる、と思ったスウィートだが
「ウィィッ!!」
「え、きゃ!」
攻撃を避けられ少し怯んでいるうちに、他のヤミラミからのみだれひっかきを喰らってしまう。
それから残りのヤミラミの攻撃を避けながら、さっきの行動について考える。
《あれはみきりね。厄介なものを使ってくるわね〜》
《呑気に言ってる場合じゃねぇだろ……。スウィート、反撃だ! 反撃!》
(えぇ……)
避けるのでも大変だというのにどうやって反撃しろと、と未だ「反撃」と言っているフレアについ苦笑が漏れてしまう。それでまた抗議されても迷惑なのだが。
そんなことを考えていると、いきなり体が動いてスウィートは目を見開く。
(え、えっ!?)
「《テメェら舐めてんじゃねぇぞ!
究極火焔!》」
大きな炎の波がヤミラミを襲う。2体はすぐさま移動して逃げたのだが、3体は間に合わなかったらしく、波にのまれ、姿が見えたときにはもう倒れていた。
オリジナル技はとてつもなく体力も消費する。それよりもサファイアの中で出られる時間を大幅に削ってしまう。だからこそ取っておこうと思っていたスウィートなのだが、勝手にフレアに使われてしまった。
頭の中、というかサファイアの中でバコッと殴る音は聞こえないフリをしておく。
「あと2体……。早く倒して、シアオとシルドの手助けにいかないと」
《そうじゃのう》
《ご主人、私にお任せを。ある秘策がありますの》
(秘策?)
リアロの言葉に首を傾げるが、ヤミラミの攻撃を避けてからリアロの体を渡す。
するとリアロはニッコリと笑って技を使った。
「《
幻流星》」
するとスウィートの体が光る。そして何故かヤミラミがあたりを見渡しだし、何もないところに攻撃しだした。
スウィートはその様子に首を傾げるが、リアロはすぐに答えた。
《この技はスピードを上げますの。ご主人のスピードも、更にシルドとあのリオルのスピードも今頃あがっていますわ。そしてもう1つ効果がありまして、敵ポケモンに一時的ですが幻影を見せますの。今のうちにやってしまえばこちらのものですわ》
ふふん、と得意げに話すリアロに、スウィートは素直に凄いと思った。
今頃シアオはパニックになっているかもしれないが、シルドが説明して上手く対抗しているだろう。それが少しでもゼクトを倒す鍵になるといいが。
スウィートはそんなことを考えながら未だ幻影を見て攻撃をしている2体のヤミラミを見た。
「仕留められるかな」
《フレアが攻撃だったら1番なんだけど……ちょっと、今ボコボコにされた状態だからな……》
《アレが悪い》
《アレ呼ばわりしちゃ駄目よ、シクルちゃん。でもフレアちゃんが悪いわね》
《自業自得のお馬鹿さんは放っておけばいいのですわ。それよりご主人、もう効果がきれます。お早めに》
何ていうかフレアについて酷い言い様でスウィートは苦い顔しかできなかったが、リアロの言葉を聞いてすぐにヤミラミに狙いを定めた。
すぅ、と息を吸い込んでからスウィートはしっかり標的を見る。そして体にありったけのパワーをため、撃った。
「10万ボルト!!」
「ウィ……ギャアァァァア!!」
幻影に気を取られ気付かなかった2匹には見事 命中した。スウィートはほっ、と息をつく。
それも束の間、全てのヤミラミを倒したことを確認したスウィートは、すぐさまゼクトとシアオとシルドの方へ向かっていった。
「冷凍パンチ!」
「っと、シアオ!」
「はどうだん!」
シルドがゼクトの攻撃を避け、シアオがゼクトの背後からはどうだんを撃つ。しかしそれを分かっていたようにゼクトははどうだんを避けた。
シアオはゼクトの動きを目でおい、でんこうせっかで一気に近づいた。
「まねっこ――冷凍パンチ!!」
「冷凍パンチ!」
シアオとゼクトの冷凍パンチがぶつかりあう。シアオは少し目を見開いた後、すぐにゼクトから距離をとった。
ゼクトが攻撃するような素振りは見せなかった。あのまま攻撃を仕掛けることは可能だったのでは、と思ったシルドはシアオに声をかける。
「おい、シアオ。どうかしたか」
「…………凍った」
その言葉に反応し、シルドがさっきゼクトとぶつかり合ったシアオの手を見る。その手は少しだけだが凍っていた。
