番外編−電気蜘蛛の出所−
「やっとこの日が来たでやんすね…。」
黄色の蜘蛛が自分を閉じこめている頑丈な檻を見つめて言った。
Believe番外編
−電気蜘蛛の出所−
「…やっと…やっとシャバの空気を吸えるでやんす…。」
『刑務所』と書かれた頑丈そうな建物から黄色の蜘蛛が出てきた。
蜘蛛の種族名は『バチュル』、名前は『バティストゥータ』である。
彼は元お尋ね者で、『Believe』という探検隊に逮捕されたのだ。
「コレデコリタロウ?ばてぃすとぅーた。ケイキモミジカクテヨカッタナ。」
バティストゥータの後ろからジバコイルが出てきて言った。
「確かにこりたでやんすよ、とっつぁん。」
フッと笑みを零してバティストゥータは言った。
「あっしには農作業とかが似合うでやんすよね。」
「ソレハナイナ。」
ジバコイルは、バティストゥータの言葉を速攻で真顔で否定した。
「そ…即否定でやんすか!ひどいでやんすよとっつぁん!!」
嘆くバティストゥータを放っといて、ジバコイルは建物の中に戻っていった。
「…まあいいでやんす…それより…。」
ジバコイルを見送り、バティストゥータはお腹(?)をさすった。 「お腹減ったでやんす…。」
ぐぅぅぅ〜という音が辺りに響き、バティストゥータは意識を失ってしまった。
「…?」
「あっ起きた!!」
バティストゥータの周りには見知らぬポケモンがたくさんいた。
「…あっしはどうしちゃったんでさやんすか?」
バティストゥータは頭を振りながら周りのポケモンに尋ねた。
「えぇ〜?道端に倒れてたんだよぉ〜?」
側にいた雌らしきチュリネが言った。
「…っていうかここはどこでやんすか…?」
「ここはギルドだぞ?」
雄のケンホロウが言った。
「ぎっ…ギルドでやんすか!!」
バティストゥータがとんでもないスピードで後ずさりしたが、すぐにへこたれてしまった。
へたり込んだバティストゥータのお腹の虫が鳴いた。
「腹減ってるのか?」
「ま…まあ…。」
ケンホロウは側にいた雄のニャースにアイコンタクトをした。
すると、ニャースは倉庫から木の実を大量に持ってきた。
「これを食べてくださいにゃ!」
「いいんでやんすか…?」
バティストゥータは色とりどりの木の実を目にし、涎を垂らした。
「いいぞ。」
ケンホロウが言った瞬間、バティストゥータは木の実の山に向かって飛び込んだ。
「むぐむぐ…う…美味いでやんす!!」
「ところでぇ〜キミの名前はなんていうのぉ〜?」
木の実をがっつくバティストゥータを見つめていたチュリネが言った。
「あ!恩人に自己紹介をするのを忘れてたでやんす!」
一旦木の実を食べるのを止め、バティストゥータは正座(?)をした。
「あっしの名はバティストゥータでやんす!!」
「ば…バティストゥータ?噛みそうだからバティスでいいよねぇ?」
バティストゥータは以前にもそんな事を言われたのを思い出し、頷いた。
「じゃあバティス、帰る所とかあるか?」
ケンホロウがバティストゥータに聞いた。
「…ないでやんす…。」
バティストゥータがお尋ね者時代の頃は森の中でごろ寝だったので家と呼べる物はなかったし、家族もいなかった。
「…ないのならここで暮らさないか?」
ケンホロウは俯くバティストゥータに向かって言った。
「いいんでやんすか…?」
「ああ。」
バティストゥータは自分の目からぶわっと涙が出るのが分かった。
「ありがとう…!!」
それが、バティストゥータが探検隊になったキッカケだった…。
*
「むぅ…いないでやんす…。」
うっそうとした森で、バティストゥータはチュリネと一緒にお尋ね者を探していた。
「あ!いたよぉ〜!」
チュリネが指差す先に、お尋ね者のポスターと同じ顔をしたズバットがいた。
バティストゥータは電気をまとった糸を吐くと、ズバットを絡め取った。
「捕まえたでやんす!!」
「くっ…くそぉ〜…。」
悔しそうなズバットを探検隊バッチで送ると、バティストゥータはふと自分を捕まえた『Believe』の事を思い出した。
(アイツら…元気でやんすかねぇ?)
自分を捕まえたポケモン達だったが、今の生活をする事が出来たのは彼らのおかげだった。
(また今度会いに行こう…。)
ぼーっとしていたバティストゥータだったが、チュリネに叩かれて我に帰った。
「早くギルドに帰ろうよぉ〜!」
「分かったでやんすよ…。」
そして、二人はギルドへと引き返すのだった…。
−Fin−