番外編−誕生日−
番外編−誕生日−
Believe番外編 −誕生日−

サワサワサワ…。 アタシは、静かな夜の草むらを一人で歩いていた。 スキップしてしまいそうな足取りで、基地へと向かっていた。

何でアタシが楽しそうに歩いているのかって? それは今日はアタシの誕生日…6月20日だからだ。

そもそもアンタは誰だよって? そういえば自己紹介がまだだった。

アタシは、ハート。 性別は一人称で判断して欲しい。 一応探検家でチームCross Heartsのリーダーをしている。 パートナーは、ブイゼルのゼル。 アタシの幼なじみだ。 最初に会ったのは、9歳の頃。 アタシの親が居なくなり、近くの森をうろついていた時に出 会った。

親が行方不明になったのかって? まあ、そんな感じになるのかな… それはあとで語ろう。

親の話は、ゼルだけにしか話したことが無い。 なぜなら、話したとしても信じてくれないのがオチだからだ。 ゼルはこの話を信じてくれた。

親はライチュウとかじゃ無いのかって?

それは違う。 アタシは生みの親に捨てられた。 正確に言えば、アタシの育ての親が突然姿を消したのだ。

ん? じゃあ、育ての親は誰なのかって?

信じてくれないと思うが、アタシの育ての親は、『ゼクロム』 だ。

そんなの嘘に決まってる?

信じてくれないのなら、それでいい。 だが、アタシの親は誰が何と言おうが『ゼクロム』なのだ。 正確には『黒銀(クロガネ)』…と名乗っていたが…。 まあ、それは置いといて、アタシの経歴を話そう。

アタシは、森の中に捨てられていたそうだ。 覚えてはいないが、クロガネ…義父さん(とうさん)が話してく れた。 ちなみに、アタシはクロガネの事を義父さんと呼ぶのだ。

ああ、いけない。 また、話が脱線してしまった。 話を元に戻そう。

アタシはたまたま、義父さんの住んでいる所の近くに捨てられ ていたらしい。 鳴き声が聞こえてきたから森に行ってみると、アタシが捨てら れていたそうだ。 そのまま見捨てる訳にもいかずそのまま連れて帰ったそうだ。 今思うと、義父さんに拾われた事はとてもラッキーだったのだ。

義父さんは、アタシに色んな事を教えてくれた。 料理の仕方、木の実の使い方、戦い方…。 数えても、数え切れない程の事を教えてもらった。 アタシは義父さんが大好きで、大好きで仕方なかった。

義父さんもアタシの事が好きだったのかなぁ? そうだったら嬉しいな…

…また話が逸れてしまった。

ん? いつ義父さんは居なくなったのかって?

…あんまり覚えてない。 ある日忽然と姿を消したのだ。 手紙も残さず、ただ一つ残されていたのは一本の刀だった。 柄には『雷光刀』と書かれていた。 『雷光刀』は唯一義父さんが残した手がかりであり、形見の物 だった。 だから、アタシはいつもこの刀を背負っている。 無論いつもこれで戦う。 アタシはノーコンなので、特殊技は出来ない。 だから、いくら義父さんの形見のような物でも使わなきゃいけ ないのだ。

人気の無い夜道を歩いている。 そうしたら、義父さんと夜空を飛んだ思い出が浮かんできた。 アタシが泣き止まないときは、いつも背中に乗せてもらった。 急に寂しくなった。 「義父さん…。」 呼んでしまってからハッと辺りを見回した。 15歳にもなって、恥ずかしい事を言ってしまった。 よかった、誰もいない。

義父さん…。 心の中でもう一度呼んでみた。 どこへ行ったのだろう。 何をしているのだろう。 会いたいな。 会って話がしたい。 今日15歳になった事を… あなたに助けられて、ここまでこれた事を… 感謝したい。 いっぱい感謝したい。 そして言いたい。

育ててくれてありがとう…と。

アタシは、空を見上げた。 満点の星空が輝いていた。 一瞬、流れ星が落ちた。 清々しい夜空だ。

基地の近くまで来た。 基地の丸い煙突から、煙がモクモクと上がっている。 今日のご飯は何かな? アタシの誕生日だから、豪華な物かも…! と考えていたその時−

−誕生日おめでとう…

一瞬、誰かの声がした。 聞いたことがある懐かしい声…。 期待して振り向いたが、誰もいなかった。 少しガッカリしたが、空を切り裂くような音が聞こえて、周り の木々の葉を揺らした。 まるで何か大きなポケモンが空 を飛んでいったような音だっ た。

まさか…ね…。

−Fin−

イチゴ ( 2012/07/20(金) 14:03 )