あの状況でずっといると自分が凍ることを予測しての行動だったのだ。シアオは顔をしかめて、弱めのかわらわりで自分の手についている氷を割って落とす。氷がついてた部分は赤くなっていた。
「真似事の方が威力が高いと思うなよ」
「…………シアオ。いけるか」
「うん。大丈夫」
赤くなった方の手をブンブンと振りながらシアオはシルドに答える。
ゼクトはそんな2匹を見ながらかげうちを仕掛けてくる。シアオとシルドはでんこうせっかで避けた。そしてシアオは空中にいるまま攻撃を仕掛けた。
「はどうだん!」
「シャドーボール!」
2つの技がぶつかりあい、小さな爆風がおきる。
シルドはゼクトが自分に注意がいってないときにエナジーボールを撃つ。しかしそれも見破っていたようで、ゼクトは軽快な動きでそれを避けた。
「シャドーボール!」
少しの時間だけで大量の小さなシャドーボールをつくり、ゼクトはそれを2匹に撃った。
シアオもシルドも体を捻ったり、技を使ったりして避けていくが、数が多い。ゼクトを止めなければ、そう考えた2匹は行動に移そうとするが、なかなか近づけない。
「くっ……!」
避けるといっても数が多ければ掠りもする。シルドはほぼ避けているが、シアオはシルドほど避けるのはうまくなく、何発か諸に当たっていた。
シアオは避けながら手に力をこめる。しかし同時進行とはキツいもので、シアオは先ほどより直撃する回数が多くなる。
「っの……特大はどうだん!!」
手に力をこめて作っていた特大はどうだんをシアオはゼクトに向かって撃つ。ソレは小さなシャドーボールを掃滅しながらゼクトに真っ直ぐ進んでいった。
「チッ」
シャドーボールを撃つのを止め、ゼクトはそれを避ける。そのとき丁度 穴をほるで隠れていたシルドが後ろからでてきて、ゼクトに攻撃した。
「リーフブレード!」
「ぐっ、冷凍パンチ!」
リーフブレードが命中したが、ゼクトはすぐに反撃する。シルドは冷凍パンチをすれすれで避け、そしてシアオに目で合図した。
シアオはその合図を受け取り、ゼクトにはどうだんを撃つ。今度は普通の大きさだ。
「シャドーパンチ!」
しかしそれもすぐにゼクトに掃滅させられた。
シルドはシアオの近くに行き、チッと舌打ちした。
「やっぱり厄介だな……」
「っと、きたよシルド!」
今度は悪の波動。シアオとシルドはそれをうまくかわし、シアオは先ほどと同じように空中からはどうだんを撃つ。しかし
「サイコキネシス」
ゼクトがポツリとつぶやいた後、はどうだんの動きがぴたりと止まり、シアオに向かって一直線にとんできた。勿論そんなことになるとは思っていなかったシアオは反応できない。
「うわ!?」
自身のはどうだんをくらい、うまく着地できずに地面に落ちる。
ゼクトはそのままシアオにシャドーボールを撃とうとしたが、シルドがリーフブレードで攻撃してきたことにより、シルドにシャドーボールを撃った。シルドはそれを避けると、また攻撃をしかける。
そんな2匹を見ながらシアオは起き上がり、ギュッと拳を握る。
すると、シアオとシルドの体を光った。シアオはそれに目を見開き、シルドは構わずゼクトに攻撃を仕掛けている。
「えっ、え!? 何これ!? え!?」
シルドの様子を見るも、変わらずゼクトに攻撃を仕掛けている。ゼクトの表情を見ると若干 歪んで見え、シルドにおされていた。
そしてシアオはあることに気付いた。
「シルドの動きが、速く、なってる……?」
光が収まっても尚、シルドの動きは速い。
どうやら害をなすものではない、と理解したシアオはシルドの手助けに入る。
「はどうだん!」
ゼクトはまた舌打ちすると、小さなシャドーボールを数個作り出し、数個ではどうだんを打ち消し、目の前のシルドの攻撃を少し当たりながらも避けた。
ゼクトが右手に冷凍パンチの準備をしているのに気付いたシルドは一度シアオの元に戻った。
「シ、シルド……。さっき体が光ったけど……」
「おそらくリアロだ。素早さをあげてくれたらしい」
あぁ、とシアオは納得してしまった。
てだすけと同じ容量なのだろう。自分の仲間の能力値をあげるといった部分では。
とにかく、といった様子でシルドはゼクトを見る。あちらも、そしてこちらもあまり大きなダメージを喰らっていない。1番喰らっているのはおそらくシアオだ。
