−第十二話−
Believe
−第十二話−
『ギルド・カーニバル一回戦が全て終了しました。』
会場一帯に、MCのアナウンスが流れ観客席からは歓声が上がった。
クリスギルドのメンバー達は難なく一回戦を突破し、ロッカーが数個と足の低いテーブルが一つあるどこにでもありそうな控え室でくつろいでいた。
テーブルにグラスに入った飲み物が置いてあり、すでに飲み終わっているグラスもあった。
ボスはそのグラスを取り、ぐっと一気に飲み干した。
よく冷えた水が体に染み渡り、体が潤うのを感じた。
「終わったみたいね。」
アナウンスを聞いたクリスが言った。
クリスも水を飲んだらしく、クリスの前にあるグラスは空になっていた。
「一回戦は突破出来たけど、もう一度ルールを確認しておくね!!」
ルナは大会のパンフレットのような物を取り出し、ルールが書いてある欄を開いた。
「えーっと…試合は勝ち抜き戦で、大将が引き分けた場合は代表者を選んで代表戦を行う…」
ルナはパンフレットに書いてある大会のルールを読み上げていった。
六人はルナの言葉に耳を傾けながらストレッチをしたり、水分を取ったりしていた。
先ほどの試合ではボスが七人抜きをして勝利を収めたため、皆涼しい顔をしていた。
「…だって、質問はない?」
ルール事項を読み終え、ルナは自分のチームメイトを見回した。
しかし、誰一人質問をする人が出てこなかったので、ルナはパンフレットをクリスに渡して自分もストレッチを始めた。
「さて…次の試合も頑張るわよ!!」
クリスはそう言って控え室から出て行った。
「始まる少し前に集合したらいいんだから、それまで自由行動でいいのか?」
ムサシが軽く屈伸をしていたティルに話しかけた。
「う〜ん…いいんじゃないかな?」
ティルは一旦屈伸をするのを中断し、ムサシに言った。
それを聞いたムサシは頷くと、控え室から出て行った。
「俺、試合見てくるわ。」
ボスはスッと立ち上がり、ムサシの後を追うように控え室から出た。
「私も!!」
ボスが出て行く寸前にルナが立ち上がり、出口へと向かった。
*
−試合場−
ボス達は、試合場へとやってきていた。
試合場では試合が始まっていて、観客の応援する声や、技の炸裂する音で試合場は充満していた。
「あれは…。」
ボスの視線の先には、見覚えのあるヘルガーが戦っていた。
先日の会議に来ていたお気楽でちゃらんぽらんなマスター、ルマンだった。
「あれは…ルマンギルドのマスター、ルマンさんね…。」
ボスが頷くと、ルマンの試合を見始めた。
*
ルマンの相手はドラゴンと地面の力を併せ持つせいれいポケモン、フライゴン。
タイプ相性的にはルマンが圧倒的に不利である。
しかし、ルマンのチームは大将であるそのフライゴンを引きずり出すほど相手を追い込んでおり、ルマンは余裕の表情でそのフライゴンと対峙をしていた。
「僕のギルドの先鋒を倒したのはすごいとは思うけど…もう終わりなの?」
ルマンは相手を挑発するような口調で言った。
それを聞いたフライゴンの眉間にしわがよった。
「黙れ!貴様もすぐに倒してやる!!」
フライゴンはそう言うと、爽やかに晴れた空へと舞い上がった。
ルマンは高く飛び上がったフライゴンを見上げた。
ボスも同じく空を見上げたが、フライゴンの姿は点にしか見えなかった。
「…。」
ルマンは何を考えたのか、目を閉じて集中を始めた。
「血迷ったか!?『空を飛ぶ』!!」
フライゴンはそう言うと、地上にいるルマンに向かって急降下を始めた。
あと何mかで衝突する…という時にルマンはカッと目を見開いた。
「『不意打ち』!!」
ルマンはフライゴンに向かって飛び、紫色のオーラをまとう悪魔のような形をした尻尾をフライゴンに叩きつけた。
「ぐっ!?」
不意打ちを食らったフライゴンは空から急降下してきた勢いのまま、地上に落下した。
フライゴンの落ちた場所から砂埃が立ち上がり、ルマンの姿を隠した。
「くそっ!!」
砂埃が割れ、その中からフライゴンが翼をはためかせて立ち上がった。
ルマンは薄笑いを浮かべてフライゴンを見ていた。
「まだやるの?」
ルマンは尻尾を揺らしながらフライゴンに言った。
「やるに決まってるだろう!!」
怒りに燃える目を光らせ、ルマンを睨む。
ルマンはぎらぎらと燃えるその目を見ても、余裕の表情を崩さなかった。
「さあ…行くよ?」
ルマンはそう言い、恐ろしいスピードでフライゴンの懐へと飛び込んだ。
彼は牙に紅蓮に輝く炎をまとわせ、フライゴン特有であるライムグリーン色の翼に燃えさかる牙を突き立てた。
「『炎の牙』!!」
ルマンがそう叫ぶと、牙を突き立てていた部分から火柱が立ち上り、フライゴンとルマンを飲み込んだ。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
揺らめく炎の中からフライゴンの叫び声が響いた。
−しばらくたってから炎の勢いも収まり、火柱が消え去った。
火柱の中にはルマンが悠然と立っていて、自分の足下に倒れているフライゴンを見ていた。
フライゴンの体は火傷だらけで、ルマンの火力の大きさが見て取れた。
「自分の力量の限度を知っていたらこんな事にはならなかったのにね。」
ルマンはそう言うと、試合場から立ち去った。
*
『勝負あり!!』
MCの判定が試合場に響きわたり、ルマンギルドの勝利に終わった。
「あいつ…おちゃらけた奴だと思ってたが…強いな…」
ボスは購買に売っていたポフィンを口に放り込んで言った。
好きな味である渋い味が口いっぱいに広がり、思わず顔がほころんでいた。
「だね…。」
ルナもポフィンをかじり、試合場から立ち去るルマンの姿を見ていた。
「そろそろ試合も始まりそうだし、行こうか!」
ルナとボスは残ったポフィンを口に押し込み、チームメイトのいる控え室へと足を運んだ。
To Be Continued...