後編
「あったー!!」
イーブイが白い薬草を草むらで発見し、嬉しそうにぴょんぴょん跳ねました。
「後は黒の薬草ね…。頑張って見つけますよ!!」
シロ姫はそう言い、四人を振り返りました。
「おー!!」
四人は意気揚々と言うと、さらに森の奥へと足を進めるのでした…。
*
「見つけやしたぜ!!」
オニスズメが黒い薬草が生えている所まで飛ぶと、薬草を切ってクロ姫の所へ持って行きました。
「でかしたわよオニスズメ!!さぁーて、白い薬草も探すわよ!!」
「少し休憩しましょうよ…。」
キノココが疲れた様子で、クロ姫に言いました。
しかし、クロ姫はキノココが言った事を無視して、森の奥へと歩いていきました。
クロ姫の歩いていく後を家臣の四人がとぼとぼと歩きました。
*
「見つからないですね…」
「見つからないなー…」
シロ姫とクロ姫はそれぞれ反対方向から歩いてきました。
シロ姫とクロ姫は、薬草を探すために下を向いていましたが、ハッと前を向きました。
二人の視線が合い、少しだけ火花が散りました。
「クロ様…」
「シロ…」
二人は、二人の手に握られている黒と白の薬草を見ました。
「黒の薬草…!あなたが見つけたんですか?」
シロ姫が驚いたような表情で言いました。
「そうよ!アナタも見つけていたのね。」
「ええ…。」
二人はまたお互いを見つめ合うと、クロ姫が口を開きました。
「ねぇ、王子を助けるまで協力しない?その薬草がないと王子を助けられないんだし…。」
シロ姫は少し考えてから頷きました。
「そうなったら早くあの城へ行くわよ!!」
こうして一行は、黒いお城へと向かっていきました。
*
一行は、森を抜けて真っ黒なお城の門の前にやってきました。
「着いたわね…。」
城門を見ながらクロ姫は言いました。
城門は悪魔をモチーフにしたような飾りがついていて、いかにも魔女が住む城…という不気味な雰囲気を出していました。
「ポチエナ、アンタから入りなさい。」
「えぇ!?何でですか!?」
ポチエナは、大げさなリアクションを取りながら言いました。
「こういうのは、一番先に入った人が死ぬフラグですよね。」
プラスルがポツリと言いました。
それを聞いたポチエナは顔を青ざめ、頑なに顔を横に振りました。
「しょうがないですね…僕が行きます!!」
イーブイが手を挙げ、自ら立候補しました。
「じゃあ私も!!」
「俺も!!」
「僕も!!」
イーブイに吊られて、ヒメグマとオニスズメとマイナンが手を挙げました。
「皆…じゃあ俺が行く!!」
「「「どうぞどうぞ。」」」
ポチエナが四人が手を挙げるのを見て、自ら手を挙げた瞬間、立候補していた四人がポチエナに譲りました。
「えぇ!?」
「もうそんな茶番はいいから、早く行くわよ!!」
クロ姫は五人の会話を遮って言いました。
元々はクロ姫が提案した事でしたが、姫本人は覚えてなかったらしく、
それに続き、他のポケモン達もお城に入っていきました。
「えぇ!?ちょっと待って!!」
一人ポツンと取り残されたポチエナは、慌てて皆を追いかけてお城へと入りました。
*
「迷っちゃったみたいですね…。」
シロ姫が辺りをキョロキョロと見回しながら言いました。
一行は、広間のような広い部屋へとやって来ていていました。
広間には二つの階段があり、二階の部屋へと繋がっているようでした。
「こんな所までずかずかと入ってきて…来て一体何の用なの?」
10人が声のした方を振り向くと、メリナが階段から降りてくるのが見えました。
「あんた誰?」
メリナを少し睨みながらクロ姫は言いました。
「この城の主に向かってあんたとは失礼なブラッキーね…まあいいわ、名乗ってあげる。」
メリナはそこで一旦言葉を切り、息を吸ってからクロ姫の質問に答えました。
「私はメリナ。さっきも言ったと思うけどこの城の主よ。」
「メリナ様、グレイ様はどこにいらっしゃるのですか?」
シロ姫は、おだやかにメリナに話しかけました。
「グレイ…ああ、私のダーリンね?ダーリンならどこかの部屋でぐっすり寝てるわよ?」
メリナは嬉しそうにクスクスと笑いました。
「三人が話してるスキに、私達は王子を助けに行きましょう!!」
「えぇ!!」