するとゼクトが動きを見せた。
「影分身!」
「え!?」
「なっ……」
ゼクトが何体も現れ、シルドとシアオを囲む。
シアオはキョロキョロと見渡し、シルドはどれが本物か見分けようとする。しかし影分身を見ぬけられない。
するとゼクトはまた小さな無数のシャドーボールを作り始めた。
「シ、シルド……これは……」
「やばいっ……!!」
1匹でも大量に作り出すというのに、それが何匹もいるとなると数はかなり増える。つまり、逃げ場がないのだ。
ゼクトがシャドーボールを撃つと同時に、シルドはシアオの腕を引っ張った。
「わ!?」
「いいから来い! 急げ!」
シルドが穴を掘るで地面に逃げ、シアオを引っ張りながら進む。後ろからはゼクトがサイコキネシスで操っているシャドーボールが後を追ってきていた。
おそらく地上にもいくつか残っていて、出たら全て自分たちに向いてやられるだろう。
何発か地面の中でもシャドーボールに直撃しながらシルドは穴を掘る。
シアオも何発か打ち消しているが、防ぎきれないらしい。シャドーボールは次々と来て、キリがない。
そのとき、シルドにある音が耳に響いた。
「シアオ、出るぞ」
「えぇ!? そ、それ大丈夫なの!? 確かにここにいてもやられるだけだけど、でも地上にはまだ……」
「大丈夫だ」
シルドは地面を掘って、そしてシアオとともに地上に出る。
シャドーボールが迫ってきたときのためにシアオはすぐに攻撃できる準備をしていたが、それはなかった。
何故なら、シャドーボールも、そしてゼクトの影分身も全て打ち消されているからだ。
「ヤミラミ達では刃がたたなかったか……」
「《残念だったな。あの程度では我も、主も倒せない》」
スウィートが、ゼクトの前に立ちはだかっていた。
おそらくスウィートがここに駆けつけ、シャドーボールと影分身を消したのだろう。シルドはそれを分かっていて地上に出たのだ。
しかし何故わかったのか、とシアオは首を傾げた。
「お前らがまだアレを覚えててくれて助かった」
「《……アレは主がもともと考えたものだ。覚えているのも当然だろう》」
相変わらずな言い分にシルドははぁ、と小さく息を吐いた。
「シ、シルド。何でわかったの……?」
「俺が穴を掘るをやっているときに、スウィートが俺に出るタイミングを知らせる合図を決めていたんだ。5回、決められたリズムで地面を叩いて知らせる……。それで分かったわけだ」
凄い、と素直にシアオは思った。それだけスウィートとシルドは信頼しあっていた。相手の合図に頼るくらいだったのだから。
それを考えたスウィートも、勿論すごいのだが。それを読み取ったシルドも、十分凄かった。
そんなことを考えているうちにスウィートが攻撃を開始した。
「しんくうぎり!」
「チッ」
しんくうぎりをゼクトは影分身をつくり無数のシャドーボールで掃滅させる。
するとシアオが特大はどうだんで影分身を一掃していく。シルドは残った本物のゼクトに攻撃をしかけた。
「リーフブレード!」
「シャドーボール!」
おそらくゼクトはシルドがシャドーボールを避けるので、リーフブレードが不発に終わると思っていた。
しかしシルドは止まらず、シャドーボールがシルドに当たる直前
「はどうだん!」
シアオが横からシャドーボールを打ち消した。そして
「てだすけ!」
シルドの攻撃をあげる補助をスウィートがし、シルドはそのままゼクトにつっこんでいく。
勿論そんなことになると予想していなかったゼクトは直撃した。
スウィートはゼクトが体制を立て直す前に、攻撃をしかける。
「冷凍ビーム!」
ゼクトはスウィートの予想より早く体制をたて直し、その攻撃を自身の技で打ち消した。しかし、それをスウィートはそのことも仮定として頭の中で計算していた。
「はっけい!」
「なっ、ぐあ!!」
ゼクトの避けた方向にシアオがスタンバイをしており、はっけいを喰らわせた。シアオに気付かなかったゼクトは諸に攻撃を喰らう。
ゼクトがそのまままた影分身をしようとした瞬間、シルドが1番に動いた。
「かげぶんし――」
「させるか!」
「うぐっ!!」
シルドはできるだけ近寄り、至近距離でゼクトにエナジーボールを当てた。
すぐに攻撃してくるかもしれない、とシルドはさがる。3匹はゼクトの様子を見た。反撃してくる様子はない。
