八三(闇)の日

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八三(闇)の日
八三(闇)の日

 八月三日の夜…真っ暗な街道を一陣の風になってひた走る少年がいた。
 まだ幼い雰囲気を持つ少年は堅く口を閉ざしており、なぜか息を止めて走っているようだった。
 普通の街なら仕事帰りの人が歩いているはずだったが、今日は全然見かけない。
 ただ、暗闇の中で目立つ街灯が一定の感覚で立ち並んでいるだけである
 ふいに彼は暗闇の中で煌々と街灯のまばゆい光の中に入った。

 「ハァハァハァ…。」

 街灯に入った少年は口を開き、苦しそうな表情で息をして、地面にへたり込んでしまった。
 座った反動で、少年の肩から下げている鞄がずり落ちた。

 「やれやれ…こんな時間まで塾に残されるなんて思ってなかったな…。」

 そう言った少年は赤と白のボール…俗に言うモンスターボールが一つ付いたベルトを触った。

 「油断してたなー…いつもだったらポケモンを六匹持って出てたのに…。」

 少年はボールの開閉スイッチを押し、中にいるポケモンを出した。
 光の中からは茶色くて、首周りにふさふさした白い毛がついたポケモンが出てきた。

 「しかも、持ってきた唯一のポケモンがイーブイだし…炎タイプのポケモンだったらなー…。」

 「ぶい?」

 ボールから出てきたイーブイは、親である少年の悩んでいる顔を見ると、心配そうに首を傾げた。
 少年はため息を付くと、イーブイをボールに戻した。

 「八月三日…闇の日…。」
 
 少年は今日、学校で聞いた話を思い出し、身震いをした。

 *

 「八月三日の夜に、闇の中で息をすると怖いポケモン達に連れて行かれちゃうんだって。だから夜の街を歩く時には街灯とかの下で息をしないと連れて行かれちゃうね!」

 学校では、闇の日の噂でもちきりであった。
 少年のクラスでもクラスメイト達が、闇の日の噂をしてやまなかった。

 「今日は外に出ないようにしなきゃ!!」

 (そんなのはデタラメだ。)

 クラスメイトの女子が怖そうな表情をしながらキャイキャイ騒ぐのを見て、少年はそう思った。
 しかし、少年は心の隅に恐怖を植えつけられていたのだった…

 *

 「全く…ついてないなぁ…。」

 あの話が本当だったら…少年はそう考えて、また身震いをした。

 「よし、行くか!」

 少ししてから少年はまた口を堅く結ぶと、真っ暗な夜の街へ出て行った。

 「ふぅ…やっとここまで来たな…。」

 少年は、彼の家の一歩前の街灯で深呼吸をしていた。
 少年の家は煌々と光が照っていて、少年は思わず安堵の笑みを浮かべた。

 「あと俺の家まで街灯一つか…長い道のりだったな…。」

 少年の言うとおり、家の手前に一つ街灯があった。

 「あの距離だったら一息で行けそうだな…、…よし!」

 しかし、少年はその街灯で一休みしないようで、走り出す準備を始めた。
 少年は大きく息を吸うと、街灯の光の中から躍り出た。
 あっという間に一つ前の街灯を通り抜け、少年は家の前の灯りまで全力で走った。

 (あと少し!!)

 ーが…
 少年はあと一歩という所で、石につまずき、転んでしまった。

 「うわっ!!」

 少年は転んでしまった時の反動で、口を開き息をしてしまった。

 「痛てぇ…。」

 少年は、擦り傷をした膝小僧をさすったが、息をしてまっている事に気が付いた。

 「しまった!!」

 慌てて口を抑え、起き上がって家の灯りまで走り出そうとした。
 しかし、時既に遅し。
 少年の家の灯りに手が届きそうになった瞬間、突然灯りが消えた。

 「え!?」

 少年が驚いて辺りを見回すと、どんどん街灯の灯りが消えていった。
 あっという間に街は真っ暗になり、光と思えるものが全くなくなってしまった。

 「何で!何で!?」

 少年は走り出したがどこにも灯りはない。
 どこまでもが真っ暗で深い闇に包まれていた。

 「ケ…ケ…ケ…。」

 「うわっ!!」

 突如少年の背後から神経を逆なでするような嗤い声が聞こえ、少年は腰を抜かした。

 「だっ誰!?」

 声が聞こえた方を見たが、深い闇が広がるだけで、何もなかった。

 「モウオソイヨ。キミハヤミノナカデイキヲシチャッタンダヨ。」

 さっき声が聞こえた所から違う所から声がして、少年は振り向いた。

 「モウオソイヨ。モウムダダヨ。」

 今度は二人が同時に喋ったような感じで、声が聞こえた。

 「うっ…うわぁぁぁぁ!!」

 少年は闇の中を走り出したが、声はどんどんと近づいてくるようだった。

 「オソイヨ。オソイヨ。」

 「ケ…ケ…ケ…。」

 「来るなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 突然、少年の肩に手が置かれた。

 「ズットイッショニイヨウヨ。」

 その手を振りほどこうとして振り返ると、ゲンガーが少年の肩に手を置き、ゲンガーの後ろにはたくさんのゴーストポケモンが少年を見て嗤っていた。

 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 少年の絶叫が、深淵の闇に響き、消えていった。

 翌日、少年は姿を眩まし、行方不明になった。
 少年の家の前にはイーブイが入ったボールのみが付いたベルトが発見され誘拐事件とされたが、結局真実は分からなかった。

 「ケ…ケ…ケ…。」

 ゴーストポケモン達の嘲笑うような声がまた聞こえた。

 そして、また闇の日の犠牲者が増えたのだった…。

 *

 『昨日、○○街に住む少年が行方不明になりました。八月三日には必ず行方不明者が出ていますが、他の事件との関係性はあるのか現在も警察は調べています。もし何か情報があれば下記の電話番号からご連絡お願いします。では次のニュースです。』

 〜END〜
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■筆者メッセージ
ツタージャの本棚にて投稿した作品です
私が初めて書いた短編でもあります(^_^;)
へたくそですなw

まあこんな感じの短編も書くかもしれません

では閲覧ありがとうございました!!
イチゴ ( 2012/08/09(木) 13:55 )