クロ姫達が話し込んでいる時ヒメグマとプラスルが、メリナにバレないように階段を駆け上がりました。
「…この魔女め!!アタシが退治してやるわ!!」
「あら、やってみなさい?」
クロ姫がメリナに向かって唸りましたが、メリナは余裕の表情でフワフワと部屋の上に浮かんでいました。
「いくのよ!ヤミラミ達!!」
メリナがクロ姫とシロ姫を指さすと、どこからともなく四匹のヤミラミが現れ、シロ姫とクロ姫に襲いかかりました。
「ウィー!『乱れ引っかき』!!」
「『つつく』!!」
ヤミラミの鋭い爪が姫に当たる寸前、オニスズメが鋭利な嘴をきらめかせ、ヤミラミ達の爪を打ち払いました。
「今だ!オニスズメに続け!!」
オニスズメがヤミラミの爪をはじいた後、家臣のポケモンがヤミラミに飛びかかって行きましたが、すぐにヤミラミの攻撃を受け、倒れてしまいました。
「皆さん!!」
「皆!!」
「う…姫様!危ない!!」
クロ姫とシロ姫が六人に走り寄った瞬間、一匹のヤミラミの爪が二人に襲いかかろうとしていました。
その時ー、
「『吹雪』!!」
突如二人の目の前に広がった冷たい氷の霧は、ヤミラミを覆い凍らせてしまいました。
二人が恐る恐る目を開けると、捕らわれていたはずのグレイ王子がヤミラミに立ちはだかっていました。
「グレイ様!?なぜここに…?」
シロ姫が尋ねると、グレイ王子はニコッと笑いかけて答えました。
「そこのお嬢さん方に目を覚まさせてもらってね…。」
シロ姫がグレイ王子の視線の先を見ると、ヒメグマとプラスルが薬草の欠片を持って立っていました。
「おっと…そうこうしている間じゃなかった!」
グレイ王子がバッと振り返り、メリナとヤミラミを睨みました。
「何でダーリンがここにいるのよ!!部屋で寝てたのに!!」
メリナはあたふたと飛び回っていました。
「…もういいわ!ヤミラミ!!ダーリンもろともやっちゃって!!」
メリナがヤミラミに命令するとヤミラミ達はグレイ王子に飛びかかりました。
「…遅い!!」
しかし、グレイ王子の方が一枚上手で、自分の周りに氷の固まりが混じった冷気の渦を作り出すと、ヤミラミ達にぶつけました。
「うわぁ!!」
ヤミラミ達は吹っ飛び、お城に穴を開けて空へ飛んでいきました。
「そんな…。」
「正義は必ず勝つ!!」
メリナが呆然とした表情でガクリと肩を下ろしました。
「…まだ諦めてはいないんだから!!覚えときなさい!!」
そう言うと、ヤミラミが飛んでいった方角へメリナは飛んでいきました。
「王子〜♪」
「グレイ様〜♪」
二人はグレイ王子に飛びつきました。
「さあ、私とお花畑へ行きましょう!!」
「ちげーよ!アタシとスイパラに行くんだよ!!」
また最初のゴタゴタに戻り、王子は二人に手を引っ張られる事になってしまいました。
「そろそろグレイ様も、どちらと結婚するのか決めていただかないといけませんね…。」
イーブイが三人のやりとりを見つめて言いました。
「どっちにするんだよこの色目王子〜!」
ポチエナが冷やかすように、グレイ王子を突っつきました。
「僕は…」
「僕は…?」
「僕は…」
「…。」
グレイ王子が真剣な表情で悩んでいた所ー…
「ぐれいちゃ〜ん♪」
突如謎のシャワーズが現れ、グレイ王子を呼びました。
「あっ、ママ〜♪」
「そう『ママ』…ってうえぇぇ!?」
その場にいた10人は驚愕の表情でそのシャワーズを見ました。
確かにどこかグレイ王子を連想させる何かがあり、グレイ王子の親だということを感じさせました。
「今日はぐれいちゃんのだーいすきなハンバーグよ♪」
「わーい!僕ママのハンバーグだーいすき!!」
キャッキャとはしゃぐ親子を呆然と見ていたクロ姫は、何を話していたのか思い出しました。
「王子!結婚相手はどうするのよ!?」
「僕、ママが一番好きなんだ!だからごめんね!!」
グレイ王子は屈託のない笑顔で答えました。
「じゃあぐれいちゃん、おうちに帰るわよ?」
「ハーイ!じゃあまたね!!」
そう言って去っていく王子を10人は見ていましたが、王子の姿が見えなくなると全員で…
『マザコンかい!!!』
と、叫びました。
その声は森中を駆けめぐり、森に住むポケモン達を騒がせたそうです…。
−END−