3匹は互いに顔をみあわせ頷き、シアオがでんこうせっかで先陣をきった。
「かわらわり!」
ゼクトは起き上がる最中だった。これは当たる。そして2匹が次の攻撃の準備に入ったときだった。
シアオの動きが止まった。否、止まらされた。
「え!?」
「――ナメるな!!」
ゼクトはシアオの腕を掴んで、かわらわりを止めた。シルドはそれを外そうと、ゼクトの体に攻撃するのを、シアオの腕を掴んでいる手に変更する。
しかし、ゼクトは予想外の行動にでた。
「なっ、ぐ!」
「うわぁ!!」
「シルド! シアオ!」
ゼクトはシアオを勢いをつけてシルドへとぶん投げたのだ。
まさかそんな行動に出るなんて思っていなかったシルドは投げられたシアオに激突し、2匹はともに神殿の壁までぶっ飛ぶ。
スウィートはゼクトに攻撃しようと、真空瞬移でゼクトの真後ろに移動する。
「アイアン――」
ゼクトの体に打ちこんだ思った瞬間、スウィートはしっかりとゼクトと目が合ってしまった。
(こ、れは――)
「炎のパンチ!」
「きゃあ!!」
アイアンテールを止めたスウィートは、ゼクトの攻撃が直撃し、シルド達とは反対方向に飛んでいった。
そして岩の部分に体を打ちつけた。スウィートはすぐに起き上がって攻撃を再開しようとするが
(体が、動かないっ……! まさか黒い眼差し……!?)
体が動かず、スウィートはその場から見ることしかできない状態になってしまった。
シアオはスウィートを慌てた様子で見ていて、シルドは全て悟ったのか、忌々しいといった感じの表情をしていシアオに説明している。
「え、えぇ!? じゃあスウィート危なくない!?」
「ゼクトを倒せばそれも解ける。ここはスウィートの力を借りずにやるぞ!」
シルドが一気にたたみ込もうとゼクトの元まで走っていく。
しかしすぐにゼクトがどれか分からなくなる。それはゼクトが影分身したからだ。シルドは一旦 動きを止める。
「チッ、どれだ……!?」
「シルド! ちょっと退いて!」
シアオの言葉を聞いて、シルドが邪魔にならない場所に避難する。
見るとシアオは手に力をため、特大はどうだんを撃とうとしているのが分かった。そしてある程度 力がたまったら、シアオは撃つ。
「特大はどうだん!」
さっきまではこれで影分身を掃滅していた。だから今回もうまくいくと思ってやった行動だった。
しかし、ゼクトの影分身は大きいシャドーボールをつくり、それを特大はどうだんにあて、特大はどうだんを打ち消した。
「そ、そんな……!」
「フッ、甘いな。悪の波動!」
影分身も含めたゼクトが悪の波動を放つ。それは広範囲で、避ける隙間がないくらい広がっていった。
シルドは穴を掘るで避けようとするが、ゼクトにそれを先読みされた。
「させるか! シャドーボール!」
「ぐ!?」
避けられず、シルドはおそらく本体と思われるゼクトのシャドーボールに直撃する。
シアオはそれを見てシルドの名を呼ぶと、意を決したように、悪の波動をうけながらゼクトにつっこんでいった。先ほどシルドを攻撃したゼクトに。
「うぐぐっ…………かわらわり!!」
「シャドーパンチ!」
やはり、シアオの予想はあたってシアオが攻撃したものは本物だった。
かわらわりとシャドーパンチが当たり、激しい爆風がおきる。それを喰らい、影分身はどんどん消えていく。
シアオとゼクトの技の直接対決は互角だった。しかしゼクトはもう一手を先にうった。
「炎のパンチ!!」
「い゛っ!!」
ゼクトがもう片方の手で冷凍パンチをシアオの腹に打ちこむ。シアオは何とか耐えようとしたが、耐えられずに地面をゴロゴロと転がった。
シルドはシアオに止めを刺そうとしているゼクトに飛び掛った。しかし
「お前らの行動はたいがい読めている! 冷凍パンチ!!」
「うぐ!! っ……!!」
シルドは冷凍パンチ、効果抜群の技を腹に直撃させられ、顔を顰める。しかし、片手でゼクトの手を掴んだ。
「な、何!?」
「これで、終わり、だ……!! リーフブレード!!」
「なっ、ぐああ!!」
そのままシルドは、ゼクトにリーフブレードを打ちこんだ。
シルドの体がフラリ、と動く。しかしシルドは踏ん張り、代わりにゼクトが地面に倒れた。