第1章 
第10話 再開!謎解きタイム
 _____時は少々遡る。
 ここはパレットの中心部、セントラルエリア。パレットの様々なエリアの中でも特に建物が多くそびえ立ち、様々なポケモン達が行き交う“都会”である。都会といっても、建物だけでエリアの8.5割を埋め尽くしてしまっているような状態のそれではない。“セントラルロード”と呼ばれる大きな十字路がエリアの半分近くを占めており、それを境に建物のある場所・無い場所と綺麗に分けられてあるのだ。
 また、セントラルロードの中心部には小さなお店が並んでおり、それらに囲まれるようにそびえ立つマルノームを模した大きな建物が目立つ。この建物には出入口が複数あり、その内1つは建物の2階と思われる位置にある。
 ちょうど、そのマルノームの開いた口のような出入口から1匹の太眉ポッチャマ、ボルドがよたよたと出てきたのが見えた。彼はカバンを肩にかけ依頼書を右翼で持っている。

「……今日はサウス、か」

 ボルドは軽い溜息をつき依頼書をカバンにしまうと、マルノームのひげを模した細長い階段を降り始めた。その時、これから彼が向かわんとする方角から誰かが走ってくる音が聞こえた。ボルドは階段の途中で立ち止まり、その方角へ何気なく目をやり直後、顔をしかめた。

「ハル、タ……だよな?」

 走ってくる者の正体が相棒のハリマロンであることを確認したボルドは、彼の元へ走っていった。

「おーーーーい!! ハルターー?」
「ーっ! ボルドくん!!?」

 ハルタはボルドがこちらへ走ってくるのを確認し、明るい笑顔で振り向く。

「どうしたんだよハルタ、おめぇ今日休みなんじゃ……ーってカレーシューやべぇ」
「え? ボクまだ13歳なのに?」
「加齢臭じゃねぇカレー臭!! カレーの臭いだ! つかおめぇまたスカーフ汚したのかよ」
「カレー? あ、ほんとだ。そういえば朝御飯カレーだったね」

 ハルタはボルドに指摘され、自身の首元に巻かれたスカーフを見た。ピンク色だったそれは、所々あらゆる色に染まっており、その上から茶色い液体が大胆に付着してあった。それはどう見てもカレーそのものであり、おそらく今朝付着したものだと思われる。

「うーん、これもう洗濯してもとれないよねー……またミルフィーユ先生に怒られちゃうかもね」
「だろうなぁ……ーっつーか、それが聞きたいんじゃねぇよ! おめぇ、昨日俺に『アヤメさんから留守番を頼まれたから明日は学校を休む』っつったじゃねーか! ミルフィーユ先生にはちゃんと伝えたぞ? なのに急に何しに来たんだ?」
「ーっあ!! いけない! ボルドくん、今日の依頼何処?!」

 話し込んでいて肝心の用件を忘れる所だったとでもいうように、ハルタが慌ててボルドに問うた。

「え、俺? 今日は迷いの草原の調査だけど?」
「迷いの草原?! そこって確かサウスにあるダンジョンだよね?」
「まぁそうだけどよ?」
「だったら大丈夫だね!」
「はぁ? 何が」
「ほら、この間のロコンだよ!」

 ボルドは一瞬戸惑った。この間のロコン? この間? 最近ロコンになんて会ったっけ?

「忘れたの? えーと1ヶ月……いや、1ヶ月と半月くらい前になるのかな……? 真夜中の森の奥で見つけたあのロコンだよ!」
「ああ!! あのロコンか! で、あの子がどうしたんだ?」

 ボルドがそう聞き返した瞬間、ハルタは満面の笑みでボルドの右翼を引っ張った。

「あの子の謎を解くのにちょっと手伝って欲しいんだ!! あ、あんまり時間をかけるようなことはしないから大丈夫だよ!」
「ま、まぁ……迷いの草原はそんなに調査に時間かからねぇからいいけどよぉ……」
「そっか! じゃあ行こう!」
「おいちょっと待て何処へ??」

 そうボルドが聞いた時には、何故か既に右翼を握っていたはずのハルタの手がなかった。

「サウスー!」

 ハルタは振り返ることなく、もと来た道を駆けていった。ボルドは全力速で彼を追いかけて行った_____。





 _____そして現在に至る。
 アルファは、アヤメの家にてハルタから一通り、これまでの出来事を話されたのであった。

「_____という訳なんだけど、どうお? アルファちゃん、分かったかな?」
「う、うん」
「ーったく、せめてそのアルファ……だっけ? こいつにはちゃんと話してから行けよな?」
「あはははごめんごめん!」

 ハルタはボルドに指摘され、苦笑いしながら返答した。そして、ひとつ咳払いをして話を元に戻す。

「じゃあ、とりあえず夢の内容について分かってることをボルドくんに教えるね」
「うん」
「やれやれ……やっと本題かよ」

 ハルタは、今朝アルファから聞いた不思議な夢の内容をボルドに伝えた。
 アルファが昨夜、夢の中で“さぁ”ーっていう幽霊に出会ったことや、彼が記憶を失くす前のアルファと親友だったこと。そして、それらについて詳しく聞こうとしたら、「夜が明けるから」等と言って去って行ったこと_____勿論、幽霊とは限らなかったり、発音上“さぁ”ではなく“サー”が実は正しかったりと、微妙に違う所が交えてあったが。
 夢の内容以外にも、アルファが元は人間だったことやアヤメさんの家に住まわせて貰っていることなど、ボルドが知らない知識をもまぜこぜに教えたため、話は3匹が思う以上に長く複雑怪奇なものになってしまった。

