プロローグ
ポケットモンスター_____縮めて“ポケモン”と呼ばれる不思議な生き物が暮らす大地がある。はじめはその大地に名前など無かったのだが、とある出来事をきっかけに“キャンバス”と名付けられた。
これはそんなキャンバスを舞台とした物語である。
_____ここはキャンバスの何処かにある森の中。
辺りは真っ暗で見通しが非常に悪い。曇天の空からは槍のような雨が降り続いている。
そんな中、何処かへとまっすぐに走り抜ける3匹のポケモン達の姿があった。
「……ハァハァ……だ、大丈夫か?」
「……あぁ」
「もう少し……なんとか頑張るんだ!」
3匹ともかなり疲れている。かなりの距離を走ってきたのだろうか。しかし、速度を緩める気配は感じられない。
雷鳴が聞こえた。続けざまに稲妻が走る。雨脚はさらに強くなった。
「−っ! 見えたぞ!!」
3匹の向かう先に少しだけ開けた場所があるのが見えた。そして、その奥には何やら青白い光が見える。
「よし、あとちょっとだ! あそこに飛び込めば_____」
「待てっ!」
3匹が立ち止まる。そして声のした方へ振り向く。そこには数匹のもぐらポケモン、ディグダに、彼らの進化形であるダグトリオがいた。彼らはどうやら3匹を追いかけてきたようだ。
「……くっ! しつこい奴らだ……」
「相手にする暇はない! 飛び込むぞっ!!」
青白い光はもう目の前。よく見るとアーチ状になっている。
ここまで来ればこちらのものだ。このまま走っていって飛び込めば大丈夫だろう。
……そう思ったが、アーチの中心、最も強く光が放っているところへ、一斉に飛び込もうとしたその時のことだった。
「逃がすかっ!! 『じしん』!!」
「危ないっ!!」
ダグトリオが叫ぶと同時に、強く激しい震動が3匹を襲う。いや、3匹だけではない。ダグトリオの周りにいる大勢のディグダ達にも…………!
重い地響きとうめき声がこだまする。平然としているのは、ダグトリオただ1匹のみ。
『じしん』がおさまったころには、アーチ周辺のポケモンたちは地面に横たわっていた_____2匹を除いて。
1匹はもちろんダグトリオ。では、もう1匹は?
「−っ! おい、しっかりしてくれ!!」
「くっ…………お前は、無事なのか……?」
「あぁ……何とか」
「そうか……良かった」
青白い光が強く、姿こそよく見えないが、アーチの真ん前に1匹、ポケモンがいるのが確認できる。地面の影を見る限り、そのポケモンはダグトリオでもディグダでもなかった。3匹の内の1匹だったのだ。どうやら、他の2匹に庇われたようだ。
「だが、すまん……!今ので私達はもう無理だ……。お前1匹でも、行ってくるんだ……」
「え、でも!」
「早くっ!」
「……分かった!」
こうして、1匹のポケモンが青白い光のアーチへと飛び込んでいったのだった。
予想もできない出来事が、飛び込んだ先で待っていることなど知らずに……。