「……どうお? 何か気になるところある?」

 説明に疲れ、一息ついたハルタがボルドに問う。アルファも黙ったままボルドに視線を向ける。

「いやぁどうと言われてもなぁ、ポケモンになった幽霊と親友の人間って」
「ボルドくんそれ違う! ポケモンになったのは人間だよ!」
「あぁすまん! えっと兎に角その時点で色々と信じらんねぇよ」
「まぁ、それもそうなんだけどさー……」

 一度に多くの情報を伝えられ、ボルドは流石に情報をまとめるだけで精一杯なようだ。そこで一同は一旦静まる。それから少しして、ボルドが口を開いた。

「……なぁ2匹とも、今回は幽霊の正体についてだけ考えねぇか? おめぇらが今1番気になってんのはそこだろ?」
「確かにー! ーって言うか、元々そのつもりだったんだよ! 危ない危ない」
「おいおい、俺には依頼が残ってんだからな? あんま遅くなんのはやめてくれよ?」
「あ……そうだったね! よし、アルファちゃん!」
「ぅえ?! は、はいっ?」

 アルファは暫く出番が無く空気と化してた為か、急に呼ばれてすっとんきょうな声を上げた。

「夢の中以外で幽霊と会ったことは?」
「ない……と思う」
「じゃあーなんかこう……心霊体験をしたぁーとかは??」
「ない……はず」
「あ! そもそも霊感があるとか!」
「ない……多分」

 ここでハルタは質問攻めを止めた。そして

「それで夢の中で出会えたの凄いや……やっぱり究極にずるいよ」

 ーっと、小さめの声で呟いた。そんな彼に今度はアルファが問い掛ける。

「……は、ハルタくんは心霊体験とか……したこと無いんだよね?」
「無いんだよ……究極に残念なことに無いんだよ……」

 ハルタは同情するなら幽霊をくれとでも言うかのような眼差しで答えた。その時、ボルドが横から口を挟んだ。

「おいハルタ? おめぇあるだろ心霊体験」
「え?! そんな素晴らしい体験したことあったっけ???」
「おいおい恐怖で忘れたのか? “真夜中の森”の奥の方で会ったんじゃねーか」
「え? ……あぁーーーーーーーー!!!! 思い出したーーーー!!」
「え、真夜中の森……? 聞いたことがある……」

 アルファが首を傾げたその瞬間、2匹がさっと彼女の方を向いた。

「おい! そういやぁそこの奥地って、アルファが倒れてた場所だったよな!?」
「あ……そういえば! アルファちゃん! 昨日の幽霊の特徴をもう1回教えて!」

 アルファは慌ててそれぞれが出会った幽霊の特徴を無理矢理思い出した。

「えっと……暗くて全身はよく分からなかったんだけど……小さな青っぽい水晶体のようなものが見えた……かな? 目玉っぽいの……。」

 もう思い出せる情報が無くなったからか説明が途切れ、アルファはおそるおそる2匹の顔を伺った。その時は2匹とも非常に驚いたような表情で固まっていた……が

「それだーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

ハルタが晴れやかな笑顔で叫んだ。そして

「アルファちゃん! 凄いよ凄い! 究極に素晴らしいよ!」
「え? え? ええ??」

 唐突なハルタの言動にアルファは動揺した。ハルタはそんなアルファの肩を両手で強く持ち、笑顔で話を続ける。

「よく聞いて? アルファちゃん。前にボク達が遭遇した幽霊はね、キミが夢の中で出会った幽霊と見た目の特徴がおんなじなんだ!!!」
「え……おんなじ?」
「そう! もしかしたら同一個体なのかもしれないよ!!」
「え……っ!? そ、そんな……」

 アルファは驚きで上手く言葉が出てこないが、今まで疑問しか出てこなかった中、ようやく光が見え始めたようでとても嬉しい気持ちが湧いてきていた。このままだったら、その幽霊の正体から自分の正体まで分かるかもしれない………………なんて考えていたその時

「あ、あのさ……」

 2匹……と言うか主にハルタが盛り上がってる中、ボルドが水を差した。

「ん?? どうしたのー?」
「おめぇらこれからどうするんだ? その幽霊の正体を突き止めるんなら、思いきって真夜中の森まで行くんが早いけどよ」
「うん、そうだね! じゃあ早速行こうか……ーって、アルファちゃんには難しいかな?」
「そう、それに俺はいい加減そろそろ依頼をこなしに行かねぇとマズい」
「確かに! …………あ」

 ハルタは再び大人しくなった。ダンジョン初心者かつ、真夜中の森について必要な知識がちゃんとあるかも危ういアルファと3匹どころか2匹では危険だということを悟ったからだ。

「じゃ、じゃあ…………他をあたってみる! 仕方ないから2匹で行こうアルファちゃん!」
「え、他って何処へ……?」
「えーと、それはー…………これから考える!!!」

 謎解きタイムはまだまだ続くようだ……。

Itocoo_ ( 2020/03/06(金) 01:35 )